~転生したら奈良シカマルの双子の兄でした~   作:ZAZAI

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ナルトや皆の口調がわからなくなってきました…
書いておきながら違和感が。
お手数ですが、修正が必要そうなら教えください。


第三十一話 大切な人

 

頬に冷たい感触が触れた。

 

「……ん」

 

ナルトが薄く目を開ける。

 

最初に見えたのは、木々の隙間から差し込む朝の光だった。

 

鳥の声。

 

葉を揺らす風。

 

それから、自分の顔を覗き込んでいる人影。

 

「気がつきましたか?」

 

柔らかな声だった。

 

ナルトは何度か瞬きをする。

 

長い黒髪。

 

白い肌。

 

穏やかな顔。

 

自分とそう変わらない年頃に見える。

 

「……誰だ?」

 

「よかった。なかなか起きないから心配しました」

 

その人物は微笑んだ。

 

ナルトは身体を起こし、辺りを見る。

 

昨日と同じ森。

 

木登りの修行を続けていたはずだった。

 

「俺……寝てた?」

 

「はい。ぐっすりと」

 

「マジかよ!」

 

勢いよく立ち上がろうとして、身体がふらつく。

 

「うおっ」

 

「無理をしない方がいいですよ」

 

「だ、大丈夫だってばよ!」

 

ナルトは慌てて踏ん張った。

 

ここで倒れたら格好悪い。

 

目の前の少女――少なくともナルトにはそう見えていた――は、小さく笑う。

 

その手には籠があった。中には見慣れない草や葉が入っている。

 

「何してんだ?」

 

「薬草を集めています」

 

「薬草?」

 

「はい。大切な人のために」

 

ナルトが首を傾げる。

 

「病気なのか?」

 

「少し怪我をしていて」

 

白はそう答え、近くに生えていた草へ手を伸ばした。

 

ナルトは何となくその姿を眺める。

 

知らない相手。

 

ただ、それほど警戒する気にはならなかった。

 

「お前、この辺に住んでんの?」

 

「そうですね。この辺りには詳しいです」

 

「へぇ」

 

ナルトもしゃがみ込む。

 

白が採っている草を見るが、どれも同じ雑草にしか見えない。

 

「これ全部薬になるのか?」

 

「全部ではありません」

 

「じゃあどうやって見分けんだ?」

 

「葉の形や匂い、茎の色を見るんです」

 

「……分かんねぇ」

 

「慣れれば分かりますよ」

 

白が微笑む。

 

その表情を見て、ナルトはふと昨日のことを思い出した。

 

木登り。

 

サスケ。

 

レン。

 

カゲマル。

 

スズ。

 

サクラは最初から成功して、自分だけが最後まで残った。

 

「……俺も早く強くなんねぇとな」

 

白の手が止まる。

 

「強く?」

 

「俺、忍者なんだ」

 

「そうなんですか」

 

「見えねぇ?」

 

「少しだけ」

 

「少しだけ!?」

 

ナルトが額当てを指差す。

 

「ほら! 木ノ葉の忍だってばよ!」

 

「本当ですね」

 

「今気づいたのかよ!」

 

白はくすりと笑った。

 

ナルトは少し不満そうだったが、すぐに胸を張る。

 

「俺はいつか火影になるんだ!」

 

「火影?」

 

「木ノ葉で一番すげぇ忍者だ!」

 

白はナルトを見る。

 

冗談を言っている顔ではない。

 

本気だ。

 

「だから、こんな修行くらいできねぇとダメなんだ」

 

ナルトは自分が登っていた木を見上げる。

 

昨日、何度挑戦したか覚えていない。

 

落ちて。

 

登って。

 

また落ちた。

 

それでも頂上には届かなかった。

 

白はそんなナルトを静かに見ていた。

 

「あなたには、大切な人がいますか?」

 

「え?」

 

突然の問いだった。

 

「大切な人」

 

ナルトは黙る。

 

頭に浮かぶ。

 

イルカ。

 

三代目のじいちゃん。

 

サクラちゃん。

 

サスケ。

 

カカシ先生。

 

そして。

 

昔から自分を普通に扱ってくれた、面倒くさそうな顔をした双子。

 

シカマル。

 

その隣で、いつも少しだけ周りを見ているカゲマル。

 

気がつけば。

 

一人ではなかった。

 

昔よりずっと。

 

「……いる」

 

ナルトは答えた。

 

白が微笑む。

 

「人は、大切な何かを守りたいと思った時、本当に強くなれるんです」

 

ナルトは白を見る。

 

その言葉は、不思議と耳に残った。

 

「お前も?」

 

「はい」

 

白は迷わず答えた。

 

「僕にも、大切な人がいます」

 

穏やかな笑顔。

 

だが。

 

その奥に何があるのか。

 

今のナルトには分からない。

 

「そっか」

 

ナルトは立ち上がる。

 

今度はふらつかなかった。

 

「じゃあ俺、修行戻る!」

 

「もう少し休んだ方がいいのでは?」

 

「寝たから大丈夫だってばよ!」

 

数歩走って。

 

止まる。

 

振り返った。

 

「ありがとな!」

 

白は笑って答えた。

 

「頑張ってください」

 

「おう!」

 

ナルトが森の中へ消えていく。

 

その背中を。

 

白はしばらく見ていた。

 

やがて薬草の籠へ視線を落とす。

 

「……大切な人、か」

 

小さな呟きは。

 

誰にも聞かれなかった。

 

────────

 

同じ頃。

 

タズナの家。

 

「ナルトがいない?」

 

朝食の席で、カゲマルはサクラを見た。

 

「昨日、結局戻ってこなかったみたい」

 

「はぁ!?」

 

レンが椀を持ったまま声を上げる。

 

「森で寝たのか!?」

 

「多分ね」

 

サクラがため息をつく。

 

「カカシ先生は『死んではないでしょ』って」

 

「軽くない?」

 

レンが言う。

 

隣でゲンマが味噌汁を飲む。

 

「気配は確認してる」

 

「先生、知ってたんですか?」

 

「ああ」

 

「じゃあ連れて帰ればよかったじゃないですか!」

 

「本人がやるって言って残ったんだろ」

 

「それで森で寝るまでやらせるんですか?」

 

「限界覚えるのも修行だ」

 

レンは納得していない顔をした。

 

「先生って時々すごい忍者っぽいこと言いますね」

 

「時々?」

 

ゲンマの目が細くなる。

 

「毎日です」

 

訂正が早かった。

 

スズが淡々と朝食を食べながら言う。

 

「でも、ナルトなら起きたらまた木登りしてそう」

 

「ありそう」

 

カゲマルも頷いた。

 

心配していないわけではない。

 

だが。

 

知っている。

 

この頃。

 

ナルトは白と出会う。

 

原作でも印象深かった場面。

 

大切な人を守る時、人は本当に強くなれる。

 

白の言葉は、この先のナルトに大きく残る。

 

(今頃、会ってるのかな)

 

そう考えたところで。

 

「兄貴じゃないんだから、余計なこと考えなくていいだろ」

 

頭の中にシカマルの声が浮かんだ。

 

実際に言われたわけではない。

 

でも、言いそうだった。

 

カゲマルは少し笑う。

 

「何?」

 

スズが気づく。

 

「いや、弟ならこう言うだろうなって」

 

「弟?」

 

「双子の弟」

 

レンが食いついた。

 

「そういやカゲマル、双子なんだよな」

 

「うん」

 

「似てんの?」

 

カゲマルは少し考える。

 

顔立ちは似ている。

 

髪型も奈良一族らしい。

 

性格は――。

 

「似てるところもあるかな」

 

「どっちが強い?」

 

「さあ」

 

「戦ったことないの?」

 

「あるよ」

 

「どっちが勝った?」

 

「覚えてない」

 

「絶対覚えてるだろ!」

 

カゲマルが笑う。

 

「秘密」

 

レンが不満そうに唸った。

 

スズが聞く。

 

「仲いい?」

 

「うん」

 

そこだけは即答だった。

 

スズは少しだけ目を細める。

 

「即答」

 

「そこは迷わないから」

 

「ふーん」

 

何となく。

 

さっき考えていた言葉と繋がる。

 

大切な人。

 

自分なら。

 

誰が浮かぶだろう。

 

父。

 

母。

 

シカマル。

 

チョウジやいの。

 

アスマ。

 

ナルト。

 

そして今は。

 

目の前で朝食を食べている二人も。

 

少しずつ。

 

そこへ入ってきているのかもしれない。

 

「カゲマル」

 

レンが呼ぶ。

 

「ん?」

 

「その漬物食わないならくれ」

 

「……今ちょっといいこと考えてたのに」

 

「漬物の方が大事だろ」

 

「何でだよ」

 

「食べ物粗末にするなって親に教わらなかった?」

 

「食べるよ」

 

「じゃあいい」

 

スズが小さく笑った。

 

────────

 

朝食の後。

 

タズナは橋へ向かう準備を始めていた。

 

カカシはまだ完全には回復していない。

 

昨日よりは顔色がいいが、戦闘できる状態には程遠い。

 

「今日も修行?」

 

レンが尋ねる。

 

ゲンマは首を横に振った。

 

「午前はな」

 

「午前は?」

 

「任務を忘れるな」

 

空気が少し変わる。

 

ゲンマはタズナを見る。

 

「俺はタズナさんと橋へ行く」

 

カゲマルが顔を上げる。

 

「護衛ですか」

 

「ああ。再不斬がすぐ動けない可能性が高いとはいえ、確定じゃない」

 

それは当然だった。

 

相手が負傷しているという推測だけで、依頼人を無防備にはできない。

 

「第十一班も一緒ですか?」

 

「いや」

 

ゲンマの答えに、レンが意外そうな顔をする。

 

「違うんですか?」

 

「お前らはここに残れ」

 

「ここ?」

 

「家の護衛だ」

 

三人が黙る。

 

ゲンマは続ける。

 

「ガトーが雇ってるのは再不斬だけとは限らない。忍じゃなくても、手下はいる」

 

カゲマルは原作を思い出す。

 

ガトーの部下。

 

そして。

 

ツナミとイナリ。

 

最終的には、ここも安全ではない。

 

「カカシが動けない以上、戦力を一か所に固める必要はない。俺がタズナさんについて橋へ行く。第七班はカカシの指示に従え。第十一班は午前中、この家と周辺を警戒」

 

レンの表情が引き締まる。

 

昨日までの修行とは違う。

 

正式な護衛任務。

 

「敵が来たら?」

 

レンが聞く。

 

「相手次第だ」

 

「相手次第?」

 

「一般のごろつきなら追い払え。忍なら戦う前に知らせろ」

 

「どうやって?」

 

ゲンマが小さな筒を投げる。

 

カゲマルが受け取った。

 

信号弾。

 

「赤なら敵襲。上げたら俺が戻る」

 

「橋から間に合いますか?」

 

スズが聞く。

 

「間に合わせる」

 

迷いのない返答。

 

スズは頷いた。

 

ゲンマは三人を見る。

 

「勘違いするなよ。戦うことが任務じゃない」

 

昨日までより少し低い声。

 

「守ることが任務だ」

 

カゲマルは信号弾を握る。

 

「はい」

 

レンとスズも続いた。

 

「はい!」

 

「分かりました」

 

ゲンマはタズナと家を出ていく。

 

三人はその背中を見送った。

 

少しして。

 

レンが口を開く。

 

「……護衛か」

 

「緊張する?」

 

カゲマルが聞く。

 

「ちょっと」

 

素直だった。

 

「草むしりとか犬とは違うし」

 

「犬も大変だったけどね」

 

スズが言う。

 

「大型犬な」

 

「縄離したのレンだけど」

 

「もう言うなよ!」

 

カゲマルは笑った。

 

だが。

 

胸の奥には。

 

小さな緊張がある。

 

知っている。

 

この家が。

 

後に襲われることを。

 

ただし。

 

それは今ではない。

 

――本当に?

 

カゲマルは一瞬、思考を止めた。

 

原作では。

 

そうだった。

 

でも。

 

今はゲンマがいる。

 

第十一班がいる。

 

再不斬の生存にも早く気づいた。

 

なら。

 

他の出来事まで同じ時期に起きる保証はない。

 

父の言葉が蘇る。

 

頭の中で答えを作りすぎるな。

 

現場で見たものを信じろ。

 

カゲマルは息を吐く。

 

「スズ」

 

「何?」

 

「周囲の音、確認してもらえる?」

 

スズはすぐに頷いた。

 

目を閉じる。

 

風。

 

木々。

 

遠くの波。

 

家の中を歩くツナミ。

 

外で何かをしているイナリ。

 

道を通る人間。

 

しばらくして。

 

目を開けた。

 

「今のところ変な音はない」

 

「分かった」

 

「レン」

 

「おう」

 

「家の裏側見てきて。俺は正面と周辺を見る」

 

レンが一歩踏み出し。

 

止まる。

 

「一人で行っていいのか?」

 

カゲマルも一瞬止まった。

 

以前なら。

 

普通に行かせていたかもしれない。

 

でも。

 

第十一班が最初に教わったこと。

 

三人で戦うということ。

 

「見える範囲まで」

 

カゲマルが言う。

 

「何かあったらすぐ呼んで」

 

「了解」

 

レンが走っていく。

 

スズがカゲマルを見る。

 

「今、一人で全部やろうとした?」

 

「……ちょっとだけ」

 

「先生に言う」

 

「やめて」

 

「じゃあ次から気をつけて」

 

「はい」

 

立場が逆な気がする。

 

だが。

 

悪くない。

 

カゲマルは周囲を見る。

 

大切な人を守る時。

 

人は本当に強くなれる。

 

おそらく今。

 

森のどこかで。

 

ナルトがその言葉を聞いている。

 

カゲマルはまだ知らないふりをして。

 

目の前にいる仲間と。

 

守るべき家へ意識を向けた。

 

────────

 

昼前。

 

「ただいまだってばよ!」

 

遠くからでも分かる声が聞こえた。

 

スズが顔を上げる。

 

「来た」

 

レンが聞く。

 

「誰?」

 

「聞かなくても分かるでしょ」

 

数秒後。

 

森の方からナルトが走ってくる。

 

服には土。

 

髪には葉。

 

だが。

 

妙に元気だった。

 

「お前、どこ行ってたんだよ!」

 

レンが言う。

 

「修行!」

 

「森で寝てただろ!」

 

「ちょっと休憩しただけだってばよ!」

 

「一晩!?」

 

「細かいこと気にすんな!」

 

レンがゲンマの口調を真似る。

 

「細かくねぇ!」

 

ナルトは笑いながら家へ入ろうとする。

 

その途中。

 

カゲマルの横で止まった。

 

「カゲマル」

 

「ん?」

 

ナルトは少しだけ考えるような顔をした。

 

「大切な奴っているか?」

 

唐突だった。

 

でも。

 

カゲマルには。

 

その質問がどこから来たのか分かっていた。

 

少し考える。

 

答えはいくつも浮かぶ。

 

「いるよ」

 

「やっぱそうか」

 

ナルトが笑う。

 

「俺もいる」

 

「うん」

 

「何だよ。誰か聞かねぇの?」

 

「聞かなくてもいいかな」

 

「なんで?」

 

カゲマルは少し笑った。

 

「ナルトの顔見れば分かるから」

 

「何だそれ」

 

「いい意味で」

 

ナルトは納得していないようだった。

 

それでも。

 

どこか嬉しそうに。

 

「じゃあ修行行ってくる!」

 

また走り出す。

 

「飯は!?」

 

ツナミが家の中から叫ぶ。

 

ナルトが急停止した。

 

「食う!」

 

方向転換。

 

全速力で家へ入る。

 

レンが呆然と見る。

 

「……何なんだ、あいつ」

 

スズが答える。

 

「元気」

 

「それは分かる」

 

カゲマルは笑った。

 

森の向こうへ視線を向ける。

 

白。

 

今はまだ。

 

敵として会っていない。

 

ナルトも。

 

あの優しい少年が。

 

再不斬のために命を懸ける忍だとは知らない。

 

そして。

 

カゲマルは知っている。

 

この先。

 

二人はもう一度出会う。

 

今度は。

 

敵として。

 

その時。

 

自分はどこにいるのか。

 

原作通りなら。

 

第十一班は存在しない。

 

答えはない。

 

だからこそ。

 

今は決めつけない。

 

カゲマルは視線を戻した。

 

家の中から。

 

ナルトとレンが昼飯を取り合う声が聞こえてくる。

 

スズがため息をついた。

 

「護衛中なんだけど」

 

「平和ってことで」

 

「油断は駄目」

 

「分かってる」

 

カゲマルは笑いながらも。

 

周囲への意識だけは切らなかった。

 

再不斬が動き出すまで

残された時間は決して長くない。

 

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