転生者共の学園生活   作:矢守龍

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第1章 始まりの職場と砂漠の絆
Vol.1 始まるストーリー、ひびが入る原作


連邦捜査部『シャーレ』のオフィスが居構える巨大な高層ビル。そのすぐ目と鼻の先に位置する複合ビル——ネクストライスクールが買収・改修を重ねて要塞化させた『DU第2校舎』の最上階屋上テラスで、赤坂レイカは手すりに肘を預けていた

 

黒髪のウルフカットを揺らし、毛先に染められた鮮やかなターコイズカラーが、薄暗い曇天の風になびく。腰に差した愛用銃『ゼロモーメントポイント』の冷たい金属の感触を無意識に確かめながら、彼女は眼下に広がる街並みを見下ろしていた

 

「……さて、そろそろか」

 

レイカは低く呟き、手に持っている通信端末へ目を落とした

 

現在、キヴォトス全土は大混乱の渦中にある。連邦生徒会の全権を握っていた連邦生徒会長が突如として疾走——いや、失踪したことにより、行政機能は麻痺。街の防衛システムの要であるサンクトゥムタワーの制御は失われ、治安維持のタガが外れた各区では、ヘルメット団をはじめとする不良生徒や無法者たちが我が物顔で暴徒化していた

 

だが、レイカの表情に焦りはない。彼女はこの「世界のシナリオ」を知る転生者であり、ネクストライスクールの現場総責任者として、この事態すら織り込み済みで動いていたからだ

 

何より——レイカの胸ポケットには、失踪直前の連邦生徒会長から極秘裏に託された『手紙』と、重厚なプロテクトのついた特殊端末『シッテムの箱』が存在している

 

「『先生』が到着したら渡してほしい、か……。勝手なことばかり言い残しやがって、あの会長は」

 

呆れたように溜息をついたその時、眼下のシャーレ前広場から、激しい銃砲声と爆発音が響き渡った

 

 

 

 

シャーレのビルの正面玄関へと続く広大な大通りに、一基の大型装甲車と、それに群がる無数の不良生徒グループ——ヘルメット団が押し寄せていた

 

その中心で包囲されているのは、数名の連邦生徒会職員と、見覚えのある紺色の髪の少女。連邦生徒会の首席行政官、七神リンだ。そして、彼女の傍らには、過酷な銃火の渦中にあって防弾のヘイローを持たない「大人」——連邦生徒会長が異世界から呼び寄せた指揮官、『先生』の姿があった

 

 

「おーおー、派手にやってるな。原作通りのプロローグってワケだ」

 

レイカは屋上の縁に腰掛け、双眼鏡を覗き込みながら眼下の戦闘を観察した

 

下では、七神リンが絶望的な戦力差の中で必死に指揮を執り、先生が指示を出そうとしている。だが、サンクトゥムタワーのバックアップを失った連邦生徒会の防衛網は脆く、ヘルメット団の迫撃砲や重機関銃の掃射によって着実に追い詰められていた。先生も必死に物陰へ隠れながら仲間を鼓舞しているが、前線は崩壊寸前だ

 

「……ん?」

 

その時、ヘルメット団の打ち上げた小型ロケット砲の一弾が、大きく狙いを外れて旋回した。

その着弾地点は——レイカたちが陣取っているDU第2校舎の3階外壁だった

 

ズドォォン!

 

重厚な衝撃音と煙が上がる。もちろん、土建部トップの木村ミヤカが手掛けた要塞仕様の強化装甲板に、そんな生ぬるい火器が効くはずもない。壁面には擦り傷一つついていなかった

 

しかし、通信インカムから、不機嫌そうな声が響いた

 

『こちら防衛部・監視班。リーダー、聞こえますか? 今、ヘルメット団の流弾が当校舎の第3外壁に命中しました』

『あーあ、ミヤカさんが徹夜で補強したばかりの壁になんてことすんのよ。許せないんだけど』

 

インカム越しに聞こえるのは、ネクストライ防衛部隊の生徒たちの声だ。レイカは思わず苦笑し、頭をかいた

 

「よし、言いたいことは分かった。……おいツヨシ、カエデ。準備はできてるな?」

 

『いつでもいけますよ、レイカさん』

 

インカムの向こうで、アーティファクト研究部の実戦テスター・志賀カエデが、滑らかな手つきで装備の安全装置を解除する金属音が響く

 

「相手はシャーレを襲撃中のヘルメット団だ。本来なら連邦生徒会の管轄だが……我がネクストライスクールの領有施設に直接攻撃(流弾)が行われた。これは明確な威嚇であり攻撃とみなす」

 

レイカはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、命令を下した

 

「名目は『自衛権の発動および自己防衛』だ。あっさり片付けて、道をあけてやれ!」

 

『了解!』

 

 

 

 

 

 

シャーレ前広場では、先生とユウカ達が汗を拭いながら絶望的な状況に歯を食いしばっていた

 

「くっ……! 先生!弾薬が切れそうです!」 

「こちらも、閃光弾が……」

「徹甲弾も球切れです!」

「大丈夫! まだ諦めちゃダメだ!っ!!危ない!」

 

 

先生が必死に叫び、生徒たちを庇おうとしたその瞬間――

 

 

ドカァァァァン!!

 

空を切り裂くような重低音が響き、ヘルメット団の装甲車が一瞬で白銀の衝撃波に包まれた

 

「な、なに!? 何が起きたの!?」

 

ヘルメット団の組長が悲鳴を上げる。装甲車の装甲は打ち破られたわけではない。ただ、超高圧のポテンシャルエネルギーを叩き込まれたかのように、そのまま数十メートル後方へと吹っ飛んで砕け散ったのだ

 

「全機、展開! 相転移シールド展開、前進せよ!」

 

上空から舞い降りてきたのは、異様な兵装を身にまとった少女たち——ネクストライスクール防衛部隊だった

 

カエデが手に持った試作レールガンを打ち込み、高度に統率されたが、青く光るエネルギー障壁を前面に展開しながら一斉進撃を開始する

 

「ひ、ひぇぇぇ!? なんだあいつら!? ゲヘナでもトリニティでもないぞ!?」

「ネクストライだ! あのヤバい奴らが出てきたぞ、逃げろ——!」

 

ヘルメット団の悲鳴が上がるが、逃げ場などなかった

 

「背後にご用心」

 

バン! バン!

 

レイカ自身も屋上から跳躍し、神秘『絶対加速』を発動。本来なら大怪我を負ってもおかしくない高さでも、空間を滑るような超絶的な制圧速度で地上へ着地すると、愛銃『ゼロモーメントポイント』を発砲した。アーティファクト研究部によってパルス技術が組み込まれたその一発は、ヘルメット団を確実に無力化していく

 

 

ものの数分

連邦生徒会を苦しめていたヘルメット団の包囲網は、塵一つ残さず、完膚なきまでに叩きのめされ、潰走していった

 

 

静寂が戻った広場で、リンと先生、ユウカ達は、呆然と口ぐぐんでいた

 

「あ……あっという間に……? ネクストライスクールの防衛部隊……なぜ彼女たちがここに……!?」

 

煙が晴れる中、持っていた銃を腰に回し、首元を緩めながら歩み寄ってくる少女――赤坂レイカの姿があった

 

 

 

 

 

 

「よっ。怪我はないか、七神リン行政官。それと……あんたが『先生』だな」

 

レイカはボーイッシュな口調で気安く声をかけ、肩をすくめた

 

「あ、赤坂レイカ……! あなたたち、いくら自衛のためとはいえ、連邦生徒会の許可なく管轄区でこれほどの武力行使を……!」

 

リンが慌ててメガネを掛け直し、毅然とした態度を取ろうとするが、その声には動揺が隠せない。ネクストライスクールが保持する技術力と戦闘力が、既存の大学園すら凌駕しつつあることは連邦生徒会も十分に把握していたからだ

 

「おっと、お堅いこと言うなよ。あいつらの流弾が俺たちの校舎に当たったんだ。ただの『自己防衛』だよ」

 

レイカはフッと笑うと、親指でシャーレビルのエントランスを指さした

 

「立ち話もなんだ。中で話そうぜ。あんたらに渡さなきゃいけない『借り』があるんだ」

 

「う、うん。わかった。ユウカ、ハスミ、チナツ、スズミ、少しだけ待ってて」

 

 

 

シャーレビル内部、重厚な自動ドアが閉まり、静けさが戻ったオフィスラウンジ

 

非常用電源がチラチラと点滅する中、レイカは胸ポケットから一通の封筒と、重厚なスチールブルーのフラット端末を取り出し、ガラスデスクの上に無造作に置いた

 

「これは……『シッテムの箱』!? なぜあなたがこれを持っているのですか!?」

 

リンが目を見開く

 

「あの失踪した連邦生徒会長から直接託されたんだよ」

 

レイカは短く答えた

 

「連邦生徒会長は言った。『先生が来たら、これを渡してほしい』とな。手紙はリン宛だ。端末は……そこの先生、あんたが受け取れ」

 

先生は驚いた表情を見せつつも、ゆっくりと前に踏み出し、シッテムの箱に手を触れた。その瞬間、静まり返っていた端末が淡い光を放ち、起動シーケンスを始める

 

「……本当に、会長の言った通りになったな」

 

レイカは光に照らされる先生の顔をじっと見つめた

(なるほど……これが『先生』か)

 

原作ゲームのプレイヤーとしての知識、そしてキヴォトスで生きる一人の生徒としての視点が交錯する

 

「用件はこれだけだ。シッテムの箱も渡した。連邦生徒会長との約束はこれで果たしたぞ」

 

レイカはクルリと背を向けると、出口に向かって歩き出した

 

 

「待ってください、赤坂さん! ネクストライスクールとして、今後の連邦生徒会への協力は……!」

 

リンの呼びかけに、レイカは立ち止まり、振り返らずに手をひらひらと振った

 

「俺たちは俺たちのやり方でやる。もし詳しく話をしたいなら生徒会経由でハレカから頼む……俺は現場責任者という肩書だけだ」

 

颯爽とシャーレを去っていくレイカの背中を、先生とリンは黙って見送るしかなかった

 

 

 

 

後日――

 

サンクトゥムタワーの機能が一時復旧し、シャーレが正式に立ち上がったことで、DU地区の混乱はひとまずの静けさを取り戻していた

 

ネクストライスクール本校舎の生徒会室

窓から差し込む夕日を浴びながら、レイカはデスクに書類を並べて整理していた。そこへ、ガチャリと音を立ててドアが開く

 

「リーダー! 戻ってきたんすね! お疲れ様っす!」

 

飛び込んできたのは、茶髪のロングヘアをなびかせた2年生の、霧状ヘルタだった。その隣には、銀髪ショートの街肩カリネもひょっこりと顔を出している

 

「騒がしいぞ、ヘルタ、カリネ。生徒会室では静かにしろってハレカに怒られるぞ」

 

「いやー、だって気になるじゃないすか!」

 

ヘルタは目を輝かせながらレイカのデスクに身を乗り出してきた

 

「シャーレの現場、自分も遠くから見てたんすけど、すごかったっすね! 防衛部がヘルメット団を瞬殺しちゃうし!……で、で! リーダー、会ってきたんでしょ!?」

 

「何にだよ」

 

「決まってるじゃないすか! 『先生』っすよ!」

 

ヘルタは声を弾ませ、カリネも興味津々といった様子で頷いている

 

「原作知識組としては一番の謎じゃないすか! キヴォトスに来た『先生』がどんな顔してどんな感じの人なのか! ゲームの選択肢みたいな人だったんすか? それとも……?」

 

レイカはペンを止め、天井を見上げて記憶を掘り起こした

 

シャーレのオフィスで出会った、あの不器用そうで、どこか温かみのある大人の姿

 

「そうだな……」

 

レイカは少しだけ口元を緩め、後輩たちに向き直った

 

「……あえて例えるなら、アニメの先生に近かったかな」

 

「えっ!? アニメの先生っすか!?」

 

ヘルタが驚いたように声を上げた

 

「そうっすかー! あのちょっとひょろっとしてて、でもいざとなると身体張って生徒守ろうとするタイプのアニメ版の先生っすか! なるほど〜!」

 

「まあな。頼りなさそうに見えて、根っこはちゃんと『大人』だったよ。だからこそ……会長もあいつに後を託したんだろうな」

 

レイカは手元のノートを開き、そこに書かれた今後のスケジュールのメモに目を落とした

 

本来の『ブルーアーカイブ』のストーリーであれば、シャーレの最初の戦いは先生と七神リン、そして危機に駆けつけた一部の生徒たちによる辛勝だったはずだ

だが、そこに1,300人以上の生徒と圧倒的科学力を擁する『ネクストライスクール』が介入し、あっさりと敵を鎮圧してしまった

 

原作の完璧なトレースは、すでに崩れている

物語の歯車には、明らかな「ひび」が入り始めていた

 

「リーダー? どうしたんすか、難しい顔して」

 

「いや……なんでもない」

 

レイカはノートを閉じ、フッと不敵な笑みを浮かべた

 

「原作がどう変わろうが、関係ないさ。俺たちは俺たちの手で、この二度目の人生の青春を作る。……そうだろ?」

 

「〜〜〜っ! そうっすね! 流石リーダー、言うことが決まってるっす!」

 

夕闇が迫るキヴォトスの街

新しく着任した『先生』の物語が始まる一方で、転生者たちの学園『ネクストライスクール』もまた、新たな歴史の1ページを力強く踏み出そうとしていた




あとがき!

本編がようやくスタート!

本来なら戦車やワカモやらが出てきますが……
あっさり片付いてしまったせいでワカモはまさかのシャーレに侵入という内容がなくなりました!

ですが、後日しっかりワカモは侵入してますので先生への接し方は変わってません……

ちなみにユウカ達も一緒に来てますが……少しめんどかったので何個かセリフをカットにしてます……





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