アカデミーの朝は、いつもより少しだけ張り詰めていた。
今日は実力試験。
基礎体術、手裏剣術、そして実戦を想定した模擬試験。
イルカは教壇の前で大きく頷いた。
「緊張する必要はない!」
「今の自分を知るための試験だ!」
教室には、それぞれ違う空気が流れていた。
ナルトは腕をぶんぶん回しながら気合十分。
キバは早く体を動かしたくて落ち着かない。
チョウジは最後のおにぎりを口へ放り込み、シカマルはすでに眠そうだった。
サスケだけは静かに目を閉じ、集中している。
カゲマルはそんな教室を見回し、小さく息を吐いた。
『みんな、気合い入ってるな。』
「兄貴。」
シカマルが机へ突っ伏したまま話しかける。
「頑張りすぎるなよ。」
『それはお前にも返すよ。』
「俺は適度に頑張る。」
『その適度が低すぎるんだ。』
兄弟のやり取りに、チョウジが思わず笑う。
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校庭。
最初の試験は手裏剣術だった。
「的の中心へ当てることだけを考えろ!」
イルカの合図で、一人ずつ前へ出る。
キバは勢いよく投げる。
二本命中、一本失敗。
ヒナタは丁寧に狙い、安定した結果を残す。
サスケの番になると、空気が変わった。
シュッ。
シュッ。
シュッ。
三本とも中心付近へ突き刺さる。
「すげぇ……。」
歓声が上がる。
イルカも満足そうに頷いた。
「さすがだ。」
次に呼ばれたのは。
「奈良カゲマル。」
カゲマルは静かに前へ出る。
深呼吸。
三本の手裏剣を指先で確かめる。
(狙うんじゃない。)
(力を抜いて。)
(一番自然な軌道を描く。)
『……よし。』
シュッ。
シュッ。
シュッ。
一本目。
中心。
二本目。
中心。
三本目。
一本目のすぐ横へ突き刺さる。
「おぉ!」
イルカの目が少し大きく開いた。
「いい腕だ。」
カゲマルは軽く頭を下げ、列へ戻る。
「兄貴。」
シカマルがぼそりと呟く。
「目立ってる。」
『少しやりすぎたかな。』
「少しじゃない。」
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午後。
最後の試験。
実戦形式。
「今回は二対二だ!」
イルカが名前を読み上げていく。
「奈良カゲマル。」
「奈良シカマル。」
兄弟は顔を見合わせる。
『一緒だ。』
「珍しいな。」
「対戦相手は……。」
イルカは名簿を見る。
「うずまきナルト!」
「犬塚キバ!」
「よっしゃー!」
ナルトが飛び跳ねる。
「絶対勝つってばよ!」
キバも笑う。
「力勝負なら負けねぇ!」
シカマルは深いため息をついた。
「面倒な組み合わせ。」
『でも、面白そうだ。』
その一言に、シカマルは兄を見る。
「兄貴がそう言うなら、本当に面白くなりそうだ。」
試合開始まで、あとわずか。
四人はそれぞれ指定位置へ歩いていく。
ナルトは拳を握り締める。
キバは獣のように笑う。
シカマルは頭を掻きながら歩く。
そしてカゲマルは、静かに二人の背中を見つめていた。
(ナルト。)
(キバ。)
(二人とも真っ直ぐ突っ込んでくるタイプ。)
(なら――。)
『シカマル。』
「ん?」
『少しだけ、俺に付き合ってくれ。』
シカマルは兄の表情を見る。
その顔を見て、小さく笑った。
「了解。」
兄弟の影が、夕日に長く伸びる。
まだ何も起きていない。
それでも。
二人の頭の中では、すでに勝負は始まっていた。