部屋を出て、少し出てみる………目に飛び込んできたのはいかにもキヴォトスらしい、どこか現実離れした巨大な建造物群と、どこまでも澄み切った青空だった
「うわぁ……画面で見てた街並みがそのまんま広がってる……」
感嘆の声を漏らしつつ、街を歩き始める
散策を始めて一時間ほど経った頃だろうか。私は早くもキヴォトスの恐ろしい洗礼を受けることになった
バンバン!ドカァン!!
「うぉっ!? マジかよ、本当に日常的に銃声が聞こえてくる……!」
曲がり角の向こうから、自動小銃の掃射音と金属跳弾音が響いてくる。壁には当たり前のように着弾痕が刻まれ、通りを歩く生徒たちは「またか」と言わんばかりの慣れた顔で気に留めもせず通り過ぎていく
ヘイローがあり、頑丈な身体になっているとはいえ、前世の一般男性メンタルからすれば恐怖以外の何物でもない
俺は腰に下げたゼロモーメントポイントのグリップをぎゅっと握り締めながら、射線を避けるようにすばやく路地裏へと逃げ込んだ
「あー……怖かった。一人で生きていくって決めたけど、いきなり難易度ハザード級じゃないか……?」
冷や汗を拭いながら、路地裏にある半倒壊気味の自販機コーナーに身を寄せる
キヴォトス特有の怪しげな缶ジュースでも買って落ち着こうと、ポケットの小銭を引っ張り出した、その時だった
「だから! こっちの道は行き止まりだって言ったじゃん!」
「はぁ!? あんたが『近道だから』って言ったからついてきたんでしょ! 責任転嫁しないでよ!」
路地の奥から、甲高い女子生徒の喧嘩声が聞こえてきた
(うわ……不良生徒の縄張り争いか? 関わらんとこ……)
巻き込まれて撃ち合いになるのは御免だ………正直、エアガンや実銃を撃ったことがある身でも不安でしかない………
しかし――
「あーもう! 関西弁で怒鳴り散らしても意味ないでしょ!」
「関西弁ちゃうわ! 播州弁じゃボケ! っていうか日本語通じるわけないやろ……あっ」
私の足が、ピタリと止まる………
……待て
今、なんて言った?
『日本語通じるわけないやろ』……?
キヴォトスの言語は日本語だ。しかし今の言葉のノリ、独特のアクセントと切れ味――間違いなく、現代日本の関西の大阪のほうに近いしゃべり方だった………
自販機の陰からそっと路地の奥を覗き込む
俺はゴクリと唾を飲み込み、目の前の光景を注視した
そこにいたのは、制服姿の少女が二人
一人は派手な金髪ツインテール、もう一人は黒髪ボブカット。どちらの頭上にも、しっかりとヘイローが浮かんでいる
そして二人は、地図アプリらしきものが映るスマホを挟んで、互いにキーキーと言い争っていた
私の脳内で、急速にひとつの可能性が組み上がっていく
「……まじ、で……?」
思わず、声が漏れてしまっていた
その瞬間、ビクッと肩を跳ねさせた二人の少女が、一斉にこちらを振り返った
夕暮れの路地裏で、三人の視線が交錯する
「あ」
「え」
気まずい沈黙が流れる
金髪ツインテールの少女が、引きつった笑顔で、恐る恐る口を開いた
「……お姉さん、今、うちの言葉……理解できてた?」
その発音は、どこからどう聞いても日本の女子高生そのものだった
私はゴクリと唾を飲み込み、震える声で言葉を紡いだ
「……あんたら」
「「……?」」
「……お前ら、前世ってもしかして日本人か?」
その言葉が路地裏に響いた瞬間
二人の少女の目が、限界まで見開かれた
「「うわあああぁぁぁぁぁぁ!! やっぱり日本人いたーーーっ!!」」
「ちょっと待て声が大きい!! 不良に見つかるだろ!!」
感極まって飛びついてくる二人を必死に押し留めながら、俺は路地の奥へと押し込まれた
「マジで!? マジで日本人!? 嘘でしょ!?」
「うち、もうこの世界で一人ぼっちなんかと思って絶望してたんやって!!」
泣きそうな顔で騒ぐ二人の話を聞くと、金髪ツインテールの子は前世は大学生で、黒髪ボブの子は前世は高校生と教えてくれ、二人も俺と同じように事故で死んでしまい、気がついたらキヴォトスの生徒になって転生していたらしい
二人はたまたま近くで目を覚まし、お互いに何気ない会話からお互いが転生者だと気づき行動していた………
「……そういえば、名前どうしてるの? 前世の名前そのまま名乗るわけにもいかないでしょ」
私が尋ねると、金髪の少女が頷いた
「俺は赤坂レイカ。苗字は前世から引き継いでそれっぽくつけた」
「ウチは佐藤アリカや! んで、こっちはミナサ!」
「アリカ、いきなり大声出さないでよ……あ、私は高橋ミナサです」
「なんやて!? 挨拶くらい威勢よくいかなあかんやろ! ……あ、ウチ播州弁が出ちゃうのは興奮した時だけやからね!」
なるほど、二人とも前世の苗字をそのままキヴォトスでの名前として使っているわけだ
二人の安堵した表情を見て、私の胸の中にあった孤独感がスッと消えていくのが分かった
一人で生き抜こうと決意したはずだった
だが――仲間がいるというのは、こんなにも心強いものなのか
「とりあえず、ここだと目立つ。俺の家に来い、そこで情報を整理しよう」
「「賛成!!」」
二人を連れて自身の家に戻ると、二人に家やそのことを聞いてみるが………
「あーうちは探したけどなかったんだよね………」
「仮にあったとしてもどこかわからない………」
二人とも運悪く、自分の家で目覚めずに家の所在地が不明という悲しき事態が起きていた………
調べれば出てくるだろうが………
「ごめん、ここの世界があんなだから………少し一人は怖い………」
「うん、うちら初日だったから助かったけど………」
そういや、このブルアカの世界について知らんやつもいるのか……
そりゃ銃撃戦とか怖くはなるわ………
「安心しろ二人とも、この世界はブルーアーカイブっていうゲームの世界だ」
「「ブルーアーカイブ?」」
二人が首をかしげる中、説明を続けて喋る
「ここはキヴォトスって言ってな、かなりの数の学園が集まってできている学園都市って場所。そして、ここは運がいいのか知らないがキヴォトスの中心ともいえるDUシラトリ地区から近い」
「なるほど、学園都市かぁ……だから学生が多かったんや………」
「まあ、私たちも学生ですけど」
と、普通に会話していたが………
「………なあ、関西弁抜けてるのは気のせいか?」
「関西弁ちゃうわ! 播州弁じゃボケ!」
アリカは顔を真っ赤にして勢いよく突っ込んできた
(ああ、なるほど……大阪弁っていうより、播州弁か)
言われてみれば、語尾の荒っぽさや独特のイントネーションは姫路や加古川あたりの方言そのものだ。前世の知識を引っ張り出しながら、私は苦笑いを浮かべる。興奮するとついつい地元の言葉が出てしまうあたり、彼女も相当いっぱいいっぱいなのだろう
そんな会話もしつつ、頭の上にあるヘイローについても話すと………
「なんやて!?だからヤーさんの抗争ばりにドンパチしとっとったんか!」
「銃弾を撃たれても痛いだけで済むって………」
「だから銃弾で簡単に死ぬことがないから、銃が普及してるっていう訳だ……」
そうして、キヴォトスやブルーアーカイブの世界について色々話し終える
「しかし……こっからどうすんの?うちとレイカはどこか入学せなあかんやろ?」
「そうなんだが………」
仮に入学するとなったらトリニティやミレニアムがいいがあそこは今の自分達じゃきついところがある………
ゲヘナなどはその点まだどうにかなるが、治安が最悪なのと現在雷帝の件がある為下手に入学ができない状況となっている……
他を挙げるならアビドスがあるがあそこは住むには少し厳しいし、現況不安要素しかない………
ハイランダーや百鬼夜行など色々と考えるが障害が大きすぎた……
そう考えている中、アリカが何かを思い出したかのように喋りだす
「そういえばバイト先のコンビニで『残業は労働基準法違反だろ』って小声で愚痴ってた木村って苗字やつがいたなぁ」
それを聞いたミナサも「そういえばこっちも、公園でなんでニューナンブM60から離れられねえんだとか言ってた」と言い出す
「………まさか、他にも転生者がいる?」
「あり得るかもねー、だってうちら3人居たんなら他にもいるでしょ」
その発言と共に一つのアイディアが思い浮かぶ………
どの学園も入学するとなると厳しい……だが、同じ転生者がもしいたとするなら?それも10人いや、50人とかいるとするなら?
「作ればいい………」
「レイカさんどうしました?」
「俺らで作ればいいんだ………」
「作るって何を?」
二人がそう聞くと、俺は答える
「俺らの為の学園を作ってしまえばいいんだ!!」
「「………えっ?」」