激しい銃撃戦の熱気と硝煙の匂いが残るアビドスの荒野を後にし、レイカたちは対策委員会の面々に案内される形で、アビドス高等学校の校舎へと足を踏み入れていた
「うへ〜、なんだかネクストライの皆さんに来てもらうには、ちょっと粗末すぎる場所で悪いねぇ。まあ、適当に空いてるパイプ椅子にでも座ってよ」
ガタつきのある扉を開け、対策委員会室へと足を踏み入れながら、ホシノが大きな欠伸とともに声をかけた。部室の中は、外部の砂嵐から遮断されているものの、どこかセピア色の静けさに満ちている。黒板にはびっしりと書かれた復興計画のメモや試算の数字。使い込まれた机の上には、アヤネが管理しているであろう大量の書類とPCが整然と並べられていた
「ノノミちゃん、お客さんにお茶出してくれる〜?」
「はいは〜い! 今冷たい麦茶を淹れますね。ネクストライの皆さん、どうぞ召し上がってください!」
ノノミが手際よく湯呑みとお菓子をセットし、簡易テーブルの上に並べていく。セリカはまだ少し警戒したような視線を残しつつも、椅子を引き寄せて腰を下ろした
「……で? 助けてもらったのは感謝してるけど、こんな廃校寸前の学校に何の用なのよ? ラーメンを食べに来ただけって顔じゃないでしょ」
セリカの問いかけに、レイカは不敵な笑みを浮かべ、運ばれてきた麦茶を一ぐいと飲み干した。喉を鳴らしてグラスを置くと、横に座るヘルタに目配せをする
「まあそう焦るなよ……本来ならラーメン食べに来ただけだったが、うちの学園のとある事情を思い出してな……それで商用として取引をしたい」
「ん、商用? アビドスには売り出せるような特産品も、有名な観光名所もない。あるのは……大量の砂だけ」
シロコが首をかしげながら、無表情にレイカを見つめる。その言葉を受け、レイカは膝を叩いて大きく頷いた
「そう、その『大量の砂』こそが、俺たちの目当てだ」
部室内に一瞬の沈黙が流れた。対策委員会の面々は、お互いに顔を見合わせている。アヤネがメガネの位置を直しながら、困惑を隠せない様子で問いかけた
「……砂、ですか? アビドスの砂嵐や砂漠化の被害をもたらしている、あの砂のことでしょうか……?」
「ああ。詳しく説明するとだな、ウチの学校の工芸部がいつも作っているガラス細工の件なんだよ。2年前から深刻で、俺らの学園はガラス細工が収入の一つとしてあるんだ。それが解決できるかもしれないのがここアビドスというわけさ」
レイカの隣で、カリネが胸ポケットから小さな透明の試薬瓶を取り出し、机の上に静かに置いた
「ネクストライの工芸部は質を求めますからね……だからこそ、砂が粗悪品という訳にもいかないんすよ」
「そうそう! そしてもしその検査結果がOKだった場合、アビドス自治区からその砂を正式に『ガラス細工用の資材』として買い取りたいんすよ!」
ヘルタが両手を広げて、調子の良い笑みを浮かべる
「もちろん、勝手に持って行くなんて野蛮なことはしないっす! 検査用のサンプルを数キロ持ち帰らせてもらう代わりに、買い取り契約が成立したあかつきには、相応の対価……つまり、アビドス対策委員会への資材購入費としてお金をお支払いするっす!」
その提案を聞いた瞬間、対策委員会の空気が一変した。
特に、日頃からアビドスの莫大な借金返済と日々の運営資金繰りに頭を悩ませていたセリカとアヤネの目が、見開かれる
「買い取り……!? 砂を……私たちが毎日毎日、掃除しても掃除しても湧いてくる、あの鬱陶しい砂を買い取ってくれるの!?」
セリカが身を乗り出し、机をガタリと揺らした
「ちょっと待ってください、セリカちゃん! 落ち着いてください!」
アヤネが大慌てでセリカの肩を叩きつつ、パソコンのキーボードを高速で叩き始めた
「ですが……ネクストライスクールの皆さん。アビドスの砂は確かに無限にありますが、単なる砂漠の砂ですよ? 本当にそんなものに価値があるのですか? 買い取りと言っても、一体いくらくらいに……」
「まあ、金額については工芸部の検査次第だな。ガラス細工の素材として適合すれば、定期的な資材購入として買い取りの話を進められる。……どうだ? アビドスにとっては、捨てるほどある砂が、いつも通りの工芸部の材料として金に変わる悪くない話だろ?」
レイカは脚を組み、堂々と言いはなった
アビドスの生徒たちは息を呑む。借金返済に苦しむ彼女たちにとって、アビドスに無数に存在する「砂」が継続的な収入源になるかもしれないという話は、まさに願ってもない棚からぼた餅だった
しかし、部屋の隅でパイプ椅子に深く腰掛け、両手を頭の後ろで組んでいたホシノが、うへ〜と緩い声を漏らしながら片目を開けた
「ん〜……話はとってもありがたいし、おじさんたちとしても飛びつきたいくらい魅力的だけどさぁ。ネクストライスクールっていう外部の大きな学園が、なんでまたこんな辺境のアビドスにわざわざ利益を出してくれるような話を持ち込んでくるのかな? 助けてくれた上にそんな旨い話、裏があるんじゃないかと疑っちゃうのが、世の荒波にもまれたおじさんの悲しい性でねぇ」
ホシノの言葉には、どこか鋭い観察眼が光っていた。かつてアビドスの最前線で激動の時代を生き抜いてきた彼女だからこそ、甘い話の裏にある「大人の思惑」や「他校の利権争い」に対する警戒心が染み付いている
「ホシノ先輩、そんな……! レイカさんたちはさっき、風紀委員会からも助けてくれたんですよ!?」
セリカが庇うように言うが、レイカは不快感を示すどころか、満足そうにニヤリと笑った
「いい警戒心だ、小鳥遊ホシノ。そうやって疑うのは正しい。だが、裏も何も本当にただの『利害の一致』だ。ウチの工芸部はいつも通りガラス細工を作るために良い砂を求めている。お前たちは金と復興のきっかけを求めている。それ以上でもそれ以下でもない」
カリネも淡々と追従する
「僕たちネクストライは、他校の政治的確執や利権争いには興味がありません。純粋な資材の『売買契約』です。不安なら、契約書にはシャーレの先生を立会人として署名してもらっても構いませんよ」
視線を集められた先生は、ゆっくりと頷いた
「ネクストライの言っていることに嘘はないと思うよ。もし契約を結ぶなら、僕もシャーレの顧問として内容をしっかり確認するし、アビドスに不利益がないように保証する」
先生のその言葉を聞いて、アヤネとセリカはほっと胸を撫で下ろした。シロコもコクリと頷く
「ん。先生がそう言うなら、信頼できる。アビドスの砂で学校が助かるなら、断る理由はない」
「……決まりだな。じゃあ、まずはテスト用のサンプルとして、校庭の南側にある砂丘から数キロ分の砂を採取して持ち帰らせてもらう。検査結果が出次第、またシャーレ経由で連絡する」
レイカは立ち上がり、湯呑みを空にすると、カリネとヘルタに指示を出してサンプル用の回収バッグを取り出させた
対策委員会の面々の許可を得て、カリネたちは手際よく指定の場所から砂をボトルやバッグへと詰めていく
「よし、採取完了っす! 工芸部の連中、これでいつも通り良いガラス細工が作れるって喜ぶっすよ〜!」
バッグを肩に担いだヘルタが嬉しそうに声をあげる。
「それじゃ、俺たちはこれで失礼するよ。ラーメンの件は災難だったが……まあ、柴大将にもよろしく伝えておいてくれ」
レイカたちは部室を後にし、静かな校舎の廊下を歩き始めた
しかし、校門の手前、夕日が赤く差し込む渡り廊下の影で、レイカは足を止めた
「カリネ、ヘルタ。先に校門の外で待っていろ。……先生、ちょっといいか?」
レイカの呼びかけに、後ろをついてきていた先生が足を止める。カリネとヘルタは察したように軽く頷き、二人生徒だけで校門の先へと歩みを進めていった
赤く染まる渡り廊下には、風の音と、レイカと先生の二人だけの吐息が残された
「レイカ? どうしたの?」
レイカはポケットに手を突っ込んだまま、渡り廊下の窓から見える、果てしないアビドスの砂漠を見つめていた。その瞳には、先ほどまでの軽妙な交渉人の顔ではなく、冷徹で深遠な「知者」の光が宿っていた
「……先生。アビドスが抱えている『借金』の本当の恐ろしさを、お前はどこまで把握している?」
唐突で、しかし極めて本質を突いた問いに、先生の表情が引き締まった
「借金……アビドスが返済し続けている、カイザーローンからの莫大な負債のことかい?」
「そうだ。奴らが求めているのは、単なる金の返済じゃない。……アビドスの『土地の所有権』だ」
レイカの声は低く、そして確信に満ちていた
「アビドス自治区は、かつてキヴォトスでも屈指の広大な敷地と資源を有していた。そして今、砂に埋もれたこの広大な土地の地下には、キヴォトスの古代文明の遺産が眠っているとしたら?」
先生は息を呑んだ。レイカが語っている内容は、普通の高校生が知り得る情報を遥かに超えている
「カイザーコーポレーション……とりわけカイザーローンは、意図的にアビドスに過酷な利息を課し、返済を不能に追い込むことで、最終的に土地の権利書を丸ごと没収しようとしている。アビドスの生徒たちがどれだけ血の滲むような努力をしてバイトをし、利息を払い続けたところで、最初から『完済』なんてゴールは用意されていないんだよ」
「それは……」
「対策委員会の連中は真っ直ぐで良い奴らだ。だが、真っ直ぐすぎるが故に『大人の汚いルール』には勝てない。金で解決しようとしても、相手はルールの盤面そのものを支配している奴らだ」
レイカはゆっくりと振り向き、先生の目を真っ直ぐに見据えた
「先生。あんたはシャーレの顧問として、彼女たちの味方で居続けるつもりだろう。なら、覚えておけ。この件は単なる『学校の経営難』じゃない」
先生がレイカのその一言で驚愕する……
高校生ぐらいの子が話す内容とは思えなかったからだ……
そんなことを関係なく、レイカは話し続ける
「更にいうなら、カイザーの裏には、さらに深く暗い『キヴォトスの暗部』……"ゲマトリア"という存在すら絡んでいる。俺が言える情報はここまでだ……」
「ゲマトリア……」
先生はレイカの言葉を一つひとつ噛み締め、重く頷いた
「……教えてくれてありがとう、レイカ。君がなぜそこまで知っているのかは分からないけれど……僕が絶対に、彼女たちの居場所を守ってみせるよ」
「……ふん。あんたならそう言うと思ったよ」
レイカは満足そうに口元を緩めると、背を向けた
「砂の買い取りは本気だ。ウチの工芸部が買い取れば、少しはあいつらの足しになるだろうさ。……じゃあな、先生。今度はシャーレで会おう」
ひらひらと手を振りながら、レイカは夕闇の迫る校門へと歩き去っていった
アビドス高等学校を後にしたレイカ、カリネ、ヘルタの三人は、薄暗くなり始めたアビドス自治区の主要道路を歩いていた
街灯もない枯れた荒野の道。風が吹くたびに砂粒が服を叩き、静寂が周囲を包み込んでいく
「リーダー、先生への警告……良かったんですか? 僕たちの持ち合わせている『原作の知識』を開示しすぎたようにも見えましたが」
カリネが歩調を合わせながら、淡々とした口調で問いかけた
「構わないさ。あの先生なら、遅かれ早かれあの結論に達する。ただ、カイザーやゲマトリアの動きが予想以上に早い。少しばかり背中を押してやった方が、俺たちの知る『あの展開』へ綺麗に回るだろ」
「〜♪ さすがリーダー、原作のストーリー展開を熟知してるだけあって裏で糸を引くのがお上手っすね〜! で、工芸部の砂の話は本当にいつものガラス細工用なんすよね?」
「当たり前だろ。工芸部がいつものガラス細工の新作を作るのに砂を欲しがってたのはマジだからな。まあ、アビドスを経済的に助ける口実としては一石二鳥だったってわけだ」
レイカが不敵に笑った、その時だった
突如として、周囲の空気が重く澱んだ
静まり返った荒野の道路の真ん中。夕暮れの薄赤と夜の群青が混ざり合う境界線の空間に、まるで空間のひずみから滲み出てきたかのように、「一人の男」が佇んでいた
漆黒のビジネススーツ。顔の表面には目も鼻も口もなく、ただ黒い渦のような不気味な影が蠢いている。手には高級そうな革の手帳。
キヴォトスの深淵に潜む謎——『ゲマトリア』の一員、黒服だった
黒服が現れたその瞬間、レイカはもちろんのこと、カリネもヘルタも、一切の驚きを見せなかった
なぜなら——3人全員が、原作の知識として『黒服』という存在の正体を、その歪んだ目的を、そして彼がこのアビドスで何を画策しているのかを、最初から完全に知っていたからだ
レイカとカリネは静かに、しかし迷いのない動作で腰の『ゼロモーメントポイント』と『タッチ&ラン』のグリップに手をかける
ヘルタもいつものお調子者の笑みを消し、原作ゲームで何度も目にしてきた「あの不気味な男」を軽蔑の眼差しで見つめた
しかし、レイカは片手を挙げて二人を制した
「……初めまして、と言うべきでしょうか。ネクストライスクールの生徒さん方」
黒服は、深々と丁寧なお辞儀をした。その声は慇懃無礼で、まるで滑らかな油脂のように耳へとまとわりつく
「私の名は黒服。……いやはや、素晴らしい戦闘でしたね。ゲヘナ風紀委員会をあそこまで完璧に翻弄し、さらにはあの空崎ヒナすらも誘導して戦局を収束させる……。赤坂レイカさん、街肩カリネさん、霧状ヘルタさん。あなた方の存在は、私の観測データの中でも極めて特異な『異物』です」
黒服は一歩前へと足を踏み出した。その不気味な顔の影が、歪な笑みを形作っているように見えた
「本来、このアビドスの地で起きるはずだった『概念の変容』……そしてホシノという神秘の歪みが、あなた方の介入によって微妙に、しかし決定的に変化している。非常に興味深い。……そう、実に知的な好奇心を刺激されます」
「なんの用だ、黒服」
レイカは足を止め、冷ややかな視線で男を射抜いた。黒服が提示してくる甘い言葉の裏に、どれほど不快な実験と思惑が隠されているか、レイカもカリネもヘルタも熟知している
黒服は黒い手袋を嵌めた手を胸に当て、うやうやしく囁いた
「単刀直入に申し上げましょう。私と……我々『ゲマトリア』と、取引をしませんか?」
黒服の声には、人間の欲望を揺さぶるような不気味な響きが籠もっていた
「あなた方の持つその異常なまでの先見の明、そしてキヴォトスの枠組みに囚われない卓越した能力。それを我々の『研究』に貸していただきたいのです。見返りとして、ネクストライスクールに対する圧倒的な資金、技術、あるいは……このキヴォトスの『構造に関する真実』を提示してもいい。あなた方が望むなら、アビドスの負債など一瞬で消し去る術すら提供しましょう。どうでしょう、私にとってもあなた方にとっても、決して悪い提案では——」
「断る」
黒服が言葉を最後まで言い切るより早く
レイカの短く、冷徹な一言が荒野の風を切り裂いた
黒服の動きがピタリと止まった。顔の黒い渦が、一瞬驚きに揺れたように見えた
「……ほう? 断る、ですか。まだ私は具体的な取引条件や、あなた方に与えられる利益の詳細をお話ししていませんが?」
レイカの横で、ヘルタが心底嫌そうな顔をして鼻で笑った
「〜♪ 追記で内容を聞く価値なんて、最初から一ミリもないっすよ、ゲマトリアの黒服さん」
カリネもまた、冷ややかな瞳で黒服を睨みつけ、言い放った
「僕たちは、あなたが何を研究し、何を企んでいるのかを『最初から全部知っている』んです。神秘の理解? 恐怖への反転? 生徒たちの絶望を利用した実験……どれも反吐が出るような内容ばかりだ」
3人全員が、自分たちの正体や狙いを完全に把握している口ぶりに、黒服の顔の渦が激しく揺らめいた
レイカは吐き捨てるように言い、黒服の脇を通り抜けるように歩き出した
カリネとヘルタも、警戒を解かないままレイカの後に続く
レイカはすれ違いざま、黒服の耳元……顔の渦のすぐ近くで、低く冷たい声で囁いた
「お前らゲマトリアが持ち込む『取引』の先にあるのが何か、俺たちは全員ハッキリと知っている。生徒たちの『歪み』や『絶望』を実験材料にして喜ぶ変態どもと、交渉のテーブルにつくつもりは一ミリもない」
「……!」
レイカたちの瞳に宿る、圧倒的な拒絶と軽蔑の意志
黒服は追撃することも、それ以上引き留めることもせず、ただ静かにその場に立ち尽くした
レイカたちがそのまま足を止めずに夜の静寂の中へと消えていく背中を、黒服はただじっと見送っていた。やがて、黒服の口元と思われる不気味な影が、一層深く歪んだ
「クククッ……素晴らしい。実に素晴らしい……!」
黒服は一人、誰もいない荒野で低く笑い声を漏らした
「内容を聞く価値すらない、ですか。……彼女たちは知っているのですね。我々ゲマトリアの目的を、このキヴォトスの裏側に存在するルールを、そして私という存在のすべてを。……あそこまでの確信を持った拒絶。ただの生徒であるはずがない」
黒服は手に持った革の手帳を開き、ペンで何かを急速に書き込み始めた
「シャーレの先生という不確定要素に加え、原作の理すらあらかじめ熟知しているかのようなネクストライスクールという巨大な『未知』。……アビドスを巡る私の実験は、どうやら予定よりも遥かに複雑で、遥かに刺激的な物語になりそうだ」
暗闇の中、黒服の姿は煙のように薄れ、やがて夜の砂嵐の中へと完全に消失していった
その頃、ネクストライスクールへの帰路につくレイカたち
「リーダー、黒服……原作通りとはいえ、実際に対峙すると嫌な気配でしたね」
カリネが警戒を解かないまま、背後を一度振り返ってつぶやいた
「ああ。あれがゲマトリア……キヴォトスの裏で糸を引く最悪の大人たちの一角だ。原作知識があるからって油断すると足をすくわれる。関わらないに越したことはない」
「〜♪ でもリーダー、一瞬で突っぱねたのめちゃくちゃ格好良かったっすよ! 『内容を聞くまでもない』って! 工芸部の砂も手に入ったし、今日の戦果は百点満点っすね!」
ヘルタが両手を頭の後ろで組みながら、ケラケラと笑う
レイカは夜空に浮かぶ大きな月を見上げ、小さく息を吐き出した
「……これからが本番だ。カイザーが動き出し、アビドスが最大の危機を迎えた時、俺たちがどう動くか。工芸部の砂の検査結果も含めて、次の準備を進めるぞ」
「「了解」」
カリネとヘルタの力強い返事が、夜のアビドスに響く。
アビドスの復興と、忍び寄る陰謀。シャーレの先生とアビドス対策委員会、そして原作知識を持つネクストライスクールの運命が、砂嵐の吹き荒れる荒野で大きく動き出そうとしていた