~転生したら奈良シカマルの双子の兄でした~   作:ZAZAI

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カゲマルの存在によって、原作とは少しずつ違う流れになっています。
その影響で、ナルトとサスケの関係も原作より少し早く変化し始めています。


第三十六話 魔鏡氷晶

赤い信号弾が霧の向こうへ消えていく

その少し前。

 

橋では、すでに戦いが始まっていた。

 

 

——————————————

 

 

「水遁・水龍弾の術!」

 

巨大な水の龍が橋の上を駆け抜ける。

 

カカシも同じ印を結ぶ。

 

「水遁・水龍弾の術!」

 

二つの水龍が正面から激突した。

 

轟音。

 

大量の水が弾け、橋の上へ雨のように降り注ぐ。

 

「うわっ!」

 

ナルトが腕で顔を覆う。

 

サクラはタズナの前から動かない。

 

「ナルト! 前見て!」

 

「分かってるってばよ!」

 

霧の向こうから首斬り包丁が飛ぶ。

 

カカシが身を沈める。

 

巨大な刃が頭上を通過し、そのまま橋へ突き刺さった。

 

再不斬が包丁の柄へ着地する。

 

「写輪眼がありゃ勝てると思うなよ」

 

「一回負けた人に言われてもね」

 

「言ってろ」

 

再不斬の姿が霧へ溶けた。

 

カカシの表情が変わる。

 

濃霧。

 

前回とは違う。

 

再不斬は、すでに写輪眼を警戒している。

 

視線を合わせなければいい。

 

見せなければいい。

 

「サクラ」

 

「はい!」

 

「タズナさんから離れるな」

 

「はい!」

 

「ナルト、サスケ」

 

返事はない。

 

カカシが僅かに視線を動かす。

 

二人の前には。

 

白が立っていた。

 

仮面をつけたまま。

 

両手には千本。

 

「あなたたちのお相手は、僕です」

 

「上等だってばよ!」

 

ナルトが前へ出ようとする。

 

サスケが腕を出した。

 

「待て」

 

「何だよ!」

 

「こいつ、あの時の追い忍だ」

 

サスケの目は白から離れない。

 

「再不斬を殺したふりをして連れていった。最初から仲間だったってことだ」

 

「そんなの分かってる!」

 

「なら突っ込むな」

 

「お前に言われたくねぇ!」

 

「二人とも!」

 

サクラの声。

 

その一瞬。

 

白が動いた。

 

「!」

 

千本。

 

サスケが苦無で弾く。

 

ナルトが横へ跳ぶ。

 

二本の千本が、さっきまで二人が立っていた場所へ突き刺さった。

 

「速ぇ……」

 

ナルトの表情が変わる。

 

白は静かに二人を見る。

 

「できれば、あなたたちを殺したくはありません」

 

「はぁ!?」

 

ナルトが睨む。

 

「だったら戦うなってばよ!」

 

白は答えなかった。

 

ただ。

 

仮面の奥から二人を見る。

 

「僕には、守らなければならない人がいます」

 

ナルトの動きが止まった。

 

その言葉。

 

聞いたことがある。

 

――人は、大切な何かを守りたいと思った時、本当に強くなれるんです。

 

森。

 

薬草。

 

穏やかな声。

 

一瞬だけ。

 

あの人物の顔が浮かぶ。

 

「……?」

 

だが。

 

目の前にいるのは仮面の忍。

 

ナルトは首を振る。

 

「何でもいい!」

 

拳を握る。

 

「俺だって負けられねぇんだ!」

 

白が僅かに俯いた。

 

「そうですか」

 

そして。

 

印を結ぶ。

 

周囲の空気が急激に冷えた。

 

サスケが気づく。

 

「ナルト、離れろ!」

 

「え?」

 

地面から。

 

氷が伸びる。

 

一枚。

 

二枚。

 

三枚。

 

次々と。

 

二人を囲むように、巨大な氷の鏡が形成されていく。

 

「なんだこれ……」

 

ナルトが見回す。

 

正面。

 

左右。

 

背後。

 

そして上。

 

氷の鏡。

 

逃げ道が塞がれていく。

 

白が一枚の鏡へ歩み寄る。

 

その身体が。

 

氷の中へ溶けた。

 

「消えた!?」

 

「違う!」

 

サスケが叫ぶ。

 

鏡。

 

すべての鏡に。

 

白の姿が映っている。

 

「これは……」

 

仮面。

 

一つ。

 

二つ。

 

十。

 

それ以上。

 

どれが本物なのか分からない。

 

白の声が響く。

 

「秘術」

 

静かな声。

 

「魔鏡氷晶」

 

次の瞬間。

 

ナルトの頬から血が飛んだ。

 

「っ!?」

 

何が起きたのか。

 

分からない。

 

気づいた時には千本が刺さっている。

 

「ナルト!」

 

サスケが苦無を投げる。

 

鏡の中の白へ。

 

だが。

 

当たる前に。

 

白が消えた。

 

別の鏡。

 

さらに別。

 

速い。

 

いや。

 

速いという言葉では足りない。

 

「くそっ!」

 

ナルトが拳を振る。

 

何もない。

 

背中千本。

 

「ぐっ!」

 

サスケが動く。

 

次は自分。

 

右。

 

気配。

 

苦無を振る。

 

金属音。

 

一瞬。

 

千本を弾いた。

 

白の目が僅かに動く。

 

「……見えた?」

 

サスケは答えない。

 

目だけを動かす。

 

鏡。

 

移動。

 

攻撃。

 

まだ追えない。

 

でも。

 

完全に見えないわけではない。

 

「ナルト」

 

「何だ!」

 

「無闇に動くな」

 

「でも!」

 

「こいつの動きを見る」

 

「そんな暇――」

 

千本。

 

サスケがナルトを押す。

 

二人が転がった。

 

「あるようにするんだよ!」

 

ナルトが歯を食いしばる。

 

「……分かった!」

 

二人は背中を合わせた。

 

白は鏡の中から、それを見ていた。

 

---

 

少し離れた場所。

 

「ナルト! サスケ君!」

 

サクラが叫ぶ。

 

駆け出したい。

 

だが。

 

動けない。

 

後ろにはタズナがいる。

 

自分の任務。

 

分かっている。

 

それでも。

 

氷の中から聞こえる音に、身体が勝手に反応しそうになる。

 

「サクラ」

 

カカシの声。

 

「動かないで」

 

「でも!」

 

「二人を信じて」

 

そのカカシ自身も動けない。

 

霧。

 

再不斬。

 

どこにいる。

 

殺気が。

 

消えている。

 

(前回より厄介だ)

 

再不斬は学習している。

 

写輪眼に見せない。

 

音も消す。

 

気配も。

 

「カカシ先生!」

 

ナルトの声。

 

助けに行きたい。

 

だが。

 

その瞬間。

 

「よそ見してんじゃねぇぞ」

 

背後。

 

カカシが振り返る。

 

首斬り包丁。

 

苦無で受ける。

 

衝撃。

 

足が橋を滑る。

 

「っ!」

 

再不斬が笑う。

 

「ガキの心配してる暇があんのか?」

 

蹴り。

 

カカシが腕で受ける。

 

吹き飛ぶ。

 

着地。

 

すぐ印。

 

再不斬は霧へ消える。

 

カカシは舌打ちした。

 

分断されている。

 

完全に。

 

---

 

橋の端。

 

タズナは震える手で拳を握っていた。

 

自分のためだ。

 

この子たちは。

 

自分が依頼内容を偽ったせいで。

 

こんな場所で戦っている。

 

「……すまん」

 

小さな声。

 

サクラが振り返る。

 

「何ですか?」

 

「いや……」

 

タズナは俯く。

 

その時。

 

霧の奥。

 

僅かに何かが動いた。

 

サクラがすぐに苦無を構える。

 

「誰!?」

 

返事はない。

 

「タズナさん、私の後ろに!」

 

「あ、ああ!」

 

サクラが前へ。

 

氷の中にはナルトとサスケ。

 

カカシは再不斬と交戦。

 

自分が。

 

守る。

 

「絶対に離れないでください」

 

その声は。

 

少し震えていた。

 

それでも。

 

苦無は下げなかった。

 

---

 

同じ頃。

 

「もっと上げるぞ」

 

ゲンマの声。

 

「はい!」

 

カゲマルは答え、木の枝を蹴った。

 

前を走るゲンマ。

 

後ろにレンとスズ。

 

四人は橋へ向かっていた。

 

速い。

 

これまでの移動訓練とは違う。

 

ゲンマは明らかに速度を上げている。

 

それでも。

 

三人がついてこられる限界を見ている。

 

置いてはいかない。

 

「スズ、大丈夫?」

 

カゲマルが聞く。

 

「大丈夫」

 

短い返事。

 

「レンは?」

 

「余裕!」

 

「息切れてるよ」

 

「走ってんだから普通だろ!」

 

それだけ言えるなら大丈夫そうだ。

 

カゲマルは前を見る。

 

胸の奥が落ち着かない。

 

赤い信号。

 

橋。

 

何が起きた。

 

分かっている。

 

いや。

 

分かっているつもりになっている。

 

(やめよう)

 

自分で止める。

 

今。

 

橋で何が起きているかは知らない。

 

再不斬がいるかもしれない。

 

白がいるかもしれない。

 

でも。

 

実際に見ていない。

 

なら。

 

決めつけない。

 

「奈良」

 

前からゲンマ。

 

「はい」

 

「顔がうるさい」

 

「……顔?」

 

「考えすぎだ」

 

カゲマルは少しだけ苦笑する。

 

「分かります?」

 

「最近はな」

 

スズと同じことを言われた。

 

「先生」

 

「なんだ」

 

「橋に着いたら、どうします?」

 

ゲンマは前を向いたまま答える。

 

「見てから決める」

 

それだけ。

 

カゲマルは目を瞬く。

 

「……それだけですか?」

 

「それ以外に何がある」

 

「いや、作戦とか」

 

「状況も分からんのに作戦立ててどうする」

 

カゲマルは黙った。

 

確かに。

 

「まず見る。次に考える。それから動く」

 

ゲンマが枝を蹴る。

 

「順番間違えるな」

 

「はい」

 

短い。

 

でも。

 

今のカゲマルには、それで十分だった。

 

後ろからレンが声を上げる。

 

「先生!」

 

「なんだ」

 

「橋まであとどれくらいですか!」

 

「喋る余裕あるなら速く走れ」

 

ゲンマが速度を上げた。

 

「聞かなきゃよかった!」

 

レンの悲鳴。

 

スズが横を走りながら言う。

 

「自業自得」

 

「スズ余裕あるな!?」

 

カゲマルは少し笑った。

 

怖い。

 

でも。

 

三人ともいる。

 

ゲンマもいる。

 

走れる。

 

まだ。

 

大丈夫だ。

 

---

 

魔鏡氷晶の中。

 

ナルトが膝をついた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

腕。

 

脚。

 

肩。

 

千本が刺さっている。

 

致命傷は避けられている。

 

白が意図的に外していることなど、ナルトには分からない。

 

ただ。

 

痛い。

 

速い。

 

強い。

 

「くそ……」

 

立つ。

 

サスケも傷だらけだった。

 

だが。

 

目だけは。

 

白を追っている。

 

右。

 

左上。

 

背後。

 

攻撃。

 

移動。

 

また攻撃。

 

少しずつ。

 

見える。

 

「ナルト」

 

「何だよ……」

 

「次、俺の言う通りに動け」

 

「作戦あんのか?」

 

「今作る」

 

「今!?」

 

「黙れ」

 

白が動く。

 

サスケの瞳。

 

僅かに。

 

変化する。

 

鏡から鏡。

 

一瞬の軌道。

 

見えた。

 

「伏せろ!」

 

ナルトがしゃがむ。

 

サスケが手裏剣を投げる。

 

白の移動先。

 

金属音。

 

白が千本で弾いた。

 

「!」

 

初めて。

 

白の動きが止まる。

 

ほんの一瞬。

 

ナルトが顔を上げた。

 

「当たりそうだった!」

 

「まだだ」

 

サスケの呼吸も荒い。

 

でも。

 

口元が。

 

僅かに上がる。

 

「次は当てる」

 

白は鏡の中からサスケを見る。

 

(この子……)

 

成長している。

 

戦いながら。

 

自分の速度へ。

 

適応し始めている。

 

なら。

 

こちらも。

 

速度を上げる。

 

白が印を結ぶ。

 

「もう、終わらせます」

 

空気が変わった。

 

サスケが気づく。

 

「ナルト!」

 

無数の千本。

 

鏡のすべてから。

 

放たれる。

 

「うおおおっ!」

 

ナルトが腕で顔を守る。

 

避けきれない。

 

その前へ。

 

サスケが出た。

 

「サスケ!?」

 

身体で。

 

受ける。

 

一本。

 

二本。

 

十本。

 

それ以上。

 

「……っ」

 

サスケの身体が揺れた。

 

「サスケ?」

 

返事がない。

 

「おい」

 

ゆっくり。

 

サスケが倒れる。

 

ナルトが支えた。

 

「サスケ!」

 

血。

 

千本。

 

動かない。

 

「おい!」

 

ナルトの声が震える。

 

「ふざけんなよ……」

 

白が鏡の中から見ている。

 

「急所は――」

 

言いかける。

 

だが。

 

ナルトには届かない。

 

「なんで……」

 

サスケを見る。

 

自分を庇った。

 

いつも。

 

ムカつく奴。

 

偉そうで。

 

すぐ馬鹿にして。

 

喧嘩して。

 

でも。

 

一緒に戦った。

 

仲間。

 

「なんでお前が……!」

 

何かが。

 

切れた。

 

ナルトの身体から。

 

赤いチャクラが漏れる。

 

白が息を呑む。

 

「これは……」

 

冷たい空気が。

 

一変した。

 

鏡が。

 

震える。

 

ナルトが顔を上げる。

 

瞳。

 

牙。

 

その姿は。

 

さっきまでの少年とは違う。

 

「お前……」

 

低い声。

 

「絶対に許さねぇ」

 

赤いチャクラが。

 

爆発した。

 

---

 

「止まれ」

 

ゲンマが突然言った。

 

全員が枝の上で止まる。

 

レンが息を整える。

 

「どうしたんですか?」

 

ゲンマは前を見る。

 

カゲマルにも。

 

感じた。

 

空気。

 

遠く。

 

何かが。

 

膨れ上がった。

 

チャクラ。

 

巨大な。

 

不快なほど。

 

重いもの。

 

カゲマルの顔から血の気が引く。

 

知っている。

 

今度は。

 

間違えようがない。

 

「ナルト……」

 

呟いた。

 

ゲンマが横目で見る。

 

「分かるのか?」

 

しまった。

 

カゲマルは一瞬迷う。

 

でも。

 

完全な嘘をつく必要はない。

 

「あんなチャクラ、普通じゃない」

 

ゲンマは追及しなかった。

 

「そうだな」

 

千本を口元から抜く。

 

その瞬間。

 

普段の気の抜けた雰囲気が。

 

完全に消えた。

 

「ここから先は遊びじゃねぇ」

 

三人を見る。

 

レンが頷く。

 

スズも。

 

カゲマルも。

 

「はい」

 

ゲンマが言う。

 

「俺より前に出るな」

 

短く鋭い。

 

「行くぞ」

 

四人が再び走り出す。

 

橋はもうすぐそこだった。

 

 

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