~転生したら奈良シカマルの双子の兄でした~   作:ざいぜん

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第三話 影と友達

朝日が木ノ葉の里を照らしていた。

 

奈良家の庭では、今日も二人の少年が向かい合っている。

 

「始めろ。」

 

シカクの合図。

 

カゲマルは静かに息を吸った。

 

影は揺れない。

 

以前なら、チャクラを意識しただけで勝手に反応していた黒い影は、今では主人の呼吸に合わせるように静かに地面へ落ちている。

 

「いい。」

 

シカクが頷く。

 

「昨日より余計な反応が減った。」

 

「本当?」

 

「ああ。」

 

「お前はようやく、自分の力を怖がらなくなってきた。」

 

その言葉に、カゲマルは少しだけ笑った。

 

だが、その横では。

 

「ふぁぁ……。」

 

シカマルが大きな欠伸をしている。

 

「親父。」

 

「何だ。」

 

「兄貴ばっか褒めんな。」

 

「俺も頑張ってる。」

 

「お前は十分できてる。」

 

「じゃあ帰っていい?」

 

「駄目だ。」

 

「やっぱり。」

 

シカマルは地面へ寝転がった。

 

その姿にカゲマルは苦笑する。

 

(本当にブレないな。)

 

 

午前中の修行が終わる頃。

 

ヨシノが庭へ顔を出した。

 

「二人とも、おつかい頼めるかい?」

 

「また?」

 

シカマルが露骨に嫌そうな顔をする。

 

「今日は鹿せんべいも買ってきておくれ。」

 

「分かった。」

 

カゲマルは財布を受け取る。

 

「ほら、シカマル。」

 

「兄貴一人で行けばいいじゃん。」

 

「母さん。」

 

「シカマル。」

 

「……行きます。」

 

ヨシノには逆らえない。

 

奈良家共通の認識だった。

 

 

市場へ向かう途中。

 

「あ。」

 

カゲマルは昨日と同じ金色の髪を見つけた。

 

ナルトだ。

 

今日は橋の欄干へ寝転がり、空を見上げている。

 

「ナルト!」

 

カゲマルが呼ぶ。

 

ナルトは勢いよく起き上がった。

 

「あ!」

 

「カゲマル!」

 

「シカマル!」

 

昨日一緒に夕飯を食べただけなのに。

 

その笑顔は、何年も友達だったように明るかった。

 

「また来たってばよ!」

 

「いや、買い物。」

 

「なんだ。」

 

「残念。」

 

ナルトは少し肩を落とした。

 

その姿を見て、カゲマルは胸が締め付けられる。

 

(この子は……。)

 

(“また会える”こと自体が嬉しいんだ。)

 

それだけで。

 

誰かが自分を覚えてくれている。

 

約束を忘れていない。

 

その事実だけで笑える。

 

そんな幼少期を送ってきた。

 

「暇なのか?」

 

シカマルが聞く。

 

「うん!」

 

「じゃあ手伝え。」

 

「え?」

 

「荷物持ち。」

 

「いいのか!?」

 

「兄貴が昨日誘っただろ。」

 

「来るかどうかは、お前が決めろ。」

 

昨日のカゲマルの言葉を、そのまま真似していた。

 

ナルトは満面の笑みになった。

 

「行く!!」

 

 

市場。

 

「こんにちはー!」

 

ナルトが元気よく挨拶する。

 

昨日まで無視していた店も。

 

今日は奈良兄弟と一緒だからか、露骨な態度は取らない。

 

それでも。

 

笑顔は返ってこない。

 

ナルトも、それは分かっていた。

 

だから何も言わない。

 

ただ笑うだけ。

 

カゲマルは拳を握る。

 

(焦るな。)

 

(一気には変えられない。)

 

(少しずつでいい。)

 

シカクの言葉を思い出す。

 

“守ることと、道を決めてやることは違う。”

 

だから今日は。

 

ナルトの人生を変えようとはしない。

 

一緒に歩くだけ。

 

それだけで十分だ。

 

 

買い物帰り。

 

三人は公園へ寄った。

 

シカマルは芝生へ寝転び。

 

ナルトは木登りを始める。

 

「見てろ!」

 

「すげぇ高いとこまで登れるんだ!」

 

「落ちるぞ。」

 

カゲマルが言う。

 

「落ちねぇってば……」

 

その瞬間。

 

「うわっ!!」

 

足が滑った。

 

「ナルト!」

 

身体が落ちる。

 

反射だった。

 

カゲマルは印を結んでいない。

 

術を使うつもりもなかった。

 

ただ。

 

助けたい。

 

そう思った。

 

地面へ伸びた影が、一瞬で枝まで駆け上がる。

 

黒い影が、ナルトの身体をふわりと受け止めた。

 

ドサッ。

 

衝撃はほとんどない。

 

ナルトは目を丸くした。

 

「……え?」

 

影はすぐに元へ戻る。

 

誰にも見間違いではない。

 

確かに。

 

影が人を支えた。

 

カゲマル自身も息を呑む。

 

(今のは……。)

 

(影真似じゃない。)

 

(掴んだ。)

 

影に”質量”があった。

 

シカマルも起き上がる。

 

「兄貴。」

 

「今の。」

 

「ああ……。」

 

カゲマルは自分の影を見る。

 

静かだ。

 

何事もなかったように。

 

だが確かに。

 

ほんの一瞬だけ。

 

影は腕になった。

 

その様子を。

 

少し離れた屋根の上から、一人の忍が見ていた。

 

猿飛アスマ。

 

まだ若い上忍は、煙草を咥えたまま目を細める。

 

「……奈良の長男か。」

 

「面白い。」

 

影が人を受け止めた。

 

奈良一族の影秘術にはない現象。

 

(シカクには伝えなくても気付いてるだろうが。)

 

(こいつぁ普通じゃねぇ。)

 

アスマは静かに屋根から飛び降りた。

 

 

 

影は静かに元の形へ戻る。

 

まるで、最初から何も起こらなかったかのように。

 

カゲマルは、自分の足元へ落ちる影を見つめた。

 

今の感覚は何だったのか。

 

なぜ影が、あんな動きをしたのか。

 

答えはまだ分からない。

 

シカマルも、ナルトも、何も知らない。

 

屋根の上から見ていたアスマだけが、静かに目を細めていた。

 

「……奈良の長男か。」

 

その小さな出来事は、誰の記憶にも残らない一日として過ぎていく。

 

だが、カゲマルはまだ知らない。

 

この日、無意識に伸ばした一本の影が。

 

後に忍界そのものを驚かせる力の、最初の一歩だったことを。

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