白銀さんちの超高校級   作:るるトゥ

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プロローグ 白銀廻は転校したい/石上優は食べてみたい

 

 

ゴクリ。

クラスメイトの誰かがそんなふうに息を呑んだ。

 

僕たちの視線の先にいるのは、白銀の髪を持つボーイッシュ美少女転校生。だが容姿なんかよりも僕らには目を吸い寄せられる点があった。

 

“白銀”(めぐり)

 

黒板に丁寧に書かれた、白銀という苗字。

今の秀知院学園生ならば、そこから想像する人物は一人しかいないだろう。

少なくとも、僕には一人しか想像できない。

 

現生徒会長こと“白銀”御行。

 

周囲から疎まれやすい外部入学組なのにも関わらず、圧倒的な努力と才能でこの学校のトップに至った男。

かの四大財閥の令嬢たちをも下して、勉学の頂点に座する男。

そして、僕こと石上優が大恩を感じている男でもある。

 

「えっと⋯生徒会長って、白銀さんの御兄妹なんですか?」

 

クラスカースト最上位の女子が、遠慮がちに白銀さんに問う。

陽キャという時点で僕からすれば敵に違いないが、今だけは感謝しておこう。

 

僕には聞けるようなことじゃないし。

 

「えぇ、そうですね。たしかに白銀御行は、僕の血のつながった兄弟です。ですが、遠慮せずに話しかけてくれると嬉しいです。もちろん兄様のことについて聞いてくれても構いませんよ。まぁ、学校でのイメージと違ったりするかもしれませんが。」

 

陽キャだ、ものすごい陽キャだ。

それにしても一人称が僕だなんて⋯口には出せないけど、なんか男っぽいなぁ。

そういえば“兄妹”のイントネーションがちょっと違ったような⋯。

 

いやいやいや、さすがに気のせいでしょ。

だってこんな美少女だし。

男の娘なんて空想の産物だろ?

うん、絶対きっとそうに違いない!!

 

石上 は むりやりなっとくした

 

まぁ会長の妹なら仲良くでき────

 

「言い忘れていましたが、こんな容姿でも僕は男ですので。」

 

へぇ、男だったんだぁ。おとこ、オトコ⋯⋯男!?

 

そうして、朝っぱらから僕のクラスでは大絶叫が響いた。

だけど、まさか伊井野まで一緒になって叫ぶとは⋯さすがに想像できなかったなぁ。

 

外部入学とはいっても、会長のいもう⋯弟だからハブられることはないと思うけど、まぁ仲良くしてみよう。

いや待てよ⋯僕の方がハブられそうだから、仲良くしてもらうのほうが正しくないか?

 

あれ?なんだか視界が霞んできたような⋯。

 

 

 

───*───

 

 

 

転校デビューは成功、と言っても間違いではないかもしれません。

皆さん、授業の合間の休み時間にたくさん話しかけてくれますし。

 

それにしても⋯外部入学者に対してこの学校は冷たいと前の学校の先輩から聞いていたんですけど、案外大丈夫でしたね。

まぁそれに関しては、少なからず兄様の影響があるのでしょうけど。

 

けれど⋯はぁ。

まさか原作に関わることになってしまうとは。

できる限り、シナリオに影響を与えれる環境にいたくなかったのですが。

変にシナリオを改変しないために、断腸の思いで兄妹の中で僕だけ秀知院じゃないところに進学した僕の気持ちはいったいなんだったのでしょう⋯。

 

まぁもうそんなことを気にしたところで、あとの祭りというヤツなのですけどね。

僕を転生させたあの神様は絶対に許しません。

このチートという名の“才能”をくれたことには感謝してますけど、主人公の血縁に転生させる必要はかすかにもなかったでしょうに。

 

先に言っておきますと、僕は転生者と呼ばれる存在です。

それも、前世に存在していた漫画…【かぐや様は告らせたい】の中へと転生したのです。

 

まぁ内容に関しては、ほとんど知りませんけれども。

ラブコメ漫画ということくらいしか知りませんけど(血の涙)!!

 

僕を転生させた神様からなかなか便利なチートをもらったりもしています。

どんなチートをもらったのか、ですか?

それはこの後のお楽しみということで、あと少しだけ内緒にさせてもらいますね。

 

「さてさて、ここらへんでお昼ご飯を食べるとしましょうかね。」

 

心地よい程度の暖かさな日光が照りさしてくるベンチ。

そこに腰掛け、僕は作ってきたお弁当の包みを開こうとする。

 

「あ。」

 

僕のすぐ近くからそんな声が響いてきた。

顔を上げて声のしたほうを見てみると、そこには前髪で片目を隠しているクラスメイトの少年…石上優が立っている。

その手には、前世のYo○Tubeのショートに流れていたように、彼のアイデンティティとも言えるようなゲームを握りしめて。

 

「あー⋯クラスにいないと思ったら、こんなとこにいたんだな。」

 

どこか気まずそうに頬をかきながら、石上くんはそう告げた。

 

「校内の探検も兼ねて、校舎の外で食べようかなぁと思いましたので。そういう石上くんは……ゲーム、ですか?」

 

「あっ。まぁ、うん…そうとも言うな。」

 

ゲームのことを指摘された瞬間、一気に言葉の歯切れが悪くなる。

たぶん注意されたりするとか、そういうことを考えているんでしょうね。

 

それがどこかおかしくて、僕はつい笑いをこぼしてしまった。

 

「ふふっ、そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。石上くんがゲーム機を持っていることを誰かに言うことはしませんので。まぁでもここでゲームをするのはダメですし、大丈夫なところへと移動するとしましょう。」

 

そんな僕の言葉に、石上くんはただただポカンとした表情を浮かべるのでした。

 

 

 

───*───

 

 

 

「ここなら校則違反にならずに、なんの憂いもなくゲームができるはずですよ、石上くん。……って、もしかして余計なお世話でしたか?」

 

僕は驚愕することしかできなかった。

驚きの原因は、今日来たばかりの転校生…白銀廻。

 

ゲームをしようと教室を出た先で、まさか白銀に出会うとは思っていなかった。

見つかった時は少なからず軽蔑されると思ったが───まさかルールの抜け穴を教えられることになるとは。

 

……まぁ抜け穴の存在は知ってたけど。

 

倍率数百倍の編入試験を突破してきたのだから、もっと真面目なヤツだと思っていたのだが───

 

「なんか、独特なヤツだな。」

 

「なにか言いましたか、石上くん。」

 

「いや、なんでもない。」

 

「そうですか?なら良いのですが…。」

 

そういえば、僕は白銀に自己紹介したっけ?

 

「どうして自己紹介もしていないのに名前を知られているのか、不思議そうですね。」

 

え?

僕ってば、まさか無意識で口に出してた?

 

「いえ、口には出ていませんよ。表情からどんなことを考えてるのか、読み取っただけですので悪しからず。」

 

いや怖っ。

 

表情から思考を読み取るとか、いったいどんな超人だよ。

漫画の中から飛び出てきたのか?

 

「漫画の中から出て来たとは…なかなか面白い考えですね。それで、どうして僕が石上くんの名前を知っているのかですが、兄様から貴方のことを少なからず聞いていたというのが正解です。」

 

兄様というと……あぁ、会長のことか。

たしかに兄弟だから、そういうことを話しててもおかしくはないしね。

 

「では、そろそろお昼をいただくとしましょうか。」

 

「え?ここで食べるのか?」

 

「ご一緒させてもらうつもりだったのですが……ご迷惑だったでしょうか?石上くんが嫌ならば、すぐに退きますが。」

 

悲しそうにしゅんと口をすぼめる白銀。

くっ…白銀は男なのに、なんで僕は可愛いと思ってしまうんだ!!

 

僕の中にいる天使と悪魔が交互に告げてくる。

 

天使『僕なんかにこんな優しくしてくれた白銀の誘いを断るなんて可哀想だぞ!!』

 

悪魔『そうだそうだー!!それに会長の弟なんだから、日頃の感謝も込めてご一緒してやれー!!』

 

あ、ダメだこれ。

反対派が一人もいない。

 

「い、いや…別にいいよ。でもこのゲームは一人プレイ用だから、横で見てもらうことになるぞ?」

 

「構いませんよ。友人が楽しんでいるところを見るのも、僕は好きなので。」

 

白銀の性格の良さばかりに気を取られていたこの時の僕は、完全に聞き逃していた。

その単語、“友人”という単語を。

 

「いただきます。」

 

白銀が両手を合わせて、そうつぶやく。

 

ふと、僕は思った。

白銀の兄である会長はかつてこんなことを言っていたような覚えがある。

 

『俺の兄弟…廻の料理より美味しいものを、俺は食べたことがない。』

 

なぜこんなタイミングで、その言葉を思い出したのかは分からない。

だが思い出せたことにより、少なからず僕は白銀の弁当に興味を抱いた。

 

ゆっくりと蓋が開かれていく。

そうして僕の視界には、ソレが映し出された。

 

僕はほんの一瞬、弁当の中身を金銀財宝の詰まった宝箱と錯視した。

 

黄金比と言ってもおかしくないような、美しさの保たれたおかずの配置。

鼻腔をくすぐる、焼き魚の香ばしい匂い。

銀箔がつけられたのかと勘違いしてしまうような煌めきを持っている白米。

金塊のごとき輝きを放つ玉子焼き。

 

嗚呼、なんて美味しそうなのだろう。

 

味はまだ分からないが、見た目の美しさは超一流の出来だろう。

 

「石上くん。もしかして───」

 

僕は後悔した。

さすがに、ジロジロと見すぎたか。

だけど…あぁ、一口で良いから食べてみたいなぁ。

 

「そんなにお弁当の中身が珍しいのなら、言ってくれてよかったのですよ。少しくらいなら分けてあげますし。」

 

なんか僕に都合がいいように勘違いしてくれたんだが。

 

「どれが欲しいですか?僕としては、玉子焼きがおすすめですよ。いい玉子を使っているので。」

 

「じゃあそれで…。」

 

どれもすごく美味しそうだから、僕には食べたいのを決められなさそうだし。

 

箸につままれて差し出された玉子焼きを口に含む。

というか、あれ?

これっていわゆる、カップルのやるようなあーんとかいうヤツじゃないか?

 

僕は男とこんなことを……てか美味っ!?

 

え?なにこれ?

こんな美味しい食べ物がこの世に存在していいの?

いやダメでしょ。

 

この料理のために戦争が起きたとしても、たぶん僕は驚かない。

だってそれくらい美味しいのだから。

 

 

 

───*───

 

 

 

白銀廻(前世名:■■■■(■■■■■)

 

転生特典【超高校級の主夫】

主夫に必要な才能(料理、掃除、裁縫etc…)のすべてが人類最高クラスとなる。

 

※転生させた神がアニメ好きなため、普通の主夫には必要ないであろう才能も与えられている。

例えば神はセール品の争奪戦があると勘違いしているゆえに与えられた戦いの才能。

他にも値切りや目利きなどの才能も…。

まぁ単純に言うならば、主夫という言葉の意味を幅広く解釈していうということ。

 

 

 

 

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