~転生したら奈良シカマルの双子の兄でした~   作:ZAZAI

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第二十一話 担当上忍

 

教室の扉の前に、一人の男が立っていた。

 

額当てを頭に巻き、口元には一本の千本。

 

どこか気だるそうな目。

 

やる気がないようにも見えるが、その立ち姿には妙な隙のなさがあった。

 

カゲマルは男の顔を見た瞬間、思わず目を見開いた。

 

(――不知火ゲンマ)

 

知らない人物ではない。

 

むしろ、よく知っている。

 

原作にも登場していた木ノ葉の忍。

 

特別上忍、不知火ゲンマ。

 

中忍試験本戦では審判を務め、木ノ葉崩しでは砂隠れの上忍・バキとも刃を交えた実力者。

 

そして――。

 

(確か、四代目火影の護衛小隊にもいた)

 

並足ライドウ、たたみイワシと共に、四代目から飛雷神の術を応用した術を教わっていたはずだ。

 

そんな人物が。

 

なぜ。

 

(俺たちの担当?)

 

ゲンマは教室を見回すと、口に咥えた千本を僅かに動かした。

 

「第十一班」

 

カゲマル、レン、スズの視線が集まる。

 

「奈良カゲマル。朝倉レン。水無瀬スズだな」

 

三人の名前を確認する。

 

「ついてこい」

 

それだけ言うと、さっさと歩き出した。

 

レンが目を瞬かせる。

 

「……それだけ?」

 

スズが立ち上がる。

 

「行くみたいね」

 

「いや、それは分かるけどさ!」

 

レンは慌てて荷物を掴んだ。

 

「普通もっとこう、『今日からお前たちの先生だ!』とかないのかよ!」

 

廊下からゲンマの声が返ってくる。

 

「聞こえてるぞ」

 

レンの動きが止まった。

 

「……耳いいな」

 

スズが横を通り過ぎる。

 

「あなたの声が大きいだけ」

 

「またそれ!?」

 

カゲマルは笑いながら二人の後を追った。

 

こうして。

 

第十一班の最初の一日が始まった。

 

 

----------------------

 

 

向かった先は、アカデミーから少し離れた演習場だった。

 

木々に囲まれた広場。

 

中央には三本の丸太。

 

ゲンマはその一本へ背中を預けると、三人を見る。

 

「適当に座れ」

 

三人は地面へ腰を下ろした。

 

ゲンマだけは立ったままだ。

 

しばらく誰も喋らない。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

レンが耐えきれなくなった。

 

「あの」

 

「なんだ」

 

「自己紹介とかしないんですか?」

 

「今からする」

 

「だったら早くしてくださいよ!」

 

ゲンマは千本を揺らす。

 

「せっかちだな、お前」

 

「よく言われます!」

 

「だろうな」

 

すでに扱いを理解され始めている。

 

カゲマルは笑いを堪えた。

 

ゲンマが三人を見渡す。

 

「オレは不知火ゲンマ。階級は特別上忍」

 

レンが首を傾げた。

 

「特別上忍?」

 

「上忍じゃないんですか?」

 

今度はスズだった。

 

「違う」

 

ゲンマはあっさり答える。

 

「特定の分野で上忍級の能力を認められた忍が特別上忍だ」

 

「じゃあ、なんで下忍班の先生を?」

 

スズの疑問はもっともだった。

 

ゲンマは少しだけ面倒そうな顔をする。

 

「今年は上忍の長期任務がおおくてな」

 

一拍。

 

「単純に上忍が足りない」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

あまりにも身も蓋もない理由だった。

 

レンが思わず声を上げる。

 

「人手不足!?」

 

「簡単に言えばな」

 

「そんな理由で俺たち決まったんですか!?」

 

「安心しろ」

 

ゲンマは淡々と返す。

 

「俺も最初は断った」

 

「安心できない!」

 

カゲマルがとうとう吹き出した。

 

スズも僅かに口元を緩めている。

 

ゲンマはそんな三人を眺めながら続けた。

 

「まあ、事情はそれだけじゃない」

 

三人が顔を上げる。

 

「お前らの資料を見せてもらった」

 

まず、レンを見る。

 

「朝倉レン」

 

「はい!」

 

「体術は同期でも上位。忍術・幻術は並。 座学は論外」

 

「……最後いります?」

 

「事実だ」

 

続いてスズ。

 

「水無瀬スズ」

 

「はい」

 

「索敵訓練の成績が高い。特に聴覚。反面、正面戦闘はまだ弱い」

 

スズは素直に頷いた。

 

「自覚してます」

 

最後。

 

ゲンマの視線がカゲマルへ向く。

 

「奈良カゲマル」

 

その声だけ、僅かに間があった。

 

「座学、体術、忍術。全部上位」

 

レンが横を見る。

 

「改めて聞くと嫌な奴だな」

 

「俺に言うなよ」

 

「それと――」

 

ゲンマが続ける。

 

「ミズキの件」

 

空気が少し変わった。

 

カゲマルの表情から笑みが消える。

 

「中忍相手に勝とうとせず、時間稼ぎに徹した」

 

ゲンマは千本を指先で摘まみ、口から外した。

 

初めて、その口元がはっきり見える。

 

「判断としては悪くない」

 

そして。

 

「行動としては馬鹿だ」

 

「……はい」

 

即答した。

 

反論できない。

 

「自覚があるならいい」

 

ゲンマは再び千本を咥える。

 

「で」

 

三人を見る。

 

「俺から見たお前らの第一印象だ」

 

レンが身を乗り出した。

 

ゲンマはまずレンを指差す。

 

「突っ込みそう」

 

「まだ何もしてないですよ!?」

 

次にスズ。

 

「考えすぎて動くのが遅そう」

 

スズの眉が僅かに動く。

 

「……否定はしません」

 

最後にカゲマル。

 

ゲンマは少しだけ目を細めた。

 

「一番考えてそうに見えて。

 一番無茶しそう」

 

カゲマルは言葉に詰まった。

 

レンが吹き出す。

 

「当たってんじゃん!」

 

「うるさい」

 

「お前が言うと説得力ないな」

 

スズまで追撃してくる。

 

「二対一は卑怯じゃない?」

 

初めて。

 

第十一班の間に自然な笑いが生まれた。

 

ゲンマはそれを眺めていた。

 

悪くない。

 

少なくとも、会話すらできない三人ではなさそうだ。

 

だが。

 

仲がいいことと、忍として組めることは別の話だった。

 

「さて」

 

ゲンマが丸太から背中を離す。

 

空気が変わった。

 

ほんの少し。

 

それだけなのに。

 

三人の笑みが消えた。

 

「資料だけじゃ分からないこともある」

 

レンが立ち上がる。

 

「おっ」

 

その顔が嬉しそうに変わった。

 

「やります?」

 

「話が早くて助かる」

 

ゲンマは演習場の中央へ歩いていく。

 

「軽く手合わせする」

 

カゲマルも立ち上がった。

 

「三人でですか?」

 

「ああ」

 

「先生一人に、俺たち三人?」

 

レンが拳を鳴らす。

 

「いいんすか?」

 

ゲンマが振り返る。

 

「何が?」

 

「怪我しても知りませんよ?」

 

沈黙。

 

スズがレンから一歩離れた。

 

カゲマルも一歩離れる。

 

「なんだよ!?」

 

「いや」

 

カゲマルは苦笑する。

 

「それは言わない方がよかったかなって」

 

「なんでだよ!」

 

ゲンマは特に怒った様子もない。

 

むしろ。

 

僅かに笑っていた。

 

「元気なのはいいことだ」

 

千本が上下する。

 

「ルールは簡単」

 

ゲンマが自分の腰を軽く叩いた。

 

忍具袋。

 

「俺からこれを取れ」

 

「中身は?」

 

スズが尋ねる。

 

「どうでもいい」

 

「取れれば合格?」

 

「合格も不合格もない」

 

ゲンマは肩をすくめる。

 

「今日はお前らが何をする奴なのか見たいだけだ」

 

そして。

 

指を一本立てる。

 

「制限時間は一時間」

 

レンが前へ出る。

 

「十分で取ります!」

 

スズがため息をつく。

 

「どうして自分で難易度を上げるの」

 

「気合いだよ!」

 

「意味が分からない」

 

二人のやり取りを横目に、カゲマルはゲンマを観察していた。

 

(不知火ゲンマ)

 

知識としてなら知っている。

 

実力者だ。

 

自分たち三人がまともに戦って勝てる相手ではない。

 

そして何より――。

 

(隙がない)

 

自然に立っているだけ。

 

構えすら取っていない。

 

なのに、どこから攻めても対応される気がする。

 

カゲマルは小さく息を吐いた。

 

(勝つ必要はない)

 

目的は忍具袋。

 

なら。

 

「レン」

 

「ん?」

 

「最初、好きにやってみて」

 

レンの目が輝いた。

 

「いいのか!?」

 

「うん」

 

「分かった!」

 

次の瞬間。

 

レンが地面を蹴った。

 

「行きます!」

 

速い。

 

一直線にゲンマへ迫る。

 

右拳。

 

ゲンマは動かない。

 

レンの拳が顔面へ届く――。

 

直前。

 

ゲンマの首が僅かに傾いた。

 

拳が空を切る。

 

「え?」

 

その瞬間には、ゲンマの足がレンの足首へ引っ掛かっていた。

 

「うおっ!?」

 

天地が逆転する。

 

ドサッ!

 

「いってぇ!」

 

ゲンマは一歩も移動していなかった。

 

「真っ直ぐすぎ」

 

「もう一回!」

 

レンが跳ね起きる。

 

今度はフェイント。

 

右から入ると見せて左。

 

蹴り。

 

拳。

 

さらに足払い。

 

だが。

 

すべて。

 

最小限の動きでかわされる。

 

「くそっ!」

 

それでもレンは止まらない。

 

(なるほど)

 

カゲマルは戦いを見ながら考える。

 

(レンの強みはやっぱり反応速度だ)

 

一度目より二度目。

 

二度目より三度目。

 

ゲンマの動きへ少しずつ対応し始めている。

 

技術では圧倒的に負けている。

 

それでも。

 

食らいつく。

 

(なら――)

 

「スズ」

 

隣を見る。

 

「聞こえてる」

 

スズは目を閉じていた。

 

「何が?」

 

「先生の足音」

 

小さく答える。

 

「ほとんどしない。…でも」

 

「でも?」

 

「ゼロじゃない」

 

スズが目を開く。

 

「右足に重心を置く直前、草が擦れる」

 

カゲマルの口元が上がる。

 

「十分」

 

「何か思いついた?」

 

「少しね」

 

二人の視線がレンへ向く。

 

「レン!」

 

カゲマルが声を上げる。

 

「一回下がって!」

 

「分かった!」

 

レンは迷わなかった。

 

すぐに距離を取る。

 

ゲンマの眉が僅かに動いた。

 

(指示には素直か)

 

勢いだけのタイプではない。

 

その評価を少しだけ修正する。

 

三人が初めて横に並ぶ。

 

カゲマルが小声で話す。

 

「スズはゲンマ先生の動きを聞いて」

 

「分かった」

 

「レンは俺が合図したら突っ込んで」

 

「任せろ」

 

「俺は――」

 

カゲマルが足元を見る。

 

昼下がりの陽射し。

 

影は十分に伸びている。

 

「動きを止める」

 

ゲンマは少し離れた場所から三人を眺めていた。

 

指示を出したのはカゲマル。

 

即座に従ったレン。

 

情報を拾うスズ。

 

まだ出会って間もない。

 

なのに。

 

すでに役割らしきものが生まれ始めている。

 

「……なるほどな」

 

千本を口の中で転がす。

 

少しだけ。

 

試してみたくなった。

 

「相談は終わったか?」

 

三人が構える。

 

カゲマルが笑った。

 

「待ってくれてたんですか?」

 

「初日だからな」

 

「優しいですね」

 

「明日からは待たない」

 

「それは怖い」

 

ゲンマの目が僅かに細くなる。

 

「来い」

 

その瞬間。

 

スズが目を閉じた。

 

レンが身体を沈める。

 

そしてカゲマルの影が――。

 

地面を這った。

 

三人が初めて。

 

第十一班として動き始めた。

班分けについて。カゲマルがどの班にするか迷ってます。皆さんの意見をお聞かせください

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