白銀さんちの超高校級 作:るるトゥ
「今から言うことを一言一句違わずに、心して聞いてください、会長。」
「あ、あぁ。分かったが…なんでそんな凄んでるんだ?」
放課後の秀知院。
その空き教室の一つで、二人の男たちが邂逅していた。
そのうちの片方は鬼気迫るような表情を浮かべており、もう一人はそんな後輩の様子に困惑していた。
「まだ確定したわけではありませんが、白銀…会長の弟が汚されるかもしれません。」
「は?それは誰にだ?メグを汚そうとするヤツはアイツが赦しても、俺が絶対に赦さん。逃げるのならば、地の果てまで追いかけてその大罪を償わせる。」
この言葉をもし彼の妹に聞かれてしまっていたら、ドン引きの表情を浮かべながら、汚物を見るような視線を向けられていたことだろう。
それほどまでにキモい過保護さ。
だが残念なことに、そんな厳しい現実を教えてくれる者はこの場に誰もいなかった。
「会長ならそう言ってくれると信じていました!!僕たちで白銀が汚される未来を阻止しましょう。」
ガッシリと強固に握手する二人の男。
この二人は己の友人を、弟を護るためだけに何にも崩せない絆を築き上げた。
だが忘れてはいけない。
この話は大前提として、白銀廻が部活動に加入しなければならないということを。
そして、この二人は廻が部活動に入るという確証を得ていないということを。
───*───
「悪い…待たせた、白銀。」
「いえ。そこまで待っていないので大丈夫ですよ。兄様も今朝ぶりですね。」
「あぁ。それと、今日は弁当ありがとな。にしても…メグと学校で会ったのは、何気に初めてか?」
たしかに、学校で兄様と話したのはこれが初めてかもしれません。
まぁそれはさておき……
「なにか大事な話があるんでしたよね、石上くん。」
「えっ!?石上くん、まさかそういうことですか!?」
僕の問いに驚きの声をあげたのは、石上くんではなく藤原先輩でした。
眼を見開き、口もとに手を当ててあわあわしている。
その表情からは、驚愕や哀れみなどといった感情がうかがい知れますね。
「えっと⋯どうしたんです、藤原先輩?今の言葉に驚く要素ってありましたか?」
「ありますよ!!それはもう、ありよりのありです!!」
なんかよくわからない、変な言葉を使い出した藤原先輩。
どうでもいい話ですけど、ありよりのありの使い方って、それであっているんですか?
「廻くんには分からないかもしれませんけど、これはきっとそういうことです!!ラブ探偵千花の本能が騒いでいるので間違いありません!!」
四宮副会長が小声で、「いきなり下の名前呼び?なんて醜い⋯。」って言っていたのはなにも聞かなかったことにしておきましょう。
下手に追求したら、僕まで消されてしまいそうなので。
できる限り、四宮先輩の殺意を感じさせる無表情を視界に入れないようにしながら、僕は藤原先輩の言葉に耳を傾ける。
「石上くんは廻くんに告白しようとしているんですよ。」
「「は?」」
兄様と石上くんがそんな声を漏らしていますが、藤原先輩はお構いなしに話を続けます。
「いいですか、廻くん。廻くんの容姿は圭ちゃんみたいに可愛いので、石上くんは女の子だと勘違いしてしまっているんです。天然さんな廻くんのことですから、まだ男だって伝えてないんでしょう?」
「すごく言いづらいんですけど、ちゃんとクラスのみんなに性別のことは伝えていますよ⋯最初の自己紹介で。」
すごく得意げに、これ以上ないほど自信満々に語っている藤原先輩に言うのはすごく申し訳ないですけれど。
ここで止めなければ、先輩の恥が取り返しがつかないほど肥大化してしまいます。
「藤原先輩……恥ずかしッッ!!」
石上くんが心底信じられないという表情でそう告げました。
そうして次々と放たれていく、藤原先輩のメンタルを深く抉るような反論しようのない正論。
意外にも、石上くんってメンタルクラッシュが得意なのでしょうか?
それにしても…言い分がまったく間違っていないおかげで、フォローもなにもできないですね。
無理やりにでもフォローを入れたりしたら、石上くんがさらに致命傷を与えてしまうかもしれませんし。
「うわーん、そこまで言わなくたっていいじゃないですか~!!石上くんのバカ、 前髪!!」
そんな捨てゼリフのようなものを吐いて、藤原先輩は生徒会室から走り去っていった。
「えっと…追いかけなくてよろしいのですか?」
「大丈夫だ、いつものことだからな。とりあえず本題に入るか。」
いつものことなんですね…。
生徒会というものは、もうちょっと堅苦しいのだと思っていました。
「メグはここ…秀知院でなにかやりたいことがあったりするのか?」
「えっと…それはどんな部活に入ってみたいのかという解釈で問題ないですか?」
「まぁそうとも言うな。で、どうなんだ?」
「そうですね…。やってみたいものを挙げるなら、サッカー部のマネージャーとかですかね?」
以前も帝先輩のもとでそんな感じのことをやっていたわけですし。
「あー…石上。」
「えぇ…分かってます、会長。僕に任せてください。」
「頼んだ。お前がメグを守ってやってくれ。」
この二人は、いったいどんなことを話しているのでしょうか?
こそこそと目の前で話されたら、嫌でも気になってしまうのですけれど…。
「えーっとな、白銀。うちのサッカー部には飢えた獣しかいないんだ。」
飢えた獣?
それはどういう……あぁ、なるほど。
そういう意味ですか。
「ヤ●チンが多いのですね。」
「「「ブフッ!?」」」
「だ、大丈夫ですか!?」
いきなり石上くんと兄様だけじゃなく、話を聞いていた四宮副会長まで吹き出したのですが…。
いったいどうしてしまったというのでしょう?