俺、美少女になる(声だけ) 作:タルトタタン
「うぅっ、もう二度と酒なんか呑まない。こんな苦しい思いをするなら禁酒してやる」
配信終了後、トイレでしゃがみ込んでひたすら吐き出す。暫くして、我が家の吐瀉物マーライオンから、ちょっとアニメ声でほんの少し酒好きのおじさんへと姿を変える事に成功した。
こうなってしまった元の原因は、アレである。あの、アレ、(ゲーム内での)飲酒運転配信だ。何処の誰が考えたのか分からないけどさ、おかしいよ普通に。何が負ける度に酒呑むだよ。そんなもん死ぬよ普通に考えればさ。
「酒呑まないで、普通に配信するか」
最近飲酒の量が増えた理由。と言うか、酒を飲みながら配信をしようとするのには理由がある。シンプルにこの声で配信するのが恥ずかしいから。じゃあやらなきゃ良いじゃんって話になるだろうけど。せっかく良い声してるんだし、その声を生かしたいな〜とは思う訳。いや、分かってる。言ってる事が矛盾してるんでしょ?でも、結局理屈じゃないんだよ。やりたいからやる。呑みたいから呑む。そして吐いて後悔する。
どっちみち、もし長く配信を続けるんだったらずっと酒飲みながら配信なんてしんどいだろうしちょっとずつ慣れないとな。この声とも。
★★★★★★★★★★
「って事で、今日は普通にね。え〜っと、その。なんだ?」
とは思ったのは良い。だけどな俺よ。
「何にも考えずにね、配信を開いてしまったんで適当にお喋り。雑談って奴ですかね?喋っていこうかなって思いました」
いきなりシラフで雑談配信はキツくないか?しかも話すネタなんて何も無いのに枠立ててさ。もっと考えようぜ俺。と言うか。
「誰も見てないわ。まぁ、その方が気楽で良いや。居酒屋のおじさんの愚痴みたいな感じで誰にも気にせず喋れるからね」
居酒屋→酒→ちょっと呑み……。あぁ、駄目だ。危ねえ。
「と言うか、どう言う感じで話せば良いんだろう。分からない。えっへへへ」
えっへへじゃないぞ俺。どうしよう、何か緊張して来た。緊張のせいか、手がむくんで震えてる。あ、違うこれアル中の禁断症状だ。
「ごめんなさい、お酒が呼んでいるので今日はここまでって。まぁ、誰も見てないか。やっぱりお酒呑まないと厳しいかなぁ。徐々に慣らすしか無いか」
配信を終わらせ、冷蔵庫にあった冷えたビールをその場で喉に流し込んだ。まるで、スポーツ飲料の様に乾いた体に染み渡りその感覚が狂ってしまいそうなほどにたまらない。
「酒は辞められないな」
結局人間は愚かで、駄目だと分かっていてもやってしまう事がある。それが人間なのだ。
「もう無くなっちゃった」
先程のもう酒は呑まない発言は何処へ行ったのか。俺は酒を求めて、夜の街へと消えていった。
一ヶ月後。
「ドーモー個人勢Vtuberの深酒つまみで〜す」
色々あって今日が初配信の新人Vtuberになっていたのだが、それはまた別の機会に話そうと思う。取り敢えず今日は眠いし、ここまでとしよう。