東方天命録~The Final Shape Begins~   作:はならむ

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第八話:未知との遭遇

一同が神社の石段へ向かおうとした、その時だった。

 

「――ガーディアン」

 

ゴーストが静かに主人を呼び止める。ガーディアンは足を止め、振り返った。

 

「少し、お話があります」

 

ケイドがふと二人を見る。

 

「どうしたお前ら?」

 

ゴーストは落ち着いた口調で答えた。

 

「すみませんが皆さんは先に石段を下りていてください」

「彼と二人で確認しておきたいことがあります」

 

霊夢は不思議そうに首を傾げる。

 

「どうしたの?」

 

その空気を和らげるように、ケイドが肩をすくめて笑った。

 

「ああ、心配しなくていい」

「ちょっとゴーストから説教されるだけさ」

 

ガーディアンは思わずケイドを見る。ケイドはニヤリと笑い、親指で石段を指した。

 

「さあ、行った行った」

「俺達は先に行っとく」

 

魔理沙は吹き出す。

 

「ははっ、ちゃんと怒られろよ!」

 

霊夢も苦笑しながら石段へ向かう。

 

「早くしないと置いていくわよ」

 

アリス、霖之助、クロウ、そしてサニー達も何も言わず、その後に続いた。

 

ケイドだけは石段を下りる直前、一度だけ振り返る。

ゴーストとガーディアンを見つめ、何かを察したように目を細めた。

 

「…………」

 

しかし何も言わず、小さく手を振って石段を下りていく。

やがて全員の姿が見えなくなり、境内にはガーディアンとゴーストだけが残った。

 

静かな風が吹き抜ける。ゴーストは彼へ向き直った。

 

「……皆さんには聞かれたくなかったので」

 

ガーディアンは静かに頷く。ゴーストはゆっくりと言葉を続けた。

 

「皆さんが話している間、私はケイドをスキャンしました」

「結果は――彼に間違いありません」

 

ガーディアンの肩から、わずかに力が抜ける。

だが、ゴーストは続けた。

 

「しかし、いくつか不可解な反応がありました」

「彼の身体は……光で構成されています」

 

ゴーストは続けてこう言う。

 

「私やトラベラーと同じように」

「私はゴーストです。光を導く存在」

「ケイドは光を武器として扱えなくなりました」

「ですが、もし彼が私達と同じように光そのものへ近い存在なら……」

「再びトラベラーの光を共有できる可能性があります」

「……もちろん、確証はありません」

 

境内に静寂が流れる。

 

やがてゴーストは、さらに続けた。

 

「そして、もう一つ」

「あなたをスキャンした結果です」

 

ガーディアンは黙って耳を傾ける。

 

「あなたの中では、光が以前よりも遥かに自由に流れています」

「暗黒と衝突することなく、見事な調和を保ちながら」

「そこには、あらゆる色彩がありました」

 

ゴーストはどこか懐かしむように目を伏せる。

 

「ここまで壮大な体験をしたのは、一度だけです」

「私の起源――」

「トラベラーが、最初のガーディアンを蘇らせるために、私達ゴーストを創造した……あの瞬間だけ」

 

しばらくの沈黙。

そしてゴーストは、静かに締めくくった。

 

「ですが、今優先すべきことは一つ」

「トラベラーを目撃者から救い出すためにも、まずはザヴァラとイコラを見つけなければなりません」

「霊夢達の力を借りて、この幻想郷を進みましょう」

 

ガーディアンは静かに頷いた。

 

「……」

 

コクリ。

 

それだけで十分だった。ゴーストも小さく頷き返す。

 

「では、行きましょう――」

 

二人は石段を下り、仲間達の待つ場所へ向かった。

二人は並んで石段を下り始める。

 

すると、一番下で待っていた一同がこちらへ振り返った。

 

「おっ」

 

ケイドが腕を組んだままニヤリと笑う。

 

「説教は終わったか?」

 

魔理沙もニヤニヤしている。

 

「ちゃんと怒られたのか?」

 

霊夢もくすりと笑った。

 

「反省した?」

 

ガーディアンは無言のまま一同を見渡す。

 

そして――しゃがみ込んだ。

 

「え?」

 

どこからかガーディアンの周りに光輝く謎の雪が積もり、両手で集め始めた。

 

サッ、サッ、サッ。

 

クロウが嫌な予感に眉をひそめる。

 

「……おい」

「まさか」

 

手際よく光る雪を丸めるガーディアン。ケイドは腕を組んだまま笑っていた。

 

「なんだ?」

「降参の印に雪だるまでも作るのか?」

 

トスッ……

 

雪玉を前に投げつけるガーディアン。

 

霊夢達は沈黙する。

 

「は?」

 

状況が理解できない霊夢達にゴーストは前に出る。

 

「『ゴーストにいっぱい説教されたから雪合戦したい気分だ』と言っています」

 

一瞬、沈黙が走るがケイドはすぐに吹き出した。

 

「ははっ!」

 

そう言うと、自分もしゃがみ込み、光る雪をわしゃわしゃ集め始める。

 

「よろしい、なら戦争だ」

 

クロウは深いため息をついた。

 

「……お前はシヴ・アラスかっ」

 

霊夢は呆れ顔で腕を組む。

 

「子供じゃないんだから……」

 

ゴーストは静かに補足する。

 

「ちなみに、説教ではありません」

「重要な確認をしていただけです」

「ガーディアンの言ったことを真に受けないでください」

 

魔理沙は笑いながら肩をすくめた。

 

「なんだ、つまんねぇな」

「もっと怒られてくればよかったのに」

 

ガーディアンは魔理沙を見て、内股でしくしく泣くような仕草を見せる。

 

「女子かお前は!」

 

「こいつ大の男だぞ」

 

魔理沙は思わず吹き出した。ケイドは雪玉を握りしめたまま笑う。

 

「よし」

「魔法の森まで競争だ」

「負けた方が昼飯おごりな」

 

クロウが呆れたように言う。

 

「……だからなんでそうなる」

 

そのやり取りに、一同から自然と笑みがこぼれた。

 

そして全員が合流し、出発――と思いきや、霊夢はふと振り返る。

 

「そういえば、あんた達はどうやって魔法の森まで行くの?」

「結構距離あるわよ」

 

魔理沙も腕を組みながら頷く。

 

「あたし達は飛んでいけるから一瞬だけど、徒歩だと結構きついぞ。さすがにあんた達を担いでいけないし」

「それに魔法の森内部は人間には厳しい環境だし下手したら迷って死ぬぞ」

 

ゴーストは困ったように「ピコピコ」と機械音を鳴らす。

 

「まあ、我々も空を飛べないわけはないのですが――流石にやめましょう。間違いなく彼女、八雲紫が行動に移す事案です」

 

クロウもそれを聞いてすぐに察した。

 

「そもそも、突入時に大破したし今はどうあがいても使えないしな――」

 

「ジャンプシップか?」

 

ケイドの問いにクロウは頷く。

 

「お前らどうやって地球に帰るんだ?」

 

「ザヴァラ達の船が無事なのを祈るか、救援を要請するしかないな。お前こそどうするんだ?」

 

「俺は……わからん。そもそもなんでここにいたのか知らねえしな、二人か俺がいることを知ったらさぞかし大パニックになるだろうよ――ともかく、その魔法の森とやらに早く行かねえとな」

 

するとガーディアンは何も言わず、ゴーストへ視線を向けた。

 

そして、親指をグッと立てる。ゴーストは彼の意図を察すると、小さくため息をついた。

 

「……まさかとは思いますがあれを出すんですか?」

 

霊夢が首を傾げる。

 

「あれ?」

 

ケイドは口元を緩めた。

 

「おっ、スパローか」

 

しかし、その言葉にクロウが眉をひそめる。 

 

「おいっ」

「彼女から、目立つ行動はするなと言われたばかりだろう」

 

ケイドは肩をすくめ、軽く笑う。

 

「ザヴァラ達の命が掛かってるんだ」

「管理者さんも、それくらい勘弁してくれるさ」

 

クロウは何か言い返そうとしたが、結局は小さく息を吐くだけだった。

 

「……………………」

 

ガーディアンは静かにゴーストを見つめる。 

 

「……ゴースト」

 

「あ、喋った」

 

霊夢は聞き逃さなかった。ゴーストはしばらくガーディアンを見つめ返し、やがて観念したように目を閉じた。

 

「…………どうなっても知りませんよ!」

 

彼は前に出てスペースを確保すると中央の瞳が青白く輝く。

 

「トランスマット、起動――」

 

次の瞬間。

 

シュンッ――!!

 

青白い光が参道を包み込んだ。

無数の光の粒子が宙を舞い、一点へと集束していく。

やがて眩い光が晴れると、そこには見たこともない鋭角で流線型の乗り物が静かに浮かんでいた。車輪はない。

それなのに地面から僅かに浮遊し、低い駆動音を響かせている。

金属の装甲は陽光を反射し、幻想郷には存在し得ない異質な存在感を放っていた。

 

その場にいた全員が、言葉を失った。

 

「…………」

 

「…………」

 

最初に我へ返ったのは霊夢だった。

 

「…………え?」

 

魔理沙が思わず叫ぶ。

 

「ちょ、ちょっと待て!!」

「どこから出したんだ、それ!?」

 

あのアリスもでさえ目を丸くする。

 

「さ、さっきまで……何もなかったわよね?」

 

霖之助は目を輝かせながら一歩前へ出た。

 

「いや……違う」

「収納していたんじゃない……」

「転送したのか!?」

 

霊夢はガーディアンとゴーストを交互に見比べる。

 

「ちょっと待ちなさい!」

「何もないところから急に出てきたんだけど!?」

「どういうことよ!」

 

ゴーストは落ち着いた口調で答えた。

 

「こちらはスパロー」

「ガーディアン専用の小型高速ビークルです」

「シティ内に保管していた機体を、トランスマットでこの場所へ転送しました」

 

「と、トランスマット?」

 

「私達の世界の転送技術です。人や物を光の情報へ変換して、別の場所で瞬時に元通り再構成する技術です」

 

「………は?」

 

「簡単に言えば転送したい物を一度光に変えて光の速さで送り、自分の元で元通りにする技術ですね」

 

……一瞬の静寂。霊夢はぽかんと口を開けたまま呟く。

 

「…………頭が痛い」

「説明されたのに、余計分からなくなったわ」

 

魔理沙も頭を掻きながら苦笑する。

 

「あんたらの世界の道具ってのは、みんなこんななのかよ……」

 

アリスはスパローを見つめたまま、小さく息を呑む。

 

「魔法でも妖術でもない……」

「なのに、こんなことができるなんて……」

 

霖之助だけは興奮を隠せなかった。

 

「素晴らしい……!」

「これが外の世界の技術……!」

「ぜひあとで詳しく話を聞かせてください!」

 

ケイドは霖之助の反応を見て満足そうに笑う。

 

「気に入ったみたいだな」

 

クロウは額に手を当て、小さくため息をついた。

 

「……だから目立つなと何度もいったはずだ」

 

アリスは機体の周囲をゆっくり見回した。

 

「魔力は感じない……」

「それなのに浮いてる……?」

「どういう原理なの……?」

 

サニーが歓声を上げながらスパローの周りを飛び回る。

 

「浮いてる!」

「かっこいい!」

 

ルナも恐る恐る近付く。

 

「……触ってもいい?」

 

スターは腕を組みながらじっと観察する。

 

「馬車でもない、箒でもない」

「こんな乗り物、初めて見た」

 

あうんは感心したように目を丸くした。

 

「これ、本当に走るんですか?」

 

針妙丸は見上げながら呟く。

 

「おっきい……。」

「一人で乗る乗り物なの?」

 

ガーディアンは自信げに親指を立てる。

 

サニーはさらに目を輝かせた。

「ねぇねぇ!」

「速いの!?」

 

彼は大きく頷いた。

 

その様子を見ていたクロウは、再びため息をついた。

 

「なあ、本気でスパローを使うのか?」

 

振り返ると既にサムズアップしているガーディアンがいた。

  

「その返事はやめろ……」

 

すると、その横から知的で優しい男性の声が。

 

「クロウ」

 

彼のゴースト、グリントだった。

 

「もう覚悟の上です!」

「ガーディアンがスパローを出した以上、私達も公平にしないと!」

 

クロウは目を見開く。

 

「……は?」

「グリント、待て――」

 

しかし、時すでに遅し。グリントの中央の瞳が黄金色に輝く。

 

「トランスマット、起動!」

 

シュンッ――!!

 

再び眩い光。

ガーディアンの隣へ、もう一台のスパローが姿を現した。

クロウはゆっくりと頭を抱えた。

 

「…………」

「グリント」

 

「はい!」

 

「誰が出していいと言った?」

 

「ガーディアンだけでは不公平です!」

 

「そういう問題じゃない!」

 

ケイドは腹を抱えて笑い転げる。

 

「ははははは!」

「最高だ!」

「気に入ったぞ、グリント!」

 

クロウは深く息を吸い込み、主人公を指差した。

 

「……ガーディアン。もし何かあったら」

「お前を恨むからな……!」

 

ガーディアンは親指を立てて示して。

  

「もういい…………………」

 

一方、その一部始終を見ていた幻想郷の面々は。

 

「……………………」

 

ただただ、二台並んで浮かぶ未知の乗り物を見つめることしかできなかった。

 

「そういえば、ケイド――あなたは」

 

ケイドは二台並んだスパローを見渡すと、小さく肩を竦めた。

 

「俺は無理だ」

 

霊夢が首を傾げる。

 

「え?」

 

ケイドは苦笑いを浮かべた。

 

「スパローを呼び出せるのはゴーストだ」

「でも、俺にはもうサンダンスがいない」

「だから出せねえんだわ」

 

その一言にガーディアンは静かに目を伏せた。

 

「…………」

 

クロウもまた、言葉を失う。

 

「…………。」

 

――サンダンス。ケイドにとって、バカなことに最期まで付き合ってくれたかけがえのない相棒。

 

その名が口にされた瞬間、先ほどまでの賑やかな空気がほんの一瞬だけ静まり返った。

だが――

 

「まっ!」

 

ケイドは自らその空気を吹き飛ばすように笑った。

 

「だから2ケツさせてもらうぜ!」

「誰でもいいからよ!」

 

ガーディアンは顔を上げ、そして迷うことなく親指を立てた。

  

「よし決まりだな」

 

ケイドは満足そうに笑うと、軽やかにスパローの後部座席へ飛び乗った。

 

「頼むぜ、相棒!」

 

ガーディアンは小さく頷く。

  

霊夢は二人を見て、小さく息を吐いた。

 

「待って。その乗り物で行くなら、一つだけ」

「人里は避けた方がいいわ」

「こんなのが突然走ってきたら、大騒ぎどころじゃ済まない」

「間違いなく大問題になる」

 

ケイドは「まあそうだろうな」と頷いた。

 

「了解」

「管理者さんの言うことはちゃんと聞くさ」

 

魔理沙は箒へ跨る。

 

「なら、人里を通らない道から行くか」

「少し遠回りになるが、仕方ねぇか」

「あんた達、あたし達についてきな」

 

霊夢もふわりと宙へ浮かび上がる。

 

「なるべく低く飛ぶから見失わないでよ」

 

ゴーストは軽く会釈した。

 

「了解しました」

「ありがとうございます」

 

霊夢はふと思い出したようにサニー達に振り返る。

 

「あんた達!」

 

三人は一斉に返事をした。

 

「はーい!」

 

霊夢の表情が真剣なものへ変わる。

 

「またあいつらが現れるかもしれない」

「私達が戻るまで、絶対に隠れてなさい」

「無理に戦おうなんて考えちゃ駄目よ」

 

三妖精は笑顔を引っ込め、小さく頷く。

 

「……うん」

「分かった」

「みんなで隠れてる」

 

「あうんと針妙丸も気をつけてね」

 

あうんも胸に手を当てた。

 

「神社は私達が見張っています。霊夢さん達も気をつけてください」

 

針妙丸も力強く頷く。

 

「任せて!」

 

霊夢は優しく微笑む。

 

「お願いね。けど絶対に無理しちゃだめよ」

 

今度は魔理沙がアリスと霖之助へ視線を向けた。

 

「アリス、霖伊助」

 

二人が顔を上げる。

 

「お前らも気を付けて帰れよ」

「何かあったら無茶せず逃げろ」

 

霖之助は静かに頷いた。

 

「ああ、君達も気を付けてね」

 

アリスも穏やかな笑みを浮かべる。

 

「無事に戻ってきなさい」

「あなた達もね」

 

ケイドは「ヘっ」と笑う

 

「お嬢ちゃんにそう言われたらなおさら死ぬわけにいかねえな。任せとけ。」

「ザヴァラ達を連れて、ちゃんと帰ってくる」

 

ガーディアンも力強く頷いた。

  

霊夢はその場で高く浮遊し、大きく息を吸った。

 

「……それじゃあ」

「行くわよ!」

「よっしゃ!」

 

魔理沙が勢いよく箒を飛ばす。ガーディアンは静かにスロットルを握る。

 

ギュイイイイ……!

 

反重力で浮遊するスパローのエンジンは力強い駆動音が響く。

 

今すぐにも発進しそうな中、クロウだけがその場から動かなかった。

 

「…………」

 

ケイドが振り返る。

 

「どうした、クロウ?」

 

クロウは視線を落としたまま、小さく呟く。

 

「……いや」

「お前が、もうゴーストもいないのにこうして笑っている姿を見ると私は……っ」

 

言葉が詰まる。するとケイドは、

 

「――言うな!」

「今はそんなこと話してる場合じゃねぇ」

「ザヴァラもイコラも、どこかで待ってる」

「一刻も早く二人を見つけるぞ」

 

クロウは静かに頷いた。

 

「……すまない。」

 

ケイドは笑って肩をすくめる。

「だから謝るな」

「二人を見つけたら、その時ゆっくり話そうぜ。今は目の前のことに集中しろ、坊や」

 

クロウの口元にも、わずかに笑みが戻る。

 

「……ああ」

 

ケイドはガーディアンの肩を軽く叩いた。

 

「さあ、相棒」

「飛ばすぞ!」

 

ガーディアンは静かに頷く。

  

次の瞬間。

 

バシュイイイインッ!!

 

二台のスパローは後部の青白いブースターが噴き出し、土煙を巻き上げ、霊夢と魔理沙の後を追うように人里を避ける山道へと駆け出した。

 

霊夢と魔理沙が先頭を飛ぶ。その後ろを、二台のスパローが駆け抜ける。

 

反重力でホバーする機体は土煙を巻き上げながら参道を一気に駆け下り、やがて山道へと姿を消していった。

その駆動音だけが、しばらく博麗神社に響いていた。

 

やがて静寂が戻る。

 

アリスは、スパローが消えていった方角を眺めながら小さく息を吐いた。

 

「……騒がしい人達だったけど」

「悪い人達じゃなさそうね」

 

 霖之助も静かに頷く。

 

「ああ」

「それに、彼らと話をするのがますます楽しみになったよ」

「今日だけでも十分すぎるほど収穫があった」

 

そう言って、先ほどまでスパローがあった場所を見つめる。

「転送技術に、あの浮遊する乗り物……」

「外の世界には、まだ私の知らないものが無数にあるらしい」

「やっぱり外の世界は素晴らしい!」

 

サニーは大きく伸びをした。

 

「また遊びたいなぁ!」

 

ルナも微笑む。

 

「うん」

「今度はもっとゆっくりお話したい」

 

スターは静かに呟く。

 

「不思議な人達だったね」

 

あうんも小さく笑みを浮かべた。

 

「皆さん、優しい方達でしたね」

 

針妙丸は腕を組んで考え込む。

 

「外の世界って、思ってたより面白いのかも」

 

そして全員の視線は、自然と博麗神社へ向いた。

崩れた塀。

砕けた石段。

あちこちに残る戦闘の傷跡。

アリスがぽつりと呟く。

 

「……にしても」

 

霖之助も苦笑いを浮かべる。

 

「ああ」

 

全員は顔を見合わせた。

 

「霊夢、今日どうするんだろう……」

 

誰も答えられなかった。

ただ、夕暮れの風だけが、静かに博麗神社を吹き抜けていった。

 

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