「…じぇ、ジェーン…これいつまで続くん――」
「あと5分♪♪」
「……わかった。」
レイヴントは抵抗することも諦め、静かに肩を落とす。今の彼はソファに腰掛け、その膝の上にはジェーンがちょこんと座り、それを彼が抱きしめるという状態。
これはジェーンが急に「今日は思う存分甘える日♪」と勝手に決めた結果だった。
頬をすり寄せ、指を絡め、時折こちらを見てくすりと笑う。そのたびに「もう少し」「あと五分」と言われ続け、気づけば二時間が経過していた。
「……ジェーン。今日はずいぶんと長い甘えんぼだな、なんかあったのか?」
「あらレイくん、そんなに知りたいの?今日ね、帰ってくる途中で──」
そう言うと、彼女は今日の出来事を思い返すように目を細めた。
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「ふぅ……今日はいつもより早く終わったわね。」
仕事を終えたジェーンは大きく伸びをすると早々に帰路に着き、レイヴントのことを考えるだけで、自然と足取りが軽くなる。
気づけば歩幅は少しずつ広がり、帰り道を急いでいた。近道になる公園へ入ると、ふと視界の端に一組のカップルが映った。ベンチに並んで座り、お互いの肩にもたれ合いながら、周囲など気にも留めず楽しそうに笑い合っている。
時折頭を撫でたり、腕を絡めたり。
傍から見れば、少々人目を気にしなさすぎる、甘々なカップルかもしれない。
ジェーンは思わず足を止め、その様子を眺めた。
(ああいうのも、悪くないわね。)
いや――。
正確には、少しだけ羨ましかった。
レイヴントは優しい。
自分が甘えれば受け止めてくれるし、大切にもしてくれる。
でも、彼はどこか遠慮がちで、自分から思い切り甘えてくることはほとんどない。
(だったら……今日は、アタイが好きなだけ甘えちゃえばいいじゃない。)
その瞬間、「今日は思う存分甘える日」という、誰にも相談していない勝手な記念日が誕生したのだった。
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「――と、いうことよ」
「なるほどな」
レイヴントは静かに頷く。
話を聞いてみれば、確かに筋は通っている……ような、通っていないような…
だがジェーンは、普段から甘えてくるため今日との違いは、本人が「今日は思う存分甘える日」と勝手に決めたことくらいだろう。
「それで?」
レイヴントが首を傾げる。
「……それで、って何だ?」
「今の話を聞いてレイくんは甘えてくれないの?」
レイヴントは少し悩んだあと、ほどなくして静かに首を横へ振った。
「ないかもな。俺は甘えるタイプじゃないし、それにジェーンがたくさん甘えてくるしな。」
「……アタイってそんなにレイくんに甘えてるかしら?」
「…?覚えがないのか?この間だって――」
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――ある日の夜。
寝る支度を終えたレイヴントがベッドへ向かおうとすると、ジェーンが布団の上で両手を広げながら待ち構えていた。
「寝る前のちゅーして……はやく♡」
甘えた声で唇を尖らせるジェーン。
そのまま放っておけば、本当に飛びかかってきそうな勢いだ。
レイヴントは小さくため息をつく。
「……わかったから」
観念したようにキスを落とすと、ジェーンは満足そうに目を細め、その後レイヴントは無事(?)スイッチが入ったジェーンに襲われた。
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――また別の日。
特務捜査課での飲み会の帰り。
迎えに来たレイヴントの姿を見つけるなり、酒で頬を赤くしたジェーンは、ふにゃりと笑う。
「ぁ、レイくん……迎えに来てくれたのね……」
まともに歩けそうもない彼女を見て、レイヴントは迷わず姫抱きにする。
「朱鳶さんから連絡もらってきてみれば……なんでこんなになるまで飲んだのだ…」
「んふふ……♡ごめんなさい…♡」
ジェーンは安心しきったように彼の胸へ頬をすり寄せる。猫のように何度も頬を擦り寄せながら、小さく幸せそうな笑みをこぼしていた。
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――また別の日の休日の朝。
レイヴントがソファで新聞を読んでいると、寝起きのジェーンが眠そうな目を擦りながらやって来る。
何も言わず隣へ座ったかと思えば、そのまま肩へ頭を預けた。
「……あと五分だけ、このまま」
「眠いなら部屋で寝ればいいだろ」
「レイくんの隣のほうが気持ちいいの……」
そう呟くと、彼の腕へ抱きついたまま再びうとうとと眠り始める。
結局レイヴントは新聞を読むのを諦め、ジェーンが目を覚ますまで静かに付き合うことになった。
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――またまた別の日の買い物帰り。
スーパーを出たところで、レイヴントが買い物袋を両手いっぱいに持って歩いていると、不意にジェーンが彼の腕へ絡みついた。
「レイくん、腕貸して♪」
「いや、もう両手が塞がってるんだが」
そのまま腕にぎゅっと抱きつき、上機嫌で歩き始める。
「こうすると恋人っぽいわね」
「っぽいもなにも恋人だが…」
「じゃあもっとくっつきましょ?」
そう言ってさらに密着するジェーンに、レイヴントは小さくため息をつきながらも、結局最後まで振りほどくことはなかった。
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「これでも甘えてないって言えるか?」
「……/// 」
さっきまで余裕の塊だったのに今じゃ言い返す言葉は出てこない。どうやら本人は、本気で無自覚だったらしい。
そんな彼女を見つめながら、レイヴントは心の中で
――可愛すぎる。
そう思うたび、できることならこのまま抱き上げて寝室へ連れて行きたい――そんな危うい衝動が頭をよぎる。
だが、レイヴントは静かに息を吐き、その想いを胸の奥へ押し込めた。
「それで、今回は何ヶ月空けるんだ?」
「…やっぱり、わかっちゃった?」
ジェーンが小さく苦笑すると、レイヴントは黙って頷く。彼女がおもむろに甘え始める時――それは決まって、長期間の潜入任務や危険な作戦を控え、しばらく家を空ける前だった。
別れを惜しむように。
少しでも一緒にいた時間を心へ刻み込むように。
「ちゃんと待ってるからさ、心配すんなよ。」
「けど…レイくんにだけには愛想尽かされたくないのよ」
「だれが愛想尽かすかっての、そんなの絶対ねぇよ」
その言葉を聞いた瞬間、張りつめていたジェーンの表情がふっとほどける。
彼女は安心したように微笑むと、そっとレイヴントの胸へ額を預けた。
「ねぇ…念の為、今日も思い出作り、お願いしていい?」
「……今日は理性抑えられそうにねぇぞ?」
冗談めかした口調とは裏腹に、その声はどこか掠れていた。レイヴントの理性は、とっくに限界へ近づいていた。
「それでもいいわ、アタイ頑丈だもの…♡」
その言葉を最後に、ジェーンの視界がぐるりと回り、レイヴントが押し倒した状態となる。
「さっきも言ったけど、今日はほんとに理性抑えられそうにないからな?」
「えぇ、構わないわ…きて♡」
そうして2人は1番忘れられない夜を過ごした。
もしリクエストしてくれた方が入ればその作品だけ「あなた」という一人称でやろうと思ってます。