あなたとリナと結婚して早5年の夫婦。
関係も良好だがあなたは今、今世紀最大の危機に陥っていた。
「みんな……リナの料理を回避するには、俺はどうしたらいいのだろうか……」
「私たちにはどうにもできないから諦めな」
「その……ごめんなさい…!」
エレンには冷たく見捨てられ、カリンには申し訳なさそうに見捨てられ、
深刻そうな表情で呟くあなたの隣で、ライカンもまた困ったように目を伏せた。
「申し訳ありませんが……こうなってしまっては、私共がにはどうすることも……」
「だよなぁ……。少しずつ慣れてきたとは思うんだけど……まだ覚悟がいるというか……」
そんな会話を交わす二人。
だが、なぜあなたがこんな悩みを抱えることになったのか。
話は少し前に遡る――。
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「日頃のお礼……?」
あなたが首を傾げると、リナはいつもの柔らかな笑みを浮かべながら頷いた。
「はい。いつもお仕事で疲れて帰ってくる私をあなたは優しく癒してくれますから……そのお礼をと思って」
その言葉に、あなたは少し驚いたように目を瞬かせる。
「いつもって言うけどさ……俺だって結構リナに甘えてるだろ?むしろお互い様で、五分五分じゃないか?」
そう言って笑うあなた、しかしリナは首を横に振った。
「いいえ。あなたはいつも私のことを気にかけてくれています。疲れているはずなのに、私の話を聞いてくれて……傍にいてくれる」
「……リナ」
「だから、私もあなたに何かしてあげたいのです」
そう告げた彼女の表情は、どこまでも真剣だった。
そして――。
「ですので、今度私が素晴らしいお食事を作って差し上げましょうと思いまして」
「……え?」
一瞬、時間が止まったような気がした。
「り、リナ……?」
あなたの脳裏に、過去の数々の記憶が走馬灯のようによぎる。
……魚がまるまる入ったパイ。
……タコの足が入ったケーキ。
……なんか色々はみでてるバレンタインチョコ。
……本当にやばい日は正体不明の物体。
見た目からして不安を煽るそれを、意を決して口にした瞬間。
味覚という概念そのものの限界を超えた、未知の衝撃が全身を駆け巡った。
……あれは料理だったのだろうか。
いや、考えるのはやめよう。
だが、そんな過去があったとしても――。
リナ本人に悪意など、一切ない。
むしろ逆だ。
彼女はいつだって、心の底からあなたのことを想っている。
疲れて帰ってくるあなたを少しでも喜ばせたい。 少しでも力になりたい。
その純粋な気持ちが分かっているからこそ……断ることができない。
「……あー、その……なんというか……」
あなたは必死に言葉を探す。
どうにかして彼女の気持ちを傷つけず、なおかつ料理を回避できるような、奇跡の一言を。
しかし、いくら考えてもそんな都合のいい言葉は浮かばない。
「本当に大丈夫だからさ!?それに、リナも忙しいだろ? 無理して料理なんてしなくても……ほら、ね? あはは……」
言葉とは裏腹に、体中には大量の冷や汗が流れている。
あなたの本能が告げていた。
危険だ、と。
過去の経験が警鐘を鳴らしていた。
しかし――。
「そうですか……」
リナは少しだけ目を伏せる。
「残念ですわ。あなたのお力になりたかったのですが……」
そう呟いた彼女の表情は、見るからにしょんぼりとしていた。
( ´・ω・`)
そんな顔をされたら、心が揺らぐ。
彼女は本当に純粋な気持ちで言っているだけなのだ。
分かっている。分かっているのだが……。
あなたは拳を握り、心を鬼にする。ここで折れてはいけない。過去の悲劇を繰り返してはいけない。
そう決意した――
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無理でした。
だって無理じゃん!愛しの妻からあんな可愛げにお願いされたら!!無理じゃん!?!?
言い分はここまでにして、そうして苦し紛れにヴィクトリア家政の3人と話していた。
「妻を愛する旦那として、完食したいところだけど…………あれ、本当に存在するものなの?」
「それについては、全くもって同感です」
ライカンが淹れてくれた紅茶の香りが、張り詰めた空気をわずかに和らげる。
しかし、レイヴントの内心はまったく落ち着いていなかった。
妻を愛している。だからこそ、リナの料理を残したくはない。 だが、それとこれとは話が別だった。
「ですが……リナの食事を召し上がったのは、今回が初めてではないのでしょう?前回などは――」
「ちなみに、本当にやばいやつで二週間舌が痺れて使い物にならなくなりました」
「……」
「病院に行こうとしたら、絶対にバレるから行けないし……結局、自然治癒を待つしかなかった」
あまりにも壮絶な報告に、ライカンは一瞬言葉を失う。
やがて静かに頷くと、いつもの落ち着いた声で告げた。
「念のため、救急箱などをご用意しておきます。備えあれば憂いなし、という言葉もございますので」
「ハハ…いざとなったら頼むよ…」
紅茶の湯気が4人の間を漂う。
そんな穏やかな時間も長くは続かなかった。
――コンコン。
控えめなノックのあと、ドアがゆっくりと開かれる。
そこに立っていたのは、満面の笑みを浮かべたリナだった。
「あなた♡ お食事ができましたので、こちらへいらしてください」
その声は弾み、嬉しさが隠しきれていない。
対照的に、レイヴントの表情はわずかに引きつる。
「……わ、わかったよ」
そう返事をすると、彼は静かに立ち上がった。
部屋を出る際、ライカンとカリンに祈られているのが見えたがそんなの気にしている心がなかった。
逃げるという選択肢はない。
妻が心を込めて作ってくれた料理なのだから。
あなたは覚悟を決め、案内された部屋のドアを開く
そして――。
テーブルの上に並ぶ料理を目にした瞬間、その足がぴたりと止まった。
「……り、リナ?」
恐る恐る、震える声で尋ねる。
「これ…なに……?」
皿の上には、料理と呼んでいいのかすら判別できない、禍々しい色彩を放つ物体が鎮座していた。
「これはまはめかゆぼあぜですわ♪」
「……へ?な、なんて?」
「ですから、まはめかゆぼあぜですわ♪あなたのためにいつもより頑張りましたので、美味しく召し上がっていただけますわ。」
満面の笑み。
その笑顔には一切の悪意がない。
だからこそ逃げ場もなかった。
レイヴントは静かに椅子へ腰を下ろし、震える手でスプーンを握る。
そして心の中で、遠い空へ語りかけた。
――拝啓。
旧都陥落で亡くなってしまった父さん、母さん。
もし今日、そちらへ向かうことになったら……
どうか、温かく迎えてください。
できれば夕食は、普通の料理でお願いします。
あなたは覚悟を決めてスプーンを持ち上げた。
すくい上げただけで禍々しいオーラが伝わってくる。
「食べないのですか?」
透き通るような声が響き、レイヴントの動きがぴたりと止まる。
「え? あ、あぁ……そう! リナがいつもより頑張って作ったって言ってたから……食べるのが勿体ないなぁ、と思って……(||´・∀・`)ハハッ..ハハ..ハ....」
笑い声は最後には完全に力を失い、乾いた空気だけが残った。
そんな苦し紛れの言い訳を聞いたリナは、にこりと微笑む。
「でしたら――私が食べさせてあげますわ♪」
リナはあなたの隣へ腰を下ろすと、スプーンでまはめかゆぼあぜをひとすくいし、にこりと微笑みながらあなたの口元へ差し出した。
「はい、あ〜ん♡」
「あ、あーん……」
あなたは覚悟を決め、ゆっくりと口を開く。
次の瞬間――
バリッ! ボリッ! バキッ!
食べ物とは思えない予想をはるかに超える硬質な音が口の中に響き渡った。
何種類もの食材が無理やり混ざり合ったせいか、味はもはや判別不能。ただ得体の知れない何かを必死に飲み込むことしかできない。
「???????????????????????????」
思考が停止する。
頭の中には、ただ広大な宇宙だけが広がっていた。何も考えられない。いや、考えることを脳が放棄したのだ。
……。
…………。
「――はっ!」
我に返った瞬間、ぼやけていた視界が少しずつ焦点を結ぶ。目の前に置かれていた料理(?)の皿は、いつの間にかきれいに空になっていた。
そして、その向かいでは――リナが満足そうな笑みを浮かべてこちらを見つめている。
「うふふ、嬉しいですわ。あんなに早く完食してくださるなんて」
その穏やかな笑顔とは裏腹に、先ほどまで口にしていた"何か"の記憶だけが、じわじわと脳裏によみがえってくるのだった。
「よろしければ、デザートもいかがかしら?きっと私の料理より満足していただけますわよ。」
「いや、もうお腹いっぱ――ん?リナの料理じゃないの?」
「えぇ、デザートは……私です♡」
「……」
意識がまだ完全にはっきりしていなかったあなたは
"意図的に"置かれたであろうソファにリナを押し倒す。
「きゃっ、そんな乱暴に……♡ライカンたちは先程出かけたので、強くても…大丈夫です――アッ♡」
結果的にその日は甘々な時になったが、後日しっかりあなたの味覚はぶっ壊れていました。
最後こういう終わり方じゃなかったんだけど、完成品見せたらもうちょっと終わり方をエッな感じにしてほしいと言われこうなりました。