とのご意見を頂いたので、カゲマルのセリフだけ『』。その他のキャラを「」にして書いてみることにします。
「始め!」
イルカの声と同時に、二人が地面を蹴る。
先に動いたのはサスケだった。
無駄のない踏み込み。
一直線にカゲマルの懐へ飛び込む。
(速い。)
カゲマルは一歩だけ後ろへ引き、拳を紙一重でかわす。
「おぉ……!」
見学していた生徒たちから小さなどよめきが起きた。
「避けた……!」
「あのうちはの一撃を‥‥!」
サスケは表情を変えない。
だが、内心では驚いていた。
(見えてる。)
もう一度距離を詰める。
拳。
蹴り。
肘。
連続攻撃。
カゲマルは最低限の動きで受け流し続ける。
攻撃はしない。
ただ、相手をよく見ていた。
────────
「兄貴、反撃しないのか?」
シカマルが呟く。
隣でチョウジがポテトチップスを頬張る。
「守ってばっかりだね。」
イルカも腕を組む。
(攻めない……いや。)
(攻める隙を探している。)
────────
サスケが右拳を振り抜く。
カゲマルは左へかわす。
その瞬間。
サスケの足元がわずかに滑った。
ほんの小さな体勢の崩れ。
カゲマルは逃さなかった。
体を半歩だけ踏み込む。
肩を軽く押す。
「!」
サスケの重心が完全に浮く。
そのまま背中から地面へ倒れ込んだ。
ドサッ。
静寂。
「……勝負あり!」
イルカの声が響く。
「奈良カゲマルの勝ち!」
一瞬遅れて、教室がざわつく。
「サスケが負けた!?」
「嘘だろ!」
「何したんだ?」
ナルトだけが満面の笑みだった。
「すげぇってばよ! カゲマル!」
────────
立ち上がったサスケは、服の砂を払う。
悔しそうではある。
だが、怒ってはいなかった。
「……どうして。」
カゲマルを見る。
「俺は……。一度も本気で殴れなかった。」
カゲマルは苦笑した。
『サスケ。』
「なんだ?」
『君は真っ直ぐすぎる。』
「……。」
『強い。』
『でも、相手も同じように動くと思ってる。』
サスケは黙る。
『俺は力じゃ勝てない。』
『だから考える。』
『相手が一番嫌がる場所を探す。』
「‥‥」
────────
授業が終わる。
帰り道。
「兄貴!」
ナルトが飛び付いてくる。
「勝ったな!」
『たまたまだよ。』
「絶対違うってばよ!」
シカマルも肩をすくめる。
「兄貴は昔からああだ。」
「勝つより、負けない方法考える。」
『褒めてるのか?』
「半分。」
三人は笑いながら歩いていく。
その後ろ姿を、サスケは校舎の窓から見つめていた。
(奈良カゲマル。)
(あいつは強い。)
(でも。)
(まだ何か隠している。)
その考えは間違っていなかった。
カゲマル自身も気付いていない力が、確かに眠っている。
────────
その日の夜。
奈良家。
カゲマルはいつもの帳面を開いていた。
『模擬戦』
『相手の癖を見ることはできた。』
『でも、影は使わなかった。』
『まだ使うべきじゃないと思った。』
書き終え、筆を置く。
ふと窓の外を見ると、月が静かに輝いていた。
「兄貴。」
いつの間にかシカマルが隣へ座っていた。
『なんだ?』
「今日、勝って嬉しかった?」
突然の質問だった。
カゲマルは少し考える。
『嬉しい……というより安心した。』
「安心?」
『ああ。』
「父さんの教えてくれたことが、ちゃんと身についてるって分かったから。」
シカマルは少し笑った。
「やっぱ兄貴らしい。」
「普通なら勝ったって喜ぶのに。」
『シカマルは?』
「俺?」
少しだけ考えてから答える。
「兄貴が勝ったから嬉しかった。」
その一言に、カゲマルは目を丸くする。
「……それだけ。」
照れ隠しのように立ち上がるシカマル。
「もう寝る。」
部屋を出ていく背中を見送りながら、カゲマルは小さく笑った。
(ありがとう。)
その夜。
月明かりに照らされた兄弟の影が、静かに並ぶ。
二つの影は風に揺れながらも、決して離れることはなかった。
そして翌日。
アカデミーの掲示板に、一枚の紙が貼り出される。
[一週間後、実技総合試験を実施する。]
教室がざわめく。
イルカは笑顔で言った。
「この試験は、卒業まで何度も行われる大切な実力確認だ!」
「しっかり準備してこい!」
その言葉に、生徒たちの表情が引き締まる。
カゲマルは掲示板を見つめながら、小さく拳を握った。
(よし。)
(今の自分が、どこまで通用するのか。)
(確かめよう。)