超人ハンターさん達の日常   作:マスターチュロス

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※本作品では、モンスターハンター世界における独自の解釈設定が含まれています。ご注意ください。




#EP03『防具スキルは積めるだけ積め』

 

 

【隔ての砂原── ベースキャンプ ──】

 

 

 装備が見れると聞き、ワクワクしながら待機する鳥の隊ハンターと、同じ鳥の隊に所属する加工屋『ジェマ』。

 

 現大陸でも滅多に見られないモンスター、その素材で作られた未知の武器や防具が転がっているとなれば、誰であろうと食いつく。加工屋であれば尚更である。

 

「それじゃあ、行こうか」

 

 龍歴院ハンターはそう言うと、二人を自分のテントに案内する。

 

「楽しみだね! ハンター!」

 

「楽しみすぎて昨日から寝れてない」

 

 そう答えた調査隊ハンターの目元には、見事なまでの黒い隈が出来上がっていた。

 

 声だけは妙に元気なのが、かえって不気味である。

 

 ジェマは隣を歩きながらその顔を覗き込み、さすがに呆れたような苦笑を浮かべた。

 

 三人はキャンプの間を抜け、やがて他より少し離れた位置に張られた一張りのテントへ辿り着いた。

 

「着いたよ、ほら」

 

 龍歴院ハンターがテントを開けると、そこには10種類ほどの武器がズラリと並んでいた。

 

「凄い……!! どれも見たことない……!!!」

 

 調査隊ハンターの瞳が子どものように輝く。

 

「これとか、何のモンスターの武器なんですか!?」

 

 手に取ったそれは、青みを帯びた巨大な刃。刀身と呼ぶにはあまりにも生々しく、まるで巨大な蟹の鎌をそのまま切り落とし、柄だけを取り付けたような外見をしている。

 

 見るからに硬い甲殻質の刃には、使い込まれた痕跡が僅かに残っていた。

 

 龍歴院ハンターは懐かしそうにその太刀を見る。

 

「それは鎧裂鎌ドヒキサキ。ショウグンギザミの特殊個体の素材で作られた太刀だ」

 

「二つ名ですね!」

 

「そう! 凄く斬れ味が長持ちするんだけど、コレ作るのに必要な素材が結構シビアでね……」

 

 その瞬間まで誇らしげだった龍歴院ハンターの表情に、薄暗い影が差した。

 

 楽しい思い出というより、何か苦い記憶を掘り返した顔である。

 

「G3以上のショウグンのヤドを部位破壊するか、G5、超特殊許可のクエスト報酬でしか貰えないんだよ……」

 

「部位破壊ならそこまで……」

 

「二つ名ショウグンギザミはヤドを取っかえ引っ変え交換するモンスターだから、ダメージが完全に蓄積する前に交換されるとそれまで与えていたダメージがリセットされるんだよ」

 

「それは……惨いですね」

 

 龍歴院ハンターは遠い目でドヒキサキを見つめる。

 

 何度殴っただろう。何度逃げられただろう。何度、新しいヤドを背負って戻ってきたあの蟹を見て絶望しただろう。

 

 その頬を、一筋の涙が伝った。調査隊ハンターは、それ以上何も聞かなかった。

 

 しばらくして、重くなった空気を払うように、調査隊ハンターは別の武器へ手を伸ばす。

 

「次のコレは……タマミツネの武器ですか?」

 

 手に取ったのは、扇を思わせる珍しい形状の片手剣だった。

 

 流麗な曲線に和を感じさせる装飾、そして泡狐竜の素材を思わせる優美な意匠。一目見ればタマミツネ由来だと分かる。

 

 だが、調査隊ハンターの知るタマミツネの片手剣とは、色も模様もどこか違う。

 

 その疑問を待っていたかのように、龍歴院ハンターは嬉々として答えた。

 

「いや、二つ名タマミツネ。"さにつらう色法忌風扇(しきほうきふうせん)"」

 

「属性値が優秀で、何より二つ名武器の特性で"狩技"が出しやすくなるのが特徴だな。ドヒキサキもそうだけど」

 

「狩技……?」

 

 聞きなれない単語に、調査隊ハンターは首をかしげた。

 

「ウチのギルドの狩猟技法の一つで、いわば"必殺技"? みたいなモンだよ」

 

「必殺技!?」

 

「そこにもう一つの狩猟技法"スタイル"を加わえて、俺たちハンターは狩りをしている。まぁそっちの"傷付け攻撃"? と似たようなものだな」

 

「スタイル!?」

 

 聞いた事のない狩猟技法の数々に、調査隊ハンターは興味をそそられる。

 

「その辺の話は、また今度するよ」

 

 龍歴院ハンターはそっと、話を閉じた。狩技とスタイルは話し出すとキリがないので、この場では一旦中止しておく。

 

 だがそれでも聞きたいとごねる調査隊ハンター。そんな傍ら、ジェマはある防具に目をつける。

 

「ねぇ、アンタ……」

 

 ジェマは龍暦員ハンターの肩を叩いた。

 

「何?」

 

「この防具……」

 

 ジェマは手に取った防具を龍歴院ハンターに見せる。

 

「あぁ、グリードXRヘルム! これ強いんだよ……、なんてったって防具スロットが3つも空いて匠スキルも……」

 

「そうじゃなくて! この防具の加工技術って……」

 

 ジェマは目線を防具に向けた後、もう一度龍歴院ハンターを見る。

 

「私の、お父さんが編み出したヤツだよね……?」

 

「え?」

 

 隣で聞いていた調査隊ハンターが目を見開く。

 

 ジェマはもう一度ヘルムを見下ろした。

 

「獰猛化モンスターの素材を使って新たな性能を引き出す……それが、お父さんが編み出した"R"装備」

 

 ジェマの説明を聞き、突如、龍歴院ハンターの脳裏に蘇る記憶。それはかつて、地底火山に突っ走ってしまったナグリ村の村長を心配し、燃石炭の納品依頼を出したとある娘さんの姿……

 

 またある時は、ウラガンキンがいる火山の採掘場に向かってしまった村の人たちを守るべく、狩猟依頼を出したりもした……

 

「……ッ!? 待って、ジェマさんって……」

 

「ココット村にいた、キャラバンの娘さん!!?」

 

「そういうあなたは……父さんやココット村の人達の悩みを解決してくれた、凄く気のいいハンターさん……?」

 

 互いの認識が一致し、二人は口を開けながらも握手し、そして互いにギュッと抱きしめた。

 

「お二人は知り合いだったんですか……?」

 

 状況についていけない調査隊ハンターだけが、一歩離れた場所で取り残されている。

 

「あぁ、今初めて分かったけど……その、あまりに成長し過ぎてて……」

 

「あの時はまだ小さかったから、無理もないか!」

 

「むしろ今が何もかも大き過ぎてビックリしてる……」

 

 龍歴院ハンターの視線が、ジェマの頭から足元まで往復する。

 

 記憶の中では、自分の腰辺りまでしか背丈のなかった少女。それが今では一人前の加工屋としてハンターたちに同行し、堂々と仕事をしている。

 

 時間というものは恐ろしい。つい最近の出来事のように思えるのに、世界は確実に先へ進んでいた。

 

 何とも言えない感慨が胸に込み上げるが、今は昔話をするために集まったわけではない。

 

 龍歴院ハンターは一度咳払いし、気持ちを切り替えた。

 

「話を戻すけど、このグリードXRヘルムと、ギザミXRメイル、グリードXRアーム、ギザミXRフォールド、グリードXRグリーヴ、これらを揃えるだけで近接武器全般で使用できる装備になる」

 

「おぉ……!!」

 

「そこに弱点特攻+5のスロ3の護石を組み合わせて、装飾品を嵌め込むと……!」

 

「おお!!」

 

「斬れ味レベル+2に業物、見切り+1、弱点特攻、超会心がつく!! これで会心率60%!!!」

 

「お……、おぉ?」

 

 上昇真っ只中の調査隊ハンターの右腕が突如急ブレーキをかけ、へなりと横に倒れる。

 

「少なくない……ですか?」

 

「……え?」

 

 今度は龍歴院ハンターがきょとんとする番だった。

 

「僕の装備、超会心5、達人芸1、挑戦者5、連撃3、納刀術3、無我の境地3、逆襲3、渾身3、早食い3、逆恨み2ですよ?」

 

「え……ん? そのスキルの後につく数字って、何?」

 

 今度は調査隊ハンターがきょとんとする。

 

「え、スキルレベルですよ。ほら、レベルごとに強さが変わるじゃないですか」

 

「スキルレベル……? 複合スキルってこと?」

 

 恐ろしいほどに噛み合わない二人。同じ「装備スキル」という言葉を使っているにもかかわらず、二人が頭の中に描いている仕組みそのものが違っている。

 

「ストップストーップ!!」

 

 困惑する両者を止めるべく、ジェマが間を割って入った。

 

 加工屋としては、この差が生まれた理由にも心当たりがある。

 

「私たち加工屋の技術は日に日に上達しているの。上達して得た新たな技術はなるべく他の加工屋の人達にも伝えているけど、技術は手紙と違って、人が人に直接教えないといけないから時間がかかるの」

 

「特に最近は、モンスターの素材から力を引き出して加工する技術が劇的に成長してね、まさに"革命"だった」

 

 モンスター素材は、ただ硬いから鎧にするのではない。

 

 火を宿す素材、毒を秘めた素材、特異な性質を持つ鱗や甲殻、骨、皮膜、それらが持つ力を、装備として最大限に引き出す。

 

 その方法自体が、長い年月をかけて大きく変化してきたのだ。

 

「それが今のハンターの防具。スキルがレベル制になったことで、昔よりもかなり多くスキルを積めるようになったの」

 

 そして、ジェマは龍歴院ハンターの防具を指差す。

 

「そして、気の良いハンターさんが見せてくれた防具は、旧世代の加工技術。ポイント制で、ポイントが10溜まったらスキルが発動する仕組みなの」

 

「そうだったんですね……」

 

 ようやく調査隊ハンターの中で疑問が氷解した。だが同時に、胸の奥に、猛烈な罪悪感が湧いてくる。

 

 知らなかったとはいえ、龍歴院ハンターが苦労して作り上げた装備を、たった一言で「少ない」と評してしまったのだ。

 

「すみません、少ないとか言ってしまって……」

 

「いやいいんだ。時代の進歩を感じられて俺は嬉しい」

 

 龍歴院ハンターは、目元に滲んだ涙を指で拭った。

 

 悲しいわけではない。むしろ、妙に嬉しい。

 

 自分たちの時代から積み重ねられてきた技術が、ここまで先へ進んでいる。それを実際に自分の目で確かめられたことが、ハンターとして少し誇らしかったのだ。

 

 だがそれはそれとして一つ、気になることがあった。

 

「そういえば、さっき言ってたスキルの中に『見切り』と『弱点特攻』が無かったけど、無くなったの?」

 

「あー、あるにはあるんですけど、弱点特攻は発動条件が厳しいのと、他のスキルでも会心率盛れるんで抜けちゃったんですよねぇ……」

 

「凄い時代だなぁ……『見切り』と『弱点特攻』がいらなくても戦えるなんて」

 

「構築次第では入るのでまだ現役ですけど、選択肢が増えたのは大きいですね」

 

 そこから先は、ほとんど講義だった。調査隊ハンターが装備構成を見せ、龍歴院ハンターが質問し、時折ジェマが加工屋側から補足する。

 

 現代のスキル事情、装飾品、護石、オメガと戦う際の注意点に至るまで、龍歴院ハンターは次々と新しい知識を吸収していった。

 

 零式オメガとの戦いを前にして、この情報を知れた意味は非常に大きい。

 

 大きい。確かに大きいのだが、だからこそ、新たな問題が浮かび上がった。

 

「オメガ戦どうします?」

 

 調査隊ハンターが、周囲に聞こえないよう少しだけ声を潜める。彼も同じ結論に辿り着いていた。

 

「今の装備でどれだけ戦えるか気になるところだが、今の環境についていける自信が無い」

 

 龍歴院ハンターは腕を組む。

 

 愛着はある。性能にも自信がある。この装備は、幾多の強敵を共に倒してきた装備だ。

 

 だがギルドでも最前線とも言えるこの禁足地調査隊の装備環境をもってしても、零式オメガと太刀打ちするのは厳しいというのが現状。

 

 何より命が懸かっている。

 

「……そっちの武器って装飾品付けられるところあります?」

 

「え? 武器に装飾品付けられるの……?」

 

「デスヨネー」

 

 当然の反応に調査隊ハンターは目を細めた。

 

 旧世代の防具システムだけでなく、武器側の事情も当然違う。

 

 となれば、流石に鳥の隊側で装備一式を貸し出した方がいい。

 

 武器に装飾品を装着できなければ、『超会心』や『達人芸』をはじめとする現在の装備構築を最大限に活かせない。ならいっそ、武器も防具も護石も全部鳥の隊で用意した方が都合がいいのではないだろうか。

 

 本音を言えば、異邦の武器が零式オメガにどれほど通用するのか。物凄く見てみたかった。

 

 だが、命には代えられない。ここは断腸の思いで諦めるしか……

 

「よかったら、私がカスタマイズして装飾品を付けられるようにしてあげようか?」

 

 その声はまさしく鶴の一声であった。

 

「え!? 出来るの!?」

 

 龍歴院ハンターが勢いよく振り返る。

 

「武器だけなら……たぶん」

 

「やった──ー!!!」

 

 大喜びする龍歴院ハンター。思わぬラッキーに調査隊ハンターも喜びを噛み締めると同時に、ジェマの加工技術の凄さに圧倒された。

 

「ただ時間がかかるから、加工するのは二つまでね! メイン武器とサブの二つ!」

 

 ジェマが指を二本立てる。龍歴院ハンターは喜びながら頷き……ふと止まる。

 

「……サブ?」

 

 聞き覚えのない運用である。

 

「セクレトに武器を持たせられるので、ハンターは2つ武器を持てるんですよ」

 

「2つも持てるの!?」

 

「持てます」

 

(この人可愛いな……)

 

 何でも反応してくれる龍歴院ハンターに謎の萌えを感じる調査隊ハンター。

 

 その後も三人の装備談義は続いた。来たる決戦に備え、零式オメガを打ち倒すため、三人は武器と防具を囲みながらいつまでも対策を練り続けるのであった。

 

 

 

 

 

 






次回、VS零式オメガ。


【おまけ】

チャッピーによる、モンハンダブルクロス最強太刀VSモンハンワイルズ最強太刀。

ダブルクロス太刀代表:鎧裂鎌ドヒキサキ
→威力330(武器係数の倍率補正なし)、無属性

ワイルズ太刀代表:斬罪のエルガンシオ
→威力818(ただし武器係数の倍率3.3倍がかかっている)
➝818÷3≒248、属性は今回含めない。

※肉質100の部位にモーション値100の架空の斬撃(会心無し)を撃った場合

ドヒキサキ
→330×斬れ味補正1.32(白)=435.6

エルガンシオ
→248×斬れ味補正1.32(白)≒327.2


※肉質100の部位にそれぞれの技(モーション)を撃った場合(装備無し)

●ドヒキサキ:剛・気刃斬りⅠ
→330×斬れ味補正1.32(白)×ブレイブ状態補正1.18×モーション値0.51≒256

●ドヒキサキ:剛・気刃斬りⅢ
→(以下省略)×モーション値(0.35+0.60)≒488

●ドヒキサキ:剛刃Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ
→(以下省略)×モーション値(0.51+0.30+0.35+0.60)≒905

●ドヒキサキ:剛刃Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ(練気ゲージ点滅)
→(以下省略)×点滅補正1.13倍≒1022

●ドヒキサキ:鏡花の構えⅢ
→(以下省略)×モーション値(1.8)≒925.2

■エルガンシオ:赤刃ループ1回(赤刃斬りⅠ+気刃斬りⅠ)
→248×斬れ味補正1.32(白)×赤練気補正1.10倍×モーション値(0.49+0.31)≒288

■エルガンシオ:新赤刃ループ1回(赤刃斬りⅠ+Ⅱ+Ⅲ+気刃斬りⅠ)
→(以下省略)×モーション値(0.49+0.33+1.03+0.31)≒778

■エルガンシオ:気刃突き+赤ゲ兜割り+練気解放無双斬り
※練気解放無双斬りは赤ゲージ補正が乗らない。最初の3ヒットは黄色補正、残りのヒット数は白補正になる。
→(超以下省略)≒1547

※継続DPS比較

●ドヒキサキ:納刀キャンセル気刃踏み込み斬り +剛刃Ⅱ → 剛刃Ⅲ
→330×1.32×ブレイブ状態補正1.18×モーション値1.56≒802
→1ループにつき約4.59秒
→継続DPS=802÷4.59≒175/秒

■エルガンシオ:赤刃ループ
→1ループにつき約1.5秒
→継続DPS=288÷1.5≒192/秒


※まとめ

●ドヒキサキ:鏡花の構えⅢ
→925.2

■エルガンシオ:気刃突き+赤ゲ兜割り+練気解放無双斬り
→1547

●ドヒキサキ:納刀キャンセル気刃踏み込み斬り +剛刃Ⅱ → 剛刃Ⅲ
→継続DPS=175/秒

■エルガンシオ:赤刃ループ
→継続DPS=192/秒


→こうして見るとワイルズのインフレ具合がよく分かるというか、もう既にG級クラスの火力出してるのヤバすぎないか? 禁足地にいるヤツらって実は上位モンスターじゃなくてマスターランクのモンスターじゃねぇか?怖……


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