転生者共の学園生活   作:矢守龍

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Vol.3 ヒバナとカエデのセンス

非常アラートの甲高い電子音が、ミレニアム本部の巨大な吹抜構造を通して回廊全体に反響していた

 

天井の照明は赤く点滅する緊急保安灯へと切り替わり、ガラス張りだった洗練された壁面は、重厚な金属音とともに各所で降ろされた防火壁や防弾シャッターによって次々と遮断されていく

 

「くっ……! 完全にブロックされたか!」

 

廊下を疾走していた使節団の先頭で、志賀カエデが足を止めた

彼女の前方、下層階へと続く中央階段へのアクセス経路を塞ぐように、鈍い光沢を放つ厚さ数センチの重防弾シャッターがすっぽりと床まで下りきっていた

 

「カエデ先輩、迂回路は!? 別の非常階段はありませんか!?」

 

短く切り揃えた赤髪を揺らし、立火ジュカは愛銃であるグレネードランチャー『NOTバック』を抱え直しながら背後を警戒した

前世でブルーアーカイブのゲームを遊び尽くしていた彼女にとって、このシチュエーションは既視感そのものだった

 

(間違いない……! ゲーム開発部のモモイたちが、セミナーの管理区域からハッキングツール『鏡』を奪還しようとして警報を鳴らしたんだ……! でも、まさかゲストハウスから脱出するルートがこんな形で塞がれるなんて……!)

 

「ダメだ。左右の補助緊急避難路も既に閉鎖信号を受信している。ミレニアムの自動防衛システムは仕事が早すぎるな」

 

カエデは冷静に背中の『パルスライフル改』のセーフティを解除しつつ、無機質な防弾シャッターを冷酷な眼差しで見つめた

 

「破壊するか? パルスライフル改の高出力パルス射撃なら、ヒンジ部分を短時間で焼き切ることは可能だが……他校の施設を物理破砕するのは、後処理の書類仕事が増える」

 

「待ちなさい、カエデ。無骨な力任せはスマートじゃないわ」

 

後ろから悠然とした足取りで追いついてきたのは、白衣の裾を揺らした青花ヒバナだった。

目の下に少しの隈を浮かべながらも、眼鏡の奥の瞳は知的で探求心に満ちた輝きを放っている。

 

ヒバナは自作のハンドガン『アナリス・フィードバック』をホルスターに収めると、シャッターの横に埋め込まれた緊急用アクセスパネルへと歩み寄った

 

「このシャッターの閉鎖機構……タワー全体の主電源が遮断されたことによる自動インターロックじゃないわね。ほら、見てみなさい」

 

ヒバナが白衣のポケットから取り出した透過型の小型端末をパネルにかざすと、淡い青色のホログラムデータが空間に浮かび上がった

 

「タワー中層の爆発によって主系統がダウンした直後、瞬時に『予備電源』へと切り替わっているわ。そして、このシャッターは全館避難モードではなく、特定区画の侵入者を閉じ込めるための『局地遮断プロトコル』によって意図的に締め切られている。つまり、システムの誤作動か、あるいは防衛プログラムが異常値を検知して自動発動したのね」

 

「予備電源による意図的な封鎖……。なら、正規の管理者権限がなければ開かないということっすか?」

 

ジュカが尋ねると、ヒバナはフッと不敵な笑みを浮かべた

 

「正規の権限? ジュカ、忘れたの? 私はアーティファクト研究部の部長よ」

 

ヒバナは眼鏡の位置を指先でクイと直すと、己の『神秘』と前世で修めた最先端の電子工学・物理学の知識を集中させ始めた

 

「ミレニアムのセキュリティコードは確かに強固で美しいわ。だが……電子基板を流れるパルス信号と、相転移エネルギーの周波数を同調させれば、外部からの物理的接触なしに回路の『命令書き換え』は可能よ」

 

ヒバナの全身から、かすかな神秘の波動が立ち上る

彼女が右手をアクセスパネルの上へと掲げると、指先から青白い光の粒子が糸のように伸び、パネルの隙間から内部の電子基板へと滑り込んでいった

 

ネクストライスクールが誇る独自技術——神秘と電子工学を融合させたコネクト技法、『テクニック・コネクター』の発動だった

 

「……アクセス開始。回路内の暗号化プロトコルをスキャン……。ふむ、1024ビットの動的暗号ね。美しいけれど、予備電源ラインのバイパス信号は剥き出しだわ。ここに私の相転移パルスを干渉させて……『閉鎖』の命令文を『メンテナンス開錠』へと再定義する」

 

ジュカはその光景を息をのんで見つめていた

 

(すごい……! ミレニアムの超高度なセキュリティを、ツールも使わずに指先の神秘制御と技術だけで解析して直接ハッキングしてる……! これがネクストライの誇る『アーティファクト研究部部長』のセンス……!)

 

「クラック完了。開け、ゴマ」

 

ヒバナが指先を軽く弾いた瞬間

 

カチリ、と硬質な電子ロックの解除音が響き、重厚な防弾シャッターがゆっくりと上部へと巻き上がり始めた

 

「見事だ、ヒバナ部長。脱出ルートを確保――」

 

カエデがそう言いかけた、まさにその時だった

 

シャッターが数十センチ持ち上がり、向こう側の床が見えた瞬間、カエデの特殊部隊仕込みの鋭い直感が激しい警報を鳴らした

 

「――全員、伏せろ!!」

 

カエデの声と同時に、開いたシャッターの隙間から、赤いレーザーサイトの光軸線が何本も廊下へとなだれ込んできた

 

 

 

「目標捕捉! 侵入者と確認! 直ちに排除行動へと移行します!」

 

無機質な合成音声とともに、シャッターの向こう側から現れたのは、ミレニアムの全自動警備ドローン3機と、四足歩行型の重警備ロボット2台からなる防衛小隊だった

頭部のアタッチメントには20mm機関砲と高周波ブレードが装備されており、赤い警告ランプを激しく明滅させている

 

「警備ロボット……! セキュリティAIがパニックを起こして、私たちを襲撃者と誤認識してるんだ!」

 

ジュカが咄嗟に分析の声をあげる

 

「ええ、そのようね。だが、ミレニアムの防衛端末とはいえ、容赦なく向かってくるなら引く気はないわ!」

 

ヒバナは素早くホルスターから愛銃『アナリス・フィードバック』を抜き放ち、同時に左手でコンテナから組み上げたばかりの『波動ライフル』を引き寄せた

 

「カエデ、ジュカ! 三位一体で一瞬で片付けるわよ!」

 

「了解! 射線を分断する!」

 

カエデが合図を出すと同時に、3人は示し合わせたかのように同時に動いた

 

「まずは頭上を抑えます! 『NOTバック』、特殊エアバースト発射!!」

 

後方から跳び出したジュカが、愛銃『NOTバック』のスマートサイトで滞空するドローン3機の空間座標をミリ単位でロックオンした

前世でブルアカをやり込み、数々の戦闘シミュレーションを脳内で繰り返してきたジュカの戦術眼が光る

 

ポンッ、ポンッ、ポンッ!

 

40mmグレネード弾が連続で射出され、ドローン群の真上わずか数センチの位置で正確に起爆

殺傷力を持たない衝撃波が空中を満たし、ドローン3機の高度制御センサーを一瞬で狂わせた

 

「きゃっ……!? 姿勢制御不能!」

ドローン群がバランスを崩して宙で揺らぐ

 

「ナイスサポートよ、ジュカ! ――次は私の番ね!」

 

間髪入れずにヒバナが前線へと躍り出た

彼女が掲げたのは、昨日完成したばかりの『波動ライフル』

 

「人体には『確定気絶』のセーフティーが働くけれど……純粋な機械回路相手なら、相転移波動は超高密度の磁界過熱パルスとして作用するわ! 眠りなさい!」

 

ヒバナがトリガーを引くと、音もなく放たれた青白色の相転移光線が、体勢を崩したドローン3機を薙ぎ払うように貫いた

 

一瞬の沈黙

物理的な破砕痕も爆発も起きない。しかし、ドローン内部の電子基板を構成する分子結合が相転移パルスによって直接励起され、メインCPUが一瞬で「熱暴走を起こさずに過電流遮断」された

 

プツン、と灯りが消えるように、3機のドローンが次々と床へ落下し、沈黙した

 

「すごい……! 物理破壊なしで電子頭脳だけを完全沈黙させた……!?」

 

ジュカが感嘆の声をあげる間もなく、残された2台の重警備ロボットが、高周波ブレードを稼働させて急速接近してきた

 

「目標修正、接近戦にて排除――」

 

「甘いぞ」

 

前方の壁面を蹴り、空中から旋回しながら降り立ったのは志賀カエデだった

 

カエデは左腕の『PSシールド』を展開し、1台目の重警備ロボットが振り下ろした高周波ブレードを正面から受け止めた

バリバリッ! と青い相転移光膜と高周波ブレードが激しく火花を散らす

 

「ヒバナ部長の波動パルスで回路が乱れている! 今だ!」

 

カエデがPSシールドでロボットのアームを跳ね返し、体制を崩させた瞬間、背中の『滞空型電磁ジェットパック』が噴射された

慣性を完全に無視した超高速の横滑り機動で、カエデは2台のロボットの死角へと入り込む。

 

「ジュカ、右側の脚部を止めろ!」

 

「任せてください!」

 

ジュカは『NOTバック』の銃身で接近してきた2台目の装甲脚部を力強く殴りつけ、バランスを狂わせた

 

そこへ、カエデの『パルスライフル改』が炸裂する

 

ズドォン!!

 

至近距離から叩き込まれた高出力パルス射撃が、2台の重警備ロボットの駆動関節部を正確に打ち抜き、内部の油圧パイプと電磁サーボを完全に破砕した

 

「――状況終了!」

 

カエデが着地すると同時に、2台の重警備ロボットは膝から崩れ落ち、沈黙した

 

シャッターが開いてから、警備ロボット小隊が完全に制圧されるまで、わずか数秒

 

ヒバナのハッキングと相転移パルス、ジュカの的確な牽制射撃と戦術眼、そしてカエデの圧倒的な実戦機動

ネクストライ使節団の3人の「センス」と「信頼」が完璧に噛み合った、圧倒的なチームワークの勝利だった

 

「ふう……ジュカ、カエデ。見事な連携だったわ」

 

ヒバナは『波動ライフル』の排熱スリットから漏れる青い光を確認しながら、満足げに微笑んだ。

 

「ヒバナ部長の波動ライフル……実戦での初運用にしては完璧な効果だったな。ロボット相手にもこれほどの無力化性能を発揮するとは」

 

カエデが感心したように頷く

 

「へへ、ジュカも先輩たちの足引っ張らないように必死でしたよ! でも、本当に息がぴったりでしたね!」

 

ジュカが笑顔で『NOTバック』を抱え直したその時――階下から、何やら慌ただしい怒号と、金属がぶつかり合う騒音が駆け上ってきたのである。

 

 

「待ちなさい!! 逃がしませんよ、ゲーム開発部―――ッ!!」

 

「キャーッ!? ユウカちゃん追ってきたよ!? 足速すぎじゃない!?」

 

「モモイ、喋ってないで早く走って!『鏡』を奪われたら私たちの部活は本当に廃部になっちゃうんだから!」

 

「アリスも、勇者として全力を尽くします! たーっ!!」

 

階段の下、広大な吹き抜け構造となっている第3管理区画のロビーから、聞き覚えがありすぎる声が響き渡ってきた

 

(なっ……!? この声は……!)

 

ジュカは思わず階段の手すりに身を乗り出し、下を見下ろした

 

広場の中央では、青い制服に身を包み、ツインテールを揺らした少女——セミナーの会計、早瀬ユウカが、手に持った二丁のサブマシンガンを構えながら猛猛しい勢いで走っていた

 

手前で悲鳴をあげながら必死に逃走しているのは、ピンクのノースリーブパーカーを着た才羽モモイ、双子の妹である才羽ミドリ、レールガンを背負った天童アリス、そして花岡ユズの4人——ミレニアムの「ゲーム開発部」の面々だった

 

(やっぱりだ……! ゲーム開発部が『鏡』を回収するためにセミナーのデータベースへ侵入して、ユウカさんに見つかったんだ……!)

 

ジュカが脳内で原作の展開と現状を繋ぎ合わせていると、階下の混乱はさらに加速した

 

「そこを動かないで!セミナーの権限において、あなたたちの反逆行為を差し止めるわよ!」

 

ユウカが電卓を叩くような高速の計算力で弾道を予測し、ゲーム開発部の足元へ威嚇射撃を叩き込む

 

「うわあああっ!? ユウカの射撃、精度が高すぎるよ〜ッ! ミドリ、なんとかして!」

 

「無茶言わないでよお姉ちゃん! アリスちゃん、カバーお願い!」

 

「了解です!『光の剣』……は、ここでお部屋を破壊すると先生に怒られるので、牽制攻撃です!」

 

アリスが超大型のレールガン『スーパーノヴァ』の銃口を向けようとしたその時——

 

階段の上から、ヒバナ、カエデ、ジュカの3人が脱出のために猛スピードで駆け下りてきた

 

「全員、足を止めるな! 階下の広場を突っ切って中央口へ向かうわよ!」

 

ヒバナの声が吹き抜けの空間に大きく響き渡る

 

その声と、ネクストライ使節団の突然の乱入に、一番最初に反応したのはユウカだった

 

「え……!? 上から誰か……!?」

 

ユウカがハッと見上げると、そこには白衣をなびかせたヒバナ、全身に戦術装備を纏ったカエデ、そしてグレネードランチャーを構えたジュカの姿があった

 

「ネ、ネクストライ使節団の皆さん……!? なぜここに!?」

 

ユウカの意識が、予期せぬ「他校のVIP」の登場によって一瞬、完全に逸れた

 

ミレニアムの管理区域において、ゲストとして招かれている彼女たちが武装して階段を駆け下りてくるという異常事態。セミナー会計としての高度な情報処理能力が、一瞬の思考フリーズを引き起こしたのだ

 

「今です! ユウカが余脇を見ました!」

 

「それを言うなら『よそ見』か『脇見』だよ! とにかくチャンス! みんな逃げろ―――ッ!!」

 

モモイが絶叫し、ゲーム開発部の4人はユウカの隙を突いて、反対側の非常出口へとなだれ込むように走り去っていった

 

「あっ……!! 待ちなさい、ゲーム開発部!!」

 

ユウカが慌てて銃口を向け直した時には、既にゲーム開発部の後ろ姿は重い防火扉の向こうへと消えていたのだった

 

「くっ……逃げられた……!」

 

ユウカは悔しそうに歯噛みし、足を止めた

そして、ゆっくりと振り返り、階段を下りてきたネクストライの3人へと視線を向けた。

 

その瞳には、先ほどまでの困惑ではなく、セミナー会計としての鋭く冷たい警戒の色が宿っていた

 

 

「……さて。ネクストライスクールの皆さん」

 

ユウカは凛とした足取りで歩み寄ると、腰のホルスターに銃を収め、胸の前で腕を組んだ

 

「説明していただけますか? なぜゲストハウスに滞在しているはずのあなたたちが、この緊急事態に武装して管理区域の内部にいるのですか?」

 

ユウカの視線が、カエデが抱える『パルスライフル改』や、ジュカの『NOTバック』、そしてヒバナが手にする『波動ライフル』へと順番に向けられる

 

「……まさかとは思いますが。あなたたち、ゲーム開発部の不法侵入に協力していた……なんて言いませんよね?」

 

「なっ……内通疑惑!?」

 

ジュカが思わず声をあげる

 

(やっぱりそうなるよね!? ミレニアムプライス直前のこのタイミングで、爆発が起きて、その現場に他校の武装生徒がいたら疑われても仕方ない……! でも、ここで変な誤解をされたら外交問題になっちゃうよ……!)

 

ジュカが焦って弁明しようとしたが、その前にヒバナが静かに一歩前へ出た

 

ヒバナは慌てる様子もなく、手元の透過端末を操作して、先ほど解読した防弾シャッターのアクセスログと予備電源の遷移データをホログラムとして空間に表示させた

 

「早瀬ユウカ会計。あなたの推論は、状況証拠のみに基づいた感情的な飛躍だわ」

 

ヒバナは冷静かつ理知的な口調で語りかけた

 

「私たちがここにいる理由は単純よ。タワー中層で爆発が発生し、ゲストハウスが停電。直後に緊急避難勧告が発令されたわ。私たちはミレニアムの指示に従い、最寄りの非常口から外部広場へ退避しようとしただけよ」

 

「……退避? なら、なぜこの管理区域のシャッターが開いているのですか? ここはセキュリティレベル3の封鎖区画ですよ」

 

ユウカが鋭く突っ込む

 

「それについても説明できるわ」

 

ヒバナはホログラムのログを指し示した

 

「退避ルートの防弾シャッターが、予備電源の自動プロトコルエラーによって不当に閉鎖されていたの。見知らぬ他校のタワー内で隔離・閉鎖されるのは、安全保障上のリスクが非常に高い。だから私が『テクニック・コネクター』を用いて緊急開錠を行い、脱出路を確保したのよ」

 

「ハッキングした……ということですか?」

 

「『緊急避難のためのアクセス権限の臨時の再定義』と言ってもらいたいわね。さらに言えば、シャッターの向こうで誤作動を起こしていたあなたたちの警備ロボット小隊が襲いかかってきたため、自衛権の行使として私たち3人で無力化したわ」

 

ヒバナの淀みない説明に、ユウカは掲げられたログデータと、階上に転がっている警備ロボットの残骸を交互に見比べた

 

データに嘘偽りはない。シャッターの開錠タイムスタンプ、警備ロボットとの交戦ログ、そして使節団の移動軌跡……すべてが「タワーからの脱出」を示しており、ゲーム開発部の侵入ルートとは全く異なる方向からやってきたことが証明されていた

 

「……なるほど。状況は理解しました」

 

ユウカは深く溜息をつき、肩の力を抜いた

 

「私の早合点だったようですね。申し訳ありません。ミレニアムのセキュリティシステムの不備により、ゲストである皆さんを危険に晒し、さらには疑うような真似をしてしまいました」

 

ユウカはペコリと頭を下げた。生真面目で公私をきっちり分ける彼女らしい、誠実な謝罪だった

 

「構わないわ。混乱下での警戒は合理的よ。それより……あの逃走した生徒たちは?」

 

ヒバナが尋ねると、ユウカは痛めた頭を抱えるように額に手を当てた

 

「……ハァ。ゲーム開発部の問題児たちです。廃部を免れるために、セミナーのデータベースから怪しいデータを持ち出そうとしたのですよ。……まったく、あの仔猫たちは後でみっちりとお説教と反省文です!」

 

ユウカの言葉に、ジュカは密かに胸を撫で下ろした

 

(よかった……! 誤解が解けた……! ユウカさんも相変わらず苦労してるなぁ……)

 

「早瀬会計、外への安全な脱出ルートを案内してもらってもいいか? 私たちはこれ以上、ミレニアム内部の混乱に干渉するつもりはない」

 

カエデがパルスライフル改を背中に担ぎ直し、尋ねた

 

「ええ、もちろんです。中央エントランスまでのセキュリティを私の権限で一時解除します。こちらへどうぞ」

 

ユウカの誘導により、使節団の3人は無事にミレニアムタワーの混乱区画を抜け、夜風が吹き抜ける外の広場へと脱出することができたのだった

 

 

 

 

ミレニアムタワーの広大な前庭広場

夜空には美しい月が浮かび、タワーの上層部では未だに微かに緊急点灯の赤い光が明滅していた

 

広場には、状況を聞きつけたミレニアムの防衛部隊やエンジニア部の生徒たちが慌ただしく行き交っている

 

「ふう……一時はどうなるかと思ったっすけど、なんとか脱出できたっすね」

 

ジュカは『NOTバック』を肩にかけ、冷たい夜風を頬に受けながら呟いた

 

「ええ。ですが、カエデの機動、ジュカの足止め、そして私の『波動ライフル』……実戦での素晴らしい連携データが得られたわ」

 

ヒバナは白衣のポケットに手を突っ込み、満足そうにタワーを見上げた

 

「自作の『波動ライフル』の相転移波動が、ロボットの電子頭脳にあそこまで綺麗に干渉するとはね。ミレニアムプライスでの成果発表が今から楽しみだわ」

 

「ヒバナ部長、くれぐれもミレニアムプライス本番で他校の生徒に誤射しないでくださいね……? 確定で気絶しちゃいますから!」

 

ジュカが苦笑しながら突っ込むと、カエデも小さく笑みを浮かべた

 

「だが、ジュカの『NOTバック』によるエアバースト射撃も見事だったぞ。あの高度な空間把握センスがなければ、ヒバナ部長の波動ライフルも射線を通せなかった」

 

「へへ、カエデ先輩に褒められると照れますね……!」

 

先輩二人のやり取りを見ながら、ジュカは再びミレニアムタワーを見上げた

 

(ゲーム開発部が『鏡』を手に入れた……。ここから物語は一気に加速していく。アリスの正体、リオ会長の思惑、C&Cの介入、そしてパヴァーヌ編のクライマックスへ……)

 

前世でプレイしたブルアカのストーリー。その壮大なドラマが、まさに今、このミレニアムの地でリアルタイムに進行しているのだ

 

(でも……今回は私たちネクストライスクールがいる)

 

ヒバナの圧倒的なアーティファクト解析技術と相転移理論

カエデをはじめとする防衛部の圧倒的な実戦力

そして、レイカ先輩たちが作り上げた1300人の転生者たちの学園――ネクストライスクール

 

本番の『ミレニアムプライス』開催まで、あと8日

 

「ジュカ、何ぼんやりしているの? セミナーが用意してくれた別の宿泊施設へ移動するわよ」

 

ヒバナが振り返り、声をかけてくる

 

「あ、はい! 今行きます、ヒバナ先輩!」

 

ジュカは短く切り揃えた赤髪を揺らし、信頼する先輩二人の背中を追いかけて走り出した

オリジナルイベント!ネクストライをテーマにしたオリジナルイベントストーリー!

  • ラビリンス・オブ・エクスプレス
  • 船上のドリームバケーション
  • どっちもやる!
  • いや、やらなくていい
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