~転生したら奈良シカマルの双子の兄でした~   作:ZAZAI

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第十三話 卒業を前に

「卒業試験まで、一か月。」

 

イルカは教壇に立ち、生徒たちをゆっくりと見回した。

 

教室には、いつもの賑やかさはない。

 

「この一か月は、アカデミー生活の集大成になる。」

 

「知識も、術も、体術も、今まで学んできたすべてを見せてもらう。」

 

その言葉に、生徒たちの表情が引き締まる。

 

「分からないことがあれば、遠慮なく聞け。」

 

「俺たち教師は、そのためにいる。」

 

教室に「はい!」という元気な返事が響いた。

 

だが、一人だけ。

 

ナルトは机に肘をつき、窓の外をぼんやりと眺めていた。

 

その横顔を見て、カゲマルは静かに目を細める。

 

(やっぱり気にしてるか……。)

 

卒業試験。

 

ナルトにとって、それはただの試験ではない。

 

“忍者になれるかどうか”を決める、大きな壁だった。

 

────────

 

放課後。

 

グラウンドでは、多くの生徒が自主練習をしていた。

 

「もう一回!」

 

キバが手裏剣を投げる。

 

「まだ甘い!」

 

離れた場所では、サスケが黙々と印を結び、変化の術を繰り返していた。

 

誰よりも正確に。

 

誰よりも美しく。

 

その姿は、努力そのものだった。

 

「兄貴。」

 

シカマルが木陰へ腰を下ろす。

 

「やらないのか?」

 

カゲマルはサスケたちへ視線を向けたまま答える。

 

「少し休憩。」

 

「珍しい。」

 

「見てるだけでも勉強になるからね。」

 

シカマルは兄の視線を追う。

 

サスケ。

 

ヒナタ。

 

キバ。

 

チョウジ。

 

誰もが、自分の課題と向き合っていた。

 

「兄貴ってさ。」

 

シカマルがぽつりと呟く。

 

「人を見るの、好きだよな。」

 

カゲマルは少し笑う。

 

「相手を知れば、戦い方も分かる。」

 

「でも、それだけじゃない。」

 

シカマルは首を傾げた。

 

「みんな頑張ってるのを見ると、自分も頑張ろうって思える。」

 

その言葉に、シカマルは少しだけ照れくさそうに頭を掻いた。

 

「兄貴らしい。」

 

────────

 

その日の帰り道。

 

夕焼けに染まる演習場で、一人黙々と変化の術を繰り返す少年がいた。

 

ナルトだった。

 

「変化!」

 

白煙が上がる。

 

だが、変化は途中で崩れ、元の姿へ戻ってしまう。

 

「くそっ……!」

 

悔しそうに地面を叩く。

 

何度挑戦しても、思うようにいかない。

 

その様子を、カゲマルは木陰から静かに見ていた。

 

声を掛けようとして、足を止める。

 

(今は……。)

 

(励ますより、最後までやらせよう。)

 

ナルトは立ち上がる。

 

額から流れる汗を腕で拭い、もう一度印を結ぶ。

 

「変化!」

 

失敗。

 

「変化!」

 

失敗。

 

「変化ぁ!」

 

何度倒れても、立ち上がる。

 

その姿を見て、カゲマルは自然と笑みを浮かべていた。

 

「見てたのかってばよ。」

 

突然、ナルトが振り返る。

 

どうやら気付かれていたらしい。

 

カゲマルは苦笑しながら姿を見せる。

 

「邪魔するつもりはなかったんだけど。」

 

「気にすんな!」

 

ナルトは笑った。

 

だが、その笑顔の奥にある焦りは隠せていない。

 

「……なあ。」

 

少しだけ間を置いて、ナルトが口を開く。

 

「俺さ。」

 

「本当に卒業できると思うか?」

 

夕焼けの中で、その言葉だけが静かに響く。

 

カゲマルはすぐには答えなかった。

 

前世の記憶が頭をよぎる。

 

卒業試験。

 

失敗。

 

水木。

 

禁術の巻物。

 

影分身の術。

 

すべて知っている未来だ。

 

だからこそ、軽々しく「大丈夫」とは言えなかった。

 

ナルトは真っ直ぐカゲマルを見つめている。

 

答えを待っていた。

 

カゲマルはゆっくり息を吸い、穏やかに笑う。

 

「卒業できるかは分からない。」

 

ナルトの肩が少しだけ落ちる。

 

「でも。」

 

カゲマルは続けた。

 

「諦めない奴が、一番強い。」

 

「……。」

 

「俺は、お前が諦めるところを見たことがない。」

 

「だから、最後まで信じろ。」

 

ナルトは黙って聞いていた。

 

やがて、小さく笑う。

 

「へへっ。」

 

「ありがとな。」

 

その笑顔は、さっきまでよりずっと自然だった。

 

────────

 

数日後。

 

卒業試験前、最後の授業。

 

イルカは教室の前へ立つ。

 

「いよいよ明日が卒業試験だ。」

 

教室に緊張が走る。

 

「今までやってきたことを信じろ。」

 

「それだけでいい。」

 

誰も言葉を発さない。

 

静かな空気の中、それぞれが胸に想いを抱いていた。

 

サスケは静かに目を閉じる。

 

ヒナタは拳を握る。

 

シカマルは珍しく居眠りをしていない。

 

ナルトは唇を強く結んでいた。

 

そしてカゲマルは、窓の外を見つめる。

 

(いよいよか。)

 

運命が動き始める日。

 

知っている未来。

 

そして、まだ知らない未来。

 

その境界線が、すぐ目の前まで来ていた。

 

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