春の風が、木ノ葉の里を優しく吹き抜ける。
奈良家の庭では、一人の少年が木陰に寝転がっていた。
「兄貴ー。」
「んー?」
「起きろ。」
「あと五分……。」
「母ちゃん呼ぶぞ。」
「起きます。」
勢いよく飛び起きたカゲマルを見て、シカマルが小さく吹き出した。
「兄貴って、母ちゃんには弱いよな。」
「勝てる奴いるか?」
「いない。」
兄弟は顔を見合わせて笑う。
その頃には、二人とも七歳になっていた。
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幼い頃から続けてきた影との修行。
毎日少しずつ。
焦らず。
無理をせず。
積み重ねてきた。
最初は勝手に動くだけだった影も、今では短い距離なら意識して伸ばせるようになっていた。
物を少し押す。
転びそうな相手を支える。
それ以上はまだできない。
だが、カゲマルは焦らなかった。
影は力で従わせるものではない。
そのことだけは、誰よりも理解していた。
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「兄貴!」
玄関から元気な声が響く。
「遊ぼうってばよ!」
ナルトだった。
「ああ、今行く。」
「俺も行く。」
シカマルも立ち上がる。
三人はいつものように森へ向かった。
昔は一人ぼっちだったナルトも、今では奈良兄弟と過ごす時間が当たり前になっていた。
笑い声が絶えない。
それだけで十分だった。
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夕方。
遊び疲れた三人は丘の上へ寝転ぶ。
「なぁ。」
ナルトが空を見上げたまま言う。
「もうすぐアカデミーだって。」
「そうだな。」
カゲマルは空を見上げる。
ついに来た。
原作が、本格的に動き始める。
(ここから先は……。)
(俺の知っている未来と同じになるのか。)
(それとも。)
(もう変わり始めているのか。)
横を見る。
ナルトは笑っている。
原作より、ずっと自然な笑顔で。
その姿を見て、カゲマルも自然と笑みがこぼれた。
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その夜。
シカクが二人を呼んだ。
「座れ。」
兄弟は正座する。
珍しくヨシノも隣にいる。
「明日から、お前たちは忍者学校へ通う。」
「はい。」
「一つだけ覚えておけ。」
シカクは二人を真っ直ぐ見た。
「学校は強さを競う場所じゃねぇ。」
「仲間を知る場所だ。」
「仲間を知れば、自分も見えてくる。」
「特にお前だ。」
シカクの視線はカゲマルへ向く。
「自分一人で全部背負おうとするな。」
「……。」
胸が少し痛んだ。
まるで見透かされているようだった。
「兄弟がいる。」
「仲間ができる。」
「頼れるなら頼れ。」
「それも忍の強さだ。」
カゲマルは静かに頷く。
「はい。」
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翌朝。
木ノ葉隠れの里。
アカデミーの前には、大勢の子どもたちが集まっていた。
緊張した表情。
はしゃぐ声。
保護者たちの笑顔。
その中で、一人だけ金髪の少年が落ち着きなく辺りを見回していた。
「ナルト。」
「おっ! カゲマル!」
ナルトは満面の笑みで駆け寄ってくる。
「隣、座ろうぜ!」
「ああ。」
その様子を少し離れた場所から、一人の黒髪の少年が静かに見つめていた。
黒い瞳。
整った顔立ち。
年齢に似合わぬ落ち着いた雰囲気。
(あれが……。)
うちはサスケ。
兄・イタチの背中を追い続ける少年。
カゲマルもまた、その視線に気付く。
一瞬だけ。
二人の目が合った。
言葉はない。
だが、その短い交差は。
未来へ繋がる最初の出会いだった。
教室の扉が開く。
「はい、席についてくださーい!」
元気な声とともに、一人の青年が入ってくる。
イルカだった。
こうして――
奈良カゲマルのアカデミー生活が、幕を開ける。