ネクストライスクールの生徒会室に、佐藤アリカ、高橋ミナサ、そして天笠ネカの三人が集められていた。室内には重たい沈黙が漂っており、その中心に立つ赤坂レイカは、腕を組んだまま真っ直ぐに三人の顔を見据えた
「――というわけで、お前たち三人には、トリニティ総合学園の『補習授業部』への出向を命じる」
レイカの口から飛び出した予想外すぎる指令に、アリカはすぐさま声を荒らげた
「はあ!? 補習授業部って、あの……! なんでウチらがそんな、他の学校の成績不振者が集まるとこに行かなあかんねん! 全然意味分からんし、絶対イヤやわ!」
アリカの抗議に対し、レイカは冷静に、しかし揺るぎない口調で返す
「不満があるのは分かるが、これはただの厄介事じゃない。お前、最近色んな部活の手伝いや何やらで、肝心の学業のほうがだいぶ危うくなってただろ。これはその挽回のチャンスとして、俺が向こうのティーパーティーと交渉して取り付けた正当な理由付きの出向だ」
「うっ……それは、その……」
図星を突かれたアリカが言葉に詰まり、気まずそうに視線を泳がせる。その隣で、ミナサが静かにため息をつきながら自分の頭を軽く叩いた
「……レイカさんの言う通り、確かにあの子は最近あちこちに顔を出していて勉強がおろそかになっていました。……それに、人のことは言えません。私も、先の期末で苦手だった一部の教科をやらかしてしまった自覚がありますから……」
ミナサが自身の不手際を素直に認めると、最後に控えていた1年生のネカが、丸眼鏡のポジションを指で直しながらレイカの目をじっと見つめた
ネカの脳裏には、ブルーアーカイブのプレイヤーとして知り得た「補習授業部」の過酷な内情がよぎる。しかし、目の前にいるレイカの真剣な瞳と、これまでの確かな歩みを思い返し、ネカは薄々感じていた納得の答えに行き着いた
「……レイカ先輩の考え、何となく分かりました。私、行きます。引き受けますよ」
ネカの静かな了承に続き、アリカも「……そこまで言うなら、しゃあないなぁ……」と渋々ながらも首を縦に振った。ミナサもそれに倣う。三人の了承をしっかりと確認したレイカは、短く頷いて指示を出した
「よし。話はまとまったな。明日、朝一番でトリニティへ向かえ。手続きはこっちで通してある」
そうしてその日のミーティングは解散となったが、部屋を出ていく他の二人と分かれた後、ネカだけが足を止め、レイカの後を追うように生徒会室の扉を叩いた
「……ネカか。まだ何か質問か?」
振り返ったレイカに対し、ネカは少しだけ真剣な面持ちで疑問を投げかけた
「レイカ先輩。どうしてそこまでして『補習授業部』に、いや――原作の大きな流れに積極的に介入するんですか? 私たちの目的は、このキヴォトスでネクストライスクールを大きくして、自分たちの居場所を守ることのはずじゃ……」
ネカの問いに、レイカは静かに息を吐き、二つの理由を挙げた
「理由は二つある。一つは、トリニティ内部で俺たちが動きやすくするための足場作りだ。以前、地下の旧防空壕から発見された、未知の神秘が詰まったタンクの調査を進めるためにも、表立ってトリニティの権力中枢や各組織に出入りできる身分は持っておいて損はないからな」
レイカはそこで言葉を一度区切り、さらに鋭い眼光を向けた
「そして2つ目の理由、こっちが本命だ。……お前も知っている通り、アビドスではゴリアテの数が原作より増加し、ワカモの襲来もあった。ミレニアムでも、エリドゥを覆うバリアやアヴァンギャルド君の配備数が跳ね上がるなど、俺たちが介入したことで原作の歯車はすでに狂い始めている。トリニティでも、この後間違いなく大きな事件が起きる。だからこそ、その中心地の一つである補習授業部の動きを内部から観察し、最悪の事態を防ぐのが目的だ」
レイカの緻密で先を見据えた意図を聞いたネカは、深く納得したように表情を和らげ、力強く頷いた
「……なるほど。そこまで先を見越して……分かりました。レイカ先輩の考えに私も全面的に賛同します」
ネカの納得の表情を見て、レイカはふっと肩の力を抜いた
「あぁ、頼む。……まあ、桐藤ナギサやティーパーティーの連中と水面下で条件を詰めるのは、なかなかに骨が折れる作業だったけどな」
レイカが苦笑交じりにそうこぼすと、ネカも小さく笑い返し、二人は翌日の準備に向けてそれぞれの任務へと戻っていった
――そして、次の日
約束通り、アリカ、ミナサ、ネカの三人はトリニティ・総合学園の敷地に足を踏み入れていた
補習授業部が合宿や起居に充てられているという、古びた旧校舎の棟。その目的地へと続く廊下を進み、いざ部屋の扉を開けようとアリカが手を伸ばした、その瞬間だった
カチッ――
足元から不穏な金属音が響き渡り、次の瞬間、アリカの足元で鋭い爆風と閃光が炸裂した
「きゃあっ――!?」
突然の罠の起動に、静かな校舎の廊下にアリカの悲鳴と硝煙の匂いが激しく立ち込めるのだった
突如として巻き起こった爆発の衝撃に、廊下には白煙と焦げ臭い匂いが立ち込めた
「い、いきなり何なんこれ!? 爆弾踏んだやん! 死ぬかと思ったわ!」
煤まみれになりながらツインテールを逆立てて怒鳴るアリカの声を皮切りに、扉の向こうから慌ただしい足音が近づいてくる
「いまの爆発音は……!? 大丈夫!?」
息を切らして駆けつけてきたのは、先日シャーレを立ち上げたばかりの「先生」だった
先生が現場に到着し、何があったのかと青ざめながら尋ねるが、当事者であるアリカは「いや、ウチが来た時にはすでに足元がカチッて……!」と涙目になりながら頭を抱えている
ミナサも拡張された聴覚で周囲の音を警戒しつつ、「私たちも何がどうなっているのか……」と戸惑いを隠せない様子だった
だが、そんな二人とは対照的に、ネカだけは丸眼鏡の奥の目を大きく見開き、冷や汗を流しながら固まっていた
(……これ、原作のあの罠だ! 補習授業部の合宿初日に仕掛けられていた、あの危険すぎるトラップ達だ……!)
原作知識を深く持っているからこそ、これがただの偶然ではなく、これから始まる地獄のような補習生活の幕開けであることに気づいてしまい、ネカは内心で頭を抱えて絶望に打ち震えていた
そんなトラブルの只中、どこか気だるげで淡々とした足音が響く
視線を向けると、そこにはお馴染みのガスマスクを装着し、純白の大きな羽をたたえた少女――白洲アズサがそこに立っていた
「……随分と騒がしいな」
アズサが平然と言い放つと、状況を把握した先生が思わずといった様子で声を荒らげた
「アズサ!? 玄関の罠、全部解除してなかったの!?」
先生の問いに、アズサは微動だにせず、むしろ当然と言わばかりに首を傾げた
「――? 最初の罠は解除したぞ。だから、配置を少し変えた。不審者が入ってきた時のための備えとしては十分機能している」
「十分すぎて命が危ういわ!」と、アリカがすかさずツッコミを入れる
(ここ、本当に大丈夫なん……?)という不安と疑問がアリカやミナサの脳裏をよぎる中、ネカは原作通りの展開が目の前で繰り広げられている現実と、これから自分たちが直面するであろう過酷な日々に思いを馳せ、静かに頭を抱えて冷や汗を流し続けるのだった
その頃、別の場所――トリニティ・総合学園の広大な図書館では、全く異なる動きがあった。
夢見チトに案内され、静まり返った書架の間を歩く赤坂レイカ
「この辺りなら、古い歴史書や教義に関する資料が集まっていますよ。レイカさんが探しているものが見つかるといいのですが」
チトが申し訳なさそうに微笑みながら、分厚い本の並ぶ棚を指し示す。レイカは「助かる」と短く返し、自らも棚の背表紙を目で追っていった。
本来なら他学園は愚か、トリニティの生徒でも閲覧が厳しいであろう書類をティーパーティーのナギサの権限により閲覧していた……
(トリニティの古い伝承……何か手がかりがあるはずだ)
指先で本の背表紙をなぞりながら歩を進めると、一際古びた、分厚い装丁の革表紙の本が目に留まった
金文字で『トリニティ総合学園:創立史と秘史』と記されている。
「……これか」
レイカがその本を引き抜くと、ずしりとした重みが手に伝わってきた。ページをめくると、そこにはゲーム本編の表立った歴史の裏に隠された、トリニティの権力闘争などが書かれていた……
そして、その中には……ゲーム内でも分かるとある資料を見つける
『大昔、トリニティ自治区には幾つもの学園がひしめいており、散発していた学校間での紛争を避けるべく、各校代表が会談を行うために設けられたとあり、その名を"ティーパーティー"という……』
「原作でもその事は示唆されていたからな……」
『やがて各学園は第一回公会議における合意を以って、パテル、フィリウス、サンクトゥスという3つの主要な学園を中心とした連合を形成し、トリニティ総合学園という一つの学校へと統合した……』
『だが、第1回公会議でアリウス分校が反発を起こし、武力衝突を決行。連合はやむなしにアリウスを破門にした』
「っ!ここにあったのか……」
レイカは原作でもミカがアリウスの事を知るきっかけとなった本を見つけてしまったのだった……
白亜の聖地で交錯する、転生者たちの思惑と、ネクストライによる新たな介入
キヴォトスの運命は、静かに、しかし確実に、本来のレールから大きく外れて回り始めていた。
おまけ
イベントストーリーで列車に積まれていた貨物には何があった?
レ「色々あるなぁ……」
へ「でも、かなりガラクタまみれっすね……」
ネ「まぁ、無いよりかはいいんじゃないでしょうか?ヒバナ先輩も喜んでましたし……」
次の日
休日のレイカ宅
ヒ「大変よ、レイカ!重大発見よ!」
レ「朝っぱらから家に突撃してくるな……ふぁー…んで?何があった?」
研究結果と図面を見せる
ヒ「あのガラクタから小型核融合炉を作れそうよ!」
レ「……は?」
ガラクタの中に核融合に関するものがあった