その時歴史がまたまた動かなかった 作:dwwyakata@2024
オフレッサー上級大将はあくまで帝国に対して忠義を誓っているものであって、大貴族達を其処まで敬愛はしていないと思いますね。
これは彼が原作で罠にはめられた時、周囲にこの低能どもと怒鳴っていることからも明らかです。
むしろラインハルトよりはマシ程度の理由で大貴族達に加担していた可能性の方が高そうです。
盟主であるブラウンシュバイク公が、作戦案を自慢げに唱える。各地の拠点に大兵力を配置し、ラインハルトが疲弊したところを、本拠からの本命戦力で叩くというものだった。
取り巻きの貴族達はやんややんやと凄い凄いと喝采していたが。
メルカッツ元帥は、無言で挙手していた。
オフレッサーも挙手したいが、様子を見る。
今の時点では、余計な事はするべきではないということだ。
メルカッツ提督は、その場合ローエングラム公は、各地の拠点に押さえだけ置いて無力化してくる可能性が高いと述べる。
そうなると、各地の兵は遊兵となってしまう。
それにだ。
それらの拠点に配置できるような実戦経験豊富な将が足りない。
どうせ階級だけ立派な大貴族の提督がしゃしゃり出てくるのだ。
それらが出てきても、むしろ戦略を理解しておらず、ゴミのように蹴散らされるだけである。
脳筋と思われているオフレッサーだが、地上戦で莫大な戦果を挙げ、上級大将まで出世しているのだ。しかもこれといったコネも使っていない。
全部実力で出世してきたし、トマホークにどれだけ血を吸わせたかだけではなく。当然広域の地上戦も指揮している。
宇宙での戦闘は勝手が違うが、それでも戦略くらいは理解できる。
メルカッツ元帥が正しいなと、オフレッサーは見ていた。
それに対して、ブラウンシュバイク公は明らかにぐぬぬと不満そうだ。ただ、リッテンハイム侯よりは戦略の知識があるようだったが。
「なるほど、各地の守りは最小限にして、敵軍の遠征の疲労のピークを待って討つというわけだな」
「はい。 それが最善でありましょう」
「一つよろしいか」
やはり来たな。
挙手したのはシュターデンだ。
それに対して、メルカッツ元帥はやめておけと視線を向けるが。
「戦略の顧問」として雇われているシュターデンは、気づけていなかった。
シュターデンは軍学校で校長をしていたこともあり、知識については豊富だ。だが、現実と知識が相対した場合は、知識を優先する傾向があると陰口をたたかれていた。故に理屈倒れと言われていたのだ。
その辺りはオフレッサーも知っている。
そういう情報を集めておかないと、いつ足下を掬われるか分からないからだ。
相手を見る目、特に敵意を持っているかに関しては、動物並みの勘を持つオフレッサーではあるが。
それだけではジャングルより過酷な貴族社会で出世するのは不可能なのだ。
それを知っているから、オフレッサーも周囲の人間の情報は集めている。
おしいかな。それでも「金髪の孺子憎し」のフィルターが分厚すぎて、ラインハルトの実力はどうしても見抜けなかったのだが。
「現在敵軍は大半の兵を指揮して、こちらに向かっています。 此処で地の利を持つ我らが、別働隊を指揮して、オーディンを急襲。 皇帝陛下を救出し奉るべきかと存じます」
「おお……」
「それに成功すれば、最高の栄誉だ!」
「ぜ、是非私に!」
ああ、なるほど。
これを見抜いていた訳か。
フリードリヒ四世陛下が崩御したあと、即位したのはヨーゼフ帝。まだ幼いが、それでも皇帝だ。確かに表向きは、奪還の意味がある。
門閥貴族どもが、わいわいと喚き始める。それにだ。最初に皇帝を奪還したら、ブラウンシュバイク公やリッテンハイム侯以上の名声も手に入る。
一瞬にして、この場のありもしない結束に、更にもはや修復不可能な亀裂が入ったのを、オフレッサーは悟る。
これは崩れかけの蟻塚だな。
そう判断して。ため息をつきたくなった。
まさに雑兵の群れ。
メルカッツが率いても、どうにもならないだろう。雑兵というか、ザコの集まりだ。
「静かに! と、とにかく、その作戦を採るには状況が分からぬ! 今はとりあえず、メルカッツ提督の案を採用する!」
もしも皇帝が誰かに「解放」「救出」されたら。
その危険にブラウンシュバイク公も気付いたらしい。
馬鹿すぎる。
そもそも陸上戦で勝てるという保証がどこにある。金髪の孺子めは運だけでのし上がった輩だが。
それでも奴の部下が配置されているとみるべきだし。
だいたいまだ出来てもいないことで、ピーチクパーチク騒ぐ連中について、いい加減頭に来始めていた。
ギャーギャー騒ぐ貴族どもの一人が、興奮のあまりオフレッサーにぶつかった。
うっとうしそうにこちらを見た貴族が、一瞬で黙り込んで、ひっと悲鳴を上げていた。オフレッサーは、咳払いする。
それだけで、恐怖がまさにしじまのように広がっていた。
皆が一瞬で静かになる。
「出来もしていないことで争うのは、無駄なことに思えますな。 今は盟主であるブラウンシュバイク公の指示に従うべきではないのですかな。 陸戦部隊の長として、そう愚考いたしますが」
「そ、そうだ。 帝国最強の戦士であるオフレッサー上級大将もそう言っている。 今回の作戦会議は終了とする!」
ブラウンシュバイク公が、裁判で使うような木槌で机をドンドンと叩いた。
メルカッツ元帥が、オフレッサーに一礼するのが見えた。
だが、これはもう取り返しがつかないなとオフレッサーは悟る。
だが。
愛用のトマホークある限り。
オフレッサーは無敵だ。
それからしばらくは、前線で貴族達が滅茶苦茶に蹂躙されているという連絡が入る。まあそうだろう。
金髪の孺子めは運だけでのし上がった輩だが、門閥貴族どもはアホの集まり。その手下どもは案山子の群れ。
一応兵士としての訓練を受けている相手に勝てるわけがない。
ラインハルトが有能だと言った相手に、オフレッサーは昔応えたことがある。
敵が無能すぎただけだ、と。
この考えは今でも変わっていない。
オフレッサーはラインハルト憎しのフィルターから、どうしてもこの考えから脱却できなかったが。
ただしこれには一理ある。
オフレッサーは長年戦場に出てきたが、理由のない勝利はいくらでもある。それに対して、理由のない敗北は一切ない。
それはそれとして、指示が来る。
メルカッツ元帥ではなく、ブラウンシュバイク公からだった。
「予定を前倒しして、アルテナ星系にあるレンテンベルクに向かってほしい? 如何為されたのですか」
「皆が前線に行かせろと言っていてな。 その監督役が必要なのだ。 部隊の司令官はシュターデン大将が務める。 貴殿はレンテンベルクの方をたのみたい」
「……」
なるほど。
リッテンハイム侯の息が掛かったシュターデンの掣肘をしてほしいと言う訳か。
まさにアホの考えである。
こういう場に権力争いを持ち込むな。そう面罵してやりたいほどだが、今はじっとこらえる。
じろりと見られて。ブラウンシュバイク公が青ざめて背筋を伸ばす。
ブラウンシュバイク公もそれなりに恰幅がいい男性だが、オフレッサーの前では食用の子豚も同然である。
「レンテンベルクの方は小官が好きにして構いませんな」
「お、おお。 卿の階級から言って当然であろう」
「いえ、貴族の士官の方々には、家名を盾に小官の言うことなど聞かない方もおりますのでね。 盟主から一言言っていただきたく」
「う、うむ、それは分かっている。 それに卿の名声と迫力を知らぬ貴族はおらぬでな。 面と向かって逆らうアホはいないと思うが……」
アホはお前だ。
そう言いたいのをオフレッサーは我慢する。
「それでメルカッツ元帥はどのようなご意見で」
「メルカッツ? ああ、なぜそのようなことを」
「全軍の指揮はメルカッツ元帥がとることになっているはずですが」
「盟主であるわしの言うことの方が優先……い、いや、卿の視線、怖いのだが。 もうちょっと視線を避けてくれるかな?」
ブラウンシュバイク公の膝ががくがく震えているのを見て、側にいるアンスバッハがものすごく情けなさそうに眉をひそめていた。
なんで怖がる。
ただ当たり前のことを聞いただけだというのに。
ともかく、部下達とともにレンテンベルクに出る。むっつりと黙り込んでいるオフレッサーの機嫌が悪いのを察してか、部下は話しかけてこない。
もっとも、機嫌が悪くても、オフレッサーは部下に暴力を振るったことはないが。
こういうところではオフレッサーはしっかりしていて。部下に舐められもせず、理不尽に反抗心をかき立てさせることもしない。
そのため、オフレッサーの、少なくとも直接の麾下から。脱走して叛徒に走った者はいない。
途中、レンテンベルクに向かう艦隊で、シュターデンと打ち合わせをする。
シュターデンとするつもりだったのに、ヒルデスハイム伯爵だとかいう若造の貴族やら、貴族と言うだけの人物が会議室に何人か来ていて、うるさいことこの上なかった。
「ではアルテナ星域での会戦になるのはほぼ確実と。 相手はあの疾風ウォルフと」
「そうだ。 私の教え子の一人ではある」
「教え子ね……」
疾風ウォルフ。
平民出身から、将官に上り詰めた傑物だが。実のところ、数十年前の第二次ティアマト会戦以降、そういった平民出身の将官は出ているし、珍しくもなくなっている。そもそも第二次ティアマト会戦で当時の帝国の上層部が消滅するレベルのダメージを受けなかったら、オフレッサーもメルカッツもここまで出世は出来なかったのは確実だ。
そういう意味では、疾風ウォルフにはオフレッサーは興味がある。
実は部下に誘ったこともあるのだが。相手はオフレッサーを明らかに恐怖が混じった嫌悪の視線で見て、あくまで専門は宇宙戦だからと断られた。地上戦も相当に出来るのは知っていたから、それは残念だった。
どうして恐れられたのかはオフレッサーにはよく分からなかったが。
「こちらはレンテンベルクで守備を固める故、負けた場合は遠慮なく逃げてこられよ」
「そうだな。 そうさせてもらおう」
階級的にはオフレッサーの方が上だ。
だから傲然とそう指摘するが。
ヒルデスハイムだとかは不満そうである。
「オフレッサー上級大将の武名は我らでも知っているが、たかが平民出身の金髪の孺子めの手下風情に、我ら誇りある帝国貴族が敗れると?」
「貴殿等は良くシュターデン提督の作戦指示を聞くのだな」
「なっ……」
「これは上官としてのアドバイスだ」
一応この手の輩は上に告げ口をしたりするのでそういう危険はあるが。
今回は、ブラウンシュバイクが直接指示をして、オフレッサーが前線に出ている。貴族は身内の力関係に敏感だ。
恐らくこいつらはリッテンハイム派閥の貴族だが、それでもオフレッサーはブラウンシュバイクの出してきた軍事顧問である。
少なくとも、この件についてどうこうと思うことはないだろう。
それはどうでもいい。
とりあえず会議を終えると告げると、全員が首をすくめて。そそくさと会議室から出て行った。
シュターデンが疲れ果てた様子なので、一応話をしておく。
「門閥貴族という以外になんの取り柄もない者どもだ。 貴殿もあれらを指揮して戦わなければならないとはな」
「そうだな。 あれらの中には、幼年学校で遊びほうけていて、成績を家名で買ったものも多い。 軍事知識などゼロだし、階級などは箔をつけるために得ているだけだ。 神速を誇る疾風ウォルフを相手に受け攻めをいくつか考えてきたのだが。 緻密な作戦案など使えそうにない」
これは負けるな。
オフレッサーはそれを悟る。
ただし。
レンテンベルクでその負けを跳ね返せば良い。
「レンテンベルクにはどうにか逃げ込んでこられよ。 その後はもしもがあった場合は、金髪の孺子に降伏するのだな。 どうせ貴殿はそれほど大きな貴族の家の出身でもない。 素直に降伏すれば、閑職に回されて飼い殺し、くらいで済むであろうよ」
「貴殿はどうするつもりだ」
「俺は金髪の孺子めの首を取るだけだ」
それだけ言うと。
会議室を出る。
艦隊から分かれて、陸戦部隊とともにレンテンベルクに。いびつなジャガイモみたいな形状の宇宙要塞で、とにかく不格好だ。
帝国は内戦が幾度も起きた歴史があり、それもあって要所にはこういった要塞が多数配置されている。
その中では大きい方なのだが。
一万隻の守備艦隊は、既に配置についていて。
要塞司令官は、これまた大貴族と言うだけのもやしだった。
オフレッサーが傲然と司令室に踏み込むと、兵士達が明らかに怯えた視線を向けてくる。要塞司令官もそうだ。
「この要塞の構造について、既に敵も知っていると見て良いな」
「は、はあ……」
「ならば適当に敵の攻撃はいなして、陸上戦部隊を通してやれ。 全部まとめて俺がフリカッセにしてやる」
「わ、分かりました……」
ちなみにフリカッセというのは普通の鶏などの肉の煮込み料理だが。
オフレッサーの好物である。
トマトベースにする事も多く。
臆病者は現在でも鶏呼ばわりされることも多いため。
オフレッサーは敢えて相手をフリカッセにしてやるといって、周囲を恐れさせる事をする。
敵を威圧すると、それだけで勝率が上がる。
オフレッサーの場合は傑出した体格もあってその時点で相手を恐れさせる事が出来るのだが。
それ以外にも言動なども使って、勝率を上げているのだ。
戦場になるだろう第六通路を視察。
なるほど、これはいい。
奥がいわゆる死地になっていて、最悪の場合でも迎撃が容易だ。途中には小細工をする余地もない。
広さも適切で、オフレッサーが愛用している、通常のものより二回り大きい炭素クリスタルのトマホークを振り回しても、存分に行ける。
というよりも、トマホークを用いての戦闘を想定した広さの通路になっている、というべきだろう。
奥の間で、準備をさせる。
医療班を待機させ、負傷兵を手当てさせる準備をする。
更には、愛用している強力な興奮剤を用意させる。
また、即座にトイレに行けるようにもする。
装甲擲弾兵が着込む戦闘用スーツはそれなりに着用者に負荷が掛かる。これはパイロットスーツなどと同じである。
特にトイレがどうにもならないのが課題であり。
コレに関しては地球時代に、いわゆる戦闘用の人型パワードスーツが試行錯誤されていた頃から同じだったそうだ。
トイレについても確認。
作戦についても、説明はしておく。
「基本的に第六通路の中間から奥に掛けてで敵を迎え撃つ。 あまり外側に出すぎるなよ」
「はっ!」
「もしも攻め込まれた場合でも慌てずに、この地点で迎撃する。 此処はいわゆる死地になっていて、四方から敵を揉み潰せる。 お前達は宇宙最強の精鋭陸戦兵部隊だ! 金髪の孺子の麾下にもなぜあのような若造に仕えているか分からない勿体ない人材もいるが、それでも勝てる! 俺が常に最前線に立つから、心配せずに俺の背中を守るようにせよ!」
「ははーっ! ジークライヒ! ジークライヒッ!」
部下達が歓声を上げる。
さて、それでは時間まで休むとするか。
端末を取り出すと、動物の映像を見る。
ちなみにかわいい動物が好きなのではなく、どうやってハンティングするかを脳内でシミュレーションするためだ。
流石にオーディンに残してきたサファリパークは金髪の孺子めに接収されてしまっただろうが。
飼っていた猛獣の映像は残してある。
それらを見ながら、どういう風に狩ろうかなと考える。
娯楽ですら闘争。
それがオフレッサーという男だ。
小動物の映像も出てくる。
マリアンヌのために購入を検討しているものだ。
子供はなんでこんなものが好きなのかわからん。それがオフレッサーの素直な感想ではあるのだが。
マリアンヌは猛獣を狩って帰った時よりも。
ぬいぐるみを買って帰った時の方が、嬉しそうにしていたように思う。
これらの動物を、金髪の孺子めを倒して帰ったらマリアンヌのために買ってやるとしよう。
それくらいの恩賞は出るだろうし。
勝てば帝国元帥だ。
その程度の資産を持つ事も出来るだろう。
部下達がリラックスしているのを見て、一応追加で言っておく。
「これから厳しい戦いになる。 金髪の孺子はともかく、恐らくは疾風ウォルフが出てくるだろう。 奴は陸戦でも優れた指揮能力を持っている。 皆、今のうちにしっかり休んで英気を養っておけ!」
「はっ!」
「俺は少し横になって寝ておく。 俺の出番が来なければいいが、どうせこの様子だと来るだろうからな」
そう言い残すと、オフレッサーはこの第六通路側にある休憩所に出向いて、其処で休むことにする。
貴族の士官の中には愛人を連れ込んでいる奴までいるようで。
オフレッサーがそういうのに遭遇すると、流石に苛立つ。
門閥貴族であっても、オフレッサーにはなぜかびびるようなので。オフレッサーが傲然と行くと、道を空ける。
不可思議な話だ。
あれだけ平民には高圧的。
平民や帝国騎士出身の士官にも高圧的なのに。
ベッドで休む。
既に通信はしないようにしているので、もしマリアンヌと次に会うとしたら勝ったら、である。
横になっていると、色々雑談が聞こえてくる。
流石にこの要塞の、しかも戦闘が想定される第六通路の休憩所となると、士官用の個室の休憩所などないし。
ましてやオフレッサーは後から来ている。
それにオフレッサー自身も、個室を用意しようかとは言われたのだが。それが第六通路から離れているのでわざわざ却下。
兵士達と同じ休憩所でいいと、自分から言った。
これは元々オフレッサーが帝国騎士の出身者であり、戦場ではそれが普通だったからである。
出世してからも、兵士の頃の苦労を忘れないように、こういう場所では常に最前線近くの休憩所にいるようにしているし。
兵士達の話にも耳を傾けておくと、かなり役立つことも本能レベルで知っているのである。
それに、兵士達がたるむのを。
オフレッサーがいる事で、戒めることも可能なのだ。
「アルテナ星系に既にミッターマイヤー提督が布陣しているらしい。 それも大量の機雷を配置しているらしいぞ」
「機雷か。 妙だな。 あの神速の疾風ウォルフが? 消極的な戦い方じゃないか。 罠じゃないのか」
「シュターデン提督もそう考えて、それで距離を置いて布陣したようだが。 それに貴族の士官達が反発しているらしい。 戦えば絶対に勝てるのだから、動くべきだってな」
「そっか。 色々言いたいが、理屈倒れなんて言われてるシュターデン提督も、今回ばかりは不幸だな」
なるほどな。
オフレッサーには今の話だけで分かった。
シュターデンは理論家としては優れている。知識も豊富だ。
だが、この状況。
シュターデンに対して、疾風ウォルフは盤外戦術を仕掛けたのだ。
まともな戦術で勝つことも、恐らく疾風ウォルフであれば難しくはなかったのだろうとオフレッサーは思う。
奴の戦歴を見る限り、優れているのはオフレッサーにも嫌になるほど分かる。だから部下にしたかったのだ。
これに対してシュターデンは後方で作戦を立てるか、それすらも出来れば止めて、意見を求められたら戦術理論的な立場からそれを具申する。それくらいの役割で良く、実戦向きの人間じゃない。
学者に対する適正は間違いなくある。
だが前線に立たせるべき人間じゃない。
それがアホな貴族どもを率いているのである。
ただでも勝てるだろうが。
其処に更に勝ちを確実にするために、疾風ウォルフは戦場以外の視点から、策略を仕掛けた。
普通に戦ったのなら、シュターデンはそれなりに高度な戦術を繰り出してくる可能性があり。
それだと被害が出る可能性もある。
だがこのまま行けば、シュターデンは貴族どもに拘禁でもされた挙げ句。貴族達が無差別突撃でも始めかねない。
稚拙な、それもわかりやすい戦術をシュターデンは採用するしかなくなる。
恐らくそれは、貴族達が率いる部隊と、自身が率いる正規軍を分割しての挟撃ではないのか。
ため息が出る。
寝返りを打つと、兵士達がなぜか緊張して。それでひそひそ話を止めた。
いずれにしてもシュターデンは負けるな。
出番は確実に来る。
流石に四十を過ぎると、オフレッサーも若い頃ほどの体力がなくなってきている。最近では戦場で用いる興奮剤も増える一方だ。
医師にも可能な限り使用を控えるようにと言われているが。
それでも使わなければ万全のパフォーマンスを発揮できないのである。
とりあえず、まずは疾風ウォルフをどう倒すか。
奴の首をトマホークの穂先にぶら下げてやれば、金髪の孺子めも出てくるはずだ。
全てはそれから。
オフレッサーは、もう一つ寝返りを打ちながら。
勝つべく、策を練り続けるのだった。
自分が出来る範囲で、だが。
オフレッサー上級大将も衰えます。というかどんな豪傑だってそうです。
40過ぎても最強の男であるオフレッサー上級大将ですが、それが50になればどうなるか。その先は。
そういう現実的な悩みを、本作のオフレッサー上級大将は持っているのです。