シャンプーは、掟の外で乱馬を選ぶ―らんま1/2・女傑族の村残留IF― 作:エーアイ
ここまで第1章をお読みいただき、本当にありがとうございました。
第1章は、女傑族の掟によって始まった乱馬とシャンプーの関係が、最後には「勝負の結果とは別に、自分たちで次を選ぶ」関係へ変わっていくところまでを描きました。
物語の始まりでは、シャンプーにとって敗北は、その後の人生まで決めるものでした。
女に負ければ死の接吻。
男に負ければ求婚の接吻。
しかも乱馬の場合、その二つを同じ一人が受けてしまいます。
一方の乱馬にとって、負けることはもっと単純です。
負けた。
何が悪かったのか考える。
直す。
次は勝つ。
第1章後半でシャンプーが知っていくのは、乱馬の強さだけではなく、この「負けても、その後まで勝敗に渡さない」という考え方でした。
そのため、三度目の勝負はこの章でかなり重要な位置にあります。
乱馬が子どもたちへ教えた「肩を見る」という考え方。
水桶を運ぶ中で覚えた、力へ逆らわず流す感覚。
一緒に石板を運んだときの、均衡と支点。
そして、乱馬が狭い場所ほど正確に足場を探すこと。
これまでの日常の中で見てきたものを、シャンプー自身が組み直して乱馬へ返しました。
その結果が、あと半歩違えば逆転していたような、本当にぎりぎりの初勝利です。
ただ、第1章で一番書きたかったのは「シャンプーが乱馬に勝ったこと」そのものではありません。
その勝利のあとに、
「勝った。それで終わりだ」
と言えたことです。
勝ったから夫にする。
勝ったから従わせる。
勝ったから相手の人生を決める。
そうではなく、自分が勝ちたかったから戦い、勝ったから喜ぶ。
それだけの勝負を、シャンプーが初めて自分で選びました。
同時に、シャンプーは初めて乱馬の「負け方」も目にします。
自分に負けたのに、乱馬は何も失いません。
シャンプーへ従うこともない。
夫になることもない。
乱馬でなくなることもない。
むしろ負けた直後から、
「どこでやられた」
「次はどうする」
「今度は俺が勝つ」
と考え始めます。
そして最後には、シャンプーから求められたからではなく、乱馬自身が次の勝負を選びました。
第26話で、昨日の勝者と敗者が同じ数の水桶を運んでいるのは、そのためです。
勝敗はついています。
でも、それで日常の上下関係まで決まるわけではありません。
シャンプーは乱馬を夫と呼ばない。
乱馬もシャンプーに従わない。
それでも二人には、自分たちで決めた「次の勝負」が残っています。
もちろん、死の接吻と求婚の接吻そのものが消えたわけではありません。
長老たちによる裁定もまだ続いています。
第1章でシャンプーが掟そのものを捨てたわけでもありません。
今回できたのは、その中に初めて、
「この勝負の意味は、自分で決める」
という場所を作ったことです。
乱馬もまた、日本へ帰るつもりを変えてはいません。
帰る道も自分で調べました。
だから、この章の終わりは「二人が結ばれた」でも「乱馬が村に残ると決めた」でもありません。
次の勝負まで、同じ道を歩く。
今は、それだけです。
第1章はここで一区切りとなります。
ここまで乱馬とシャンプー、そして女傑族の村での生活を見届けてくださった皆様、本当にありがとうございました。
引き続き、この二人が自分たちで何を選んでいくのかを楽しんでいただければ幸いです。
第1章は書き溜め分があったので毎日投稿でしたが、第2章以降は投稿ペースが落ちますのであらかじめご了承ください。