転生者共の学園生活   作:矢守龍

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Vol.2 ティーパーティーとの会談

純白の大理石が輝くトリニティ・総合学園の本部。その厳かなロビーへと足を踏み入れた赤坂レイカは、隣を歩く佐藤アリカと高橋ミナサに声をかけた

 

「ここがトリニティの本丸か。相変わらず趣味がいいと言うか、どこもかしこも白くてまぶしいな」

「ほんまやなぁ。なんだか空気がピシッとしてて、ウチみたいな雑多な人間がおると浮きそうやわ」

 

金髪のツインテールを揺らすアリカが周囲をキョロキョロと見回す一方で、黒髪ボブのミナサは「しっ、アリカ、声が大きいですよ」と穏やかに窘めつつ、その異常なまでに研ぎ澄ませられた聴覚をわずかに働かせて周囲の環境音を分析している。ミナサの神秘である拡張された聴覚は、この広大な施設内で行き交う人々の足音や微細な機械音すら正確に捉えていた

 

「ま、今回は喧嘩を売りに来たわけじゃない。向こうの出方を見極めて、サクッと話を終わらせようぜ」

 

そうレイカが前を向いた、その時だった

広々としたロビーの通路の向こう側から、見覚えのある制服を身にまとった一人の「大人」が歩いてくるのが目に入った。コートを羽織り、真摯な目をたたえたその男――シャーレの「先生」だった

 

「ん……?」

「あ、先生やん!」

 

アリカが声を上げようとしたのを、レイカがサッと手で制して足を止める。奇遇にも、ティーパーティーのロビーですれ違う形となった

 

「あれ、レイカにアリカ……?」

先生はレイカたちの姿を認めると、足を止めてわずかに首をかしげた。本編開始直後のあの混乱の最中、シャーレの前で共闘して以来の顔合わせである

 

「よう、先生。こんなところで奇遇だな。トリニティのこんなお高くとまった場所になんの用だ? まさかこんな綺麗なところでサボりでも探してたのか?」

 

レイカがボーイッシュな笑みを浮かべて声をかけると、先生は苦笑しながら頭をかいた

 

「いや、サボりじゃないさ。実は……成績不振の生徒たちの『補習』を頼まれてね。これからその面談に向かうところなんだ」

「補習……ねぇ」

 

その言葉を聞いた瞬間、レイカの脳裏で前世の記憶と現在の状況がカチリと噛み合った

 

(――なるほど。いよいよ「エデン条約編」の表舞台が動き出してるってわけだ。補習授業部……あの問題児たちの面倒を見させられている最中ってわけか) 

 

レイカが内心で状況を整理していると、ミナサが静かに耳元で囁いた

 

「レイカ、遠くの足音が近づいてきてる。……どうやら、こちらに向かっている人たちがいるみたい」

 

「おっと、そうか。先生、忙しいところ引き留めて悪かったな。こっちもこれからティーパーティーの連中と面会なんだ。お互い、厄介事に巻き込まれないように頑張ろうぜ」

 

「あぁ、そうだね。君たちも気をつけて」 

 

先生と短い言葉を交わし、すれ違うようにして別れたレイカたち。原作の大きな歯車が着実に回っていることを肌で感じつつ、レイカたちはティーパーティーの控室へと急ぐのだった

 

 

 

トリニティの要人が集まる重厚な扉の前に到着すると、案内役のモブ生徒が恭しく一礼して扉を開けた

 

通されたのは、ステンドグラスから柔らかな光が差し込む、気品に満ちたテラス風の応接サロンだった

 

中央に置かれた優美なティーテーブルには、すでに二人の少女が腰掛け優雅に紅茶を傾けていた。

一人は、鮮やかなピンク色の髪に不敵で魅惑的な笑みを浮かべた『ティーパーティー』のホストの一人、聖園ミカ

 

もう一人は、物静かで知的な雰囲気を纏う、ティーパーティーのもう一人の実力者、桐藤ナギサだった

 

そして、用意された優美な椅子の中で――なぜか、向かい合うように2つの席がぽっかりと空いていた

 

「お久しぶりです、赤坂レイカさん」

「あぁ、久しぶりだ桐藤ナギサ」

 

ナギサがカップをソーサーに置き、穏やかながらも鋭い観察眼を宿した瞳でレイカたちを見据える。ミカもまた、興味津々な様子でふにゃりと柔らかい笑みを向けてきた

 

しかし、用意された空席は2つ。ここに来ているのはレイカ、アリカ、ミナサの3人である

 

レイカは一瞬眉をひそめたが、すぐに機転を利かせて後ろを振り返った

 

「アリカ、ミナサ。お前らは俺が中にいる間、トリニティの中庭やロビーでも散策して時間を潰しててくれ。変に絡まれたら面倒だし、無線で連絡を取り合えるようにしとけよ」

 

「了解や! じゃあミナサ、ちょっとそこの可愛いお菓子でも探して回ろか」

 

「はい、分かりました。レイカ、あまり無理な交渉にならないように気をつけてくださいね」

 

アリカとミナサがテラスの扉から引き返し、トリニティ内部の散策へと向かったのを確認すると、レイカは一人で歩み寄り、空いていた席の一つに堂々と腰を下ろした

 

 

 

レイカが優雅に足を組み、背もたれに体を預けると、ミカがくすりと笑った

 

「ふーん、付き添いの子たちは外なんだ? なんだか肝が据わってるというか、新興の学園のトップって感じがしないよね、レイカちゃんって呼んでいいのかな?」

「呼び方は好きにしてくれ、聖園ミカ。で、桐藤ナギサもだ。わざわざネクストライの現場責任者である俺を、こんな格式高いお茶会に引っ張り出したってことは……ただの挨拶や世間話じゃないはずだ。用件を話してもらおうか」 

 

レイカが率直に切り出すと、ナギサは優雅に紅茶を一口含んでから、ふぅと息をついた

その上品な仕草の裏に、隠しきれない政治的な重圧が滲み出ている

 

「……ふふ、遠回しな言い方は好まないようですね。さすがは、短期間でキヴォトスに『第四の学園』としての地盤を築き上げたネクストライの責任者、と言ったところでしょうか」 

 

ナギサは真剣なまなざしをレイカに向け、本題を切り出した

 

「単刀直入に申し上げます。私たちがあなたを招いたのは――間近に迫ったゲヘナ学園との『エデン条約』締結、およびそれに伴う両校の調停において、第三者としての『仲介』を担っていただきたいのです」

 

「……ゲヘナとトリニティの調停、ね」

 

レイカは予想していた通りの、しかし非常に厄介なワードが出てきたことに内心で舌打ちしつつも、表情には一切出さず、スッと目を細めた

 

「トリニティとゲヘナと言えば、水面下で犬猿の仲だろ。その歴史的な条約の締結に向けて、なんでウチみたいな新参の新興学園に仲介を頼む必要がある? ミレニアム、あるいは連邦生徒会を通す選択肢だってあるはずだ」

 

 

ミカが頬杖をつきながら、どこか投げやりな、しかし核心を突くようなトーンで答える

 

「うーん、そこがミソなんだよねー。ミレニアムは中立を気取ってるし、連邦生徒会は今機能不全気味で頼りにならないでしょ? だからこそ、既存のどの派閥にも完全に染まっていない、独自の武力とオーパーツ技術を持つ『謎の第三勢力』――ネクストライの存在が、すごく都合が良いの」

「都合が良い、か。要するに、お互いの利害がぶつかり合う調停の場において、どちらの陣営からも完全にはコントロールできない『異物』を挟むことで、全体のバランスを取るための緩衝材にしたいってわけだろ」 

 

レイカは冷ややかに言い放った

ナギサは否定せず、静かにうなずいた

 

「ええ、その通りです。私たちはエデン条約の成功を何としても成し遂げなければならない。しかし、内部の強硬派や、ゲヘナ側の不穏な動きを抑え込むためには、既存の枠組みの外側から影響を与えられる存在が必要なのです。あなた方が持つ技術力や、これまでの独自の立ち回りは、その抑止力として十分に機能するはずです」

 

レイカはポケットに手を突っ込み、目の前の二人の少女を見据えた

 

原作知識を持つレイカにとって、「エデン条約」がどれほどの陰謀と悲劇の引き金になるかは痛いほど分かっている。そのドロドロとした権力闘争の渦中に、ネクストライという自慢の我が子のような学園をわざわざ引きずり込むのは得策ではない

 

だが――ここで無碍に断れば、ティーパーティーからの警戒を強められ、今後の独自行動に支障が出るかもしれない

 

「……話は分かった。ゲヘナとトリニティの調停の場に、ネクストライを『仲介役』として一枚噛ませたい、と。だが、タダ働きですべてを引き受けるほど、俺たちもお人好しじゃないぜ」

 

レイカは不敵な笑みを浮かべ、テーブルに軽く指を叩いた

 

「条件次第だ。ウチがその厄介な茶番に付き合ってやる代わりに、トリニティ側からもそれなりの『見返り』を用意してもらう。……さあ、どこまで好い条件を出せるかな、ティーパーティーの皆さん?」

 

ナギサが少し考える中、レイカは残っている空席について気になるといった様子で問いかけた

 

「おい、一つ気になったんだが……そこにある席。対面で用意されているのに、肝心の席がぽっかりと2つも空いている。誰かを待っているのか、それとも最初から数があっていないのか?」

 

レイカの指摘に、ナギサとミカはわずかに視線を交わし合う。ナギサは上品に紅茶のカップをソーサーに戻すと、静かに口を開いた

 

「……鋭いですね、レイカさん。実は、本来であればもう一名、私たちの同志である『ティーパーティー』のメンバーが同席するはずでした。その席こそが、今空いているもう一つの席です」

 

「百合園セイア……という子だよ。ただ、彼女は現在、体調が優れなくてね。あいにく病院で療養中なの」

 

ミカがどこか投げやりな、しかしどこか含みのあるトーンで付け加える

だが、レイカの脳裏に刻まれた原作知識が、その説明を即座に否定していた

 

(――まぁ、嘘だろうな。 確か原作じゃ、この時期のセイアは既に……何者かに襲撃を受けて、ミネに匿われているはず)

 

レイカは冷ややかな目をナギサとミカに向け、あえて踏み込んだ追撃の言葉を放った

 

「――本当に、ただの『体調不良』か? 入院しているってだけで、それ以上の何かがあったわけじゃないのか?」

 

その瞬間、優雅を装っていたナギサとミカの表情がわずかに凍りついた。微動だにしなかったナギサの指先がピクリと動き、ミカの不敵な笑みがわずかに引きつる

 

(……反応した。原作通り隠し通してたんだな………)

 

確信を得たレイカは、さらにハッタリを重ねる

 

「最近、トリニティの内部で妙なきな臭い動きがあるって噂を聞いてな。調べてみたんだよ……そしたら、ティーパーティーの一人が『何者かに襲撃を受けた』なんて物騒な話が、水面下で囁かれているらしいじゃねぇか」

 

もちろん、これはレイカが持つ原作知識から導き出した「推測によるハッタリ」に過ぎない。しかし、当事者である彼女たちにとっては、隠し通しているはずの最高機密に触れられたも同然だった

 

しばらくの沈黙が場を支配した後、ナギサは観念したかのように深く息を吐き出し、力なく首を振った

 

「……参りましたね。まさか、そこまでの情報がすでに外部の……それも新興学園であるあなた方の耳にまで届いているとは」

 

ナギサは覚悟を決めたように視線を上げ、真摯な声で語り始めた

 

「レイカさんの言う通りです……百合園セイアは、何者かによる襲撃を受けました。現在、彼女は……帰らぬ人となっています」

 

「えっ……!」

 

横にいたミカも、この時ばかりは複雑に歪んだ表情を浮かべ、俯いた。親友の死、そしてそれを隠蔽しなければならないティーパーティーとしての政治的立場。その重圧が、彼女たちの肩に重くのしかかっている

 

「そして……」ナギサは続ける

 

「現在、先生が担当している『補習授業部』。あれも表向きは成績不振者の救済ですが、実態は――トリニティ内部に潜む『裏切り者』、すなわちセイアさんを襲撃した犯人を見つけ出すための罠であり、調査網なのです」

 

ナギサはそこまで言い切ると、複雑な表情のままレイカを見つめた

 

「ですが、補習授業部に放り込まれた面々の問題児っぷりは本物です。彼女たちの成績不振も事実……だからこそ、先生という外部の人間を介入させることで、内部の膿を出しつつ、純粋な指導も行わせている……それが真相です」

 

すべての事情が繋がったレイカは、内心で舌を巻きつつも、冷静に思考を巡らせた

 

(エデン条約の裏で、すでにセイア暗殺と補習授業部の結成まで進んでいるってわけか。ドロドロしてやがる……だが、この情報を引き出したのはデカい)

 

レイカは腕を組み、わずかに考え込んだ後、ナギサとミカに向き直った

 

「事情は飲み込めた……だが、その重い秘密を俺に開示したってことは……それ相応の覚悟があるんだろ、桐藤ナギサ」

 

「ええ。私たちの事情をここまで見抜かれた以上、隠し通す意味はありません。……で、赤坂さん。先ほどの『仲介役』の件ですが、受けていただけますか?」

 

「条件付きだ」レイカはスッと目を細め、指を一本立てた。「ゲヘナとの調停における具体的な見返りや、そっちとの利害調整は後日ゆっくりすり合わせるとして――まずは、今回の件の『手付け』として、一つ頼みを聞いてもらう」

 

「手付け、ですか? 一体どのような……」

 

「トリニティ内にある『図書館』および関連資料の閲覧権利をくれ。ウチのアーティファクト研究部が追っているオーパーツの解析や、とある技術的な裏付けを調べるために、トリニティの古い文献や技術資料に目を通しておきたいんだよ」

 

ナギサとミカは「図書の閲覧権利?」と、意外そうな表情で顔を見合わせた。もっと具体的な武力支援や経済的な要求が来ると思っていた彼女たちにとって、それは拍子抜けするほど知的で、かつ実用的な要求だった

 

「……そんなことでいいのですか? トリニティの蔵書や記録の一部には秘匿指定されているものもありますが、あなたがたが仲介を引き受けてくれるのであれば、特別に閲覧許可のパスを発行しましょう」

 

「助かる。細かい手続きや認可のデータは、ウチの生徒会長の方からそっちの窓口に連絡させる」

 

レイカは立ち上がり、ポケットに手を突っ込んで不敵に笑った

 

「じゃあ、今日のところはここまでだ。お互い、厄介事を抱えてる身だしなみ、長居は無用だろ。残りの条件のすり合わせは、また後日連絡させてもらう」

 

「分かりました。ご足労いただき感謝します、赤坂レイカさん」 

 

ナギサとミカに見送られながら、レイカは重厚なテラスの応接サロンを後にした

 

ステンドグラスの光が差し込む廊下を歩き、トリニティの本部ロビーへと戻っていく。外で待っているはずのアリカやミナサと合流し、早くこの白亜の聖地から引き揚げようとした、その時だった

 

 

 

――視線を感じる

 

背筋にうっすらと走る悪寒のような感覚に、レイカはピタリと足を止めた

 

(ん……? 誰だ、この見られているような感覚は……ティーパーティーの連中か、それとも――)

 

レイカは足音を殺し、視線が向けられた廊下の曲がり角の方へと静かに歩み寄った

 

白い柱の陰に、一人のトリニティの制生徒が佇んでいるのが目に入る。彼女は逃げる様子もなく、じっとレイカの姿を見つめていた

 

レイカが近づくと、その生徒は怯える様子もなく、むしろどこか面白がるような、不敵でミステリアスな笑みを浮かべて軽く手を挙げる

 

「おや、もうお帰りですか? 赤坂レイカさん」

 

見慣れない、しかしどこか独特の存在感を放つその生徒は、レイカの目の前で優雅に一礼し、名を告げた

 

「はじめまして……と言った方がいいのかな。私は、夢見チト。あなたに……『招待状』を送らせてもらった者です」

 

 




Q&Aコーナー
メッセージ内で届いた質問などの回答を書かせてもらってます

Q.現在アビドスってどうなってるの?
A.原作よりも借金返済が出来ており、かなりの土地を買い戻してます

Q.ネクストライとの交流がある学園って何処?
A.アビドス、ミレニアムにハイランダー、そして以外にもオデュッセイアです

Q.オデュッセイアはどうして?
A.第3章終了後に出す、オリジナルイベントストーリーにて書く予定です

こんな感じで受け付けておりますので感想かメッセージにてお願いします!

お気軽に評価や感想をいただけると、執筆のモチベーションにもなりますのでよろしくお願いします!
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