転生者共の学園生活   作:矢守龍

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Vol.3.5 ネクストライ以外の――

ミレニアムサイエンススクールの中央区画にそびえ立つミレニアムタワー。その周囲を彩る超高層ビル群とホログラム広告の輝きは、ネクストライスクールが拠点とするDU近郊の整然とした街並みとは明らかに異質な、先鋭化された「技術の都」の熱気を帯びていた

 

昨夜、この巨大なタワーの中層部で発生した原因不明の爆発と、それに伴う全館的な緊急警戒アラート

その混乱の最中に、ネクストライスクールから『ミレニアムプライス』の特別審査員兼ゲスト展示校の打ち合わせとして派遣されていた使節団――青花ヒバナ、志賀カエデ、立火ジュカの3名が巻き込まれたという報せは、翌朝にはネクストライ生徒会室へと届いていた

 

現場の被害状況の確認と、ミレニアム側との不必要な外交的摩擦を回避するため、ネクストライの現場総責任者である赤坂レイカは、生徒会補佐のふたり――霧状ヘルタと街肩カリネを引き連れ、直ちにミレニアムへと足を運んでいた

 

「――で、状況はだいたい把握した」

 

ゲストハウスに隣接する落ち着いたミーティングサロン

黒髪ウルフカットの毛先に鮮やかなターコイズカラーを覗かせ、約165cmの引き締まった体をソファーに預けたレイカは、テーブルに置かれた透過型端末のログ画面から視線を上げた

 

その対面には、白衣の裾を整えながら静かに眼鏡のブリッジを押し上げるアーティファクト研究部部長・青花ヒバナ。その横には、愛銃『パルスライフル改』を背中に担ぎ直し、隙のない立ち振る舞いを見せる防衛部の志賀カエデ。そして、短く切り揃えた赤髪を揺らしながら緊張気味に背筋を伸ばしている1年生の立火ジュカが座っている

 

「昨夜の爆発直後、予備電源の自動プロトコルエラーで封鎖されたゲストハウスの避難経路を、ヒバナが『テクニック・コネクター』で強行開錠。直後に暴走した警備ロボット小隊を3人で無力化し、脱出途中で逃走中のゲーム開発部と、それを追撃していたセミナーの早瀬ユウカ会計に遭遇……ってところか」

 

レイカの男らしく砕けた口調に、ヒバナは深く一つ頷いた

 

「ええ。早瀬会計には最初、不法侵入への内通を疑われかけたけれど……私の提示したアクセスログと物理的な交戦データを基に、論理的かつ客観的に状況を説明したわ。彼女も理知的な生徒よ。自校のセキュリティ不備を認め、即座に謝罪して正規の脱出ルートを案内してくれたわ」

 

「ヒバナ部長のあの説得、すごかったっすよ!」

ジュカが熱っぽく言葉を挟む。愛銃である40mmグレネードランチャー『NOTバック』を膝の上に置き、目を輝かせた

「感情論にならずに、タイムスタンプと電源遷移のホログラムログを一瞬で提示して『状況証拠のみに基づいた感情的な飛躍だ』って一蹴したんです。ユウカさんもぐうの音も出ないって感じでした!」

 

「まあ、実際に事実だからね」

ヒバナは自作のハンドガン『アナリス・フィードバック』のホルスターに手を添え、ふっと唇の端を上げた

「それより収穫だったのは、実戦における相転移波動のデータよ。新開発の『波動ライフル』を過電流遮断モードで掃射したところ、警備ドローン3機のメインCPUを一瞬で熱暴走なしに完全沈黙させられたわ」

 

「フッ、ヒバナ部長の波動射撃の前に、ジュカのエアバーストによる高度制御撹乱が見事だった。あれで完璧に敵の姿勢が崩れたからな」

カエデが静かにジュカの肩を叩く

 

「へへ、カエデ先輩のPSシールドとジェットパックの横滑り機動に比べたら、自分なんて必死だっただけっすよ……!」

 

楽しそうに昨夜の戦果を語り合う3人の姿を横目に、レイカの隣に座っていたヘルタが、茶髪ロングの髪を揺らしながらレイカの耳元へ身を乗り出してきた

 

「ねえ、リーダー……これ、完全に『パヴァーヌ編』のプロローグっすよね!?」

語尾に勢いのある「~っす!」を乗せ、ヘルタは瞳をギラギラと輝かせる

「ゲーム開発部がセミナーのデータベースから、廃部撤回のための超大作ゲーム製作に必要な不法ハッキングツール『鏡』を奪還した事件! まさかその現場に使節団が居合わせるなんて、胸熱すぎる展開じゃないっすか!?」

 

ヘルタの興奮した囁きに、反対側に座る銀髪ショートのカリネが、冷静なトーンでツッコミを入れた

 

「落ち着いてください、ヘルタ。声が大きいっす。ヒバナ先輩たちには、僕たちが『原作の未来シナリオ』を知っていることは伏せてあるんですから」

カリネはヘルタの袖を軽く引っ張りながら、言葉を選んで続ける

「……ですが、リーダーの仰る通り、ゲーム開発部が『鏡』を手に入れたということは、これから彼女たちはアリスさん――『AL-1S』と出会い、そしてミレニアムの生徒会長である調月リオさんが動き出すフラグが立った、ということです」

 

レイカは腕を組み、深くソファーに背を預けた

「ああ。モモイたちが『鏡』を持ち出したとなると、パヴァーヌ編のメインストリームはすでに動き出してる。ミレニアム内部の権力構造や、リオの『全知なる断頭台』を巡る暗雲……原作通りの流れなら、これからアリスの存在を巡って複雑な抗争になる」

 

前世で男性として生き、このキヴォトスへ本編開始の4年前に転生してきた赤坂レイカ

彼女が創設した「ネクストライスクール」は、今や1300人以上の転生者を抱える「第4の巨大勢力」へと成長していた。自分たちの介入によって、原作の歴史にはすでに幾重もの「ひび」が入っている

 

(だが……ミレニアムプライスまであと8日。俺たちがゲストとしてこの街に滞在している以上、ただの傍観者でいられる保証はないな)

 

レイカは息を吐き、視線をヒバナたちに戻した

 

「分かった。使節団の動きに落ち度はない。ミレニアム側もこちらの自衛権行使を認めているなら問題ない。念のためセミナーの幹部には俺から正式に挨拶と状況確認を入れておく」

 

「それなら都合が良いわ、レイカ」

ヒバナがホログラム端末を操作し、通知状をレイカの端末へ転送した

「セミナー執務室から、使節団の代表者に対する本日のスケジュール確認と、昨夜の事故に関する正式な口頭説明の要請が届いているの。対応してくれるのは、セミナーの副会長だそうよ」

 

「副会長……?」

レイカは転送された通知状の差出人欄に目を落とした

 

『ミレニアムサイエンススクール セミナー 3年生副会長 八金タチカ』

 

(……八金タチカ……? 原作のセミナーに、そんな副会長なんて存在しねぇはずだが……)

 

レイカは眉をひそめつつも、立ち上がった

「よし、ヘルタ、カリネ。俺と一緒にセミナー執務室へ行くぞ」

 

 

 

ミレニアムタワー最上層近くに位置する、生徒会「セミナー」の執務室

壁一面の強化ガラスからはミレニアムの全貌が一望でき、過剰な飾り気を廃した室内には最新鋭のサーバーラックと無数のホログラムディスプレイが整然と並んでいた

 

「失礼する。ネクストライスクール現場総責任者、赤坂レイカだ。昨夜の使節団の件について、挨拶に伺った」

 

スライドドアが開き、レイカが足を踏み入れる

 

執務室の奥、巨大なホログラムモニタ群の前に立っていた一人の生徒が、静かに振り返った

 

深く整えられたダークネイビーのミディアムヘア。ミレニアムのフォーマルな制服の上から、デザイン性の高いジャケットを羽織っている。胸元にはセミナーの役員証が光り、一見すると洗練された公人としての威厳に満ちあふれていた

 

「――お待ちしておりました、ネクストライスクールの皆様。セミナー副会長の八金タチカです。昨夜は当校のセキュリティエラーにより、大変ご迷惑をおかけいたしました」

 

タチカは滑らかな動作で端末を操作し、書類のホログラムを展開しながら、完璧な所作で深く一礼してみせた

 

(……完璧すぎる動きだ。何者だ……?)

レイカが警戒を強め、カリネとヘルタも息を呑んで見守っていた――次の瞬間だった

 

重厚な自動ドアが完全にロックされたことを確認した途端、タチカは持っていた端末をデスクにポイと投げ捨てた

 

「ふーっ!! 疲れたーーーっ!!」

 

「「「……はい!?」」」

 

先ほどまでの完璧な副会長の佇まいはどこへやら。タチカはミレニアムのジャケットの裾をバサバサと握りしめ、懐からカチリと小型の防音ジャミング装置を取り出して起動させた。室内と周囲にホログラムの二重結界が展開される

 

そして、信じられないほどのハイテンションと完全にバグった距離感で、ドタバタと音を立ててレイカの目の前にぬっと顔を近づけてきた!

 

「あーーーっ! やっと二人きり(?)になれたー! 待ってましたよ、ネクストライの皆さんっ!!」

 

「お、おい!? 八金副会長……!? 急にどうした!?」

あまりの豹変ぶりに、あのレイカすら思わず半歩身を引く

 

タチカはパッと満面の太陽のような笑顔を咲かせると、パンッと両手を合わせ、目をギラギラと輝かせながらレイカにぐいぐいと詰め寄った

 

「いや〜、さっきはユウカちゃんたちの監視カメラもあったからお堅い『副会長モード』やってましたけど、もう限界っす! 正直に言っちゃいますね! 赤坂さんたち、ブルアカの『転生者』でしょ!? 私もです! ガチ勢のプレイヤーでしたー!!」

 

「「「ええーーーーーーーっ!???」」」

 

ヘルタとカリネの叫びが結界内にこだました。レイカも「お、おう……初対面で爆速でバラすじゃねぇか……」と引きつった苦笑いを浮かべるしかない

 

「だって隠す意味なくないですか!?」

タチカは胸を張ってニカッと笑い、親指を立てた

「ネクストライスクールが1300人も転生者集めて、アビドス編やらヘルメット団やらでバチバチに歴史変えてるの、ミレニアムのデータベースでずっと見てましたもん! 『うわ〜絶対同好の士(プレイヤー)じゃん! 会いたい! めっちゃ語りたい!』ってずっと思ってたんですよ!」

 

「いや、お前……普通もうちょっと警戒するとか、裏で探るとかさ……」

レイカが呆れ交じりに尋ねると、タチカは「えー?」と首をかしげてグイグイ顔を寄せてくる

 

「だって仲良くした方が絶対得じゃないですか! 私、一人でミレニアムに落ちてから、学園の行政手続きと決算をゴリゴリ回して副会長まで上り詰めたんですからね!? 泣く泣くリオ会長の無茶振りに付き合いながら、裏でパヴァーヌ編のバッドエンドを回避するために一人で『生存フラグ』立てまくってたんですよ!?」

 

 

 

タチカの溢れんばかりのポジティブさと押し出しの強さに、ヘルタが思わず目を輝かせた

 

「な、なんか……めちゃくちゃノリが良くて行動派な副会長さんっすね!?」

 

「ノリだけじゃないですよー! 知識も準備もバッチリですからね!」

タチカはヘルタの方へ向き直し、バチンとウインクしてみせた

 

「ゲーム開発部のモモイたちが昨日持っていったハッキングツール『鏡』も、実は私が取られやすいように仕掛けておいたんです! これで彼女たちの超大作ゲーム製作も爆速で進むってわけですよ!」

 

「マジっすか!? 副会長さん、仕事出来すぎ&神対応すぎるっす!!」

ヘルタが「うおおー!」とタチカの手を握り締め、二人は一瞬で意気投合してしまった

 

「心配する必要が……」とカリネも手帳を開きながら驚きを隠せない

 

「既存のミレニアムの組織構造を壊さずに、副会長にまで成り上がるなんて……すごいっすね!」

 

「でしょ!? 褒めて褒めて!」

タチカはえっへんと胸を張る

 

「でも、ここからが本番ってわけですよ!こっから先、自分でも予測できないことがおおすぎるんです!」

 

タチカはグッと拳を握りしめ、レイカの目をまっすぐに見つめた

 

「赤坂レイカ……いや、レイカさん!また『時計仕掛けのパヴァーヌ』……この後ももしかしたら協力を仰ぐかもしれませんがよろしくお願いします!」

 

レイカは呆れ顔から、やがて「フッ」と口元を緩めた

 

警戒していた「謎の不確定要素」どころか、誰よりも明るく、誰よりも前向きにこの世界を良くしようと暴れ回っている「超・行動派の同好の士」だったのだ。その行動力と根回しの精度は、ネクストライの幹部たちと比較しても何ら遜色がない

 

「まったく……大物なんだか、ただの押しが強いオタクなんだか分からんな、お前は」

 

レイカはポケットから手を取り出し、タチカの前に差し出した

 

「だが、気に入ったぜ、八金タチカ……いやタチカ。お前が内部からお膳立てしてくれたなら、俺たちが外から最高に暴れてやろうじゃないか」

 

「やったー! 同盟成立ですね!」

タチカは満面の笑みでレイカの手を両手でギュッと握り締め、ぶんぶんと振った

 

 

 

タチカから完璧な補償書類と「ミレニアムプライスでの独立セキュリティ権限」を受け取ったレイカたちは、大満足の笑顔で見送られながらセミナー執務室を後にした

 

アトリウムへと続く空中回廊を歩きながら、ヘルタが興奮冷めやらぬ様子で跳ね回る

 

「すごかったっすね、タチカ副会長! まさかミレニアムの中枢に、あんな強い味方のブルアカガチ勢がいたなんて!」

 

「ええ」カリネも頷いた。「彼女の内部工作があれば、リオ会長との衝突が起きた際も、僕たちは外交的なリスクを最小限に抑えて介入できます。まさに願ってもない協力者っす」

 

「ああ」

レイカは歩きながら、ミレニアムタワーの透明なガラス越しに広がる街並みを見渡した

 

「原作の知識を持つ者が、それぞれの場所で自分の大切なものを守るために戦っている。八金タチカはミレニアムの副会長として、俺たちはネクストライスクールとしてな」

 

散策を終えてゲストハウス前の広場へ戻ると、使節団のヒバナ、カエデ、ジュカの3人が出展ブースの設営を終えて待っていた

 

「おかえりなさい、レイカ。セミナーとの話し合いはスムーズに済んだかしら?」

ヒバナが尋ねる。

 

「ああ、極めてスムーズだったよ。セミナーの副会長が、ものすごく『話のわかる奴』でな。うちの展示に関しても最大限のバックアップを約束してくれた」

 

「本当っすか!? さすがリーダー!」

ジュカが嬉しそうに声をあげる

 

レイカは使節団の仲間たちの顔を見渡し、そして夕陽に染まるミレニアムの空を見上げた

 

「よし! ヒバナとジュカ、展示については一任する! 費用面で何かあるなら随時相談しろ! カリネはバックアップとしてジュカ達のサポートだ。カエデは今まで通り3人を頼む」

 

「了解です、リーダー!」

「了解っす、リーダー!」

ジュカとカリネから返事を聞くと、レイカはヘルタの方へ向き直し――

 

「んじゃ、ヘルタ」

 

「なんすかリーダー! こっちもミレニアムに残って――」

 

「お前は俺と帰るぞ」

 

「はい!?」

 

ヘルタは見事なまでに豆鉄砲を食らった顔を見せる

 

「学園の方、人足りなくなっちまうからな。俺らは帰らんとあっちがまずくなる」

 

「そんなぁ……! せっかくのミレニアムなのに~っ!」

 

ガックリと絵に描いたように肩を落とすヘルタの首根っこを、レイカは苦笑しながらヒョイと掴み上げた

 

「諦めろ。プライス本番にはまたすぐ来られるさ。……それに、ミレニアムの中にも頼もしい『味方』ができたんだ。安心して任せられるだろ?」

 

夕陽に照らされたミレニアムタワーを見上げるレイカの表情には、確かな手応えと不敵な笑みが浮かんでいた

ミレニアム内部で手を回す八金タチカと、この街に残る信頼できる仲間たち。そして学園で待つ大勢の同胞

 

ジタバタと抵抗するヘルタを引きずりながら、レイカはネクストライスクールへの帰路につくのだった




あとがき

はい本日まさかの二本目です!そして新しい転生者としてミレニアムサイエンススクール 生徒会セミナー 3年生副会長 八金タチカが登場です!

彼女について軽く語りますと大体の転生者がDUに集まっていたのに対し、彼女はミレニアム自治区内だったのが理由でレイカ達が学園を作るという話が入ってこず、そのままミレニアムに入学したという経歴があります!

そして、ネクストライの設立やカイザーなどの話が耳に入り、転生者の学園として確証を得て、接触を求めネクストライを招待したのが今回の流れです

ちなみに一回目の訪問時いなかったのは他の自治区に出張に行っており、会わなかったが正解です



キャラ設定
八金タチカ

ミレニアム
セミナー所属3年生副会長
深く整えられたダークネイビーのミディアムヘアにレイカより1~2cm背が低い
超が付くほどの行動派とレイカが評するほど時計仕掛けのパヴァーヌ編で暗躍しており、苦労人である
自身の銃である『Q-TEC』はH&K社製のVP70が元となっており、腰にあるホルダーを銃に装着でフルオート射撃が可能となっている



オリジナルイベント!ネクストライをテーマにしたオリジナルイベントストーリー!

  • ラビリンス・オブ・エクスプレス
  • 船上のドリームバケーション
  • どっちもやる!
  • いや、やらなくていい
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