「はい、静かにー!」
教室へ響く元気な声。
イルカが教壇を軽く叩くと、騒がしかった教室は少しずつ静かになっていく。
「今日からみんなは木ノ葉隠れの忍者アカデミーの生徒だ!」
「これからたくさん勉強して、たくさん修行して、立派な忍者を目指してもらう!」
教室中に期待と緊張が入り混じる。
カゲマルは周囲を見渡した。
(揃ったな……。)
教室には、見慣れた顔が並んでいる。
奈良シカマル。
秋道チョウジ。
山中いの。
犬塚キバ。
油女シノ。
日向ヒナタ。
そして――
うちはサスケ。
(未来の木ノ葉を支える世代。)
(ここから全員の人生が動き始める。)
前世の記憶があるからこそ、その重みを知っていた。
だが。
(変えようとはしない。)
(必要な時だけ、手を伸ばす。)
それがカゲマルの決めた生き方だった。
⸻
「まずは自己紹介だ!」
イルカの一言で、教室の空気が少し和らぐ。
順番に前へ出て、自分の名前を名乗っていく。
「秋道チョウジです。お菓子が好きです。」
「山中いの! 将来は綺麗なくノ一になる!」
「犬塚キバ! 誰にも負けねぇ!」
元気な声が続く。
やがて、一人の少年が立ち上がった。
「うちはサスケ。」
短い。
それだけだった。
教室が静まり返る。
女子たちはざわめき始める。
「かっこいい……。」
「やっぱりうちは一族ね。」
サスケは何も言わず席へ戻る。
その視線は、一度だけカゲマルへ向いた。
ほんの一瞬。
すぐ逸れる。
(見られてる。)
カゲマルはそう感じた。
⸻
「次、奈良カゲマル!」
教壇へ立つ。
教室中の視線が集まる。
「奈良カゲマルです。」
「好きなものは、昼寝と将棋。」
シカマルが小さく吹き出す。
「兄貴、それ俺と同じ。」
「兄弟だからな。」
教室から小さな笑いが起こる。
「それと――」
カゲマルは少しだけ考えて続けた。
「困っている人を放っておけません。」
短い一言だった。
ナルトだけが、少し嬉しそうな顔をした。
⸻
授業が始まって数日。
基礎体術。
手裏剣。
チャクラの扱い。
どれもカゲマルは上位だった。
だが。
一番ではない。
走ればキバ。
手裏剣ならサスケ。
体術もサスケ。
力はチョウジ。
それぞれに得意がある。
カゲマルは、それを眺めるのが好きだった。
(みんな才能が違う。)
(だから面白い。)
⸻
昼休み。
屋上。
「兄貴。」
シカマルが寝転ぶ。
「サスケ、お前見てたぞ。」
「気付いてた。」
「なんで?」
「分からない。」
本当は少しだけ分かる。
サスケは強い相手を探している。
兄・イタチへ届くために。
誰よりも強くならなければならない。
だからこそ、目立たずとも安定して成績を残すカゲマルが気になるのだ。
「めんどくさい奴だな。」
シカマルは欠伸をした。
「お前が言うか。」
兄弟は笑う。
⸻
その日の放課後。
校庭。
イルカが木製の人形を並べる。
「今日は模擬戦だ!」
「二人一組!」
教室が一気に盛り上がる。
「奈良カゲマル!」
イルカが名簿を見る。
「相手は――」
一拍置く。
「うちはサスケ!」
ざわり。
教室が静まり返った。
サスケはゆっくり前へ出る。
カゲマルも歩き出す。
二人は向かい合った。
互いに構える。
サスケの瞳は鋭い。
だが、敵意ではない。
純粋な興味。
(どんな奴なんだ。)
その視線だった。
一方のカゲマルも静かに息を整える。
(まだ勝つ必要はない。)
(でも、手は抜かない。)
イルカが右手を上げる。
「それでは――」
「始め!」
二人の足が同時に地面を蹴った。