~転生したら奈良シカマルの双子の兄でした~   作:ZAZAI

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お待たせしました。
今週は更新頑張ります。


第三十二話 近づく再戦

 

「いただきます!」

 

ナルトの声が食卓に響いた。

 

森から戻ってきた直後とは思えない勢いで箸を動かし、山盛りの飯を口へ運んでいく。

 

「おかわり!」

 

「もう?」

 

ツナミが目を丸くする。

 

「修行したから腹減ったってばよ!」

 

「修行っていうか、途中で寝てたんでしょ」

 

サクラの一言で、ナルトの箸が止まった。

 

「……何で知ってんだ?」

 

「帰ってこなかったら分かるわよ!」

 

「ちゃんと朝から修行した!」

 

「朝から?」

 

ナルトの脳裏に白の顔が浮かぶ。少しだけ間が空いた。

 

「……まあ、色々あったんだってばよ」

 

「何よ、色々って」

 

「色々は色々だ!」

 

「怪しいわね」

 

二人のやり取りを横目に、レンも負けじと飯をかき込んでいた。

 

「おかわりお願いします!」

 

「レンも!?」

 

ツナミが慌ただしく立ち上がる。

 

スズが呆れたように二人を見る。

 

「何で張り合ってるの」

 

「張り合ってない」

 

「張り合ってねぇってばよ!」

 

また声が重なる。

 

スズはカゲマルを見る。

 

「似てる」

 

「否定できなくなってきた」

 

「おい!」

 

「カゲマルまで!?」

 

騒がしい昼食だった。

 

それでも、昨日までとは少し違う。

 

再不斬、ガトー、依頼内容の虚偽。この国が置かれている状況を知った今、危険が消えたわけではない。

 

だが、だからこそなのかもしれない。

 

食事の時間くらいは、普通に笑える方がいい。

 

カゲマルがそう思っていると、部屋の奥から声がした。

 

「ずいぶん楽しそうだねぇ」

 

全員が振り返る。

 

壁へ手をつきながら、カカシが立っていた。

 

「カカシ先生!」

 

サクラが真っ先に立ち上がる。

 

「もう大丈夫なんですか!?」

 

「昨日よりはね」

 

歩き方はまだ少し重い。だが、顔色は明らかに良くなっていた。

 

ナルトも椀を置いて立ち上がる。

 

「じゃあもう戦えるのか!?」

 

「無理」

 

「即答!?」

 

「歩けるのと戦えるのは別だからね。あと数日は欲しいかな」

 

カゲマルはその言葉を聞きながら、原作の流れを思い出す。

 

再不斬も同じ。今頃はまだ完全には回復していないはずだ。

 

ただ、こちらが早めに生存へ気づいたことで、原作より準備する時間を明確に意識できている。その差が何を生むのかは、まだ分からない。

 

「そういえば」

 

カカシがナルトを見る。

 

「修行は?」

 

ナルトの顔が引きつった。

 

「……もうちょっと」

 

「サスケはかなり上まで行ってたけど」

 

「今日絶対追いつく!」

 

食事を再開したナルトの速度がさらに上がる。

 

サスケが横目で見る。

 

「食いすぎて動けなくなるぞ」

 

「お前にだけは負けねぇ!」

 

「勝手にしろ」

 

そう言いながら、サスケも箸を少し速めた。

 

カゲマルは笑う。

 

この二人は、本当に分かりやすい。

 

---

 

午後。

 

再び森へ入った六人は、それぞれの課題へ戻っていた。

 

ナルトとサスケは木登り。レンは走った状態でのチャクラ維持。スズは木々を移動しながら周囲の音を拾う訓練。

 

そしてカゲマルは、昨日思いついた課題に挑戦していた。

 

木の幹へ立ち、足裏へ一定量のチャクラを流し続ける。ここまでは、もうできる。

 

問題はここから。

 

印を組む。

 

「影真似の術」

 

足元から伸びた影が、木の幹を伝っていく。

 

一メートル、二メートル。

 

昨日はこの辺りで足元の制御が崩れた。今日はまだ保っている。

 

(足だけに意識を向けるな)

 

影、足裏、身体の重心。

 

全部を別々に考えれば追いつかない。一つの動作としてまとめる。

 

影がさらに伸びる。

 

三メートル、四メートル。

 

「……っ」

 

足が僅かに滑った。

 

影が揺らぐ。

 

カゲマルはすぐ術を解き、木を蹴って地面へ降りた。

 

「昨日より伸びた」

 

近くで見ていたスズが言う。

 

「でも失敗」

 

「昨日よりは成功」

 

「スズ、たまに前向きだよね」

 

「たまに?」

 

「いや、何でもない」

 

少し離れた場所でゲンマが見ている。

 

「奈良」

 

「はい」

 

「今、何に失敗した?」

 

カゲマルは考える。

 

「影を伸ばす方に意識が寄りすぎました」

 

「それだけか?」

 

「……足元のチャクラが弱くなった」

 

「何で?」

 

もう一度考える。

 

影真似を維持する。木に立つ。

 

二つの術を同時に使っているように感じていた。

 

だが。

 

「チャクラを別々に考えてるから?」

 

ゲンマが千本を口元で動かした。

 

「俺に聞くな」

 

「質問したの先生ですよね?」

 

「答えまで教えるとは言ってない」

 

相変わらずだった。

 

カゲマルは自分の手を見る。

 

チャクラは一つ。それを足裏へ流しながら、陰遁を練り、影へ作用させる。

 

別々のことをしている。でも、使っているのは自分のチャクラだ。

 

「配分……」

 

小さく呟く。

 

ゲンマは何も言わない。その反応で、完全に外れてはいないと分かった。

 

カゲマルは再び木へ向かった。

 

---

 

「右」

 

スズの声。

 

レンが反射的に左へ跳んだ。

 

次の瞬間、右側から木の実が飛んでくる。

 

「危なっ!」

 

避けた。だが着地した瞬間、足裏のチャクラが強すぎた。

 

バキッ。

 

木の表皮が弾ける。

 

「うおっ!」

 

身体が離れかける。

 

レンは咄嗟に枝を掴み、ぶら下がった。

 

下からゲンマが見上げる。

 

「今ので死亡」

 

「木の実で!?」

 

「実戦なら木の実じゃない」

 

「……確かに」

 

レンが枝へ這い上がる。

 

少し離れた木に立つスズは、目を閉じていた。

 

ゲンマが投げる木の実を、音だけで探しているわけではない。それは禁止されている。

 

枝が揺れる音、空気を切る音、ゲンマの腕の動き、地面を踏む足。目でも確認し、耳でも拾う。

 

「次」

 

ゲンマが二つ投げる。

 

スズが目を開けた。

 

「レン、上と左!」

 

「二個!?」

 

一つをかわす。

 

もう一つ。

 

間に合わない。

 

レンは腕で弾いた。

 

「痛っ!」

 

「今ので腕負傷」

 

ゲンマが言う。

 

「先生、判定厳しくないですか!?」

 

「敵が優しく投げてくれると思うか?」

 

「思いません!」

 

「なら続けろ」

 

レンは歯を食いしばり、再び構える。スズも息を整えた。

 

最初は、スズが見つけ、カゲマルが考え、レンが動く。それだけだった。

 

今は少し違う。

 

カゲマルがいなくても、スズとレンだけで判断する。逆も同じ。

 

誰か一人がいなければ動けない班にはしない。

 

それがゲンマの訓練だった。

 

---

 

「うおおおおお!」

 

少し離れた場所から、ナルトの声が聞こえた。

 

カゲマルが振り返る。

 

ナルトが木を駆け上がっている。

 

昨日より明らかに速い。足取りも安定していた。

 

十歩、二十歩、さらに上。

 

「いけぇ!」

 

レンが思わず叫ぶ。

 

サクラも見上げている。

 

サスケは別の木の枝から、黙ってナルトを見ていた。

 

ナルトの足が一瞬滑る。

 

「っ!」

 

落ちかける。

 

だが、踏ん張った。

 

もう一度、足裏へチャクラを集める。

 

「まだだぁぁぁ!」

 

再び走る。

 

そして、枝へ手が届いた。

 

「――よっしゃあ!」

 

ナルトが身体を引き上げる。

 

「できたってばよ!」

 

森に声が響いた。

 

サクラが笑う。

 

「やったじゃない、ナルト!」

 

「おう!」

 

レンも下から両手を上げた。

 

「やったな!」

 

「見たか!」

 

「見てた!」

 

「俺も昨日できた!」

 

「今は俺の話だってばよ!」

 

「何だと!」

 

スズが呟く。

 

「仲いい」

 

「仲良くねぇ!」

 

また二人の声が揃う。

 

カゲマルは笑いながら、サスケを見る。

 

サスケは枝の上からナルトを見ていた。

 

ほんの僅かに口元が緩んだように見えたが、ナルトが振り返る頃にはいつもの顔に戻っている。

 

「遅いんだよ、ウスラトンカチ」

 

「何だとサスケェ!」

 

「昨日できた」

 

「俺だってできた!」

 

「一日遅い」

 

「もう一回勝負だ!」

 

「何の勝負だよ」

 

二人のやり取りを見ながら、カゲマルは胸の奥で静かに息を吐いた。

 

ここも、ナルト自身が辿り着いた。

 

自分は何もしていない。

 

それでいい。

 

いや、それがいい。

 

---

 

修行が一段落した頃。

 

「全員集合」

 

ゲンマの声で、第七班と第十一班が集まった。

 

木陰にはカカシも来ている。まだ戦闘訓練へ参加できる状態ではないが、歩いてここまで来られる程度には回復したらしい。

 

「カカシ先生!」

 

ナルトが得意げに胸を張る。

 

「俺、できたってばよ!」

 

「見てたよ」

 

「いつから!?」

 

「最後の方」

 

「じゃあ全部見てねぇじゃん!」

 

「できたところ見れば十分でしょ」

 

「もっと感動しろよ!」

 

カカシは笑いながら六人を見る。

 

「ずいぶん良くなったね」

 

その視線が第十一班へ向く。

 

「そっちも」

 

レンが胸を張る。

 

「俺も登れます!」

 

「聞いた」

 

「誰から?」

 

「ゲンマ」

 

レンがゲンマを見る。

 

「先生、俺のこと褒めました?」

 

「事実を言っただけ」

 

「褒めてない!」

 

カカシが少し笑ったあと、表情を変える。

 

「でも、ここからが本番だ」

 

空気が静かになった。

 

「俺もかなり回復した。おそらく、再不斬も同じくらいには回復してる」

 

ナルトの顔から笑みが消える。

 

サスケも真剣な目になる。第十一班の三人も同じだった。

 

「明日からは、タズナさんの護衛を中心に動く」

 

カカシが続ける。

 

「修行は終わりですか?」

 

サクラが聞く。

 

「時間があれば続ける。でも優先順位は任務」

 

ゲンマが引き継ぐ。

 

「配置は状況を見て俺とカカシで決める。再不斬が出てきた場合、お前ら下忍が正面から相手するな」

 

ナルトが口を開きかける。

 

ゲンマが先に見る。

 

「特にうずまき」

 

「まだ何も言ってねぇってばよ!」

 

「顔に書いてある」

 

「何て!?」

 

「俺も戦う」

 

「……何で分かるんだよ」

 

「分かりやすいから」

 

レンが吹き出した。

 

「ナルト、顔に出すぎ」

 

「お前も同じだろ!」

 

「俺は出てない!」

 

スズが言う。

 

「出てる」

 

「スズ!?」

 

張り詰めかけた空気が少しだけ緩む。

 

だが、カゲマルは分かっていた。

 

時間が来た。

 

再不斬が戻ってくる。

 

そして、白も。

 

---

 

その夜。

 

波の国の別の場所。

 

薄暗い部屋に、男が横たわっていた。

 

身体には包帯。

 

傍らには、巨大な首斬り包丁が立て掛けられている。

 

桃地再不斬。

 

その目が開いた。

 

「……白」

 

呼ばれた少年が振り返る。

 

「はい」

 

昼間、森でナルトと話していた時とは違う。仮面こそつけていないが、その目には忍の静けさがあった。

 

「身体は」

 

「問題ありません」

 

「俺は?」

 

「予定より回復が早いです」

 

再不斬が身体を起こす。

 

まだ痛みは残っている。

 

だが、動ける。

 

「木ノ葉のコピー忍者も、そろそろ動ける頃か」

 

「おそらく」

 

白は答える。

 

再不斬の脳裏に写輪眼が浮かぶ。

 

あの男は厄介だ。

 

そして。

 

「増援が来たらしいな」

 

白の視線が僅かに動く。

 

「はい」

 

「何人だ」

 

「確認できた範囲では、上役が一人。それと下忍が三人」

 

「上役の名前は」

 

「不知火ゲンマ」

 

再不斬の目が細くなる。

 

知らない名ではない。

 

木ノ葉の特別上忍。カカシほどではないにせよ、ただの護衛が一人増えたで済ませられる相手でもない。

 

「面倒になったな」

 

再不斬が呟く。

 

白は何も言わない。

 

「だが、やることは変わらねぇ」

 

再不斬は首斬り包丁を見る。

 

タズナを殺す。

 

橋を止める。

 

それだけだ。

 

「白」

 

「はい」

 

「次はしくじるな」

 

白は静かに頭を下げた。

 

「分かっています」

 

その声は、森でナルトへ向けたものと同じくらい穏やかだった。

 

それでも迷いはない。

 

再不斬のためなら、自分は武器になる。

 

それが、自分の存在する理由なのだから。

 

---

 

同じ夜。

 

タズナの家では、カゲマルが布団の中で目を開けていた。

 

眠れないわけではない。

 

ただ、考えている。

 

明日、あるいは明後日。

 

再不斬たちが動く。

 

原作なら、橋。

 

カカシ対再不斬。

 

ナルトとサスケ対白。

 

魔鏡氷晶。

 

そして、その先に待つ結末。

 

全部知っている。

 

けれど、もう同じになる保証はない。

 

ゲンマがいる。

 

レンがいる。

 

スズがいる。

 

自分がいる。

 

再不斬側も、増援の存在を知れば当然何かを変えるかもしれない。

 

カゲマルは天井を見る。

 

(どうする)

 

未来を知っている。

 

だから先回りするか。

 

白の能力を話すか。

 

魔鏡氷晶を説明するか。

 

再不斬と白の関係まで話すか。

 

それをすれば有利にはなる。少なくとも、奇襲を受ける可能性は減る。

 

だが、どう説明する?

 

なぜ知っている。

 

どこで知った。

 

誰から聞いた。

 

それ以上に、自分が知っている未来が今も同じだと、何を根拠に言える。

 

父の言葉が浮かぶ。

 

――頭の中で答えを作りすぎるな。

 

――現場で見たもんを信じろ。

 

カゲマルは目を閉じた。

 

何もしないわけではない。

 

見て、考える。必要なら動く。

 

でも、知っているからという理由だけで、仲間の判断まで奪わない。

 

その時、隣の布団から声がした。

 

「カゲマル」

 

レン。

 

「起きてた?」

 

「お前も?」

 

「ちょっと」

 

暗闇の中、少し間が空く。

 

「怖い?」

 

レンが聞いた。

 

カゲマルは考えてから答える。

 

「怖いよ」

 

「そっか」

 

「レンは?」

 

「怖い」

 

素直だった。

 

少し離れた布団から声がする。

 

「私も」

 

スズだった。

 

二人がそちらを見る。

 

「起きてたの?」

 

カゲマルが聞く。

 

「二人が喋るから」

 

「ごめん」

 

「別に」

 

暗闇の中、三人とも顔はよく見えない。

 

レンが小さく笑った。

 

「なんか安心した」

 

「何が?」

 

「二人も怖いんだなって」

 

スズが答える。

 

「怖くない方がおかしいでしょ」

 

「先生は?」

 

「聞いてみれば?」

 

「嫌だよ。馬鹿にされそう」

 

カゲマルが笑う。

 

「多分、普通に怖いって言うと思う」

 

「そうかな」

 

「多分ね」

 

それ以上、誰も話さなかった。

 

明日、何が起こるかは分からない。

 

それでも、一人ではない。

 

やがて三人の呼吸が静かになっていく。

 

波の音だけが、遠くで続いていた。

 

再戦の時は、もうすぐそこまで来ていた。

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