番外編➀ 銃砲店 ガンショット・ミト
キヴォトスの中枢、様々な機関が交差する大通りから少し外れた一角
連邦捜査部「シャーレ」が置かれているDU地区、そのシラトリ地区にネクストライスクールが所有する巨大なオフィスビルがそびえ立っているが、そのすぐ近くの一等地に、ひっそりと、しかし確かな存在感を放つ一軒のガンショップがあった
店の名は、ガンショット・ミト
ネクストライスクールの3年生であり、優れた銃器の目利きと専門知識を持つ生徒・海抜ミトが営む、知る人ぞ知る本格的なガンショップである
キヴォトスの生徒たちにとって、銃器は自身の神秘を具現化し、身を守るための最も身近な相棒だ。しかし、この店に足を踏み入れる客層は、何も普通の学生ばかりではない
マニアックなカスタムパーツを求めるメカニック、一風変わった実戦用火器を探す傭兵崩れ、そして――時折、この街の平穏を守るために奔走する「大人」の姿もあった
カランコロン、と心地よいドアチャイムが響く
「いらっしゃいませー! ガンショット・ミトへようこそ……っと、おや?」
カウンターの奥から顔を出したミトは、来店した客の姿を見て目を丸くした
そこに立っていたのは、白い制服を羽織った見慣れない大人の男性――シャーレの「先生」だった
「……って、マジか。噂のシャーレの先生じゃないっすか! 本物を見るのは初めてっすね!」
ミトは全く物怖じすることなく、非常にフレンドリーな、まるで長年の知り合いかのような軽いノリでカウンターからヒョイと飛び出してきた
「あ、ああ、初めまして。ミト……でいいのかな?」
先生が少しタジタジ-しながら挨拶を返すと、ミトは満面の笑みで大きく頷いた
「そうっすよ! ミトでいいっすよ、先生! いやー、まさかウチの近所の店に先生が来てくれるなんて光栄っすね。で、今日は一体どうしたんっすか? 何か物騒な事件の巻き添え食って、急ぎでアサルトライフルでも調達しに来た感じっすか?」
「いや、そういうわけじゃないんだよ……」
先生はやれやれといった様子で苦笑いを浮かべ、事の経緯を語り始めた
ことの発端は、連邦生徒会のオフィスでのことだった
連邦生徒会の実務を一身に背負う七神リンから、「先生、あなた自身には強力な神秘も、キヴォトスの生徒のような圧倒的な防弾アノマリーもありません。どれだけ生徒が守ってくれるとはいえ、最低限の護身用くらいは常に携帯しておくべきです」と、非常に強いトーンで忠告されてしまったのだ
「……で、リンちゃんに『自分に合った護身用の銃をどこかで調達してきてください』って半ば強制的に言われてしまってね。ちょうど、シャーレの当番に来ていた生徒の一人が、『先生、新しく近くにできたガンショップが品揃えいいらしいですよ』って教えてくれたから、散歩がてら寄ってみたんだ」
先生がそう説明すると、ミトは「なるほどねー」と腕を組んで納得したように頷いた
「なるほどねぇ……そりゃ、ここキヴォトスじゃ、露出狂より珍しいですからねぇ……銃を持たない人……」
「え?そこまでなの?」
先生は驚きながらそう言うが、ミトは「そうっすよ!でも、まぁコレでもうそんなことないっすね!」とだけ返して話を切り替えた
「で、肝心の要望っすけど……。先生、話を聞く限りだと『なるべく銃は持ちたくない』『でも護身用に携帯しろって言われたから、仕方なく持っておく』って感じっすよね?」
「うん……正直、ポケットに入っていても重くないし、邪魔にならないものがいいんだが……」
先生が申し訳なさそうに希望を伝えると、ミトは「オッケーっす! それなら、ウチに任せるっすよ!」と頼もしく胸を叩いた
ミトはトコトコと店の奥のバックヤードへ引っ込み、数分後にいくつかの小さなケースを抱えて戻ってきた
「はい、これっす!」
ミトがカウンターの上にドンと並べたのは、大柄でド迫力のアサルトライフルやサブマシンガンとは全く異なる、小型サイズの拳銃たちだった
「先生みたいな、普段は銃なんて触らない一般の人間が、コートの内側やポケットに隠し持っていても絶対にバレない、かつ日常の邪魔にならない……いわゆる『コンシールドキャリー(秘匿携帯)』に特化した小型ピストルたちっすよ」
カウンターの上に並んだのは、現代の裏社会や護身用市場で選りすぐられた名銃の数々だった
「まず一つ目はこれ、『スミス&ウェッソン モデル642』っすね。いわゆるコンシールメント向けの小型リボルバーっす。構造がシンプルで、いざという時にポケットの中でそのまま撃てるっていう利点があるっす。暴発の心配も少ないから、初心者には扱いやすいっすよ」
ミトが指し示したのは、ハンマーが内部に隠されたマットシルバーの小型リボルバーだった
「そして二つ目が、『グロック43』っすね。ストライカー方式のポリマーフレームオートで、薄型なのに装弾数がそこそこある。現代のコンシールドの王道って感じっすね。信頼性も抜群っす」
黒く引き締まったスリムな自動式拳銃を、ミトは手慣れた手つきで軽くスライドを引いて見せる
「最後に、これっす……『ルガー LCP』っすね。他の2つと比べて威力は無いっすが、扱いやすさはいいと思いますよ?」
先生は並べられた三つの銃をじっと見比べ、腕を組んで真剣に悩み始めた
「リボルバーは確実性があるけれど、かさばりそうだな……。グロックは高性能だけど、もう少し小さめの方が……」
先生がうんうんと唸っているのを見て、ミトはニヤニヤしながらさらに言葉を重ねる
「ちなみに、ぶっちゃけた話をすると、先生が前線に立ってカイザーの兵隊と撃ち合うわけじゃないっすからね。あくまで『万が一、急に襲われたときに一発か二発当てて、相手がビビってる隙に逃げるための保険』っす。だから、威力がどうこうよりも、毎日ポケットに入れていても苦にならない『軽さと小ささ』を最優先した方が絶対にいいっすよ!」
ミトのその現実的で的確なアドバイスを聞き、先生は大きく息をついた
「……なるほど。確かにその通りだね。護身用で一番大事なのは、重くて持ち歩かなくなってしまうことだ……」
先生は決心したように、その中で最もコンパクトな小型オートマチックに手を伸ばした
「これにするよ。ルガーのLCPをお願い」
「おっ、いいチョイスっすね! 目の付け所が分かってるっす!」
ミトはパッと明るい声を上げると、専用のコンパクトなホルスターと予備のマガジン、そして護身用の.380ACP弾の箱を素早くテキパキと専用のケースに詰めていく
「毎度ありっす! お値段の方の処理は……まあ、先生とウチの学園は色々深い繋がりがあるし……破格のディスカウントにしとくっすよ!」
「え、いいのかい? ありがとう、助かるよ」
「いいってことよ! 困ったときは互い様っすからね」
ミトは爽やかな笑顔で包んだ銃のケースを先生に手渡した
こうして、予期せぬ形で人生初のマイガンを手に入れた先生は、少しだけ重みの増したコートのポケットを押さえつつ、ガンショット・ミトを後にしたのだった
街の夕暮れが近づく中、ネクストライスクールのビル群とシャーレの間を吹き抜ける風は少し冷たかったが、先生のポケットには、予測不能なキヴォトスの日常を生き抜くための、小さくて確かな「保険」がしっかりと収まっていた――
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番外編② アーティファクト研究部の一角で……
赤坂レイカ――彼女はネクストライにおいて、いや転生者達にとって救いの手を差し渡し、道を示した人物と言っても過言ではなかった。ネクストライスクールを実質的に創設し、現場の最前線で戦い続ける彼女の姿は、多くの生徒たちから絶大な信頼を寄せられている
そんな彼女を支えようと、アーティファクト研究部のとあるグループが、日夜研究室にこもり、レイカ専用の装備を制作しようと動き出していた。
ある日の放課後、アーティファクト研究部の一角。散らばった設計図とタブレットの光が飛び交う中、新装備をどうするかという白熱した議題が持ち上がっていた
「いやさ、リーダーの機動力をさらに底上げするなら、やっぱり高推力のジェットパックしかないっしょ! 空中から奇襲をかけるとか最高じゃない?」
グループの一人が声を弾ませて提案する。しかし、すぐに別の部員が首を横に振った
「ダメダメ、それじゃレイカさんの『絶対加速』の神秘と負荷がかかりすぎて、かえって制御が難しくなる。もっと火力を重視して、専用のリニアランチャーとかどうだ? X045みたいな重火器とはまた違う、取り回しのいいやつ!」
ジェットパック、専用リニアランチャー、さらには高出力のシールド展開装置など、次々と意見が飛び交うが、どれも全員が「これだ」と一致する決定打には欠けていた。議論は膠着状態に陥りかける
その時、資料や試作回路の山を整理していた部員の一人が、ふと手を止めて呟いた
「待てよ……。そういえば、ヒバナ部長たちが開発した『ミスティックナイトロ・システム』の蓄積データがあったよな?」
その言葉に、室内の空気がわずかにピリリと引き締まった
『ミスティックナイトロ・システム』。それは、レイカの持つ固有の神秘――単に「速く走る」だけでなく、物体の運動・速度・慣性などに関する基準そのものへ干渉するという規格外の神秘――の負担を軽減し、安全かつ安定して運用するために作られた腕時計型の専用装置である
「ミスティックナイトロ・システムのログには、リーダーがこれまで使ってきた軌道制御や慣性干渉のデータがみっちり詰まってる」
提案した部員は、ディスプレイに映し出された複雑な数値のグラフを指し示した
「リーダーの神秘ってさ、自分の銃の銃弾を曲げる芸当をやってのけるだろ? ならさ……逆に考えてみろよ」
「逆に?」
「あぁ。相手が撃った弾丸を、このシステムと神秘の応用で曲げたり、弾道から逸らしたりできる装備が作れねえかなって話だよ」
その瞬間、研究室に静寂が訪れた。あまりにもぶっ飛んでいながら、しかし技術的根拠の一端を見据えたアイデアだった
レイカの「絶対加速」の基準干渉能力と、ミスティックナイトロ・システムで蓄積された膨大な軌道データ。それらを組み合わせれば、攻撃だけでなく、完全なる防御・軌道干渉を両立する超常的な装備が形になるかもしれない
数秒の沈黙の後、誰かが吹き出したように笑い声をあげ、そして一斉に賛同の声が上がった
「それだ……! それなら、リーダーの負担を減らすっていう本来の目的にも合致するし、何より戦闘での選択肢が異常に広がる!」
「面白い! すぐにシミュレーションを回そう。アーティファクト解析のデータも全部突っ込むんだ!」
こうして、赤坂レイカの新たな可能性を切り拓く「専用装備」の具体的な制作プロジェクトが、満場一致で動き出すことになったのだった
あとがき
なぜ本編じゃないのかって?
本編で修正箇所が何ヶ所が出来まして、以前ボツにしていたレイカ達以外のネクストライの生徒に着目を当ててみよう!と言う事で書いてボツになっていたものを修正して投稿しました!
本編は次投稿出るように頑張りますので宜しくお願いします!
キャラ設定
海抜ミト
元自衛官兼サバゲーマーだった転生者で、身長がレイカとほぼ変わらないぐらいで紺色のストレートヘア
自身の銃である、『カスタムズロック』は豊和工業のM1500(ORYXのストック)が元になっている
アーティファクト研究部のとあるグループ
これまでいろいろな試作品を作ってきており、あの対城刀ランゲージフィルムを作るきっかけをだしたのもこのグループ