転生したら奈良シカマルの双子の兄でした   作:ZAZAI

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登場人物が増えること難しい…
とても時間がかかってしまいました。

※この話から文章の添削にAIに使うことにしました。
AIの使用をよく思わない方もいると思いますが、ご了承下さい。


第三十七話 忍は道具

白の身体が、ゆっくりと傾いた。

 

カカシは雷切を解き、胸を貫いていた右腕を引き抜く。支えを失った白の身体が崩れ落ちる――その直前、再不斬の腕が動いた。

 

白の身体を押し退ける。

 

同時に首斬り包丁が振るわれ、カカシが大きく後ろへ跳んだ。白はそのまま橋の上へ倒れる。

 

「白!」

 

ナルトの声が響いた。

 

駆け寄ろうとするナルトを、再不斬は見ようともしない。その視線はカカシだけへ向いていた。

 

「……役には立った」

 

低い声だった。

 

ナルトの足が止まる。

 

「は?」

 

再不斬は首斬り包丁を構え直す。

 

「忍は道具だ。あいつは俺のために働き、俺のために死んだ。それだけのことだ」

 

「お前……」

 

ナルトの拳が震える。

 

カゲマルは何も言えなかった。

 

知っている言葉だった。

 

この後、何が起きるのかも知っている。けれど実際に白の身体を目の前にすると、記憶の中の物語とはまるで違った。

 

血の匂いがする。

 

白はもう動かない。

 

少し前まで、ナルトと話していた人間が死んでいる。

 

「カゲマル」

 

隣からスズの声。

 

「……大丈夫?」

 

カゲマルは一度だけ息を吐いた。

 

「うん」

 

大丈夫ではない。

 

それでも今は、それでいい。

 

ゲンマは白の亡骸を一瞥したあと、すぐに周囲へ視線を戻していた。表情から先ほどの感情は消えている。

 

「奈良」

 

「はい」

 

「前だけ見るな」

 

その一言で、カゲマルは気づいた。

 

白。

 

再不斬。

 

カカシ。

 

ナルト。

 

そこへ意識が集中していた。

 

自分たちの後ろにはタズナがいる。

 

「……はい」

 

カゲマルは向き直った。

 

レンもすぐにタズナの前へ立つ。スズは橋の入口側へ視線を巡らせていた。

 

ゲンマはそれ以上何も言わない。

 

それで十分だった。

 

一方、ナルトは違った。

 

「それだけって……なんだよ」

 

再不斬が僅かに顔を向ける。

 

「聞こえなかったか」

 

「聞こえたよ」

 

ナルトが白を見る。

 

「こいつ、お前のために戦ったんだぞ」

 

返事はない。

 

「お前を守るために死んだんだぞ!」

 

「だからどうした」

 

その言葉に、ナルトの顔が歪んだ。

 

「お前は……何とも思わねぇのかよ!」

 

「ナルト」

 

カカシが静かに呼ぶ。

 

だが、止めなかった。

 

ナルトは一歩前へ出る。

 

「白はお前のこと、本当に大切にしてたんだぞ!」

 

森で出会った時のことを思い出す。

 

薬草を摘んでいた白。

 

穏やかに笑っていた白。

 

大切な人を守る時、人は本当に強くなれる。

 

そう言った。

 

「自分の夢も、自分の命も、お前のために全部捨てて……それで!」

 

声が震える。

 

「お前は何とも思わねぇのかよ!」

 

再不斬は黙っている。

 

「本当にそれだけなのかよ!」

 

霧の中にナルトの声だけが響いた。

 

「だったら……だったら白があんまりじゃねぇか!」

 

カゲマルはナルトを見つめていた。

 

止める必要はない。

 

ここは。

 

自分が口を挟む場所ではない。

 

これはナルトが白と出会い、白の言葉を聞き、白と戦ったからこそ出てくる言葉だ。

 

未来を知っている自分には、決して代わることのできないものだった。

 

長い沈黙。

 

やがて再不斬が口を開いた。

 

「……ガキが」

 

声が。

 

僅かに掠れていた。

 

ナルトが顔を上げる。

 

「それ以上……何も言うな」

 

再不斬の頬を、一筋の雫が伝った。

 

霧の水滴ではない。

 

カゲマルの隣でレンが息を呑む。

 

スズも何も言わない。

 

再不斬は白の方を見なかった。

 

見られないのかもしれない。

 

「お前の言う通りだ」

 

静かな声。

 

「あいつは……俺には勿体ねぇくらい、優しすぎた」

 

ナルトの拳から力が抜けていく。

 

その時だった。

 

「いやぁ、感動的だねぇ」

 

場違いな声が響いた。

 

全員の視線が橋の入口へ向く。

 

霧の向こうから、小柄な男が姿を現す。

 

高価そうな服。丸い眼鏡。

 

そして、その後ろ。

 

数十人。

 

刀、槍、棍棒。

 

武器を手にした男たちが橋を埋めるように並んでいた。

 

タズナの顔が強張る。

 

「ガトー……!」

 

ガトーは笑った。

 

「ずいぶん派手にやってくれたじゃないか、再不斬」

 

再不斬の目が細くなる。

 

「てめぇ……」

 

「もう君に払う金はないよ」

 

ガトーが肩をすくめる。

 

「君もそこの白いのも、ここで死んでもらう。そうすれば報酬を払う必要もないからねぇ」

 

再不斬の殺気が変わった。

 

「……なるほどな」

 

カカシが苦無を構える。

 

ゲンマも千本を指に挟んだ。

 

「面倒なのが増えたな」

 

いつもの、少し気の抜けた声。

 

けれど視線は鋭い。

 

レンが男たちの数を見て顔を引きつらせる。

 

「先生。あれ、何人います?」

 

「数えたいなら勝手にしろ」

 

「いや、やめときます」

 

スズが小さく言う。

 

「三十以上」

 

「数えたの!?」

 

「見れば分かる」

 

「お前、こういう時だけ怖いな」

 

「朝倉」

 

ゲンマの声。

 

レンの表情が引き締まる。

 

「はい」

 

「タズナから離れるな」

 

「はい!」

 

ゲンマはカゲマルとスズにも視線を送る。

 

言葉は必要なかった。

 

三人がタズナの周囲へつく。

 

カゲマルは男たちを見ながら考える。

 

数は多い。

 

だが。

 

先ほど自分たちが戦った連中と同じなら、忍ではない。

 

こちらにはカカシとゲンマがいる。

 

第七班もいる。

 

戦力だけを考えれば――

 

「奈良」

 

「はい」

 

「また顔がうるさい」

 

カゲマルは一瞬黙った。

 

「……そんなに分かりやすいですか?」

 

「かなりな」

 

こんな状況なのに、レンが少し吹き出した。

 

スズも口元を僅かに緩める。

 

ゲンマは前を向いたまま言った。

 

「数えるのはいい。勝手に答えまで出すな」

 

カゲマルは男たちを見る。

 

その向こう。

 

まだ何があるか分からない。

 

「はい」

 

ガトーが再不斬を指差した。

 

「何してる! さっさと殺せ!」

 

男たちが前へ出る。

 

だが。

 

再不斬は動かなかった。

 

「おい、再不斬?」

 

「カカシ」

 

突然呼ばれ、カカシが目を細める。

 

「何?」

 

再不斬が首斬り包丁を見る。

 

先ほどまでの戦闘で傷ついた身体。

 

カカシとの戦いで両腕にも深い傷を負っている。

 

まともに武器を振るうのも難しい。

 

それでも。

 

「苦無、一本貸せ」

 

カカシは数秒、再不斬を見た。

 

そして。

 

苦無を投げる。

 

再不斬は口で柄を受け止めた。

 

レンが目を見開く。

 

「……マジかよ」

 

ゲンマが小さく息を吐く。

 

「見るなとは言わんが、真似はすんなよ」

 

「しませんよ!」

 

再不斬が歩き出す。

 

一歩。

 

また一歩。

 

ガトーの男たちへ。

 

「な、何してる!」

 

ガトーの笑みが消える。

 

再不斬は答えない。

 

口に苦無を咥えたまま。

 

ただ。

 

進む。

 

「殺せ! そいつを殺せ!」

 

男たちが一斉に襲いかかった。

 

再不斬の身体へ刃が刺さる。

 

それでも止まらない。

 

一人。

 

倒す。

 

さらに一人。

 

肩を斬られる。

 

腹を刺される。

 

それでも。

 

進む。

 

「なんだよ……あいつ」

 

レンの声が震える。

 

カゲマルは答えなかった。

 

怖い。

 

強いからではない。

 

もう。

 

自分がどうなっても構わない人間の歩き方だった。

 

ゲンマの表情が消えている。

 

カゲマルはその横顔を見る。

 

ほんの一瞬。

 

ミズキの時にも。

 

白が死んだ時にも感じたもの。

 

自分が危険へ飛び込んだ時、ゲンマが向ける視線とも少し似ていた。

 

「……先生」

 

「なんだ」

 

「いえ」

 

今は聞かない。

 

ゲンマも追及しなかった。

 

再不斬は進む。

 

何人に斬られても。

 

止まらない。

 

そして。

 

ついにガトーの前へ辿り着いた。

 

「ひっ……!」

 

ガトーが後ずさる。

 

「く、来るな!」

 

再不斬の目だけが。

 

笑った。

 

「地獄で……白に詫びろ」

 

苦無が閃いた。

 

ガトーの悲鳴が橋に響く。

 

その身体が橋の端から落ちていった。

 

静寂。

 

再不斬はその場に立っている。

 

血まみれで。

 

もう。

 

限界だった。

 

「……白」

 

小さな声。

 

再不斬の身体が傾く。

 

雪が。

 

降り始めた。

 

季節外れの。

 

白い雪。

 

再不斬は空を見る。

 

「カカシ……」

 

「何?」

 

「俺を……あいつのところへ」

 

カカシは何も言わなかった。

 

再不斬の身体を支え。

 

白の隣へ運ぶ。

 

横たえる。

 

再不斬は白の顔を見る。

 

初めて。

 

真正面から。

 

震える手を伸ばす。

 

頬に触れる。

 

「……すまなかったな」

 

ナルトが唇を噛む。

 

サクラは俯いた。

 

タズナも。

 

レンも。

 

スズも。

 

誰も言葉を発さない。

 

カゲマルは雪を見上げる。

 

知っていた。

 

この結末を。

 

それでも。

 

胸が苦しかった。

 

物語の登場人物ではない。

 

白も。

 

再不斬も。

 

ここで生きていた。

 

そして。

 

死んだ。

 

「……行けるなら」

 

再不斬が掠れた声で言う。

 

「お前と……同じところへ……」

 

それが最後だった。

 

再不斬の目が閉じる。

 

雪だけが。

 

静かに降り続ける。

 

しばらく。

 

誰も動かなかった。

 

やがて。

 

金属の音。

 

橋の向こう。

 

ガトーを失った男たちが、それでも武器を握っている。

 

「ガトーは死んだ!」

 

誰かが叫ぶ。

 

「もう関係ねぇ! この町ごと奪っちまえ!」

 

空気が再び変わる。

 

カカシが立ち上がる。

 

ゲンマも前へ出る。

 

ナルトが振り返った。

 

「まだやんのかよ……」

 

怒り。

 

疲労。

 

悲しみ。

 

全部が混じった声。

 

カゲマルも苦無を握る。

 

レンが拳を構え、スズも隣へ並んだ。

 

今度こそ。

 

戦うしかない。

 

そう思った時。

 

「待てぇぇぇぇ!!」

 

遠くから声が響いた。

 

男たちが振り返る。

 

霧の向こう。

 

橋の反対側から。

 

大勢の人影。

 

鍬。

 

棒。

 

包丁。

 

漁具。

 

武器と呼べるかも分からないものを手に。

 

波の国の人々が立っていた。

 

その先頭。

 

「ナルト兄ちゃん!」

 

イナリ。

 

ナルトの目が見開かれる。

 

「イナリ……!」

 

その後ろには。

 

もう。

 

怯えて家に閉じこもっていた人々はいなかった。

 

自分たちの国を。

 

自分たちの手で守るために。

 

立ち上がった人々がいた。

 

カゲマルは静かに息を吐いた。

 

ここも。

 

変わっていない。

 

いや。

 

違う。

 

原作を知っているからそう思うのではない。

 

ナルトが。

 

この国で。

 

自分の言葉と行動で変えたものだ。

 

だから。

 

自分が手を出す必要なんてなかった。

 

「……すごいな」

 

カゲマルが呟く。

 

隣のレンが頷く。

 

「ああ」

 

スズは人々を見ながら言った。

 

「これなら、向こうも簡単には来ない」

 

実際。

 

ガトーの男たちが怯み始めている。

 

ガトーは死んだ。

 

金を払う人間もいない。

 

そのうえ。

 

木ノ葉の忍が二班。

 

そして。

 

国の人間たち。

 

「割に合わねぇ!」

 

誰かが叫んだ。

 

一人が逃げる。

 

二人。

 

三人。

 

崩れるのは早かった。

 

男たちは次々と橋から逃げていく。

 

誰も追わなかった。

 

追う必要がない。

 

ゲンマが口元へ千本を戻す。

 

「終わりだな」

 

レンがその場へ座り込んだ。

 

「……疲れたぁ」

 

スズが見る。

 

「さっきまで立ってただけでしょ」

 

「精神的に!」

 

「それは分かる」

 

珍しく。

 

スズが同意した。

 

カゲマルも笑った。

 

小さく。

 

本当に。

 

小さくだけ。

 

そして。

 

白と再不斬を見る。

 

笑みが消える。

 

終わった。

 

波の国での戦いが。

 

ようやく。

 

終わった。

 

雪はまだ。

 

静かに降り続けていた。

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