転生者共の学園生活   作:矢守龍

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イベントストーリー ラビリンス・オブ・エクスプレス
Vol.1 事前調査


朝の柔らかな光が、ネクストライスクールの生徒会室を斜めに照らし出していた。

洗練された木目調のデスクと最新の通信機器が整然と並ぶ室内には、心地よい静けさが満ちており、聞こえるのは時折響く書類をめくるカサリという音と、遠くの運動場から届く防衛部の訓練の掛け声だけだった

 

「ふう……これで今月分の各部活からの設備拡張および備品要求申請書は、ひと通り目を通し終えましたね」

 

デスクの前に腰掛けた生徒会長、西条ハレカは、綺麗に整えられた書類の山をひとまとめに揃えると、小さく息を吐いた

知的で気品あふれるその顔立ちには、一切の隙がない。その素顔の瞳には、凛とした知性と生徒会長としての品格が漂っていた

 

「お疲れさん、ハレカ。相変わらず仕事が早いな」

 

壁に背を預けていた現場総責任者、赤坂レイカが口元に笑みを浮かべて声をかける

黒髪のウルフカットに、毛先の鮮やかなターコイズカラーが朝光を受けて小さく揺れていた165cmほどの引き締まったスタイルに、どこか男性的で頼もしい雰囲気を纏ったボーイッシュな美少女。それがネクストライスクールの現場を仕切るレイカだった

 

「レイカ君が現場の指揮と防衛体制を完璧に維持してくれているおかげですよ。……ですが、私たちの学園も本当に急激に規模が大きくなりましたね」

 

ハレカは窓の外、広大な敷地に広がる校内に視線を向けた

ネクストライスクールは、今や生徒数が一千三百人を超える大所帯へと成長を遂げている。全国から集まった生徒たちを受け入れるための教室、部活動の部室、さらにはアーティファクト研究部や土建部が使用する大型実験場や作業場に至るまで、校舎のあらゆるスペースが完全に飽和状態に達しつつあった

 

「ああ。ミヤカたちの土建部も連日大忙しだし、サレの工芸部にも設備増設や特殊加工の依頼が殺到してる。新入生や編入生も増え続けている。そろそろ本気で『学園の敷地拡張』に手を付けなきゃ、物理的に空間が足りなくなる頃だ」

 

「ええ。そこで本題なのですが……」

 

ハレカは一枚の精密な地図と、古い建築データのファイルをデスクの上に広げた

 

「我が校の敷地外縁部、北西の森林区画に隣接する未開発エリア……そこに、昔存在していたとされる『旧校舎』の廃墟群があります」

 

「昔あった校舎か。かなり古い建物だな」

 

「はい。ネクストライスクールがこの地に設立されるよりもずっと前、どこかの学園が使用していたのか、あるいは独立した施設だったのか……長らく放置されていた廃校舎です。構造体としての安全性が確認できれば、そこを全面的に改修・補強し、新たな研究施設や倉庫、あるいは第二校舎としての有効活用が見込めます」

 

「なるほどな。壊して更地にするにしても、リノベーションして使うにしても、まずは現地で構造の調査と安全確認が必要ってわけだ」

 

レイカは腕を組み、顎に手を当てて頷いた

 

「それで、調査隊のメンツはどうするんだ? 俺が現場責任者として行くのは当然として……」

 

「ええ、レイカ君には現場総責任者として全体の指揮をお願いします。そして伴走役として、生徒会補佐の2年生、霧状ヘルタ。それと新執務補佐の1年生、天笠ネカの二人を同行させてください」

 

「ヘルタとネカか。元気いっぱいのトラブルメーカーと、真面目で緊張しやすい新人か……なかなか面白い組み合わせだな」

 

「ふふ、ヘルタの行動力とネカの精密な観察眼は、こうした現地調査にうってつけですから。……ですが、廃校舎の内部は長年放置されており、未知の危険や構造的な脆弱性が懸念されます。ですから今回、強力な『協力者』をお呼びしています」

 

ハレカの言葉に、レイカはニヤリと不敵に笑った

 

「協力者ねえ……言わなくても分かるぜ。あいつだろ?」

 

「ええ。シャーレの先生です。すでに要請は出してあり、快く引き受けてくださいました。間もなく校門前にお見えになるはずです」

 

「先生が来てくれるなら百人力だな。よし、さっそくヘルタとネカを呼んで、準備を整えるとしよう!」

 

 

イベントストーリー

ラビリンス・オブ・エクスプレス

 

【挿絵表示】

 

 

 

ネクストライスクールの正門前。心地よい風が吹き抜ける広場には、すでに賑やかな声が響いていた

 

「リーダー! 今日は廃校舎の探索って本当っすか!? 自分、めちゃくちゃワクワクしてきたっすよ!」

 

茶髪のロングヘアをなびかせ、大型機関銃『ラッシュTHEネーム』を肩に担いだ2年生の霧状ヘルタが、目を輝かせながらレイカの周囲をピョンピョンと跳ね回っていた。元気いっぱいの後輩らしい躍動感にあふれている

 

「落ち着けヘルタ。遠足に行くんじゃないんだぞ。今回は廃校舎の構造調査とリスク洗い出しだ。浮かれて足元を掬われるなよ」

 

「分かってるっすよー! でもでも、誰も足を踏み入れてない廃墟探索なんて、乙女の冒険心をくすぐるじゃないっすか!」

 

「お前は相変わらずだな……」

 

苦笑するレイカの隣で、丸眼鏡を指で押し上げながら、1年生の天笠ネカがペコリと頭を下げた。緩く後ろでまとめた黒髪と、少し緊張した面持ちが初々しい生徒会新執務補佐だ

 

「レ、レイカ先輩……! 天笠ネカ、本日の調査任務、全力でサポートさせていただきます……! 事前に旧校舎の周辺地形と、残存している数少ない建築データの予習は済ませてきました!」

 

「おお、頼もしいなネカ。お前がいてくれると助かるよ。ヘルタが暴走しそうになったら一緒に手綱を引いてくれ」

 

「は、はいっ! 任せてくださいっ!」

 

「ちょっとリーダー!? 自分、そんなに信用ないっすか!?」

 

ヘルタが口を尖らせて抗議する中、校門の向こうから見覚えのある影が歩いてきた

 

「やあ、みんな。待たせたかな?」

 

「先生!」

 

訪れたのは、シャーレの先生だった。ヘイローを持たないキヴォトス唯一の「大人」であり、ネクストライスクールの生徒たちにとっても絶大な信頼を寄せる人物だ

 

「やあ先生。忙しいのに来てくれて助かるよ」

 

レイカは笑顔で先生を迎え、軽くハイタッチを交わした。先生も柔らかい笑みを浮かべ、集まったメンバーを見渡す

 

「ハレカから連絡を受けてね。ネクストライの敷地拡張のための廃校舎調査だろう? 大事な任務だし、みんなの安全を守るためにも喜んで協力させてもらうよ」

 

「先生っ! 今日の自分は一味違うっすよ! どんな障害があっても、この『ラッシュTHEネーム』でバリバリ切り開いて見せるっす!」

 

「ヘルタ、頼もしいね。でも廃校舎だから、急に暴れて建物が崩れないように気をつけようね」

 

「あう……先生に直球で注意されると反論できないっす……」

 

「す、先生……初めまして……あ、いえ、お会いするのは何度目かですが、こうして直接任務にご一緒させていただくのは初めてで……1年の天笠ネカです! よろしくお願いします!」

 

緊張でガチガチになっているネカに対し、先生は屈み込んで目線を合わせ、優しく微笑みかけた

 

「よろしくね、ネカ。そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。レイカもいるし、リラックスしていこう」

 

「は、はいっ……! 先生、とっても優しい方なんですね……」

 

ネカの緊張がほぐれたのを見て、レイカは満足そうに頷いた

 

「よし、全員揃ったな。各自、装備と通信機器の最終チェックだ」

 

レイカは腰のホルダーに収められた愛銃、ハンドガン『ゼロモーメントポイント』のグリップに手を触れ、状態を確認する。コンパクトでありながら、折り畳み機構と高い拡張性を秘めた相棒だ。

 

「目的地は北西の森林区画の奥にある旧校舎群だ。昔使われていた古い建物で、長年メンテナンスされていない。足元には十分気をつけて進むぞ。それじゃあ、調査隊出発だ!」

 

「「オーッ!」」

 

ヘルタとネカの元気な声が響き、一行は緑豊かな校外の小道へと歩き出した

 

 

 

ネクストライスクールの中心街を抜け、深い緑に包まれた散策路を進んでいく

小鳥のさえずりと風が木々を揺らす音が心地よく響く中、最前線を歩くヘルタとネカは、タブレット端末で地図を確認しながら楽しそうに話していた

 

「ネカちゃんネカちゃん! 見てっす、あっちの木の枝に変わった鳥がいるっすよ!」

 

「あ、ヘルタ先輩、脇見は危険です……あ、でも本当ですね。図鑑に載っていた稀少種かもしれません。記録しておきます」

 

後方から二人の微笑ましい背中を見守りながら、レイカと先生は並んで歩いていた

 

「……ふふ、賑やかでいいチームだね」

 

先生が目を細めると、レイカも肩をすくめて笑った

 

「だろ? ヘルタは落ち着きがないが鼻が効くし、ネカは真面目で細かい変化によく気づく。いいコンビだよ」

 

先生は歩きながら、周囲の景観や遠くに見えるネクストライスクールの近代的な防衛設備、整然と立ち並ぶ最新の研究施設へ視線を向けた

 

「しかし、いつ見てもネクストライスクールの発展スピードには驚かされるよ。学園を立ち上げてからそれほど長い年月が経っているわけじゃないのに、これほど高度な技術と広大なインフラを整備してしまうなんて……本当に凄いことだよ」

 

先生の感嘆が籠もった言葉に、レイカは少しだけ表情を引き締めた

 

(……先生のこの言葉は、純粋な称賛だ。だが、キヴォトスの他校から見れば『謎の技術集団が突如現れた』ように見えているのも無理はない……)

 

レイカは前方を歩くヘルタとネカとの距離を確認した。二人は珍しい高山植物の観察に夢中になっており、こちらの会話には意識を向けていない

 

「……先生」

 

レイカは声を落とし、先生にだけ聞こえるような静かなトーンで切り出した

 

「さっき先生が言ってくれた『ネクストライの技術力』についてなんだが……少しだけ、うちの学園の『核』に関わる話をしてもいいか?」

 

「え? ネクストライの技術の秘密……かい?」

 

先生が不思議そうに首を傾げると、レイカは頷き、密やかに語り始めた

 

「うちの学園がここまで短期間で独自の兵装やパルス技術、高度な防衛シールドを開発できた理由……その根底には、ある『発見』があったんだ」

 

「発見……?」

 

「ああ。この学園の土地を確保し、初期の校舎整備を始めていた頃……校舎裏にある旧地下防空壕の跡地から、ひとつの『遺物』が見つかったんだ」

 

レイカの瞳に、当時の鮮明な記憶が思い浮かぶ

 

「それは、正十二面体の形状をした、銀色に輝く小さな物体だった。表面からは淡く綺麗な青白い光が漏れていてな……既存のどの学園のデータベースにも、トリニティやミレニアムの記録にすら存在しない、完全な未知の『オーパーツ』だったんだ」

 

「トリニティやミレニアムにもない……未知のオーパーツ……!?」

 

先生が息をのむ

 

「ああ。当時、技術部門を立ち上げたばかりだったアーティファクト研究部部長のヒバナ……あいつを中心に解析を進めたんだ。そのオーパーツが秘めていた構造やエネルギー理論、神秘の伝達効率……それらを解明し、自分たちの技術として応用・再構築した。それが、今のネクストライを支えるパルス技術や相転移技術、電磁兵装の基礎になっているんだよ」

 

レイカはそこまで言うと、先生の目を真っ直ぐに見つめた

 

「……ちなみに言っておくが、この『第一号オーパーツ発見の真相』を知っているのは、学園の初期からいた俺たち3年生だけだ」

 

「3年生だけ……? ヘルタやネカは知らないのかい?」

 

「ああ。後輩たちには『ヒバナたちが開発した独自の高効率エネルギー理論』とだけ教えてある。余計な混乱や、外部への情報漏洩を防ぐためにな。特にオーパーツなんて単語が一人歩きすると、カイザーや他の怪しい組織に目を付けられかねない」

 

先生は深く納得したように頷いた

 

「なるほど……だからレイカは、ヘルタとネカが少し離れたこのタイミングで教えてくれたんだね。大切な機密を話してくれてありがとう、レイカ」

 

「まぁ、いずれかバレるかもしれないけど……俺たちの技術は、偶然の発見と、それを必死で解明したヒバナたちの努力の結晶なんだよ。だからこそ、この技術を正しく使って、みんなの居場所を守りたいんだ」

 

「ああ、レイカたちの想いはよく分かっているよ。本当に誇らしい生徒たちだ」

 

先生が温かく微笑み、レイカの頭を撫でようと手を伸ばす。レイカは「おいおい、子供扱いするなよ」と照れくさそうに笑いながら身をかわした

 

前線を行くヘルタが振り返り、大きく手を振った。

 

「リーダー! 先生! 見えてきたっすよ! あれが目的地の廃校舎っす!」

 

二人の密話はそこで終わり、レイカと先生は顔を見合わせて頷くと、後輩たちの元へと駆け寄った

 

 

 

木々の開けた先、小高い丘の麓にその建造物は佇んでいた

 

コンクリートの壁面は長年の風雨によって黒ずみ、張り巡らされたツタが建物全体を覆い尽くしている。窓ガラスのほとんどは割れ落ち、割れ目からはペンペン草や苔が顔を出していた

 

「うわぁ……本当に『ただの廃校舎』って感じっすね。今にもお化けが出てきそうっす……」

 

ヘルタが周囲を見回しながら、ゴクリと生唾を飲み込んだ

 

「昔あった校舎……データによると、少なくとも数十年前にはすでに放棄されていたようです」

 

ネカがタブレットを操作しながら補足する

 

「キヴォトスの建築基準の旧規格で作られており、主要な鉄骨フレームは残っていますが、外壁や床面の経年劣化が著しいですね。落石や床抜けのリスクが高いです」

 

「よし。ネカの言う通り、かなり老朽化が進んでいる。各自、警戒を怠るなよ。まずは1階の主要エリアから構造強度のスキャンと、安全確認を行う」

 

レイカの指示のもと、一行は崩れかけた正面玄関から廃校舎の内部へと足を踏み入れた

 

ギシ……ギシ……

 

踏みしめる足音が、静まり返った廊下に寂しく響き渡る

荒れ果てた廊下には、倒れた机や腐食したロッカー、破れかけたプリント類が散乱していた。かつてここで多くの生徒たちが過ごしていた気触れが、化石のように残されている

 

「うーん、1階のメイン廊下は柱に目立った亀裂はありませんね。補強フレームを入れれば、十分に再利用可能かと思います」

 

ネカが小型のスキャナーを壁に当てながら、真剣な表情でデータを記録していく

 

「自分も警戒中っす!……あ、見てください先生! 昔の黒板とチョークが残ってるっすよ!」

 

ヘルタが教室の入り口から顔を出し、興味津々で中を覗き込む

 

「コラ、ヘルタ。むやみに備品に触るなよ。埃が舞うし、重い棚が倒れてくるかもしれない」

 

「分かってるっすよリーダー! 触ってないっす、見るだけっす!」

 

先生は優しく苦笑しながら、廊下の天井や足元を観察していた

 

「でも、作り自体はしっかりしているね。当時の生徒たちが大切に使っていたのが伝わってくるよ。ここを改修してネクストライの新しい施設にできたら、きっと素敵な場所になるね」

 

「ああ。ミヤカたちの土建部に渡せば、あっという間にピカピカの新校舎に生まれ変わらせてくれるはずだ。そのためにも、俺たちがしっかり危険箇所を洗い出さないとな」

 

レイカは周囲を鋭い視線で調べながら進む

『ゼロモーメントポイント』の安全装置を解除し、いつでも射撃できる体制を整えていた。キヴォトスにおいては、廃墟=不良生徒や治安維持用の野良ロボットの溜まり場というケースが極めて多いためだ

 

「1階の奥、中央ホールへ続く扉があります。ネカ、中の強度はどうだ?」

 

「あ、はい! 今スキャンします……ええと、中央ホールは吹き抜けの構造になっており、床面積がかなり広いです。ただ……地下空間が存在するようで、床下の空洞率がやや高めに出ていますが……」

 

「地下空間? 図面には載っていたか?」

 

「いえ……旧図面には地下室の記載はありません。おそらく、当時の倉庫か機械室として増設されたものかと……」

 

「ふむ……長年放置された地下室か。湿気で床が弱っている可能性があるな。みんな、足元に注意して進もう」

 

先生の呼びかけに、全員が「はい!」と頷き、扉を押し開けて広大な中央ホールへと足を踏み入れた。

 

 

 

中央ホールは、天井の割れ目から差し込む光の筋が埃の粒子をキラキラと輝かせる、どこか神秘的ですらある広大な空間だった

 

「おお〜! 広〜いっす! ここならちょっとした室内訓練場にできそうっすね!」

 

ヘルタがテンションを上げて、ホールの中心へと勢いよく歩みを進める

 

「ヘルタ、待て! 一人で先行するなと言っただろ!」

 

レイカが注意しようとした、その瞬間だった

 

メキメキメキッ……!

 

不気味な、乾いた破壊音がホールの中心から響き渡った

 

「え……?」

 

ヘルタが足を止める。彼女が踏みつけた床のタイルに、蜘蛛の巣状の細かい亀裂が一気に広がっていく

 

「仕掛け罠……!? いや、違う! 床の構造自体が限界を迎えているんだ!」

 

ネカが叫び、手に持っていたタブレットから真っ赤な警告音が高らかに鳴り響いた

 

「危険です! このホールの真下、広大な空洞になっていて、長年の地下水浸食で支持構造が完全に腐食しています! わずかな衝撃でもホール全体が崩落します……!」

 

「なっ……!? 全員、今すぐ入口へ引き返せ!」

 

レイカが叫ぶのと同時に、先生が素早く手を伸ばした

 

「ヘルタ、戻るんだ!」

 

「は、はいっす……! うわっ!?」

 

ヘルタが踏み出そうとした瞬間、すでに限界を迎えていたコンクリートの床が、耐え切れずにガラガラと音を立てて崩れ始めた

 

「きゃああっ!?」

 

「ヘルタ!」

 

ヘルタの体が崩落する床とともに下へと傾く。それを見た先生は、躊躇することなく崩れる床へと飛び出し、ヘルタの手を強く掴み引き寄せた

 

「先生!? 危険ですっ!」

 

ネカが悲鳴を上げる。しかし、先生がヘルタを抱き寄せたことで、局所的に大きな荷重が集中してしまった

 

バリバリバリガシャーンッ!!!

 

「「「きゃああああああっ!!?」」」

 

崩落は一箇所にとどまらず、連鎖反応を起こしてホール全体の床がドミノ倒しのように一瞬で崩れ落ちていった

 

「くそっ! 間に合えええええっ!!」

 

レイカは瞬時に己の神秘『絶対加速』を発動させた

運動エネルギーの基準点を再定義し、空気を蹴るような超絶的な初速で崩壊する床を駆け抜ける

ネカの襟首を掴んで抱え上げ、同時に落下していく先生とヘルタの手を掴もうと腕を伸ばす

 

しかし——

 

「地面が……全滅してやがる……!?」

 

崩壊した床の下に広がっていたのは、単なる倉庫や機械室ではなかった

それは、底が見えないほど深い、未知の広大な「暗黒の大穴」だったのだ

 

足場を完全に失い、重力に従って全員の体が暗闇の底へと引きずり込まれていく

 

「リーダーっ!!」

 

「レイカ先輩っ!!」

 

「全員、俺から離れるなっ!! 先生を庇え!!」

 

レイカは空中体勢を立て直し、落下する先生とヘルタ、ネカの体を強引に自分のもとへ引き寄せ、しっかりと抱きしめた

 

激しい風切り音が耳を刺し、上方の光が急速に遠ざかっていく

響き渡る悲鳴と、崩落する瓦礫の激しい轟音

 

ただの設備拡張調査のはずだった廃校舎。その足元に隠されていたのは、キヴォトスのどの地図にも載っていない、暗黒のラビリンス(地下迷宮)の入口だった——

 

「うおおおおおおおおっ!!!」

 

レイカたちの叫び声とともに、調査隊の一行は真っ暗な闇の底へと、滑落していった

 

 




イベントストーリ設定ー
ラビリンス・オブ・エクプレス

実装生徒
赤坂レイカ ☆3
霧状ヘルタ ☆3
天笠ネカ  ☆1(配布生徒)

ネクストライから調査同行の依頼がシャーレに届く……
どうやら新しい開発区域の確認の為に廃校舎を探索するためらしい……
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