ダンジョン装備、直します   作:さくらもっちもち

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第10話 試射

 

翌日の昼過ぎ。

矢のケースを肩に掛けた柴崎が店へ入ってきた。

俺は入口のガラス戸に『一時閉店』の札を掛け、鍵を閉める。

預かり品の棚から黒い長弓のケースを下ろし、柴崎と店の奥へ進んだ。

作業場の先にある扉を開ける。

扉の向こうには試射場があり、奥に標的が立っていた。

脇の台へ弓のケースを載せ、留め具を外す。

柴崎が黒い長弓を取り出し、弦を張った。

矢のケースから一本抜き、弦へつがえる。

 

「最初は魔力なし。次に弱め。最後に実戦で使う量だ」

「ああ」

 

俺は射撃位置の脇へ下がった。

柴崎が標的へ向き、弦を引く。

短く狙い、放った。

弦が鳴り、矢が標的へ刺さる。

続けて二本。

三本の矢は、互いの近くへまとまった。

魔力なしでは、修理前から大きく散っていない。

ここは基準の確認だ。

柴崎が矢を回収し、射撃位置へ戻る。

 

「次。弱めで」

 

柴崎が弓へ魔力を通す。

淡い光が握りから上下へ走った。

弦を引き、矢を放つ。

一射目が標的へ刺さる。

二射目と三射目も、その近くへまとまった。

弱い魔力では、修理前と同じく異常は出ない。

問題は次だ。

柴崎が三本の矢を回収する。

 

「実戦で使う量だ」

 

柴崎が矢をつがえた。

弓へ通る光が強くなる。

柴崎が弦を引く。

上下が深くしなり、指が離れた。

鋭い音とともに矢が飛び、標的へ深く突き刺さった。

続けて二射。

三本とも最初の矢の近くへ収まった。

修理前のように方向がばらつくことも、一本だけ飛距離を落とすこともない。

柴崎は標的を見たまま、しばらく動かなかった。

 

「……散らない」

「もう一度だ」

「ああ」

 

矢を回収し、同じ量まで魔力を上げてもう三本射る。

結果は変わらない。

二度目の三本も、一つの範囲へまとまった。

柴崎が弓を下ろす。

 

「十分だ。貸せ」

 

差し出された弓を受け取る。

弦を外し、先端から握り、反対側の先端まで表面を指でなぞった。

浮きも段差もない。

握りを支え、上下を片方ずつ軽くしならせる。

試射前と感触は変わらなかった。

弱く魔力を通す。

導路に途切れも漏れもない。

 

「異常なし。終わりだ」

 

柴崎の肩がわずかに下がった。

弓をケースへ戻し、留め具を閉じる。

柴崎が矢を回収する間に、記録用紙へ試射結果を書き足した。

黒いケースをカウンターへ運び、記録用紙をその横へ置く。

柴崎も矢のケースを肩に掛け、あとに続いた。

入口の札を外し、鍵を開ける。

カウンターの内側へ戻り、記録用紙を柴崎へ示した。

 

「店の曲げ試験と魔力試験は異常なし。今の試射でも散らなかった。試射後の弓にも異常は出てねぇ」

 

柴崎が紙へ目を落とす。

 

「これで直ったと考えていいのか?」

「今試した範囲では異常なしだ。また石を支えりゃ、その先は知らん」

「必要なら、また同じことをする」

「だろうな。壊れたら、また持ってこい」

「……ああ」

 

会計を済ませ、領収書を渡す。

柴崎はケースを持ち上げる前に、もう一度俺を見る。

 

「助かった」

「金はもらってる」

「それでもだ」

 

それ以上は返さず、カウンターの上を片づける。

柴崎は黒いケースを肩へ掛け、店を出ていった。

約束した四日で、仕事は終わりだ。

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