1:召喚
「ねえ灯(あかり)ちゃんー。今日も一緒に帰らない?」
「うん、いいよー。」
小学5年生の春。
担任の先生から”今年から高学年です!下級生のお手本になれるように、生活してくださいね!“なんて言われた、帰りの会の後。
不安だったクラス替えをなんとか乗り切り、迎えた新クラス。
早速仲良くなった子と一緒に帰っていた。
「ばいばーい!また明日ね!」
「うん、また明日ー!」
そう言ってその子と別れて、人気の少ない道に入った時だった。
「____え?」
足元に、ほの暗い光が淡く出現する。
円を描くように、複雑な紋様を描くように広がって。
それは魔法陣のように、私の足元に浮かび上がった。
「なにこれ」と思った時にはもう遅かった。
瞬きの間に、景色がグンと歪む。
洗濯機の中でグルグル回されているみたいだ。平衡感覚がまるでなくなり、自分の中に、何か莫大なエネルギーが入ってきているような気がする。
何これ何これ!?
ありえないくらいに酔いそう!!!
ジェットコースター乗った時もこんなのじゃなかったって!私ジェットコースター苦手だから!!やめてほんとに!!
《確認しました。エクストラスキル『平衡感覚』を獲得しました。》
______は?え?今なんて言った??
スキル...?なに??分からないんだけど????
《確認しました。エクストラスキル『言語理解』を獲得しました。》
ちょ、待って??本当に何??言語理解?
いや。うん。言語は理解できてるけど。うん。
そういうことじゃないんだって。
ジェットコースターみたいな酔いもおさまったけど。
待って。何が起きてるの...??
ダメだ知能指数下がってるかもしれない。理解ができない。頭が回らない。
《確認しました。スキル『知能』を獲得しました。》
《確認しました。スキル『思考加速』を獲得しました。》
.....なんか頭スッキリしたんだけど。なにこれ。不思議すぎない??
あれか?混乱を極めたら、逆に冷静になれるみたいな?もしかして感情がごちゃ混ぜだから、逆に凪いでる?
《『知能』『思考加速』『言語理解』を統合。進化させます。》
_____《成功しました。》
《ユニークスキル『理解者(ワカルモノ)』に進化しました。》
...なんて???
そう思ったのも束の間。いきなり視界が明るくなって。そこには_____
「...なんだ、子供か。」
「は???」
なんか、失望された。
落ち着け、私。ここでキレても仕方ない。今、どういう状況なのか把握しなきゃ。
眉を顰めながら、周囲をくるりと見渡す。
石づくりの柱。今どき見かけないような、格子状の窓。地面に描かれた、魔法陣。
そして、ローブのようなものを着た大人が、何人か。
......明らかに日本じゃ無さそうなんだけど。
「どうする?子供だろ。戦力にもならん。」
「スキルなぞ持っとらんじゃろうしな。」
「もって五年だろ?どうすんだよ、こいつ。」
ざわめきが聞こえる。
全く聞いたことのない言語なのに、理解できる。日本語でも英語でもない、本当に、初めて聞く言葉。
なのに理解できる。なぜ??
「おい、小娘。お前は何のスキルを持ってる。」
「...え?な、なに...?」
「チッ、その反応は持ってねえな。」
「どうしますか、あの子供。」
「今までと同じじゃ。自由学園での受け入れ交渉が出来次第、入学させる。」
「はっ。了解しました。」
..........明らかに、厄介払い的な気配がする。
それから、事の次第は足早に進んだ。
私は、なんだか騎士っぽい人たち?に連れられて、小さな部屋に通された。ベッド・小さな机・小さな窓しかない、六畳くらいの部屋。
騎士っぽい人はただ「大人しくしていろ」とだけ言って、部屋を閉めてどこかへ行ってしまった。
かなり待って欲しい。
どう言う事だ。
騎士っぽい人って。鎧着てたし、腰に剣刺してたからそうなんだろうけど。
明らかに現代じゃない。それか、あれか?コスプレパーティでもしてるのかな?
いやいやいや。現実的に考えてあり得ない。だったら、この状況はなんだ。
タイムスリップ?いやでも。それだったら、言語が通じるのはおかしい。建物や、服装からして、明らかにここは日本じゃない。
だったら考えられるのは...ここは、違う世界?
パラレルワールド的な。日本語が世界共通語になった世界線の、中世ヨーロッパみたいな。
でも。さっき聞いた言語は、明らかに日本語じゃなかった。聞いたこともない言葉。アラビアとかその辺りなのかな。わかんないけど。
ベッドに寝転んで、真っ白な天井を見上げながら考える。
あまりにも考えたくない仮説。認めたくない現実。
_______魔法陣が、あった。
壁の灯りが、電気じゃなくて、蝋燭でもなかった。謎の石が、明るく輝いていた。
あんなに明るく光る石なんて、見たことない。知らない。
ものすごく、認めたくないけど、認めざるを得ない。認めないと、次のことが考えられない。
私は、多分、違う世界に来た。
地球以外。もしくは地球のパラレルワールドに。