~転生したら奈良シカマルの双子の兄でした~   作:ざいぜん

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第五話 影は心を映す

 

「……夢、だったのか。」

 

翌朝。

 

目を覚ましたカゲマルは、昨夜の出来事を思い返していた。

 

月明かりの下。

 

人の形をした影。

 

あれは確かに見た。

 

だが、目を擦った次の瞬間には消えていた。

 

「兄貴。」

 

隣からシカマルが顔を覗き込む。

 

「今日も変な顔。」

 

「最近そればっかり言うな。」

 

「本当だから。」

 

シカマルは欠伸をしながら立ち上がる。

 

「母ちゃん呼ぶぞ。」

 

「それはやめろ。」

 

「一番効く。」

 

「お前、それしか言わないな。」

 

「便利だから。」

 

カゲマルは思わず笑った。

 

こんな何気ない朝が、少しだけ心を軽くしてくれる。

 

朝食を終えた後。

 

シカクは二人を庭へ呼んだ。

 

「今日は修行じゃねぇ。」

 

「え?」

 

「話だ。」

 

珍しい。

 

修行より先に話だけというのは初めてだった。

 

シカクは二人の前へ座る。

 

「昨日、火影様のところへ行ってきた。」

 

シカマルは「へぇ」とだけ返事をする。

 

一方、カゲマルの背筋は自然と伸びた。

 

「火影様も、お前の力に興味を持たれた。」

 

「俺に?」

 

「ああ。」

 

シカクは少し考えてから続ける。

 

「ただし、安心しろ。」

 

「研究材料にするつもりも、一族の秘密として閉じ込めるつもりもない。」

 

「火影様は、まず見守れと言われた。」

 

カゲマルは小さく息を吐いた。

 

前世の知識では、ヒルゼンは子どもを道具として扱う人物ではない。

 

それでも、自分の存在が歴史から外れたものである以上、不安は消えなかった。

 

「親父。」

 

シカマルが手を挙げる。

 

「兄貴の影って、結局なんなんだ?」

 

シカクは腕を組んだ。

 

「まだ分からん。」

 

「分からんけど、一つだけ確かなことがある。」

 

二人を見る。

 

「影は嘘をつかねぇ。」

 

「……?」

 

カゲマルは首を傾げた。

 

「人は口では何とでも言える。」

 

「平気だ。」

 

「怖くない。」

 

「怒ってない。」

 

「そう言っても、本心は違うことがある。」

 

「だが影は違う。」

 

シカクは自分の影へ視線を落とした。

 

「影は、心の形だ。」

 

「奈良一族の術は、その心を使って影を動かす。」

 

「だから心が乱れれば、影も乱れる。」

 

「逆に、心が澄めば、影は驚くほど素直になる。」

 

カゲマルは昨夜を思い出す。

 

ナルトを助けたい。

 

その時だけ、影は自然に動いた。

 

術を使おうとした時は、何も起きなかった。

 

「つまり。」

 

シカマルがまとめる。

 

「兄貴は考えすぎってことか。」

 

「……そういうことだ。」

 

シカクは苦笑した。

 

「お前が一番簡単に言うな。」

 

「事実だろ。」

 

「否定できない。」

 

午後。

 

奈良家へ一人の客がやって来た。

 

「邪魔するぞ。」

 

低い声。

 

玄関へ立っていたのは、猿飛アスマだった。

 

「おう。」

 

シカクが迎える。

 

「珍しいな。」

 

「今日は仕事じゃない。」

 

アスマは庭へ目を向けた。

 

「少し、カゲマルと話したくてな。」

 

カゲマルは少し驚いた。

 

「俺と?」

 

「ああ。」

 

アスマは庭へ降りる。

 

シカマルも興味津々で付いてきた。

 

「昨日のことは聞いた。」

 

「ナルトを助けたらしいな。」

 

「……はい。」

 

「良い判断だった。」

 

その一言に、カゲマルは少しだけ肩の力が抜ける。

 

「でも。」

 

アスマは笑う。

 

「術は六十点だ。」

 

「え?」

 

「助けられた。」

 

「それは満点。」

 

「だが、自分でも何をしたか分かってない。」

 

「それじゃ次は使えねぇ。」

 

確かに、その通りだった。

 

「忍はな。」

 

アスマは一本のクナイを取り出した。

 

ひらり、と上へ放る。

 

落ちてきた瞬間。

 

指先だけで器用に受け止める。

 

「偶然勝つことはある。」

 

「でも、本当に強い奴は偶然を減らす。」

 

「再現できるようにする。」

 

カゲマルは真剣な表情で聞いていた。

 

「だから。」

 

アスマはクナイをしまう。

 

「お前は、自分の影を観察しろ。」

 

「戦うな。」

 

「命令するな。」

 

「まず知れ。」

 

その言葉は、シカクの教えとどこか似ていた。

 

「今日から毎日。」

 

「影が勝手に動いた時。」

 

「何を考えてたか。」

 

「何を感じてたか。」

 

「全部書け。」

 

「日記……ですか?」

 

「そうだ。」

 

アスマは笑う。

 

「忍でも記録は大事だ。」

 

「自分の癖を知る奴が、一番強くなる。」

 

カゲマルは静かに頷いた。

 

「やります。」

 

「よし。」

 

その返事を聞いて、アスマは満足そうに笑った。

 

少し離れた場所で、その様子を見ていたシカクも小さく頷く。

 

(悪くねぇ。)

 

(こいつには、俺とは違う視点を教えてやれる。)

 

アスマはまだ正式な師ではない。

 

だが、この日から。

 

カゲマルにとって「父親以外で初めて自分を理解しようとしてくれた大人」となった。

 

そしてその夜。

 

カゲマルは、アスマに言われた通り帳面を開いた。

 

『影が動いた時の記録』

 

一ページ目。

 

震える字で、こう書く。

 

ナルトを助けたいと思った。

 

シカマルを守りたいと思った。

 

怖いと思った。

 

嬉しいと思った。

 

どれも、人のためだった。

 

最後に、少し迷ってから一行を書き足す。

 

自分のために動いたことは、一度もない。

 

その文字を見つめた瞬間。

 

机の上に伸びた影が、ほんのわずかに揺れた。

 

まるで、その言葉に頷くように。

 

カゲマルは気づかない。

 

しかし読者だけが知る。

 

影が求めているものは、力ではない。

 

"誰かを想う心"なのだということを。

 




もし「ここはこうした方が読みやすいよ」「この表現の方が自然かも」といった改善点があれば、ぜひ教えていただけると嬉しいです。
もちろん、感想や応援のコメントもとても励みになります!

温かく見守っていただけたら幸いです。
これからも『NARUTO ~転生したら奈良シカマルの双子の兄でした~』をよろしくお願いします!
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