エリドゥ高層建造物群、地上数百メートルの屋上空間
遮るもののない上空には、冷ややかな高圧の人工風が絶え間なく吹き荒れていた
「ハァ……ハァ……っ! どこまでもしぶとい野郎だ……っ! 」
『C&C』のリーダー、美甘ネルは荒い息を吐きながら、愛銃『ツイン・ドラゴン』のグリップを血が滲むほどの力で握りしめていた。その小柄な身体には幾筋もの焦げ痕と擦砕傷が刻まれ、スカジャンの裾が風に激しくなびいている
その視線の先――崩落したヘリポートの先端に佇むのは、ミレニアムサイエンススクールの生徒会長・調月リオが全精力を注ぎ込んで作り上げた最高峰の決戦兵器『アビ・エシェフ』。そして、その内部で冷徹なまでに無感情を保つ『C&C』5人目のエージェント、飛鳥馬トキであった
「無駄な抵抗です、ネル先輩。アビ・エシェフの戦術並列演算システムは、キヴォトスにおけるあらゆる銃撃を避け、防ぐシステムとなっています。これ以上の戦闘継続は、無駄なエネルギーと資材の過剰消費を招くだけです」
トキの無機質で平坦な声が響く
その圧倒的な火力を前に、ネル一人であれば疾くに押し切られていたかもしれない。だが――トキの全方位光学センサーは、ネルの数メートル後ろで無骨な威容を誇る「異形の鋼鉄」へ向けられ、警戒の度合いを極限まで引き上げていた
『X098』――パワーローダー
対城刀ランゲージフィルムを保持・運用するために開発された油圧高トルクの外骨格補助駆動装置。その重厚なフレームに強引に固定されているのは、ネクストライスクールアーティファクト研究部が誇る試作高破壊兵器『X045』――プロトタイプリニアランチャーである
そして、その超高出力台座と化したパワーローダーを完全に乗りこなし、寸分の狂いもなく旋回軸を制御しているのは、ネクストライ防衛部にして実戦テスターを務める3年生、志賀カエデであった
「抵抗が無駄かどうかは、結果が決めることだ」
カエデはパワーローダーの操縦桿を握る手甲越しに、冷徹な低音で言い放った。元特殊部隊としての過酷な前世の記憶と、このキヴォトスで培った実戦経験が、彼女の脳内で超高速の弾道計算を繰り広げている
ズドォォォォンッ!!
パワーローダーのアシスト機構が重重しく軋み、X045から放たれた電磁投射弾が空気を凄まじい衝撃波とともに爆ぜさせる! 本来であれば生身の生徒を吹き飛ばすほどの凄まじい反動が、X098の電磁ダンパーと油圧フレームによって完全に減衰され、寸分の狂いもなくトキのアビ・エシェフの胸部装甲を直撃した
「くっ……! 衝撃波の減衰処理、許容量をオーバー……!」
トキの身体が大きく後方へと吹き飛ばされ、ヘリポートの超硬合金装甲板に深い亀裂が走る。
カエデが繰り出すこの規格外の威力を誇る一撃のおかげで、圧倒的劣勢だった戦況は確実に覆りつつあった
だが――カエデの鋭い眼光は、決して楽観視していなかった
(……まだだ。決定打には至っていない。アビ・エシェフの装甲キャパシティは異常だ。それに……)
カエデはバイザー越しに、空中に浮遊して姿勢を立て直すトキの「挙動」を凝視した
アビ・エシェフが背部高出力スラスターを噴射し、急旋回して空中へ浮遊する。その動きは一見すると完璧な立体機動に見える。しかし、元兵器運用・実戦派であるカエデの目をごまかすことはできなかった
(……挙動が、ほんの僅かにブレている。……空中制御のシステムリソースが過剰に割かれているんだ)
原作知識と兵器運用の観点からの考察。あの巨大なパワードスーツを空中という全3次元の不定形空間で滞空・制御させるため、内部の並列演算処理装置は絶えず膨大な機体制御計算を行っている。特に高負荷の攻撃を受けた直後の空中姿勢制御において、防衛システムと飛行維持プロトコルが処理能力を食い合い、ほんの一瞬だけ演算処理に「目詰まり」が生じるのだ
「ネル、聞こえるか」
カエデはパワーローダーの内蔵通信プロトコルを開き、ネルだけに届く暗号通信を送った
「あぁ!? なんだよカエデ! なんかあったのか!?」
「あいつの空中制御だ。アビ・エシェフは空中での姿勢制御に並列演算システムの大部分を割いている。射撃と飛行を同時にこなそうとした瞬間、システムに必ず『隙』ができる」
「あ……?」
「地上での殴り合いじゃ埒が明かない。……あいつを、ここから引きずり下ろす。ビルからの落下高度を利用して、演算処理を完全に飽和させるぞ」
「……ハッ! 面白いこと言うじゃねぇか!」
ネルの口元が、凶暴で勝気な八重歯を覗かせてニヤリと吊り上がった
「よし、乗った! 最後のマガジン、全部あいつの面にブチ込んで分からせてやるっつーの!」
ネルは慣れた手つきで『ツイン・ドラゴン』のラストマガジンを叩き込み、高らかに金属音を響ませた
一方その頃——エリドゥの最深部へと続く、地下巨大アトリウム区画
「ハァ……ハァ……っ! くそっ、タチカ、右だ! 弾幕を途切れさせるな!」
「解ってるっすよー!! でもこっちももう予備マガジンがラスト1本なんすよ! 容赦なさすぎるでしょうがぁっ!」
激しい炸裂音と金属片の飛散音が地下空間に渦巻く
赤坂レイカの叫びと、八金タチカの悲鳴混じりの怒声を遮るように、超重厚な金属の駆動音が響き渡った
ドズンッ! ドズンッ! ドズンッ!
黒煙が立ち込めるアトリウムの広場には、すでに無惨に破壊された『アヴァンギャルド君』の巨躯が「4体」、火花と黒煙を撒き散らして転がっていた。
レイカの持つ神秘【絶対加速】による次元を越えた空間侵入と、タチカの『Q-TEC』による精密なフルオート射撃の連携によって、並の防衛兵器であれば壊滅させられるはずの猛攻を乗り越え、4体までを解体に追い込んだのだ
しかし——最後に残った「1体」
それが、これまでの4体とは根本的に異なる悪夢であった
「チッ……! 他の奴らは2足歩行だの多足構造だのタイヤ駆動だったってのに……なんで最後の1体だけ知っている通りのキャタピラなんだよ!?」
レイカは愛銃『ゼロモーメントポイント』を抱え、崩れかけたコンクリート柱の陰へ滑り込みながら吐き捨てた
そう、残された5体目のアヴァンギャルド君——それは、他の4体を統括する『指揮官機』であった
下半身に組み込まれたキャタピラは、10メートルを超える巨躯でありながら、接地圧を完璧に分散させ、摩擦ドリフトと高出力油圧シリンダーによる異常な機動性を実現している
しかも、他機から送信された戦闘データをリアルタイムで解析・学習しており、レイカの【絶対加速】の起動軌道や、タチカのQ-TECの射線パターンを完全に予測して回避してみせるのだ
「レイカさん! 指揮官機のアヴァンギャルド君、基本スペックが他の機体と段違いっす! センサーの感度も装甲の厚みも別物……これ、リオ会長が一番気に入っているやつっすよ!!」
タチカが崩れた壁の隙間からQ-TECを構え、舌を打ちながら叫んだ。完璧なミレニアム副会長としての淑やかな面影はどこへやら、前世のブルアカガチ勢としてのオタク知識と戦闘ハイが混ざり合った「素」の口調が全開になっている
「知るかよそんな裏設定! ッたく、リオの野郎、どんだけ念には念を入れてやがるんだ……!」
レイカはゼロモーメントポイントのスライドを引き、残弾を確認する。残された予備マガジンは、腰のホルダーに差さった「最後の一本」のみ
タチカもまた、愛銃Q-TECのマガジンインジケーターを見つめ、苦い顔をした
「こっちも残弾、最後の1つっす。……9mm弾のフルオート全弾ブチ込んでも、あの指揮官機の正面装甲を破るのは不可能っすよ。かと言って、弱点の関節基部はキャタピラの防護プレートで完璧にカバーされてます……!」
ガガガガガガガガガッ!!
指揮官機アヴァンギャルド君のアサルトキャノンが火を噴き、二人が潜む柱と壁を削り取っていく。圧倒的な物理的質量と火力の暴力。手持ちのマガジンは互いにあと一つ。一歩間違えれば、ここで二人もろとも蜂の巣にされて破滅する
「思案のしどころだな……。何か打破の糸口はねぇのか……!?」
レイカはウルフカットの黒髪を揺らし、鋭い眼光で粉塵の舞うアトリウムを凝視した
絶対加速で無謀に突っ込めば、学習したAIに読まれてカウンターを食らう。Q-TECの連射も装甲にはじかれる
だが――その時だった。
指揮官機アヴァンギャルド君が、激しい砲撃を加えながら斜め前方へとキャタピラを滑らせ、二人を追い詰めようとした瞬間
(……ん? 今、あの鉄くず……なんで射線をわざわざ変えた?)
レイカの元特殊部隊や叩き上げの戦戦感覚に由来する直感が、わずかな違和感を捉えた
指揮官機は、レイカの潜む柱の目と鼻の先まで接近してきていた。その直線状には、先ほどレイカとタチカが叩き潰した「2号機(多足型)のアヴァンギャルド君の残骸」が転がっていた
本来なら、その残骸ごとコンクリート柱を掃射すれば、レイカに致命傷を与えられたはずだ
しかし、指揮官機はわざわざキャタピラを大きく迂回させ、残骸を死角に残すような角度に射線を調整してから砲撃を再開したのだ
「……タチカ」
「なんっすか、レイカさん! 今いいアイデア考えてる最中なんすけど!」
「あいつの射撃……倒された『仲間(アヴァンギャルド君)』の残骸に、一切銃撃を与えてねぇ」
「……は?」
タチカが一瞬、目を丸くした
「よく見ろ。あの指揮官機、破壊された1号機から4号機の残骸を避けるように射線をとってる。弾一発たりとも、倒れた同型機のパーツに当ててねぇんだ」
タチカの脳内で、ブルアカの知識とミレニアムの防衛プロトコルが電撃のように結びついた
「――っ!! そうか……! リオ会長の組んだ防衛プログラムだ!!」
タチカが叫んだ
「アヴァンギャルド君はミレニアムの最高機密技術の結晶! 万が一破壊された場合、その内部コアや演算データの二次破壊を防ぎ、回収・再利用するための『味方機体損壊防止プロトコル』が最優先で働いてるんだ!! 自機の残骸を弾よけにされるなんて想定してないから、残骸が射線上にあると攻撃プロトコルに絶対的な制限がかかるっす!!」
「なるほどな……!」
レイカの口元に、不敵で凶悪な笑みが戻った
「どれだけ圧倒的な戦闘スペックを誇ろうが、所所詮はプログラムされた機械だ。仲間の遺体を傷つけられないっていうなら……それを最高の盾にさせてもらうぜ!」
ビルの上層階。吹き荒れる暴風の中、戦局は一瞬の静寂を迎えていた
「ネル! 準備はいいか!?」
「あぁ!? 言うに及ばずだ! さっさと合図出しやがれ!」
カエデはパワーローダー(X098)のメイン出力を極限まで上昇させた。脚部油圧シリンダーが重厚な駆動音を上げ、崩れたコンクリート床に深く爪先を食い込ませる。中央軸線に固定された試作リニアランチャー(X045)のシリンダーが、限界突破の青白いプラズマ光を放ち始めた
「目標、アビ・エシェフの空中スラスターユニット。……発射!」
ドバァァァァンッ!!!!
空間そのものを穿つような超高圧の電磁衝撃波が放たれた
「くっ……! 自動回避プロトコル、作動――」
空中に浮遊していたトキは、即座にアビ・エシェフの回避スラスターを全開にした。しかし、カエデの放った一撃は回避を予測した広域電磁波。直撃こそ免れたものの、強力な磁気嵐と衝撃波がアビ・エシェフの背部飛行ユニットを直接揺さぶる!
『警告:飛行制御システムの並列処理負荷、98%に達しました。姿勢制御に遅延が発生します』
トキの視界に赤色の警告アラートが群れをなして点滅した。ほんの0.5秒。アビ・エシェフの空中での挙動が、完全にフリーズする
「もらったぁぁぁぁぁっっ!!!!」
その0.5秒を、美甘ネルが見逃すはずがなかった
ネルはビルの縁を強く蹴り上げ、一発の弾丸と化して空中で硬直するアビ・エシェフへと飛びかかった。超小型の身体からは想像もつかない全力の組み付き! ネルの両腕が、トキのアビ・エシェフの胸部フレームをがっちりと捉える
「なっ……!? ネル先輩、正気ですか!? この高度から——」
「正気でこんな仕事やってられるかよぉっ! 落ちろ、生意気な1年生がぁぁぁっ!!」
ネルは自身の体重と落下の運動エネルギーを全て利用し、トキのアビ・エシェフもろとも、ビル屋上の断崖絶壁から真っ逆さまに身を投げた
「ネルっ!」
カエデは即座にパワーローダーの胸部緊急解除レバーを叩いた。
カチ、カコンッ!
X098パワーローダーの固定ロックが瞬時に解放され、カエデの身体が巨大な鋼鉄の外骨格から離脱する。彼女の背中に装着されているのは、パワーローダー用にカスタマイズされた緊急用バックパック——降下用パラシュートシステムだ
カエデは一切の迷いなく、ビルから落下していくネルとトキを追うように、空中へと飛び出した!
「〜〜〜〜〜っっっ!!」
風切り音が鼓膜を破らんばかりに猛り狂う
数百メートルの高度から、重力に惹かれて直線落下していく三つの影
ビルの壁面がスローモーションのように上へと流れていく。トキのアビ・エシェフは落下の衝撃と並列演算の過負荷によって、姿勢制御プロトコルが完全にフリーズしていた。飛行スラスターは空しく不規則な火花を吹き上げるのみ
「トキ! これで終わりだ!!」
空中で姿勢を安定させたカエデが、愛銃『パルスライフル改』を構える
同時に、トキの身体に組み付いたまま離れないネルが、その至近距離から『ツイン・ドラゴン』の二丁の銃口をアビ・エシェフの装甲の継ぎ目——メインコアの真上へと突きつけた
「あたしらの勝ちだ、トキ!!」
「全弾……撃ち尽くす!!」
カエデのパルスライフル改から放たれる高周波パルス弾の嵐と、ネルのツイン・ドラゴンから放たれる大口径弾の連続交響曲が、落下の渦中で炸裂した
ドドドドドドドドドドドドドドドドンッ!!!!
空中で逃げ場のないトキのアビ・エシェフへ、二人が残した最後の予備マガジンの全弾丸が、完全な死角から過不足なく叩き込まれていく。相転移装甲が悲鳴を上げ、内部の繊細な電子回路がパルス波によって次々と焼き切れていく
『致命的損傷を検知……アビ・エシェフ、機能停止……』
パキィン……! という硬質で儚い音とともに、アビ・エシェフの全身を覆っていた青い光の粒子が消散した
「今だ、ネル!」
地表が目視できる高度まで迫った瞬間、カエデが空中でネルの小柄な身体をしっかりと抱き寄せた。同時に、背中の緊急用バックパックの展開ワイヤーを全力で引っ張る
バサァァァァァァンッ!!!!
鮮やかな降下用パラシュートの大輪が空中に開き、凄まじい減速Gが二人の身体を襲った
一方、すべての機能を停止したアビ・エシェフ——そしてその内部のトキは、ネルとカエデの全弾射撃の衝撃を全身に受けたまま、ビル下の広場に積まれた建設資材の山へと一直線に激突した
ドカァァァァァァァンッ!!
激しい粉塵と煙が巻き起こり、地上に静寂が訪れる
パラシュートによって速度を殺されたカエデとネルは、見事な受け身をとって地上へ無傷で着地した
「ハァ……ハァ……っ! ッたく、無茶させやがって……!」
ネルが肩で息をしながら、ツイン・ドラゴンを腰に納めて煙の上がるところへ歩み寄る
そこには、半壊したアビ・エシェフの装甲の中から投げ出され、地面に倒れ伏している飛鳥馬トキの姿があった
パワードスーツは完全に沈黙し、トキ自身も直前の射撃の衝撃と落下の余波により、目を白黒させて完全に伸びていた
カエデはパルスライフル改の空マガジンを排出させ、静かに吐息を漏らした
「ターゲットの沈黙を確認。……ふう、冷や汗をかかされたな」
ネルは倒れたトキを見下ろし、スカジャンをグッと羽織り直すと、不機嫌そうに鼻を鳴らした
「……フン。生意気な後輩におしおき完了だつーの。次目覚ましたら、たっぷり説教してやっからな」
そして――ほぼ同刻
地下アトリウムの戦場においても、最終局面の引き金が引かれようとしていた
「レイカさん! 最後のマガジン、装填完了っす!」
「おう! こっちも準備完了だ!」
レイカはゼロモーメントポイントに最後の9mmマガジンをカチリと装填した
目の前には、破壊されたアヴァンギャルド君2号機と3号機の巨躯が、うずたかく積まれたガレキのように転がっている。そしてその向こう側で、キャタピラ駆動の指揮官機が、二人を見失って警戒センサーを激しく明滅させていた
「作戦はシンプルだ。あの残骸を『動く盾』にして距離を詰める。あいつは残骸を撃てねぇ。射線が限られた瞬間――一気に叩き潰す!」
「了解っす! ミレニアムの副会長として、自校の兵器の『バグ』を突くのは心が痛むっすけど……背に腹は代えられないっすからね!」
タチカがQ-TECを両手でしっかりと保持した
「行くぞ……タチカ!」
「はいっ!!」
ドッ!!
赤坂レイカの神秘【絶対加速】が発動した
空間の基準点が強制的に切り替わり、レイカの身体が残骸の影を縫うように超高速で滑走する
『敵影検知――迎撃――っ!?』
指揮官機アヴァンギャルド君のセンサーがレイカを捉え、アサルトキャノンの銃口が向けられる。しかし、レイカの侵入ルートの直線上には、横たわる2号機の残骸が存在していた
『警告:味方機体の残骸に対する二次被害の危険性。射撃プロトコルを一時中断――』
ほんの一瞬の躊躇! 指揮官機のAIが射線を変更しようとキャタピラを旋回させた、まさにその隙を二人は逃さなかった
「どこ見てるんすかーっ!!」
残骸の陰から跳躍したのは、八金タチカ
彼女はQ-TECのフルオートモードを全開にし、指揮官機の頭部に位置するメイン全方位カメラユニットへと肉薄した
ガガガガガガガガガガガガッ!!
「な……!?」
寸分の狂いもない接射、高密度の9mm弾幕がカメラユニットの防弾ガラスを砕き、内部の光学素子を完全に破壊する。視界を奪われた指揮官機が狂ったようにアームを振るい、タチカを振り払おうとした
だが――真の決め手は、上空から降り注ぐ
【絶対加速】によって空間の慣性を跳び越え、指揮官機の頭上——まさに死角の直上に降臨していたのは、赤坂レイカであった
「これでお前もおしまいだ、鉄くずがぁぁぁぁっ!!」
レイカは空中から垂直に落下しながら、ゼロモーメントポイントの銃口を、指揮官機のキャタピラ駆動基部とメインアクチュエーターが露出する「唯一の装甲の継ぎ目」へと突き刺した
自由落下と自身の神秘を上乗せした絶対的な一撃
レイカは躊躇を捨て、引き金を極限まで絞り切る
バババババババババババババババンッ!!!!
神秘を帯びた9mm弾が超高圧の運動エネルギーを伴って内部へ侵入。回路を、油圧シリンダーを、そして並列演算コアを、内側から完勝の勢いで破壊し尽くしていく
ズズズズズズズズズズ……ドガァァァァァンッ!!!!
指揮官機アヴァンギャルド君の巨体が激しい内部爆発を起こし、膨大な火花と黒煙を撒き散らして膝から崩れ落ちた。メインカメラの光が完全に途絶え、地下アトリウムに静寂が訪れる
立ち昇る硝煙の中
レイカは崩れ去った指揮官機の頭部からコンクリートの床へと着地し、ゼロモーメントポイントの空マガジンをカチャンと床へ叩き落とした
ターコイズカラーの毛先を汗で濡らし、肩で激しく息を吐きながらも、その顔には晴れやかな勝利の笑みが浮かんでいた
「ハァ……ハァ……。……終わったな」
「ふぅぅぅぅ……っ! マジで……マジで死ぬかと思ったっすよレイカさん……!」
タチカもQ-TECをホルダーに収め、その場にへたり込んだ。完璧な副会長の佇まいは完全に消失し、脱力したように床に手をついている
「だが、これで路払いは完了だ。……カエデたちも、上の方でうまくやったみたいだな」
レイカは通信端末から聞こえる、カエデからの「コールサイン04の対処完了」の簡潔な報告を聞き、満足そうに頷いた
「……さて。邪魔者は全員片付いた」
レイカは立ち上がり、黒煙の奥——エリドゥ中央タワーへと続く巨大な直通ゲートを見据えた。そこには、先生やゲーム開発部、そしてジュカやヒバナたちが一刻も早く辿り着こうとしているはずだ
「行くぞ、タチカ。アリスを助けにいく先生たちの背中、最後まで守り通すぞ」
「はいっす! ネクストライの現場総責任者と、ミレニアムの副会長の底力……見せてやりましょう!」
二つの激闘を乗り越えた者たちは、仲間たちの待つ未来へ向かって、再び力強く歩み出した
あとがき
最近、感想にて時系列のことをいわれ、すこし時系列等を修正作業をしています
なので、小説投稿が少し怪しいです