白銀さんちの超高校級 作:るるトゥ
放課後の生徒会室。
そこでは今日もいつものように、とある生徒たちの恋愛頭脳戦が繰り広げられていた!!
秀知院学園高等部の生徒会長こと白銀御行。
彼は勉学一筋で校内の生徒たちから、尊敬と畏怖の念を向けられている。
全国トップクラスの頭脳を持つ彼と相対するのは、生徒会副会長の四宮かぐや。
総資産200兆円を超える巨大財閥…四宮グループの令嬢にして、才色兼備の天才だ。
さっさと告白すればいいのにと思わなくない頭脳戦が繰り広げられること数十分。
夕陽が傾き出した頃合いに、生徒会室へと一人の少年が入ってくる。
「こんちはー。」
石上優である。
その手に、なにか食べ物が入っていそうな箱を携えて。
「おぉ、石上。今日は少し遅かったな。」
「まぁはい。クラスメイトの手伝いをしてたら、少し遅れちゃいました。」
「ほう。クラスメイトの手伝いとは、なかなか良い心がけだな。」
白銀はかすかに目を見開いた。
他者とあまり関わろうとしない石上が、まさかクラスメイトに手助けをするとは思っていなかったからである。
「と・こ・ろ・で……石上くん。もしかしてこれってお菓子ですか?」
蒼碧の瞳をキラキラと輝かせて、生徒会書記のゆるふわな少女…藤原千花は問う。
「そうです。クラスメイトから生徒会の人たちに差し入れてくれと。」
「それはありがたい。休憩も兼ねて、さっそくいただかせてもらうか。」
「ですね。ケーキを常温で置いておくのは、さすがに気が引けますし。」
瞬間、藤原の目がキラーンとアニメによくある覚醒シーンのようにまばゆい光を放つ。
石上 は 自身の失言 を さとった!
「ケーキなんですか!?ケーキなんですね!!さぁ、早く食べましょう!!きっとケーキも私たちに食べられることを、今か今かと待ちわびています!!」
そんな中、四宮は一人冷静にとある点を指摘した。
「あの…。ケーキの状態は大丈夫なのですか?朝からずっと常温保存していると考えたら、さすがにまずいと思うのですが。」
四宮の疑問は当然のことだった!!
藤原が実に食べたそうな顔をしているが、聞かずにはいられないことなのである!!
「大丈夫ですよ、四宮先輩。このケーキは今日の調理実習で作られたもので、ついさっきまで冷蔵庫に入っていたんですから。」
石上、本日二度目の失言である!
藤原の雰囲気が、挑戦者を待つ王者のようなものへと変貌していく。
「ふっふっふ…私に手作りケーキを持ってくるとは、度胸があって良いですね。かつて週一で近所のケーキ屋さんをはしごしたこの私…食べ歩きの千花が、相手してあげましょう!!」
よく分からない展開が発生してしまった。
石上はその原因か自分にあるということを理解して、身を縮こませる。
「気にするな、石上。藤原書記のノリは誰かに分かるものではないからな。」
石上の肩にポンと手を乗せて、白銀はそう慰めの言葉をかける。
「ところで、そのケーキを作ったのは───」
「それじゃあさっそく食べましょう!!」
いつの間にか箱を開封していた藤原。
しかも、目ざとく一番大きいところを手元の皿に乗っけている。
ゆっくりと藤原の口へと運ばれていくチーズケーキ。
何度かの咀嚼、そして───
「ほわ〜。」
藤原は顔をゆるくほころばせて、バカみたいな声を口からあふれさせた。
藤原へと集う白銀たちの視線。
それを感じ取った藤原は体裁を保つためにも小さく咳払いをして、表情をキリッとさせると、2口目へと突入する。
「ほへ〜。」
しかし、取り繕った表情も美味しいものの前では無力。
何度であろうとも、それを口に入れれば容易く崩されてしまうのだ。
「ま、まぁ?最低ラインは越えたと言っておきましょう。でないともうこの差し入れが来なくなってしまうかもしれませんからね。」
また食べたくなるほど美味かったのか。
白銀と石上の思考は一つとなった。
そんな中、四宮は一人冷めた考えを抱く。
(たかがケーキ一つであんなにも恥ずかしい声を出すだなんて…。しょせん、藤原さんもその程度の人間ということね。)
四宮はそんな思考をおくびも感じさせない穏やかは笑みを浮かべながら、チーズケーキを口へと運ぶ。
「へな〜。(ほら、ケーキなんてこんな……は?)」
四宮は信じられなかった。
まさか自分が、かの四宮かぐやがこんな声を出してしまったなんて。
信じたくなかった。
会長の前でこんな恥ずかしい声を出したことを。
そして、そんな噂の会長こと白銀御行は……とある結論にたどり着いていた。
「なぁ、石上。このチーズケーキってもしかしなくても俺の───」
「はい。会長の弟が作ったヤツですよ。」
「やっぱりかぁ…。そうだと思ったよ。調理実習でケーキを作るなんて芸当ができるのなんて、アイツくらいしかいないだろうし。」
よく分からないが、先ほどの声はあまり意識されていないようなので四宮はセーフの判定にした。
それどころか白銀の弟が高等部にいることを知れたので、むしろプラスである。
本日の勝敗:全員(美味しいチーズケーキが食べられたため)
───*───
「へー…会長って、家ではそんな感じなんだ。なんか意外だなぁ。」
放課後の空き教室。
その中で僕…白銀廻は兄様の同級生に、家での兄様の姿を教えていました。
「そうですかね?僕としては、兄様が恋愛相談を受けていたことのほうが意外でしたが…まぁそれは見てるところが違いますので、しょうがないことですか。」
化け物染みた童貞…いわゆるモンスター童貞な兄様がまさか恋愛相談を受けて、成功に導くとは。
さすがに驚きを隠せませんね。
「っと、四条さんが来たみたいだね。それじゃあ面白い話を聞かせてくれて、ありがとう…廻くん。」
そう言って、田沼先輩は教室から出ていく。
そして、入れ替わるように二年生の女子生徒…四条眞紀先輩が入ってくる。
金持ちの集まるこの学校の中でも、最上位の金持ち。
四大財閥の一角である四条家の令嬢であります。
もうとにかく、僕たち庶民では想像もできないようなすごい金持ちなのです。
金持ち、なのです!!
大事なことなので二度言わせてもらいました。
すみませんね。
家庭の事情でお金に関することになると、ちょっと情緒が不安定になっちゃうんですよ。
「貴方が不遜にも、四条家本流の令嬢たるこの私を呼んだのかしら?」
ファサァと横に結んでいる髪をかきあげて、四条先輩はそう告げる。
なんというかアレですね。
彼女の仕草には、どこか既視感を感じてしまいます。
現在反抗期まっさかりの妹…圭のことを。
本音のままに話すのではなく、少し語気を強くするところとかがとくに似ています。
というか、先輩の言っていたままの性格ですね。
「はい。この僕…白銀廻が身の程知らずにも、四条様のことを呼ばせていただきました。」
からかいの意図なども込めて、少なからずへりくだった態度を見せてみる。
超高校級の主夫の持っている能力で見た感じ、彼女は傲慢に見えて繊細な感性を持つ人間だ。
つまりこんなに自分を卑下するような言葉を放てば────
「あっ、ちょっ。そこまで言うつもりはなかったのよ!!ちょっとからかってみようと思っただけなの。」
ほら。
こんな感じに、自分の言葉で相手が傷ついたんじゃないかと慌てるんですよ。
「ふふっ…分かっていますよ、四条先輩。ですので、僕から軽くやり返させていただきました。」
顔を上げて、笑みを浮かべながら僕はそう言う。
傷ついていないアピールのために、ウインクも忘れずに。
「ドッキリ大成功、とでも言うべきでしょうか?」
四条先輩は目を見開いて固まっている。
まさか、からかおうと思ったら、からかわれてしまったということがそこまでショックだったのだろうか?
「くっ、この私が初対面の相手にこうも手玉に取られるだなんて…。やるわね、貴方。たしか白銀…生徒会長の弟でしたっけ?……男装の麗人にしか見えないけれど。」
「四条先輩は兄様のお知り合いなのですか?」
「ふっ、今ここに通っている生徒で白銀のことを知らないヤツはいないわよ。なにせ私とあの四宮かぐやを抑えて、学年一位に君臨しているのだから。まぁそういうことだから、知り合いと言われれば違うわね。一方的に知っているだけだし。」
兄様はやっぱり有名なのですね。
とはいえ、完璧超人のように認識されていることだけはどうしても納得がいきませんが。
運動神経は致命的。
虫を見たらすぐ失神する。
服装の美的センスが中二止まり。
音楽関連のセンスはもううん…やんないほうが世界のためっていうレベル。
こんなどうしようもないレベルの弱点をたくさん持っているのに、周りの人たちにバレないのか。
ほんとにすごいですよね。
「それで、どうして私を呼び出したのかしら?告白とかだったら申し訳ないけれど、断らせてもらうわよ。だって────」
「田沼先輩のことが好きですもんね。」
「そうそう。私は翼くんのことが好きなの……って、なんで知ってるの!?」
「いやまぁなんというか…見れば分かるとしか言いようがないですね。」
そういう
まぁ表情を見てどんなことを考えているのかを知れるのが、主夫に必要な才能とは思えないけど。
「はぁ…。まぁ良いわ。誰にだって、一つ二つの隠し事はあるものだし。」
「お気遣いありがとうございます。それじゃあ本題に入りましょう……と言いたいところですが、これを食べてからにしませんか?」
タッパーの中に入っているチーズケーキを机の上に取り出す。
これは今日の調理実習で作ったもの。
生徒会の人たちに送った差し入れと同じものだ。
「今日の調理実習で僕が作ったチーズケーキです。先ほど完成した出来立てなので、鮮度は保証しますよ。」
「へぇ?普段から良いものを食べてるから、私の舌は肥えてるわよ?酷評されても構わないのなら、いただかせてもらうわ。」
「はい。ぜひいただいてください。どんな評価も甘んじて受け入れ、次に繋げるのが料理人ですから。酷評してもらえるのなら、僕としては嬉しいですし。」
あんまり酷評されたことがないので、どこを改善したらさらに美味しくなるかわからないんですよね。
「良い度胸じゃない。我が家の料理人たちにも聞かせてやりたいわ。」
そうして、四条先輩はチーズケーキを口へと運んでいく。
その姿は、やはり僕がお世話になった先輩と瓜二つであった。