その影響で、ナルトとサスケの関係も原作より少し早く変化し始めています。
赤い信号弾が霧の向こうへ消えていく
その少し前。
橋では、すでに戦いが始まっていた。
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「水遁・水龍弾の術!」
巨大な水の龍が橋の上を駆け抜ける。
カカシも同じ印を結ぶ。
「水遁・水龍弾の術!」
二つの水龍が正面から激突した。
轟音。
大量の水が弾け、橋の上へ雨のように降り注ぐ。
「うわっ!」
ナルトが腕で顔を覆う。
サクラはタズナの前から動かない。
「ナルト! 前見て!」
「分かってるってばよ!」
霧の向こうから首斬り包丁が飛ぶ。
カカシが身を沈める。
巨大な刃が頭上を通過し、そのまま橋へ突き刺さった。
再不斬が包丁の柄へ着地する。
「写輪眼がありゃ勝てると思うなよ」
「一回負けた人に言われてもね」
「言ってろ」
再不斬の姿が霧へ溶けた。
カカシの表情が変わる。
濃霧。
前回とは違う。
再不斬は、すでに写輪眼を警戒している。
視線を合わせなければいい。
見せなければいい。
「サクラ」
「はい!」
「タズナさんから離れるな」
「はい!」
「ナルト、サスケ」
返事はない。
カカシが僅かに視線を動かす。
二人の前には。
白が立っていた。
仮面をつけたまま。
両手には千本。
「あなたたちのお相手は、僕です」
「上等だってばよ!」
ナルトが前へ出ようとする。
サスケが腕を出した。
「待て」
「何だよ!」
「こいつ、あの時の追い忍だ」
サスケの目は白から離れない。
「再不斬を殺したふりをして連れていった。最初から仲間だったってことだ」
「そんなの分かってる!」
「なら突っ込むな」
「お前に言われたくねぇ!」
「二人とも!」
サクラの声。
その一瞬。
白が動いた。
「!」
千本。
サスケが苦無で弾く。
ナルトが横へ跳ぶ。
二本の千本が、さっきまで二人が立っていた場所へ突き刺さった。
「速ぇ……」
ナルトの表情が変わる。
白は静かに二人を見る。
「できれば、あなたたちを殺したくはありません」
「はぁ!?」
ナルトが睨む。
「だったら戦うなってばよ!」
白は答えなかった。
ただ。
仮面の奥から二人を見る。
「僕には、守らなければならない人がいます」
ナルトの動きが止まった。
その言葉。
聞いたことがある。
――人は、大切な何かを守りたいと思った時、本当に強くなれるんです。
森。
薬草。
穏やかな声。
一瞬だけ。
あの人物の顔が浮かぶ。
「……?」
だが。
目の前にいるのは仮面の忍。
ナルトは首を振る。
「何でもいい!」
拳を握る。
「俺だって負けられねぇんだ!」
白が僅かに俯いた。
「そうですか」
そして。
印を結ぶ。
周囲の空気が急激に冷えた。
サスケが気づく。
「ナルト、離れろ!」
「え?」
地面から。
氷が伸びる。
一枚。
二枚。
三枚。
次々と。
二人を囲むように、巨大な氷の鏡が形成されていく。
「なんだこれ……」
ナルトが見回す。
正面。
左右。
背後。
そして上。
氷の鏡。
逃げ道が塞がれていく。
白が一枚の鏡へ歩み寄る。
その身体が。
氷の中へ溶けた。
「消えた!?」
「違う!」
サスケが叫ぶ。
鏡。
すべての鏡に。
白の姿が映っている。
「これは……」
仮面。
一つ。
二つ。
十。
それ以上。
どれが本物なのか分からない。
白の声が響く。
「秘術」
静かな声。
「魔鏡氷晶」
次の瞬間。
ナルトの頬から血が飛んだ。
「っ!?」
何が起きたのか。
分からない。
気づいた時には千本が刺さっている。
「ナルト!」
サスケが苦無を投げる。
鏡の中の白へ。
だが。
当たる前に。
白が消えた。
別の鏡。
さらに別。
速い。
いや。
速いという言葉では足りない。
「くそっ!」
ナルトが拳を振る。
何もない。
背中千本。
「ぐっ!」
サスケが動く。
次は自分。
右。
気配。
苦無を振る。
金属音。
一瞬。
千本を弾いた。
白の目が僅かに動く。
「……見えた?」
サスケは答えない。
目だけを動かす。
鏡。
移動。
攻撃。
まだ追えない。
でも。
完全に見えないわけではない。
「ナルト」
「何だ!」
「無闇に動くな」
「でも!」
「こいつの動きを見る」
「そんな暇――」
千本。
サスケがナルトを押す。
二人が転がった。
「あるようにするんだよ!」
ナルトが歯を食いしばる。
「……分かった!」
二人は背中を合わせた。
白は鏡の中から、それを見ていた。
---
少し離れた場所。
「ナルト! サスケ君!」
サクラが叫ぶ。
駆け出したい。
だが。
動けない。
後ろにはタズナがいる。
自分の任務。
分かっている。
それでも。
氷の中から聞こえる音に、身体が勝手に反応しそうになる。
「サクラ」
カカシの声。
「動かないで」
「でも!」
「二人を信じて」
そのカカシ自身も動けない。
霧。
再不斬。
どこにいる。
殺気が。
消えている。
(前回より厄介だ)
再不斬は学習している。
写輪眼に見せない。
音も消す。
気配も。
「カカシ先生!」
ナルトの声。
助けに行きたい。
だが。
その瞬間。
「よそ見してんじゃねぇぞ」
背後。
カカシが振り返る。
首斬り包丁。
苦無で受ける。
衝撃。
足が橋を滑る。
「っ!」
再不斬が笑う。
「ガキの心配してる暇があんのか?」
蹴り。
カカシが腕で受ける。
吹き飛ぶ。
着地。
すぐ印。
再不斬は霧へ消える。
カカシは舌打ちした。
分断されている。
完全に。
---
橋の端。
タズナは震える手で拳を握っていた。
自分のためだ。
この子たちは。
自分が依頼内容を偽ったせいで。
こんな場所で戦っている。
「……すまん」
小さな声。
サクラが振り返る。
「何ですか?」
「いや……」
タズナは俯く。
その時。
霧の奥。
僅かに何かが動いた。
サクラがすぐに苦無を構える。
「誰!?」
返事はない。
「タズナさん、私の後ろに!」
「あ、ああ!」
サクラが前へ。
氷の中にはナルトとサスケ。
カカシは再不斬と交戦。
自分が。
守る。
「絶対に離れないでください」
その声は。
少し震えていた。
それでも。
苦無は下げなかった。
---
同じ頃。
「もっと上げるぞ」
ゲンマの声。
「はい!」
カゲマルは答え、木の枝を蹴った。
前を走るゲンマ。
後ろにレンとスズ。
四人は橋へ向かっていた。
速い。
これまでの移動訓練とは違う。
ゲンマは明らかに速度を上げている。
それでも。
三人がついてこられる限界を見ている。
置いてはいかない。
「スズ、大丈夫?」
カゲマルが聞く。
「大丈夫」
短い返事。
「レンは?」
「余裕!」
「息切れてるよ」
「走ってんだから普通だろ!」
それだけ言えるなら大丈夫そうだ。
カゲマルは前を見る。
胸の奥が落ち着かない。
赤い信号。
橋。
何が起きた。
分かっている。
いや。
分かっているつもりになっている。
(やめよう)
自分で止める。
今。
橋で何が起きているかは知らない。
再不斬がいるかもしれない。
白がいるかもしれない。
でも。
実際に見ていない。
なら。
決めつけない。
「奈良」
前からゲンマ。
「はい」
「顔がうるさい」
「……顔?」
「考えすぎだ」
カゲマルは少しだけ苦笑する。
「分かります?」
「最近はな」
スズと同じことを言われた。
「先生」
「なんだ」
「橋に着いたら、どうします?」
ゲンマは前を向いたまま答える。
「見てから決める」
それだけ。
カゲマルは目を瞬く。
「……それだけですか?」
「それ以外に何がある」
「いや、作戦とか」
「状況も分からんのに作戦立ててどうする」
カゲマルは黙った。
確かに。
「まず見る。次に考える。それから動く」
ゲンマが枝を蹴る。
「順番間違えるな」
「はい」
短い。
でも。
今のカゲマルには、それで十分だった。
後ろからレンが声を上げる。
「先生!」
「なんだ」
「橋まであとどれくらいですか!」
「喋る余裕あるなら速く走れ」
ゲンマが速度を上げた。
「聞かなきゃよかった!」
レンの悲鳴。
スズが横を走りながら言う。
「自業自得」
「スズ余裕あるな!?」
カゲマルは少し笑った。
怖い。
でも。
三人ともいる。
ゲンマもいる。
走れる。
まだ。
大丈夫だ。
---
魔鏡氷晶の中。
ナルトが膝をついた。
「はぁ……はぁ……」
腕。
脚。
肩。
千本が刺さっている。
致命傷は避けられている。
白が意図的に外していることなど、ナルトには分からない。
ただ。
痛い。
速い。
強い。
「くそ……」
立つ。
サスケも傷だらけだった。
だが。
目だけは。
白を追っている。
右。
左上。
背後。
攻撃。
移動。
また攻撃。
少しずつ。
見える。
「ナルト」
「何だよ……」
「次、俺の言う通りに動け」
「作戦あんのか?」
「今作る」
「今!?」
「黙れ」
白が動く。
サスケの瞳。
僅かに。
変化する。
鏡から鏡。
一瞬の軌道。
見えた。
「伏せろ!」
ナルトがしゃがむ。
サスケが手裏剣を投げる。
白の移動先。
金属音。
白が千本で弾いた。
「!」
初めて。
白の動きが止まる。
ほんの一瞬。
ナルトが顔を上げた。
「当たりそうだった!」
「まだだ」
サスケの呼吸も荒い。
でも。
口元が。
僅かに上がる。
「次は当てる」
白は鏡の中からサスケを見る。
(この子……)
成長している。
戦いながら。
自分の速度へ。
適応し始めている。
なら。
こちらも。
速度を上げる。
白が印を結ぶ。
「もう、終わらせます」
空気が変わった。
サスケが気づく。
「ナルト!」
無数の千本。
鏡のすべてから。
放たれる。
「うおおおっ!」
ナルトが腕で顔を守る。
避けきれない。
その前へ。
サスケが出た。
「サスケ!?」
身体で。
受ける。
一本。
二本。
十本。
それ以上。
「……っ」
サスケの身体が揺れた。
「サスケ?」
返事がない。
「おい」
ゆっくり。
サスケが倒れる。
ナルトが支えた。
「サスケ!」
血。
千本。
動かない。
「おい!」
ナルトの声が震える。
「ふざけんなよ……」
白が鏡の中から見ている。
「急所は――」
言いかける。
だが。
ナルトには届かない。
「なんで……」
サスケを見る。
自分を庇った。
いつも。
ムカつく奴。
偉そうで。
すぐ馬鹿にして。
喧嘩して。
でも。
一緒に戦った。
仲間。
「なんでお前が……!」
何かが。
切れた。
ナルトの身体から。
赤いチャクラが漏れる。
白が息を呑む。
「これは……」
冷たい空気が。
一変した。
鏡が。
震える。
ナルトが顔を上げる。
瞳。
牙。
その姿は。
さっきまでの少年とは違う。
「お前……」
低い声。
「絶対に許さねぇ」
赤いチャクラが。
爆発した。
---
「止まれ」
ゲンマが突然言った。
全員が枝の上で止まる。
レンが息を整える。
「どうしたんですか?」
ゲンマは前を見る。
カゲマルにも。
感じた。
空気。
遠く。
何かが。
膨れ上がった。
チャクラ。
巨大な。
不快なほど。
重いもの。
カゲマルの顔から血の気が引く。
知っている。
今度は。
間違えようがない。
「ナルト……」
呟いた。
ゲンマが横目で見る。
「分かるのか?」
しまった。
カゲマルは一瞬迷う。
でも。
完全な嘘をつく必要はない。
「あんなチャクラ、普通じゃない」
ゲンマは追及しなかった。
「そうだな」
千本を口元から抜く。
その瞬間。
普段の気の抜けた雰囲気が。
完全に消えた。
「ここから先は遊びじゃねぇ」
三人を見る。
レンが頷く。
スズも。
カゲマルも。
「はい」
ゲンマが言う。
「俺より前に出るな」
短く鋭い。
「行くぞ」
四人が再び走り出す。
橋はもうすぐそこだった。