転生したら奈良シカマルの双子の兄でした   作:ZAZAI

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第四十二話 中忍選抜試験

 

波の国から帰還して数日が経った。

 

第十一班は以前と同じように任務と訓練を繰り返していたが、三人の動きには少しずつ変化が表れていた。

 

レンが前へ出れば、スズは言われる前に周囲を確認する。カゲマルも二人の動きを一から十まで指示しなくなり、必要な時だけ声をかけるようになった。

 

劇的に強くなったわけではない。

 

それでも、三人で動くことには確実に慣れ始めていた。

 

その日の任務は、里外れにある倉庫から火影邸近くの集積所まで荷物を運ぶという、何の変哲もないDランク任務だった。

 

「重い……」

 

大きな木箱を抱えたレンが呻く。

 

「さっきからそれしか言ってないよ」

 

隣を歩くスズも箱を抱えているが、レンほど大きくはない。

 

「スズの箱、絶対軽いだろ」

 

「じゃあ交換する?」

 

「する!」

 

「嫌」

 

「なんで聞いた!?」

 

少し前を歩いていたカゲマルが振り返る。

 

「レン、自分で一番大きいの選んでたじゃん」

 

「一番大きいの持ったら格好いいかなって」

 

「誰に?」

 

レンが黙った。

 

スズが首を傾げる。

 

「誰に?」

 

「……俺に」

 

「なら満足して運んで」

 

「はい」

 

カゲマルは笑いながら前を向いた。

 

少し離れた後ろをゲンマが歩いている。いつものように千本を咥え、荷物は持っていない。

 

「先生も一個くらい持ってくださいよ!」

 

「俺は監督役だ」

 

「絶対楽してるだけですよね!?」

 

「気づいたか」

 

「認めた!」

 

そんなやり取りをしながら荷物を運び終え、依頼主から完了の署名を受け取る。

 

そのまま四人で火影邸へ向かった。

 

受付で書類を提出すれば今日の任務は終わり。レンはすでに昼飯の話を始めていたが、廊下を歩いている途中で、カゲマルは見覚えのある姿を見つけた。

 

紅。

 

その少し先にはアスマもいる。

 

二人とも、それぞれ紙を一枚手にしていた。

 

「アスマ先生?」

 

カゲマルが声をかけると、アスマが振り返る。

 

「おう、カゲマルか。波の国から帰ったんだってな」

 

「はい」

 

「随分面倒な任務になったらしいじゃねぇか」

 

「色々ありました」

 

「その割には元気そうだな」

 

「なんとか」

 

アスマはカゲマルの後ろにいるレンとスズにも目を向ける。

 

「そっちが第十一班か」

 

「朝倉レンです!」

 

「水無瀬スズです」

 

「猿飛アスマだ。カゲマルとは昔からちょっとな」

 

「昔から?」

 

レンが興味を示したところで、カゲマルが遮る。

 

「大した話じゃないよ」

 

「そう言われると気になる!」

 

「今度な」

 

アスマが笑い、手に持っていた紙を軽く振った。

 

カゲマルの目がそこへ向く。

 

上忍、あるいは担当教官が提出する書類。

 

この時期。

 

アスマと紅。

 

そして、数日前に火影邸で見た気配。

 

答えに辿り着くのは難しくなかった。

 

中忍試験。

 

「どうした?」

 

アスマに聞かれ、カゲマルは首を横に振る。

 

「何でもないです」

 

未来を知っているから分かったのか、それとも状況から推測できたのか。最近はその境界が少し曖昧になってきている。

 

アスマと紅に別れを告げ、第十一班は受付へ向かった。

 

任務完了の手続きを終えたところで、ゲンマが三人を呼び止める。

 

「朝倉、水無瀬、奈良」

 

いつもより少しだけ低い声だった。

 

レンが振り返る。

 

「はい?」

 

「話がある。ついてこい」

 

案内されたのは、火影邸の空いている小部屋だった。

 

机と椅子があるだけの簡素な部屋へ入り、三人が並ぶ。

 

ゲンマは扉を閉めると、懐から一枚の紙を取り出した。

 

カゲマルには、もう内容が分かっていた。

 

「近いうちに中忍選抜試験が行われる」

 

レンの目が見開かれる。

 

「中忍試験!?」

 

スズも僅かに表情を変えた。

 

ゲンマは二人の反応を確認してから続ける。

 

「他里からも下忍が集まる。筆記、実技、内容は毎回同じじゃないし、途中で怪我する奴もいる。場合によっちゃ死ぬ」

 

レンの表情から浮ついたものが消えた。

 

「参加には担当教官の推薦が必要だ」

 

ゲンマが持っていた紙を机へ置く。

 

推薦書。

 

三人の視線がそこへ集まった。

 

「俺は、お前ら三人を推薦できる」

 

レンが息を呑む。

 

スズは黙っている。

 

カゲマルも推薦書を見る。

 

ついに来た。

 

中忍試験。

 

原作で覚えている光景が次々と頭をよぎる。

 

我愛羅。

 

大蛇丸。

 

死の森。

 

音隠れ。

 

木ノ葉崩し。

 

ここから先は、波の国とは比べものにならないほど多くの出来事が重なっていく。

 

しかも今の世界は、すでに自分が知っている物語と完全には一致していない。

 

「奈良」

 

ゲンマの声で思考が切れた。

 

「はい」

 

「顔」

 

「……すみません」

 

レンが横から覗き込む。

 

「カゲマル、さっきから難しい顔してるぞ」

 

「ちょっと考えてただけ」

 

「考えるのはいい」

 

ゲンマは壁に背中を預ける。

 

「ただし、まだ推薦するとは言ってない」

 

「え?」

 

レンが推薦書とゲンマを交互に見る。

 

「今、推薦できるって……」

 

「できると言った。するとは言ってない」

 

「違うんですか!?」

 

「違うな」

 

レンが頭を抱えた。

 

「先生、そういう言い方好きですよね……」

 

スズが推薦書を見ながら聞く。

 

「何か条件があるんですか?」

 

「ない」

 

「じゃあ、どうやって決めるんです?」

 

「お前らが決めろ」

 

三人が黙った。

 

ゲンマは続ける。

 

「中忍になる気があるのか、そのために試験を受けるのか。まずそこを自分で考えろ」

 

レンが口を開く。

 

「受けます!」

 

早い。

 

ゲンマの眉が動く。

 

「理由は?」

 

「中忍になりたいからです!」

 

「なんで?」

 

「なんでって……」

 

勢いが止まった。

 

「中忍って、下忍より上ですよね?」

 

「そうだな」

 

「強い忍ってことですよね?」

 

「必ずしもそうじゃない」

 

レンが固まる。

 

ゲンマは千本を指で摘み、口から外した。

 

「中忍は強さの資格じゃねぇ。状況によっちゃ隊を任されるし、自分だけじゃなく他人の命まで判断する立場になる」

 

レンは黙って聞いている。

 

「戦えるだけなら下忍でも強い奴はいる。中忍に求められるのは、任務を理解して、人を見て、必要なら退く判断ができることだ」

 

波の国での経験があるからこそ、その言葉は三人に重く届いた。

 

もしあの時、自分たちだけで再不斬や白と戦えと言われていたら。

 

誰を戦わせ、誰を守り、どこで退くのか。

 

カゲマルにも正解は分からない。

 

「朝倉」

 

「はい」

 

「それでも受けたいか?」

 

レンはすぐには答えなかった。

 

少し考えてから、自分の手を見る。

 

「……受けたいです」

 

「理由は?」

 

「今はまだ、ちゃんと分かんないです。でも、俺はもっとできるようになりたいし、いつか誰かに任せてもらえる忍になりたい」

 

言葉を選びながらの答えだった。

 

ゲンマは何も評価せず、次にスズを見る。

 

「水無瀬」

 

「私は……迷ってます」

 

レンが驚いて横を見る。

 

「スズ、受けないの?」

 

「受けないとは言ってない」

 

スズはゲンマを見る。

 

「波の国で、自分に足りないものが多いって分かりました。今受けていいのかは、正直分かりません」

 

「なるほどな」

 

「でも」

 

スズは少しだけ視線を下げ、それから続けた。

 

「他里の下忍がどのくらいなのかは、見てみたいです」

 

ゲンマの口元が僅かに上がる。

 

「お前らしいな」

 

最後に視線がカゲマルへ向いた。

 

「奈良」

 

来ると思っていた。

 

中忍試験が始まることも、自分が参加する可能性が高いことも分かっていた。

 

だからこそ、すぐに答えるべきではない気がした。

 

未来を知っているから受けるのか。

 

仲間を守るために受けるのか。

 

大蛇丸や我愛羅を警戒するために参加するのか。

 

それとも。

 

奈良カゲマルという一人の下忍として、中忍を目指すのか。

 

「……受けたいです」

 

ゲンマの目が細くなる。

 

「理由は?」

 

「自分がどこまでできるのか、知りたいから」

 

言葉にしてみると、思っていたより単純だった。

 

「波の国で、俺は知らないことが多いって分かりました。自分より強い忍もたくさんいるし、判断を間違えたら仲間が死ぬこともある」

 

カゲマルはレンとスズを見る。

 

「だから今の自分が、どこまで通用するのか知りたいです」

 

少し間を置いて付け加える。

 

「それに、二人と受けたい」

 

レンが笑った。

 

スズも僅かに目元を緩める。

 

ゲンマは三人を順番に見たあと、机の推薦書を手に取った。

 

「分かった」

 

そして。

 

紙を破いた。

 

「えええええ!?」

 

レンの声が小部屋に響いた。

 

カゲマルも思わず目を見開く。

 

スズですら固まっている。

 

「先生!?」

 

「何だ」

 

「なんで破ったんですか!?」

 

「これは見本だ」

 

「見本!?」

 

ゲンマは懐から別の紙を三枚取り出した。

 

そこにはすでに三人の名前が書かれている。

 

奈良カゲマル。

 

朝倉レン。

 

水無瀬スズ。

 

「昨日、出してある」

 

沈黙。

 

最初に動いたのはレンだった。

 

「じゃあ今の話なんだったんですか!?」

 

「確認」

 

「推薦した後に!?」

 

「嫌なら取り下げるつもりだった」

 

「順番おかしくないですか!?」

 

「別に」

 

「先生ぇ!」

 

ゲンマは面倒そうに耳を押さえる。

 

スズが小さく息を吐いた。

 

「でも、私たちが受けるって思ってたんですね」

 

ゲンマが一瞬だけ黙る。

 

「まあな」

 

レンの顔が変わった。

 

「先生……」

 

「気持ち悪い顔すんな」

 

「今ちょっと感動してたのに!」

 

「知らん」

 

カゲマルは笑いながら、机に置かれた三枚の書類を見る。

 

中忍選抜試験。

 

いよいよ、ここまで来た。

 

怖くないわけではない。むしろ、この先に何が待っているのかを知っているからこそ、怖い。

 

ただ、波の国へ向かう前とは違う。

 

今の自分には、第十一班がいる。

 

「詳細は明日説明する。今日は帰れ」

 

ゲンマが扉を開ける。

 

「先生」

 

カゲマルが呼び止めると、ゲンマが振り返った。

 

「俺たち、受かると思います?」

 

「知らん」

 

即答だった。

 

「ですよね」

 

「ただ」

 

ゲンマが三人を見る。

 

「受かる可能性がない奴は推薦しねぇよ」

 

それだけ言って部屋を出ていった。

 

レンがしばらく扉を見つめる。

 

「……先生、たまに格好いいこと言うよな」

 

「たまに余計」

 

「スズ厳しくない?」

 

カゲマルは笑いながら推薦書へ目を落とした。

 

中忍試験。

 

知っている未来へ近づいているはずなのに、そこへ向かう自分はもう、原作には存在しなかった奈良カゲマル一人ではない。

 

朝倉レンと、水無瀬スズ。

 

三人で挑む試験になる。

 

 

 

---------------------------------------------

 

 

同じ頃、別の場所でも担当上忍から推薦の話を聞いた下忍たちが、それぞれの答えを出していた。

 

第八班。

 

第十班。

 

そして、第七班。

 

「中忍試験!?」

 

聞き慣れた大声が部屋に響く。

 

ナルトは椅子から立ち上がり、目を輝かせていた。

 

「もちろん出るってばよ!」

 

サクラが隣で顔を引きつらせる。

 

「ちょっとナルト! ちゃんと説明聞きなさいよ!」

 

サスケは二人のやり取りを横目に、カカシから渡された申込書を見る。

 

中忍選抜試験。

 

その文字をしばらく眺めたあと、サスケはふと思い出した。

 

波の国で合流した、もう一つの班。

 

「……あいつも出るのか」

 

「ん?」

 

ナルトが振り返る。

 

「誰だってばよ?」

 

「別に」

 

「なんだよ、気になるだろ!」

 

サスケは答えない。

 

だがナルトもすぐに同じ人物へ辿り着いた。

 

「あ! カゲマルか!」

 

サスケの眉が動く。

 

「なんで分かった」

 

「やっぱりそうじゃねぇか!」

 

「うるさい」

 

ナルトはさらに笑った。

 

「だったら絶対負けられねぇな!」

 

「お前はまず一次試験で落ちない心配しろ、ウスラトンカチ」

 

「なんだとぉ!?」

 

二人の声を聞きながら、サクラは頭を抱える。

 

カカシはいつもの笑みを浮かべたまま、三人を眺めていた。

 

木ノ葉の新人下忍たちが、同じ場所へ集まり始める。

 

カゲマルが知っている物語と、少しずつ形を変え始めた現実。

 

その二つが再び大きく交わる時が、近づいていた。

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