帆羽くれあヤンデレ概念 作:あわわ〜ぜ
くれあのアクスタ速攻で売り切れましたね。人気急上昇で私も嬉しいです。ちなみに私は無事に買えました。私服くれあが可愛すぎる。
とある日曜日の昼下がり。我が旧友、森亜るるかから超久々に呼び出しをくらった俺は、割とウキウキで待ち合わせ場所へと訪れていた。
「よっ、二人とも。元気してた?」
早速目に入ったるるかと、そのおとも妖精。俺は背後から声をかける。
「…………?」
海風にそよそよと髪を靡かせる彼女は、どことなく物憂げに、その果てしない水平線を眺めていた。やがて自身が呼ばれたと気づけば、ゆっくりと振り返り、かすかにスカートを揺らす。
そこだけ切り抜けば、まるで映画かなにかのヒロインのようだった。そう、ヒロインにも見えなくはない。見えなくはないのだ。
──あくまで振り返った彼女が
「……おー、君たちは相変わらずなことで」
「あら、ロイ! 久しぶりね! アタシは元気よ。アナタもアナタで変わらずじゃない。昨夜は遅くに悪かったわね」
「んーん、別にいいってことよ。俺も久々に会えて良かった」
真っ先に笑顔で応じてくれるマシュタン。やっぱり、彼女はなにも変わっていない。むしろ、少しばかり印象が違っていたのはるるかの方だった。
「…………」
彼女は返事も碌にせず、無言で俺を見つめている。ふむ、一体どういう心持ちなんだろうか。マシュタンの言っていた「寂しくなった」ってのは、どうやら本当なのか?
「どうしたのさ。そんなに見つめちゃってさ」
「別に」
彼女は、なにか思い耽るような仕草を見せる。
ただ、目だけはずっと合っていた。その藤色の瞳は、変わりないようで。
「ねー、大丈夫? アイスっ娘るるかちゃん?」
「……その呼び方はやめてって言ってるでしょう」
なんだかこそばゆく感じた俺が再度呼びかけると、今度はしっかり返事をした。ううん、でも、アイス食いながら言われてもねぇ。
「まあいいや。久しぶり、るるか。最近調子はどう?」
「そうね、可もなく不可もないと言ったところかしら」
彼女はやけに澄ました顔で答える。ちくしょう達観してやがる。……あー、でもそうだったわ。こいつはこれがデフォなんだ。久しぶりでこっちも麻痺してたよ。
「てかるるか。それはそうとさ──」
そうさ。るるかと出会ってまずやるべきことは、一つと決まっているのだ。これをやらずして会話は始まらない。ってことで、
「はい、これあげる! サーティワンの商品券ね! 五枚! 二千五百円分! 一緒に食べよ!」
「──っ!」
ほーら、キュアっと解決。
「はい、どーぞ」
「ありがとう。うれしい」
途端にるるかを取り巻く雰囲気が、「…………すん」から「ふわふわ〜」に変わった。彼女の口元がふっと緩む。へへっ、チョロいな。
いやはや、るるかさん。久々に会ったと思えばすっかり無表情キャラが板についちゃってるけど、まだ笑えるようでなによりだよ。
「それじゃ、いくか」
「うん」
ずっと立ち止まっているのも居た堪れないので、俺たちは自然と歩き出す。お互いにどこか目的地を定めたわけでもないが、多分向かっているのは一番近いアイス屋だ。これぞ阿吽の呼吸ってやつだと思う。
「んで、実際のところ調子はどうなん?」
「……ん、まずまずだと思う。可もなく不可もないのは本当よ。ちょっとした
るるかは変わらず無表情ながらも、さっきよりは幾分も色づいた声でそう答える。
「あー、あいつらか。ニジーってのは俺も見たぜ。なんかいけ好かない野郎だった」
先日のプリキュアvsファントムの壮絶な戦いを思い返し、俺はなんとはなしに浮かんだ感想を告げる。
あのイケメン怪盗、イケメンのクセしてエリザちゃんを困らせたのだ。
大いなる顔面には大いなる責任が伴うってのに、マジで許せない。パティスリーチュチュでの事件であったため、結果的に店長やくれあにも迷惑をかけている。もう逮捕でいいと思う。
と、内心で文句を垂れる俺だったのだが、
「あなた、ファントムに会ったの?」
るるかは思いの外、当惑したような様子を見せた。
まあ当惑といってもそれは、どこかこちらを諌めるような、そんな態度だ。
……うん、でも多分心配してくれてるんだよな。知ってるぜ。伊達に長い付き合いじゃないんだ。でもでも、別に俺も無力ってわけじゃなんだけどなあ。
「たまたまだよ。戦ったわけでも、敵対したわけでもない。ただ、ちょーっと探偵さんを追っかけてたらね」
「そう、ならいい。こっちも都合上、まだ組織を離反するわけにはいかないの。怪盗団ファントムとしてあなたと戦わなければいけないのは…………、……あまりにも生産的じゃないわ」
「うんうん。そうだよねぇ」
俺は頷きながらも微笑ましい気持ちになる。
こんなにそっけなくては可愛げもない、と思う人もいるのだろうが、むしろ一周回って健気ではあるまいか。
るるかはあくまで合理的生産的だとかの理由を装っているけど、ところどころ思いやりが隠せていないんだよね。ま、そもそもこんなこと計画してるのだって、彼女の「思いやり」によるものだ。こいつはあまりにも優しすぎるのさ。
なんて、俺はあくまで分かっていたのだが、どうやら先に見かねたのはマシュタンだったらしい。
「もう、ほんと素直じゃないわね。……ロイ? いいからよく聞くのよ! こうは言うけど、るるかは純粋にロイが心配なだけなの。この子ったら随分と迂遠な言い方だけど、本当にそれだけ。分かって頂戴ね!」
「マシュタン、余計なこと言わないで」
「言うわ! るるかってばぜーんぶ一人で背負いこんじゃうんだから、偶には誰かに褒めてもらわなきゃダメなのよ!」
「マシュタン、動けなくするよ?」
「へぇ、言うじゃない。でもそうはさせない。偶には思い知りなさい!」
そう言ってマシュタンは、突然るるかの顔に抱きついた──というより、覆いかぶさった。視界を奪われたるるかは驚きながらも、すぐに引き剥がそうとする。
「──っ、マシュタン、なに、するのっ」
「先手必勝ってやつね! さっきから見ていれば澄まし顔ばっかり。久々にロイに会えて嬉しいことなんてアタシにはお見通しなの!」
「別に、嬉しくなんか……!」
「嘘よ。それなら占いでもしてあげようかしら? きっと結果は明白よ。嬉しくないはずないわ。こういうときくらい素直に喜びなさい!」
そうやってあーだこーだとじゃれ合っているのは、まるで昔のようだった。俺はどこか懐かしい気持ちを覚える。とりわけるるかとくれあが、本当に仲よさげだったころの思い出だ。
「──はははっ! まあいいじゃんか。そういや前は、みんなでお前をギュッと抱きしめたりもしたよなぁ。懐かしいもんだ」
思わず俺も加わって、頭をわしゃわしゃしてやろうかと手を伸ばす──が、
「ロイ、絶対にやめなさい」
「あっ、はい」
今度こそるるかが本当の殺気を向けてきた。
俺は大人しく観戦に甘んじた。
⚡︎──⚡︎
あれから、二時間ほどが経過した。
まあ、常にティアアルカナロッドに怯えて過ごすわけでもなくて良かった。アイスを奢れば大体解決するのは良いことだ。…………良いこと、なのか?
ま、いっか。
ぶらぶら散歩して、アイスを食べて、そうして三人でしばらく騒いでいるうちに、流石のるるかも絆されたのか、最初に比べれば大分角がなくなっていた。
そして、そろそろ解散時だよなぁと互いに話していた頃、ふとるるかが思い出したように口を開いた。
「そういえば、ロイはさっき「探偵を追いかけた」と言っていた。つまりは、あなたも彼女たちを……プリキュアを見たのね」
おお、やっと聞いてくれた。この時をずっと待っていたのだ。俺はあくまでいつも通りを装いながら、どこか達観したように──
「……ほう、流石はるるか。お前もあのプリキュアに気づいていたんだな。俺もすでに調査済「そういうのはいいから」……ちぇっ、釣れないな」
ダメだった。先日の俺の調査の成果は、今この場で水泡に帰したわけである。るるかったらいっつもこうだ。少しくらい乗ってくれてもいいのに。
「それで、あの子たちどうすんの?」
まーいっか、と気を取り直して、問いかける。
先日は俺が憂えることもないと結論付けはしたものの、やっぱり気になるもんだ。ファントムに所属するるるかは、ほぼ間違いなく敵対することになるだろうからね。
「別に、どうもしない。でも必要とあらば倒す。ファントムもこぞって目の敵にしているようだし」
しかし存外、るるかは関心を示さずに淡々と答えた。
「ふぅん、そっか。マシュタンもそれでいい感じ?」
「ええ、アタシはるるかの選択を尊重するわ!」
「へぇ、そうかい。俺は少し気になるけどな。マコトジュエルを吸収していた時空の妖精、二人一組のプリキュア、同じ見た目のペンダント……どれを取っても、目下言及することはないっつーことで?」
「あなたもよく見ているのね。でも、答えは変わらない」
「……じゃあ、あのみくるって子についてだけど」
「それも構わない。しばらくは私も様子を見てるから。あなたは、あなたのやるべきことをやって」
「……わーったよ。あのなぁるるか、秘密主義なのは構わんけどさ、無理だけはすんなよ。つーかヤバくなったらすぐにでも相談しろ」
俺は今、るるかどこで寝泊まりしてるかすらも知らされていないのだ。俺だって友達の心配くらいはする。彼女には傷ついてほしくない。
まあ、そうはいっても、
「別に、今の私たちは何もかも赤裸々に明かし合うような関係じゃない。ただ共通の目的があるから協力しているだけ。……そうでしょう?」
「あーはいはい。そうですねーっと」
良きにつけ悪しきにつけ、そっちがそのスタンスなら、こっちも合わせる他ないだろう。
心の扉、秘密の鍵ってのは、こじ開けちゃダメなんだ。
俺としては、断ち切ろうにも断ち切れない関係って、あると思うんですけどね。それを口には出さんけどさ。
「……」
そして十秒間ほど、ばつの悪い沈黙が訪れる。
「……そういえば、あの子とは最近どうなの?」
先にそれを打ち破ったのはるるかだった。気がつけば計画とか目的とか、そういう堅苦しい話になってしまっていたけれど、それはあっちも感じてたことらしい。
何気ない雑談のように、問うてきたのだ。
「あー、くれあのことだろ? まあ相変わらずだぜ。体に異常もないようだ」
「…………そういうことを聞いてるわけじゃないんだけど」
そうは言われでもねぇ、
「それ以外に言えることなんてないんだよ。……あ、でも、気がついたら俺の住所がくれあに特定されてた話とか、シュシュタンが案の定洗濯されてた話とか、そういうエピソードならあるぞ?」
「え、なにそれ」
るるかが思わずといった感じで聞き返してきた。うーんやっぱ、女の子ってこういう話好きなのかなぁ?
「んじゃ、詳しく聞く?」
「……やっぱりいい。碌な話じゃなさそうだから」
「そうだな。碌な話じゃないぞ」
流石は元名探偵。タイトルから話の下らなさを推測する能力は半端じゃない。くれあも呼んでどっちが優れてるか検証したい。
「ロイ、もしかして変なこと考えてる?」
「考えてないぞー」
「嘘。その表情は、考えてる」
「ははっ、同じようなことくれあにも言われたぞ。やっぱお前ら似てんのな」
「別に、似てない。……でも、どうしてかしらね。あなたの奇行の前兆には、なんとなく察しがつくわ」
彼女はそう言って微笑んだ。なんだ、随分といい笑顔じゃないか。これが見られたなら、俺も少しは安心できる。
「……今日は、悪くなかった。もうこんなことは有り得ないでしょうけど、私の我儘に付き合ってくれてありがとう」
「今日だけとは言わず、いつでも誘ってくれりゃいいんだけどな」
「その必要はない。ロイはずっと、あの子の側にいてあげて。私が遠くから守って、あなたが近くから支える──そういう約束でしょう?」
るるかは今度こそ思い切ったように、優しく拒絶した。まったく律儀なことだが、るるかはそういう奴だ。
「……ま、そう言うんなら仕方ないな。その約束は、きちんと果たさせてもらうぜ、相棒」
「私の相棒はあなたじゃない。勘違いしないで」
「おう、それが聞けて良かったよ」
るるかの相棒はくれあだけ。んな当たり前のことを俺が知らないわけじゃない。ただ、本人に確認しておきたかっただけだ。るるかは〝まだ〟、あの頃のくれあを相棒だと認識している。
まあ、なんていうかさ、
俺はるるかにも幸せになってほしいと思うのだ。
なにせ自身の幸福よりも、親友を、そしてそれ以外を選んだ彼女だ。そんな功利主義的な考え、提唱はできても実行に移すなんて滅多に無理な話だろう。
「んじゃ、元気でな。るるか、マシュタン」
「……ん」
「ロイも体調には気をつけるのよ! アナタが傷つけばるるかも悲しむんだからね!」
俺たちは簡単に挨拶を済ませる。次に会えるのがいつになるかは分からないが、今生の別れという訳でもあるまい。
そうして潔く別れようと、俺は彼女らに背中を向けて歩きだした。──はず、なのだが、
「あっ、ロイ、まって」
るるかのやや困惑したような、あるいは焦るような声が、突如後ろから聞こえてきた。
「……?」
やっぱりもう少し一緒にいたいとか? いやはやそんな、ヒロインみたいなことをるるかは言わない。思っても、言わないやつだ。
あれ、なにか、おかしい。彼女が別れを惜しんでそんなことを言うとも思えないんだから。そうだ、これはどちらかといえば咄嗟に危機を知らせるような、そんな、
「──ロイくん?」
ここ最近で最も聞き慣れた声が、俺の名前を呼ぶ。るるかでは、ない。
……。
…………。
…………ふぅ。
…………まず、まずね、前提としてね。普段の俺ならば、この声を聞いた瞬間、多大なる幸福感に包まれるはずだ。そして速攻で元気の良い返事をすることだろう。
『やあ!愛しのマイハニー!』
……ってね。
しかし、しかしだ、今はまずい。別に後ろめたいことなどしてはいないが、まずいものは、まずい。なにせ、
とはいえ、もはや末日から逃れることはできないのだろう。果たして弁解の余地はあるだろうか。──否、小賢しくも弁解などを試みている時点で、詰みであり、罪である。
「ロイくん。ねえ、ロイくん」
俺は思考を停止して、恐る恐る振り返る。単にるるかが彼女の声の録音して、ふざけて流しているとか、そういうドッキリであることを期待した。が、そんなわけもなかった。そこには──
「……くれあ?」
「そうだよロイくん。あなたのくれあだよ。ねえ、それはそうとさ……その子、誰かな?」
にこにこほわほわ〜っと、もはや営業スマイルなど
……やっべ、マジどうしよ。
一話に収めようかと思ったんだけど、思った以上に(この先が)濃くなってしまったので、次話に持ち越します。アンケートありがとう。民意に基づき盛大にイチャつきます。
次回!「蓮堂 死す」デュエルスタンバイ!