今週は更新頑張ります。
「いただきます!」
ナルトの声が食卓に響いた。
森から戻ってきた直後とは思えない勢いで箸を動かし、山盛りの飯を口へ運んでいく。
「おかわり!」
「もう?」
ツナミが目を丸くする。
「修行したから腹減ったってばよ!」
「修行っていうか、途中で寝てたんでしょ」
サクラの一言で、ナルトの箸が止まった。
「……何で知ってんだ?」
「帰ってこなかったら分かるわよ!」
「ちゃんと朝から修行した!」
「朝から?」
ナルトの脳裏に白の顔が浮かぶ。少しだけ間が空いた。
「……まあ、色々あったんだってばよ」
「何よ、色々って」
「色々は色々だ!」
「怪しいわね」
二人のやり取りを横目に、レンも負けじと飯をかき込んでいた。
「おかわりお願いします!」
「レンも!?」
ツナミが慌ただしく立ち上がる。
スズが呆れたように二人を見る。
「何で張り合ってるの」
「張り合ってない」
「張り合ってねぇってばよ!」
また声が重なる。
スズはカゲマルを見る。
「似てる」
「否定できなくなってきた」
「おい!」
「カゲマルまで!?」
騒がしい昼食だった。
それでも、昨日までとは少し違う。
再不斬、ガトー、依頼内容の虚偽。この国が置かれている状況を知った今、危険が消えたわけではない。
だが、だからこそなのかもしれない。
食事の時間くらいは、普通に笑える方がいい。
カゲマルがそう思っていると、部屋の奥から声がした。
「ずいぶん楽しそうだねぇ」
全員が振り返る。
壁へ手をつきながら、カカシが立っていた。
「カカシ先生!」
サクラが真っ先に立ち上がる。
「もう大丈夫なんですか!?」
「昨日よりはね」
歩き方はまだ少し重い。だが、顔色は明らかに良くなっていた。
ナルトも椀を置いて立ち上がる。
「じゃあもう戦えるのか!?」
「無理」
「即答!?」
「歩けるのと戦えるのは別だからね。あと数日は欲しいかな」
カゲマルはその言葉を聞きながら、原作の流れを思い出す。
再不斬も同じ。今頃はまだ完全には回復していないはずだ。
ただ、こちらが早めに生存へ気づいたことで、原作より準備する時間を明確に意識できている。その差が何を生むのかは、まだ分からない。
「そういえば」
カカシがナルトを見る。
「修行は?」
ナルトの顔が引きつった。
「……もうちょっと」
「サスケはかなり上まで行ってたけど」
「今日絶対追いつく!」
食事を再開したナルトの速度がさらに上がる。
サスケが横目で見る。
「食いすぎて動けなくなるぞ」
「お前にだけは負けねぇ!」
「勝手にしろ」
そう言いながら、サスケも箸を少し速めた。
カゲマルは笑う。
この二人は、本当に分かりやすい。
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午後。
再び森へ入った六人は、それぞれの課題へ戻っていた。
ナルトとサスケは木登り。レンは走った状態でのチャクラ維持。スズは木々を移動しながら周囲の音を拾う訓練。
そしてカゲマルは、昨日思いついた課題に挑戦していた。
木の幹へ立ち、足裏へ一定量のチャクラを流し続ける。ここまでは、もうできる。
問題はここから。
印を組む。
「影真似の術」
足元から伸びた影が、木の幹を伝っていく。
一メートル、二メートル。
昨日はこの辺りで足元の制御が崩れた。今日はまだ保っている。
(足だけに意識を向けるな)
影、足裏、身体の重心。
全部を別々に考えれば追いつかない。一つの動作としてまとめる。
影がさらに伸びる。
三メートル、四メートル。
「……っ」
足が僅かに滑った。
影が揺らぐ。
カゲマルはすぐ術を解き、木を蹴って地面へ降りた。
「昨日より伸びた」
近くで見ていたスズが言う。
「でも失敗」
「昨日よりは成功」
「スズ、たまに前向きだよね」
「たまに?」
「いや、何でもない」
少し離れた場所でゲンマが見ている。
「奈良」
「はい」
「今、何に失敗した?」
カゲマルは考える。
「影を伸ばす方に意識が寄りすぎました」
「それだけか?」
「……足元のチャクラが弱くなった」
「何で?」
もう一度考える。
影真似を維持する。木に立つ。
二つの術を同時に使っているように感じていた。
だが。
「チャクラを別々に考えてるから?」
ゲンマが千本を口元で動かした。
「俺に聞くな」
「質問したの先生ですよね?」
「答えまで教えるとは言ってない」
相変わらずだった。
カゲマルは自分の手を見る。
チャクラは一つ。それを足裏へ流しながら、陰遁を練り、影へ作用させる。
別々のことをしている。でも、使っているのは自分のチャクラだ。
「配分……」
小さく呟く。
ゲンマは何も言わない。その反応で、完全に外れてはいないと分かった。
カゲマルは再び木へ向かった。
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「右」
スズの声。
レンが反射的に左へ跳んだ。
次の瞬間、右側から木の実が飛んでくる。
「危なっ!」
避けた。だが着地した瞬間、足裏のチャクラが強すぎた。
バキッ。
木の表皮が弾ける。
「うおっ!」
身体が離れかける。
レンは咄嗟に枝を掴み、ぶら下がった。
下からゲンマが見上げる。
「今ので死亡」
「木の実で!?」
「実戦なら木の実じゃない」
「……確かに」
レンが枝へ這い上がる。
少し離れた木に立つスズは、目を閉じていた。
ゲンマが投げる木の実を、音だけで探しているわけではない。それは禁止されている。
枝が揺れる音、空気を切る音、ゲンマの腕の動き、地面を踏む足。目でも確認し、耳でも拾う。
「次」
ゲンマが二つ投げる。
スズが目を開けた。
「レン、上と左!」
「二個!?」
一つをかわす。
もう一つ。
間に合わない。
レンは腕で弾いた。
「痛っ!」
「今ので腕負傷」
ゲンマが言う。
「先生、判定厳しくないですか!?」
「敵が優しく投げてくれると思うか?」
「思いません!」
「なら続けろ」
レンは歯を食いしばり、再び構える。スズも息を整えた。
最初は、スズが見つけ、カゲマルが考え、レンが動く。それだけだった。
今は少し違う。
カゲマルがいなくても、スズとレンだけで判断する。逆も同じ。
誰か一人がいなければ動けない班にはしない。
それがゲンマの訓練だった。
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「うおおおおお!」
少し離れた場所から、ナルトの声が聞こえた。
カゲマルが振り返る。
ナルトが木を駆け上がっている。
昨日より明らかに速い。足取りも安定していた。
十歩、二十歩、さらに上。
「いけぇ!」
レンが思わず叫ぶ。
サクラも見上げている。
サスケは別の木の枝から、黙ってナルトを見ていた。
ナルトの足が一瞬滑る。
「っ!」
落ちかける。
だが、踏ん張った。
もう一度、足裏へチャクラを集める。
「まだだぁぁぁ!」
再び走る。
そして、枝へ手が届いた。
「――よっしゃあ!」
ナルトが身体を引き上げる。
「できたってばよ!」
森に声が響いた。
サクラが笑う。
「やったじゃない、ナルト!」
「おう!」
レンも下から両手を上げた。
「やったな!」
「見たか!」
「見てた!」
「俺も昨日できた!」
「今は俺の話だってばよ!」
「何だと!」
スズが呟く。
「仲いい」
「仲良くねぇ!」
また二人の声が揃う。
カゲマルは笑いながら、サスケを見る。
サスケは枝の上からナルトを見ていた。
ほんの僅かに口元が緩んだように見えたが、ナルトが振り返る頃にはいつもの顔に戻っている。
「遅いんだよ、ウスラトンカチ」
「何だとサスケェ!」
「昨日できた」
「俺だってできた!」
「一日遅い」
「もう一回勝負だ!」
「何の勝負だよ」
二人のやり取りを見ながら、カゲマルは胸の奥で静かに息を吐いた。
ここも、ナルト自身が辿り着いた。
自分は何もしていない。
それでいい。
いや、それがいい。
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修行が一段落した頃。
「全員集合」
ゲンマの声で、第七班と第十一班が集まった。
木陰にはカカシも来ている。まだ戦闘訓練へ参加できる状態ではないが、歩いてここまで来られる程度には回復したらしい。
「カカシ先生!」
ナルトが得意げに胸を張る。
「俺、できたってばよ!」
「見てたよ」
「いつから!?」
「最後の方」
「じゃあ全部見てねぇじゃん!」
「できたところ見れば十分でしょ」
「もっと感動しろよ!」
カカシは笑いながら六人を見る。
「ずいぶん良くなったね」
その視線が第十一班へ向く。
「そっちも」
レンが胸を張る。
「俺も登れます!」
「聞いた」
「誰から?」
「ゲンマ」
レンがゲンマを見る。
「先生、俺のこと褒めました?」
「事実を言っただけ」
「褒めてない!」
カカシが少し笑ったあと、表情を変える。
「でも、ここからが本番だ」
空気が静かになった。
「俺もかなり回復した。おそらく、再不斬も同じくらいには回復してる」
ナルトの顔から笑みが消える。
サスケも真剣な目になる。第十一班の三人も同じだった。
「明日からは、タズナさんの護衛を中心に動く」
カカシが続ける。
「修行は終わりですか?」
サクラが聞く。
「時間があれば続ける。でも優先順位は任務」
ゲンマが引き継ぐ。
「配置は状況を見て俺とカカシで決める。再不斬が出てきた場合、お前ら下忍が正面から相手するな」
ナルトが口を開きかける。
ゲンマが先に見る。
「特にうずまき」
「まだ何も言ってねぇってばよ!」
「顔に書いてある」
「何て!?」
「俺も戦う」
「……何で分かるんだよ」
「分かりやすいから」
レンが吹き出した。
「ナルト、顔に出すぎ」
「お前も同じだろ!」
「俺は出てない!」
スズが言う。
「出てる」
「スズ!?」
張り詰めかけた空気が少しだけ緩む。
だが、カゲマルは分かっていた。
時間が来た。
再不斬が戻ってくる。
そして、白も。
---
その夜。
波の国の別の場所。
薄暗い部屋に、男が横たわっていた。
身体には包帯。
傍らには、巨大な首斬り包丁が立て掛けられている。
桃地再不斬。
その目が開いた。
「……白」
呼ばれた少年が振り返る。
「はい」
昼間、森でナルトと話していた時とは違う。仮面こそつけていないが、その目には忍の静けさがあった。
「身体は」
「問題ありません」
「俺は?」
「予定より回復が早いです」
再不斬が身体を起こす。
まだ痛みは残っている。
だが、動ける。
「木ノ葉のコピー忍者も、そろそろ動ける頃か」
「おそらく」
白は答える。
再不斬の脳裏に写輪眼が浮かぶ。
あの男は厄介だ。
そして。
「増援が来たらしいな」
白の視線が僅かに動く。
「はい」
「何人だ」
「確認できた範囲では、上役が一人。それと下忍が三人」
「上役の名前は」
「不知火ゲンマ」
再不斬の目が細くなる。
知らない名ではない。
木ノ葉の特別上忍。カカシほどではないにせよ、ただの護衛が一人増えたで済ませられる相手でもない。
「面倒になったな」
再不斬が呟く。
白は何も言わない。
「だが、やることは変わらねぇ」
再不斬は首斬り包丁を見る。
タズナを殺す。
橋を止める。
それだけだ。
「白」
「はい」
「次はしくじるな」
白は静かに頭を下げた。
「分かっています」
その声は、森でナルトへ向けたものと同じくらい穏やかだった。
それでも迷いはない。
再不斬のためなら、自分は武器になる。
それが、自分の存在する理由なのだから。
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同じ夜。
タズナの家では、カゲマルが布団の中で目を開けていた。
眠れないわけではない。
ただ、考えている。
明日、あるいは明後日。
再不斬たちが動く。
原作なら、橋。
カカシ対再不斬。
ナルトとサスケ対白。
魔鏡氷晶。
そして、その先に待つ結末。
全部知っている。
けれど、もう同じになる保証はない。
ゲンマがいる。
レンがいる。
スズがいる。
自分がいる。
再不斬側も、増援の存在を知れば当然何かを変えるかもしれない。
カゲマルは天井を見る。
(どうする)
未来を知っている。
だから先回りするか。
白の能力を話すか。
魔鏡氷晶を説明するか。
再不斬と白の関係まで話すか。
それをすれば有利にはなる。少なくとも、奇襲を受ける可能性は減る。
だが、どう説明する?
なぜ知っている。
どこで知った。
誰から聞いた。
それ以上に、自分が知っている未来が今も同じだと、何を根拠に言える。
父の言葉が浮かぶ。
――頭の中で答えを作りすぎるな。
――現場で見たもんを信じろ。
カゲマルは目を閉じた。
何もしないわけではない。
見て、考える。必要なら動く。
でも、知っているからという理由だけで、仲間の判断まで奪わない。
その時、隣の布団から声がした。
「カゲマル」
レン。
「起きてた?」
「お前も?」
「ちょっと」
暗闇の中、少し間が空く。
「怖い?」
レンが聞いた。
カゲマルは考えてから答える。
「怖いよ」
「そっか」
「レンは?」
「怖い」
素直だった。
少し離れた布団から声がする。
「私も」
スズだった。
二人がそちらを見る。
「起きてたの?」
カゲマルが聞く。
「二人が喋るから」
「ごめん」
「別に」
暗闇の中、三人とも顔はよく見えない。
レンが小さく笑った。
「なんか安心した」
「何が?」
「二人も怖いんだなって」
スズが答える。
「怖くない方がおかしいでしょ」
「先生は?」
「聞いてみれば?」
「嫌だよ。馬鹿にされそう」
カゲマルが笑う。
「多分、普通に怖いって言うと思う」
「そうかな」
「多分ね」
それ以上、誰も話さなかった。
明日、何が起こるかは分からない。
それでも、一人ではない。
やがて三人の呼吸が静かになっていく。
波の音だけが、遠くで続いていた。
再戦の時は、もうすぐそこまで来ていた。