東方天命録~The Final Shape Begins~ 作:はならむ
森の向こうから、これでもかと無数の影が押し寄せてくるスロール。
一体や二体ではない。先ほど倒した数を補うかのように、数十体の群れが湖畔を駆け、その背後からは盾を構えたナイトが数体、さらに上空には新たなウィザードまで姿を現していた。
「また来るわよ!」
霊夢が叫ぶ。
「分かってるぜ!」
魔理沙も八卦炉を構え直す。先ほどケイドに助けられたこともあり、今度は勢いだけで飛び出すことはしなかった。
前方の敵だけでなく、左右、上空、そして味方の位置を一度確認してから、箒の向きを変える。その様子を横目で見ていたケイドが、僅かに口元を緩めた。
「そうそう。それでいい」
「うるさい」
「褒めてんだぞ?」
「戦いながら褒めるな!」
言い返しながらも、魔理沙は今度こそ不用意に前へ出ない。
その一方で、ガーディアンはグラビトン・ランスを構え、迫るスロールの群れへ照準を合わせていた。
「ガーディアン!」
イコラの声に、グラビトン・ランスを構えていたガーディアンが僅かに顔を向ける。
「右側をお願い!私は左を抑える!」
「…………了解」
ガーディアンがすぐさま銃口を右へ振った。
だが、左側から迫っていたスロールの方が速い。
「キシャァァァァッ!!」
五体、その後ろにさらに七体。
地面すれすれまで身体を伏せ、長い腕を振り回しながら、一斉にイコラへ襲いかかる。
「危ない!」
大妖精が叫んだ。しかしイコラは退かなかった。
むしろ、前へ飛び出た。
「――っ!」
魔理沙が目を見開く。イコラの右手に淡い光が走る。次の瞬間。その手には一挺の銃身の長い散弾銃、ショットガンが握られていた。
「え?」
チルノが間の抜けた声を漏らす。先頭のスロールが跳んだ。
鋭い爪。開かれた口。
その身体がイコラへ覆い被さろうとした瞬間。
イコラは銃口を真正面へ向けた。
――ズドォッ!!
凄まじい銃声。至近距離から散弾を叩き込まれたスロールの胸部が大きく弾け、その身体が後方へ吹き飛んだ。
「…………!」
二体目イコラは銃身を横へ振る。
――ドォン!!
頭部へ直撃。
スロールが横回転しながら地面へ転がる。
だが三体目は既に目の前。
「ギシャァッ!」
爪が振り下ろされる。イコラは僅かに身体を傾けた。
爪が肩を掠めるがそのまま一歩懐へ踏み込む。
「はああああっ!!」
全力の掌底。
――バゴッ!!
スロールの顔面が大きく陥没した。その首が不自然な角度へ跳ね上がり、身体ごと数メートル後方へ吹き飛ばされる。
「…………」
チルノが固まった。ルーミアも、大妖精も。
そして。
「……なあ」
魔理沙まで。
「銃で吹き飛ばすわ、ぶん殴るわ、魔法みたいなので消し飛ばすわ、あんたナニモンだよ……」
「ガーディアンよ」
イコラが即座に返す。
「話しは後、今は敵を見なさい!」
「わかったわかった!」
会話している間にも。
四体目。
五体目。
六体目。
スロールは止まらない。イコラはショットガンを構え直した。
――ドォン!
一体。
ポンプアクション。
――ガシャッ。
――ドォン!
二体、左から飛びかかってきた個体へ銃床を叩き込み、怯んだところへ至近距離からもう一発。
――ドォン!!
「ギィッ――!」
硝煙が霧へ溶けていく。
その動きに、無駄はなかった。
撃つ。
避ける。
殴る。
距離を詰める。
また撃つ。
ボイドの力など使っていない。
巨大な魔法も。
派手な光も。
ただ一挺の銃と、自分自身の身体だけで。
それでもスロール達はイコラの前で次々と倒れていく。
「……すごい」
大妖精が呟いた。ケイドはそれを聞いて、少しだけ笑った。
「そりゃそうさ」
切り札でスロールを一体撃ち抜く。
「イコラだぞ?」
「説明になってない!」
魔理沙が叫ぶ。
「そのうち分かるって!」
「そういう言い方する奴、大体説明する気ないだろ!」
さらに一体、イコラへ飛びかかる。
だが今度はショットガンを撃たなかった。
左手、紫紺の光。
「――消えなさい!」
掌からボイドの奔流が迸る。
――ゴォォォォォッ!!
至近距離のスロールが紫色の光へ呑み込まれ、後続ごとまとめて吹き飛ばされた。
湖面へ叩きつけられ、水柱が上がる。
「…………」
魔理沙がしばらく黙った。そして。
「最初からそれ使えばよかったんじゃないか?」
「弾薬も光も、使いどころを選ぶ。それに無限に使えるわけじゃないわ」
「なんか急に現実的だな!?」
「戦場では当然よ――」
「待って!」
突然、その声が戦場に響いた。
「え?」
イコラが振り返る。声を上げたのは、チルノだった。
「チルノちゃん?」
大妖精も驚いたように彼女を見る。
チルノは答えず、霧の向こうから押し寄せてくるハイヴの群れを睨みつけていた。
スロール。 ナイト。 そして上空にはウィザード。
つい先ほどまで、自分達を追い回していた怪物達だ。
何体倒しても次から次へと現れるスロール。 攻撃を受けても怯まず前進してくるナイト。 空から容赦なく魔力を浴びせてくるウィザード。
怖くなかったと言えば、嘘になる。
それでも――霊夢達が来た。
大妖精も戻ってきた。それに、どこの誰なのかもよく分からない外の世界の連中まで、自分達を助けるために戦っている。なら。
「あたいだって……!」
チルノは拳を握り締めた。
「チルノ?」
ルーミアが首を傾げる。チルノは一歩、前へ出た。
「さっきまでやられっぱなしだったんだから!」
そして、迫り来るハイヴの群れを指差す。
「ここからは、あたいの出番よ!」
「おいおい」
魔理沙が慌てて声をかける。
「大丈夫かよ?」
「魔理沙にだけは言われたくない!」
「ぐっ……」
先ほど一人で突出して危うく囲まれかけたことを思い出したのか、魔理沙が言葉に詰まる。
その横でケイドが吹き出した。
「ハハッ!言われてるぞ」
「うるさい!」
そんなやり取りをしている間にも、敵は待ってくれない。
「キシャァァァァッ!!」
十数体ものスロールが、長い腕を振り回しながら湖畔を駆けてくる。
その後方では二体のナイトが盾を構え、上空を漂うウィザードの両手には禍々しい光が集まり始めていた。
「来ます、油断しないでください!」
ゴーストが警告する。だが、チルノは動かなかった。
逃げもしない。むしろ――笑った。
「数が多いなら……」
両腕を広げるその瞬間だった。
チルノの周囲に、白い冷気が集まり始めた。
「……?」
イコラが僅かに目を細める。
空気中の水分が凍り、小さな氷晶となってチルノの周囲を舞っている。
一つ。
二つ。
十。
二十。
それは瞬く間に数を増していった。
鋭く尖った氷。丸い氷弾。
大小様々な氷の弾幕が、チルノを中心として次々と形成されていく。
「だったら――」
チルノが片手を高く掲げた。
「まとめてぶつければいいじゃん!」
大妖精の顔が明るくなる。
「チルノちゃん!」
「いくよ!」
掲げた腕を勢いよく振り下ろす。
「氷符――!」
無数の氷弾が、一斉に向きを変えた。
その先にいるのは――迫り来るハイヴの群れ。
「アイシクル・フォール!!」
次の瞬間。大量の氷弾が湖畔を埋め尽くした。
「キシャッ!?」
先頭を走っていたスロールへ、拳ほどの氷弾が直撃する。
一発。
二発。
さらに三発。
衝撃に身体をよろめかせたスロールの胸部に、白い霜が広がった。
それだけではない。
腕、脚、首。
氷弾が命中するたび、その箇所から急速に氷が広がっていく。
「ギ、ギシャァァッ――!」
最後の一発が頭部へ命中した。
その瞬間。
スロールの全身が白く凍りついた。
走り出そうと片脚を上げた姿勢のまま、完全に動きを止める。だが――一体だけではない。
「ギィッ!?」
「キシャァッ!」
「ギャァァッ!」
次々と氷弾が降り注ぐ。
一体。
二体。
五体。
十体。
弾幕を浴びたスロール達の身体へ次々と霜が走り、白い氷がその身体を覆っていく。
湖畔を駆けていた異形の群れが、次々と氷像へ変わっていった。
「こりゃすげえや……っ」
ケイドが思わず声を漏らす。
「氷でこんなことをできるなんてな」
だが、まだ終わらない。
「グォォォォッ!!」
背後にいたナイトが盾を構える。
氷弾が次々と盾へ激突した。
甲高い音と共に氷片が飛び散る。
一発や二発ではびくともしない。
しかし――。
十発。
二十発。
絶え間なく叩きつけられる氷弾によって、盾の表面に白い霜が広がり始めた。
「グ……ォォォッ……!」
剣、盾を持つ腕、脚。
そして装甲。
徐々にナイトの動きが鈍くなっていく。
「まだまだぁ!」
チルノがさらに腕を振る。新たな氷弾が生まれ、ナイトへ殺到した。
ついにはその足元まで凍りつき、巨体がその場に縫い止められる。
「ギィィィィッ!」
上空のウィザードが甲高い声を上げた。
両手から放たれた暗黒の魔力が、迫る氷弾をいくつか撃ち砕く。
だが――数が違う。
正面から。
左右から。
次々と飛来する氷弾をすべて撃ち落とすことなどできない。
一発が肩へ。
もう一発が長い衣へ。
さらに腕へ。
「ギィ……!?」
ウィザードの身体へ白い霜が広がった。
浮遊していた身体が僅かに傾く。
そこへさらに氷弾が殺到する。
やがてウィザードは、空中に浮かんだ姿勢のまま白い氷に覆われ、その動きを止めた。
「…………」
クロウが目を見開く。
「ほとんど止めたぞ……」
「広範囲への弾幕攻撃に、命中箇所からの急速凍結……」
イコラも周囲を見回していた。
その視線が、少し離れたところで胸を張っている小さな妖精へ向けられる。
「彼女がこれほどの力を?」
その問いに、霊夢はさほど驚いた様子もなく答えた。
「チルノは冷気を操る妖精よ」
「冷気を……」
「ええ。あいつ、あんな調子だけど氷を扱わせたらかなり厄介なのよ」
「誰があんな調子だ!」
聞こえていたらしく、チルノが即座に振り返った。
霊夢は気にせず湖へ視線を向ける。
「その気になれば、この辺り一帯どころか湖まで凍らせるくらいはできるわ」
「湖を?」
クロウが思わず霧の湖を見る。
視界の向こうまで続く広大な水面。
それを丸ごと凍結させられると言われれば、さすがに聞き流すことはできない。
ケイドも同じことを考えたらしい。
凍りついたナイトを見上げ、それからチルノを見る。
「……なるほどね」
一歩だけチルノから離れた。
「俺、あのお嬢ちゃんだけは怒らせないようにしよ。こんなとこでカチンコチンになりたくねえしな」
その横で、ガーディアンのゴーストがチルノを興味深そうに観察していた。
小さな機械の身体がくるりと回転する。
「……でも、彼女ならエウロパを気に入るかもしれませんね」
「え、えう、ろ……ぱ?」
チルノが食いついた。
「なにそれ?」
「エウロパ。木星の衛星です。地表のほぼ全域が氷と永久凍土で構成された極寒の星です。さらに木星圏の強力な放射線の影響もあり人間なら対策なしではまず生きていけません」
チルノの目が輝いた。
「なにそれ!あたいのためにある場所じゃん!」
「いや、お前のためではないぜ」
「詳しい話は後!」
イコラの鋭い声が飛んだ。
「まだ戦闘中よ、ハイヴを相手にしていることを忘れないで!」
先ほどまで湖畔を埋め尽くしていたハイヴの群れ。
その多くが、白い氷に覆われて動きを止めている。
完全に凍りついた個体もいれば、腕や脚だけを凍らされ、その場から動けなくなっている個体もいる。
ゴーストがすぐさま走査を開始した。
青い光が凍結したハイヴ達を順番に撫でていく。
「生命反応は残っています!完全に死亡しているわけではありません!」
中央眼がチルノへ向く。
「ですが、ほぼすべての個体で活動能力が大幅に低下しています!」
「へへーん!」
チルノは腰へ手を当て、胸を張った。
「見たか!」
そして当然のように言い放つ。
「あたい最強!」
「……今だけは否定しないわ」
霊夢が苦笑する。
「今だけ!?」
「まだ戦闘中でしょうが!」
「むー!」
その時だった。
「…………」
ガーディアンが、凍結したハイヴ達をじっと見つめていた。その手には、グラビトン・ランス。
「…………」
ゆっくりと銃を持ち上げる。ゴーストがその動きを見て――。
「あっ」
ケイドも気づいた。
「あー……」
「何だよ?」
魔理沙が怪訝そうな顔をする。
ケイドは凍りついたスロール達を見る。
そしてガーディアンを見る。
もう一度スロールを見る。
「相棒」
「…………」
「それ、絶対ひどいことになる奴だろ?」
「?」
チルノが首を傾げる。
「何すんの?」
ガーディアンは答えなかった。ただ、グラビトン・ランスの銃床を肩へ当てる。
照準は、群れの先頭で完全に凍りついているスロールの頭部。
そして――引き金を引いた。
――ビトン、ビトン。
紫紺の弾丸が、凍結したスロールの頭部を撃ち抜く。
一瞬、何も起こらない。
だが、次の瞬間。
――ボンッ!!
「!?」
スロールの身体が内側から爆ぜた。白い氷片と共に、紫紺のエネルギーが周囲へ撒き散らされる。
そして。
そのエネルギーが――隣で凍りついていたスロールへ触れた。
――バシュッ!
二体目が爆ぜる。さらにその隣。
――ボンッ!
三体目。
四体目。
「え?」
チルノが固まった。爆発は止まらない。
――ボン、バシュバシュボンッ!!
白。
紫。
白。
紫。
次々と氷像が砕け、その内側から紫紺の爆発が咲き乱れる。
凍結によって密集したまま動けなくなっていたスロール達の間を、グラビトン・ランスの爆発が連鎖していく。
氷片、ボイドの光、冷気、爆風。
湖畔一帯が、白と紫の閃光で埋め尽くされた。
「うわっ!?」
魔理沙が思わず腕で顔を庇う。
「派手すぎだろ!」
「でも効率はいいわ!」
イコラが爆風の中で言い返す。
「そういう問題か!?」
さらに爆発がナイトへ到達した。
――ドォンッ!!
「グォォォッ!?」
凍結していた装甲が砕け散る。ナイトそのものを吹き飛ばすまでには至らない。しかし――装甲の一部が大きく破損した。イコラが即座に叫ぶ。
「クロウ!」
「分かっている!」
クロウが太もものホルダーから鋭い刃物、ナイフを取り出してナイト目掛けて投擲。見事、装甲に突き刺さった瞬間。
――ボンッ!
「うわっ!」
突然、爆発し崩れかけていた装甲が完全に破壊された。
「なんだそのナイフ!?」
「説明は後にしろ、ケイド!」
「こっちも任せろ!」
切り札が火を噴いた。
――ドンッ!
別のナイトの兜が大きく弾ける。
「霊夢!」
「ええっ!」
御札が飛ぶ。
「魔理沙!」
「今度はちゃんと周り見てるぜ!」
八卦炉から魔力弾が放たれる。
「ルーミア!」
チルノが叫んだ。
「これでもくらうのかー」
ルーミアの闇が、凍結を免れたスロール達をまとめて呑み込む。
「大ちゃん!」
「うん!」
大妖精の弾幕がそこへ降り注いだ。
「…………」
チルノは目の前の光景を見ていた。
自分が止めた敵を霊夢が、魔理沙が、ルーミアが。
大妖精が、そして、外の世界から来た戦士達が次々と倒していく。中でも――。
「…………」
グラビトン・ランスを構えるガーディアン。チルノは少しだけ考えた。
そしてニヤリと笑う。
「ねえ!」
ガーディアンが僅かに顔を向ける。
チルノは自分自身を指差した。
「あたいが凍らせて!」
次にガーディアンを指差す。
「あんたが爆発させる!」
最後に、二人まとめて指差した。
「…………」
ガーディアンは数秒、チルノを見つめた。
そして無言で親指を立てた。
「あ!」
チルノの顔が一気に明るくなる。
「やっぱり!」
胸を張った。
「あたい達、最強コンビじゃん!」
「こら、勝手にコンビ組まない!」
霊夢の怒声が飛んだ。
「なんでよ!」
「こいつを調子に乗らせる奴が一人増えた……」
魔理沙が頭を抱える。
「人間ではありません。彼女は妖精です」
ゴーストが律儀に訂正した。
「そこじゃねえよ!」
ケイドが腹を抱えて笑う。
「ハハハッ!いいじゃないか。相棒も気に入ってるみたいだぞ」
ガーディアンはもう一度、親指を立てた。
「ほら!」
「そこで二回目やるな!」
だが――。
「グォォォォォォッ!!」
凄まじい咆哮が響き渡った。
「!」
全員の表情が変わる。
凍結を破ったナイトが一体。
全身から氷片を撒き散らしながら、盾を構えて突進してくる。チルノが反射的に身構える。
だが。今度は、一人ではなかった。
「チルノ!」
霊夢の声。
「右から来るぜ!」
魔理沙。
「盾の裏へ回れ!」
クロウ。
「正面は俺が取る!」
ケイド。
そして――。
「…………」
ガーディアンが、隣でグラビトン・ランスを構える。チルノは一瞬だけ彼らを見た。
「うん、分かった!」
両手に再び冷気が集まる。
「今度はもっと派手に凍らせてやる!」
「俺達まで凍らせるなよ、最強おチビちゃん!」
「チビゆうな!あたいはチルノだ!」
「分かったチルノ!」
戦いは、まだ続いていた。
けれど先ほどまでとは、もう違う。
ハイヴに追い回され、ただ必死に耐えていたチルノ達ではない。
霊夢。
魔理沙。
チルノ。
大妖精。
ルーミア。
そして。
イコラ。
ケイド。
クロウ。
ガーディアン。
生まれた世界も違う。
戦い方も違う。
扱う力も、常識さえも違う。
それでも彼らは戦いの中で互いの力を知り、その力をどう繋げればいいのかを、少しずつ理解し始めていた。
氷の弾幕が敵を止める。
闇がその逃げ道を奪う。
御札と魔力弾が戦列を崩す。
銃弾が装甲を穿つ。
そして。
グラビトン・ランスから放たれた紫紺の光が、再び凍りついたハイヴの中で爆ぜた。
白い氷片と紫色の光が、朝靄の残る霧の湖を鮮やかに染め上げる。
幻想郷の弾幕と遥か未来を生きる戦士達の銃火。
二つの世界の戦い方が、この時初めて――一つの「共同戦線」になり始めていた。
けれどこの時、彼らはまだ知らなかった。
霧の湖を埋め尽くすスロールも。
巨大なナイトも。
空を漂うウィザードも。
この先に待ち受けている脅威と比べれば――。