入学式&開校式から1ヶ月後
「うーむ……」
このネクストライスクールの創設者であるレイカは生徒会長から降り、生徒会の役員の一人として学園の更なる発展の為に尽力を尽くしており、アリカやミナサも、生徒会との交渉や各部活動への根回しに力を尽くしていた
「この学園の特色を何かつけないとしっくりこないんだよな……」
「あー……ゲヘナの自由と混沌、トリニティの伝統と神秘、ミレニアムの先端科学……最たる例ですからなー……」
現生徒会長となった西条ハレカ(前世が市長や国会議員という経歴持ちでかなりの手腕を誇る)が、デスクの上で組んだ手にアゴを乗せながらそう返す
「俺らの学園は何を特色にすれば………」
とそんな事を考えていると……
ドアを勢いよく開け、泥と汗にまみれた作業着姿の生徒が一人駆け込んできた
「すみません会長! リーダー! 校舎裏の旧地下防空壕跡の掘削現場から、未知のオーパーツが見つかりました! 前世で古物や考古学に詳しかったやつらが見ても、見たことない代物です!」
「何!? 未知のオーパーツ?」
ブルアカの世界にはオーパーツと呼ばれる物があるが、ゲーム内では成長材料として使われている……
まぁ、俺達からすれば必要な物でもあるので戦闘を中心に行う生徒に集めているのだが……
「ちなみにここでの知識があるやつも知らないものか?」
「はい!その人達もゲーム内で見た事無いって騒いでました」
ゲーム内でも見た事の無いものとなるとそれこそ原作知識が生かせない……
だからといってそれを放置する事は出来ないのだが……
「!! 閃いた! それを安全に回収しよう! うちの特色の鍵になるかもしれん!」
「分かりました、すぐに回収班を回すように! くれぐれも慎重にな!」
話を聞くと生徒会長のハレカがすぐに回収するよう指示を出した
厳重にケースに収められ、生徒会室へと運ばれてきたそれがレイカ達の前に置かれる……
それは、鈍い銀色の金属光沢を放つ正十二面体の結晶体だった。表面には見たこともない幾何学模様が刻まれ、かすかに脈動するような淡い青い光を帯びている
「確かに見たことがねぇな……。ここで出土したんだろう? 前の学校の資料やこのエリアの古い記録には何か残ってないのか?」
「それが、調べてみるとそのような事は一切……」
そういわれ、どうしようか悩んでいると……
元・研究者の青花ヒバナがタブレットを操作しながら「連邦生徒会のアーカイブや既存のどの学園のデータベースにも記載のない遺物です」と補足する
完全に歴史から抹消されているか、記録すら残らないほど昔の代物
「……なぁ、これ研究して我が校独自の技術として学園に役立つものを作れるか?」
俺の問いに、眼鏡を押し上げた少女――前世で最先端の物理学と材料工学を修めていた元研究者、青花ヒバナが薄く笑みを浮かべた
「面白いテーマですね。キヴォトスの神秘と異世界の物理法則が交差するサンプルとして、十分すぎるほどの価値があります。……すぐに技術チームを編成しましょう」
こうして、ヒバナを最高責任者とするネクストライスクールの第一回技術革命
――秘匿解析プロジェクトが動き出した
解析の舞台となったのは、校舎地下深くに眠っていた旧シェルターを改修して作った中央技術研究所
ヒバナの指揮のもと、前世で精密機械の設計に携わっていた元大人たちや、SFメカのロマンに精通した元高校生たちが結集した
「ヒバナさん! この結晶体、微弱な高周波電流を流すと、表面の幾何学模様に沿って特殊な力場が発生します!」
「やはりね。……では電圧の波形を特定周期で変化させてごらんなさい」
白衣を羽織ったヒバナが白板に流麗な数式を書き連ねていく。元研究者ならではの冷徹かつ正確な分析力と、キヴォトスの理論を超越した発想力がプロジェクトを力強く牽引していた
「なっ……! 結晶体と接触している金属の相(フェイズ)が劇的に変化した!? 分子配列がリアルタイムで組み換わっています!」
「相変化を起こした金属装甲……実体弾の打撃や熱エネルギーを完全に拡散・無力化しています! まるであのロボットアニメの装甲みたいだ!」
「ふふ、素晴らしいわね。ですが全身を覆う装甲は今の我が校の電力インフラでは消費が激しすぎるわ。まずは取り回しやすい大型シールドとして設計をまとめましょう」
ヒバナはさらに、解析データから得られた余剰エネルギーの波形を指でタップした。
「それから、相転移の際に生じるこの過剰なエネルギー……捨てるのはあまりに美しくないわ。電磁誘導の加速器へダイレクトにバイパスしなさい」
「えっ……それって、手持ちサイズでありながら戦車砲並みの初速を叩き出す電磁投射砲……つまり、レールガンのエネルギーソースに流用できるってことですか!?」
「そういうことよ。技術の効率的運用こそが、私たちの武器になるわ」
連日連夜の解析と試作を経て、ついに地下研究所に歓声が響き渡る
ヒバナの手によって完成したのは、二つの画期的な試作兵装
普段は無機質なグレーだが、通電時に鮮やかなカラーへと相変化し実体弾を完全に無力化する相転移シールド
そして、オーパーツの過剰エネルギーを一気に開放して叩きつける、超高威力の個人用携帯型レールガン試作1号
「おいおい、凄すぎるぞ……! これで実戦テストの準備は整ったな。誰に試運転を担当させる?」
俺の問いに、ヒバナは防衛組の推薦リストを一枚取り出した
「前世で特殊部隊の装備開発に関わっていた実戦派の転生者、志賀カエデに任せましょう。彼女なら、この試作兵装の限界性能を正確に引き出してくれるはずよ」
その頃、ネクストライスクールの敷地境界線付近
「へへへ……おい、ここが噂の新設校かよ?」
「連邦生徒会の横槍で独立認可されたらしいが、中身はただの野良の集まりだろ!」
外郭の防壁付近に、傭兵として雇われたカイザーPMCの黒服兵たちや、スケバン・ヘルメット団の過激派が押し寄せていた
「DU外縁部の廃校を勝手にリフォームして綺麗にしたらしいな。せっかく綺麗になったんだ、俺たちの新しいアジトにしてやるよ!」
下劣な笑みを浮かべ、防壁を爆破しようとするカイザーPMCの部隊
だが――
『――そこまでだ』
防壁の上に、完成したばかりのシールドと武骨なレールガンを構えた少女――志賀カエデが降り立つ
「不法侵入ならびに破壊工作……これより新兵装の運用試験を兼ねて排除を開始する」
「ガキが一人で調子に乗るな! 蜂の巣にしろ!」
カイザーPMCの重機関銃とアサルトライフルが一斉に火を噴いき、激しい弾幕がカエデを襲う
カチッ……バツンッ!!
カエデが左手に構えたシールドに電流を流した瞬間、グレーだったシールドが鮮やかな濃紺とシルバーへと相変化していく……
カン! カンカンカンッ!!
無数の実体弾頭がシールドに直撃するが、まるで豆腐に豆を投げつけたようにポロポロと足元へ崩れ落ちていく。衝撃すら完全に無効化されていた
「なっ……!? 弾が効かねぇ!? 盾の色が変わったぞ!?」
「シールドの相転移率、正常。実体弾のエネルギー拡散率100%……上出来だな、まったく傷ひとつつかねぇ」
カエデは驚愕するカイザーPMCの部隊に向け、右手の超大型の武器を肩に乗せ、構える
キィィィィィン……ッ!!
高圧コンデンサの充填音が夜空に響き、電磁コイルが青白いスパークを放つ
「次は……こっちの番だ。耐えてみな」
バシィィィィィンッ!!!!
雷鳴のような炸裂音とともに、青白い光の線が夜を切り裂いた
超音速で放たれたタングステン弾頭は、カイザーPMCが持ち込んでいた大型装甲車の分厚い正面装甲を容易く貫通し、そのまま背後の岩まで破壊する……
ドドドォォォンッ!!
「ひ、ひえぇぇぇっ!? 銃の威力じゃねえ! 装甲車が一発で吹っ飛んだぞ!?」
「手持ちサイズでレールガンをぶっ放したのかよ! 化け物だぁぁぁっ!!」
カイザーPMCの傭兵も不良どもも、完全に戦意を喪失して悲鳴を上げながら逃走していった
シールドの電流を切り、元のグレーの相に戻しながら、カエデは通信機へ応答する
「こちらカエデ。PSシールドおよび試作レールガン、実戦試験完了だ。……期待以上の性能だぞ、ヒバナ」
防壁の上からその光景を見守っていた俺やヒバナ、ツヨシやミヤカたちは一斉に歓声を上げた。
未知のオーパーツを用いた独自技術の開発――ネクストライスクールの圧倒的な特色が確立された瞬間だった
翌日
ゲヘナ学園、万魔殿
「……何? DU外縁部で暴れていたカイザーPMCの部隊が、たった一人に即座に鎮圧された……?」
ヒナから提出された偵察レポートを目にし、眉をひそめる雷帝
「はい……相手はネクストライスクールの防衛担当生徒。噂によると、実体弾を完全に無効化する『色が変わる特殊な大型シールド』を構え、個人携行型の『レールガン』で装甲車を一撃で粉砕したとのことです。その技術体系は、ミレニアムの科学ともトリニティの神秘とも異なる……全く未知のものです」
「……未知の技術、か。あの学園、単に人数が多いだけではないか」
雷帝は窓の外を見つめ、静かに呟いた
「ネクストライスクール……いよいよ無視できない存在になってたな……」
一方、トリニティ総合学園
「ほう……実体弾を弾く特殊シールドと、手持ち式の電磁投射砲ですか」
ティーパーティーのフィリウス派の首長は、送られてきた不鮮明な戦闘映像を凝視していた
「既存のどの学園の管轄にも属さない独自の技術……。もしあれが大量生産され、五百人の生徒全員に配備されるようなことがあれば、キヴォトスの勢力図が一変しかねませんよ」
「……警戒を強めなさい。あの『ネクストライスクール』がトリニティにとって敵となるか、味方となるか……見極める必要があります」
そして、ミレニアムサイエンススクール、セミナー室
「……ハァ? DU外縁部の新設校が『相転移装甲』と『個人携行型レールガン』……!?」
ホログラムモニターに映し出された調査レポートを見ながら、生徒会『セミナー』の幹部生徒は驚愕のあまり声を荒らげた
「ちょっと待ちなさい……! 実体弾の打撃を完全に相変化で無効化するシールドに、手持ちサイズの電磁投射砲……!? そんな技術、うちのエンジニア部や新素材研究部だって、個人兵装レベルでは実用化に至っていない代物よ! どこからそんなオーバーテクノロジーが出てきたの!?」
「データを見る限り、ハッキングによる技術盗用ではありませんね」
隣で端末を操作していたセミナーのデータアナリストが眉をひそめる
「カイザーPMCの装甲車が一撃で主砲ごと沈黙させられています。エネルギー波形を見る限り、ミレニアムの既存の理論体系とは根本的に異なるエネルギー力学系が用いられています……。おそらく、未確認の古代遺跡から掘り出した『未知のオーパーツ』を独自に解析・実用化した可能性が高いです」
「未知のオーパーツを自前で解析したっていうの……!? 冗談じゃないわ! ろくに実績もない新設校がそんな危険な代物を取り扱っていたら、いつ大事故が起きるか……! C&Cにも警戒態勢を取らせて、技術調査と監視を強化させなさい!」
幹部生徒は頭を抱えながら、デスクの端末へ猛烈な勢いで指示を打ち込み始めた
「身元不明の生徒が五百人現れただけでも大問題なのに、ミレニアムの科学力に対抗できる技術まで自前で確立するなんて……『ネクストライスクール』、一体何者なの……!?」
キヴォトスの三大巨大学園全てに強烈なインパクトと警戒感を与えたとも知らず、当のネクストライスクール生徒会室では……
「レイカさーん! ミレニアムの通信を傍受してた情報組から連絡です! 向こうの生徒会幹部が『ありえない!』って頭抱えて大騒ぎしてるそうですよ!」
アリカが端末を手に爆笑しながら飛び込んできた
「ハハハ! そりゃそうだろ、ミレニアムの理系エリートたちが血眼になってる技術を、ヒバナたちの知恵とカエデの実戦テストで先に形にしちゃったんだからな!」
ハレカも満足そうに紅茶を一口すする
大人の経験と、高校生の情熱。そして、ヒバナ率いる研究チームの手で未知のオーパーツから生まれた相転移・電磁技術
ネクストライスクールは、ただの避難所から、キヴォトスに確固たる地位を築く「一つの大勢力」へと進化を遂げたのだ
「さて……3年後、ゲーム本編が始まって先生がやってくるまでに、まだまだ学園を面白くしていかないとな!」
俺は腕を組み、不敵な笑みを浮かべながら最高の笑顔で青空を見上げた
転生者たちの青春ストーリーは、新たな技術と無限の可能性を胸に、どこまでも加速していくのだった
あとがき
ミスって早く投稿してしまった………
まぁ、それは置いておいて……本作のネクストライスクールについての立ち位置は転生者のみの学園として機能する予定です
なので、転生者以外は基本的に入学できないような仕組みになっています