~転生したら奈良シカマルの双子の兄でした~   作:ZAZAI

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第十六話 守りたいもの

 

夜の帳が木ノ葉隠れを包み込む。

 

火影岩の向こうから昇った月が、静かに森を照らしていた。

 

奈良家の居間。

 

夕食の席には、いつもより重い空気が流れていた。

 

ヨシノは黙って味噌汁をよそい、シカマルは箸を動かしながら兄の様子を気にしている。

 

シカクだけが静かに口を開いた。

 

「さっきの話だが。」

 

カゲマルは箸を止める。

 

「ミズキがおかしかった……それだけじゃないだろ。」

 

父の目は鋭かった。

 

奈良一族特有の、相手の機微を見逃さない視線。

 

隠し通せるとは思っていなかった。

 

「……はい。」

 

カゲマルはゆっくり頷く。

 

「ナルトと何か話していました。」

 

「内容は?」

 

「聞こえたのは途中からです。」

 

嘘ではない。

 

だが、すべてでもない。

 

「卒業できる方法がある、と。」

 

シカクは腕を組み、しばらく考え込んだ。

 

「…父さん。」

 

「何だ。」

 

「嫌な予感がするんだ。」

 

その一言だけだった。

 

しかし、その声には普段の冷静さとは違う切迫感があった。

 

シカクは息子を見つめる。

 

未来を知ることなど知らない。

 

それでも、幼い頃から見てきた長男の勘は、不思議なほど外れないことを知っていた。

 

「……分かった。」

 

シカクは静かに立ち上がる。

 

「俺は火影様のところへ行く。」

 

「お前たちは家にいろ。」

 

「はい。」

 

そう言い残し、シカクは一瞬で姿を消した。

 

玄関に残った風だけが、その速さを物語っていた。

 

────────

 

「兄貴。」

 

シカマルがぽつりと呟く。

 

「本当に家にいるのか?」

 

カゲマルは少しだけ笑った。

 

「……シカマル。」

 

「ん?」

 

「父さんには内緒だぞ。」

 

シカマルは兄の顔を見て、大きくため息をつく。

 

「やっぱり行くんだな。」

 

「止めるか?」

 

「止めても行くだろ。」

 

「ああ。」

 

「だったら無駄だ。」

 

そう言うと、シカマルは立ち上がり、部屋の隅に置いてあった忍具袋を兄へ放り投げた。

 

カゲマルは慌てて受け取る。

 

「これ。」

 

「忘れるな。」

 

「……ありがとう。」

 

「勘違いするな。」

 

シカマルは照れ隠しのようにそっぽを向いた。

 

「兄貴が怪我したら、母ちゃんがうるさいだけだ。」

 

「ははっ。」

 

自然と笑みがこぼれる。

 

やはり、自分には最高の弟がいる。

 

────────

 

森へ入ると、夜の静けさが辺りを支配していた。

 

虫の声。

 

木々を揺らす風。

 

その中を、カゲマルは音を立てないよう慎重に進む。

 

(ナルト……。)

 

(急げ。)

 

やがて、森の奥から微かに人の気配を感じ取る。

 

大きな木の枝へ飛び乗り、葉の隙間から下を覗き込む。

 

そこには。

 

巨大な巻物を背負い、必死に息を切らすナルトの姿があった。

 

「はぁ……はぁ……。」

 

額には汗。

 

服は泥だらけ。

 

それでも、その表情には希望があった。

 

「これで卒業できるってばよ……。」

 

その姿を見て、カゲマルは胸が締め付けられる。

 

利用されていることも知らず。

 

ただ忍者になりたい一心で走ってきた。

 

その時だった。

 

「ナルト!」

 

聞き慣れた声が森に響く。

 

イルカだった。

 

ナルトは驚いて振り返る。

 

「イルカ先生!」

 

木の上からその様子を見守るカゲマルは、静かに息を吐いた。

 

(間に合った……。)

 

だが。

 

その安心は一瞬で消える。

 

「イルカぁぁぁ!」

 

別の方向から響く怒号。

 

ミズキだった。

 

巨大な風魔手裏剣が月明かりを切り裂き、一直線にイルカへ襲いかかる。

 

「先生!」

 

ナルトの叫びが森へ響く。

 

次の瞬間。

 

ドスッ――。

 

鈍い音がした。

 

イルカの肩へ、巨大な手裏剣が深々と突き刺さる。

 

「ぐっ……!」

 

膝をつくイルカ。

 

ナルトの顔から血の気が引く。

 

木の上で見ていたカゲマルも、思わず拳を握り締めた。

 

(始まった……。)

 

ここから先は、知っている未来。

 

だが。

 

その未来の中に、自分はいなかった。

 

カゲマルはゆっくりと忍具袋へ手を伸ばす。

 

「……。」

 

助けるか。

 

見守るか。

 

ナルトの成長を信じるか。

 

それとも。

 

自分にしかできないことをするか。

 

月明かりが、静かに少年の横顔を照らしていた。

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