転生者共の学園生活   作:矢守龍

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Vol.6 復元によって発覚した歴史

別の日

 

 

レイカは2年生の霧状ヘルタを伴い、例の地下旧防空壕から発見された貴重かつ厳重に梱包された資料を抱えて、トリニティ総合学園へと向かっていた

 

初めて足を踏み入る白亜の聖地トリニティの光景に、ヘルタは「うわ、これがトリニティ……すっげえ広いっすね!」と目を輝かせ、あちこちにキョロと視線を巡らせる

 

「リーダー、ちょっとあそこの建物とか見ていいっすか? 写真とか撮りた――」

「おいおい、観光気分はそこまでにしろ。今回は資料の修復が最優先だ。観光はまた今度な」

 

レイカに苦笑交じりに釘を刺され、ヘルタは「はーい、残念っす」と小さく頬を膨らませつつも、しっかりとしっかと荷物を支え直した

 

指定された目的地である広大な図書館に到着すると、待ち合わせをしていたティーパーティー・サンクトゥス派首長補佐の夢見チトが、穏やかな笑みを浮かべながら出迎えてくれた

 

「ようこそ、レイカさん、そしてヘルタさんですね。お待ちしておりました」

「あぁ、すまないなチト。わざわざ手配までしてもらって助かる」

「おや、ご丁寧にどうもっす! 噂のトリニティの美人さんって、本当にチトさんのことだったんすね!」

 

ヘルタが元気よく頭を下げると、チトは「ふふ、ご丁寧にどうも。さあ、こちらの本の修復を担当してくれる者のところへご案内します」と優雅な足取りで書架の奥へと先導していった

 

案内されながら、レイカもヘルタも、これから会う人物が誰であるのかを原作知識からしっかりと把握していた

 

(原作のあの娘なら、このボロボロの古文書も一瞬で……いや、本当に頼む価値がある)

 

そうして静まり返った一角の小部屋、あるいは書架の特等席にたどり着くと、一人の少女が熱心に古書を読みふけっていた

 

チトがふっと微笑み、彼女にそっと声をかける

 

「ウイさん、少しよろしいですか?」

 

声をかけられた少女――古関ウイは、びくりと肩を跳ねさせ、持っていた本を落としそうになりながらも振り返った

 

「ひやぁっ……!? な、なんですか急に……って、チトさん……?」

 

青みがかった髪を揺らすウイは、不審者を見るような、あるいは光の当たらない自室から引きずり出されたような気怯えた目を向ける。しかし、チトに促されると、おずおずと立ち上がり、小さな声で自己紹介をした

 

「こ、こんにちは……う、古関ウイ……です……」

「ネクストライスクールから来た、赤坂レイカだ。こっちは後輩の霧状ヘルタ」

「ヘルタっす! よろしくお願いするっす!」

 

レイカとヘルタが気さくに挨拶を返すと、ウイは少し居心地悪そうに身を縮こまらせた。だが、レイカたちが手元から「例のボロボロに劣化した地下室の資料」の束をそっと差し出すと、ウイの雰囲気が一瞬にしてガラリと変わった

 

ウイは差し出された資料の端を、震える指先、しかしプロフェッショナルな眼差しで見つめた。劣化した紙の質感、インクの滲み、経年劣化の状態を一目見ただけで検分し――そして、信じられない言葉を口走った

 

「……これ、ですか。湿気と酸化でボロボロですけど……うーん、そうですね。だいたい、10分もあれば、完全に元の状態へ修復できますけど……?」

 

「「……は?」」

 

それを聞いた瞬間、レイカ、ヘルタの2人は揃って盛大に言葉を失い、完全にドン引きして固まった

 

 

原作の知識として、ウイの古文書修復に対する異常なまでの執念とスキルが常軌を逸していることは知っていた。知ってはいたが、実際に本人から「10分で完全に修復できる」と平然と言い放たれると、その次元の違いにレイカたちは予想をはるかに超えた脅威と驚愕を覚えずにはいられなかった

 

(いや、聞いてはいたけどよ……「灰レベル」って冗談じゃなくてガチの化け物級の技術じゃねえか……!)

 

ヘルタも冷や汗を流しながら「じ、10分って……128ピースのパズル組み上げるより早いっすよ……?」と引きつった笑いを浮かべる

 

「え、あの……何か変なこと言いました……?」

 

ウイが不安そうに首を傾げる中、レイカは引きつった表情をどうにか立て直し、「い、いや……頼めるならぜひお願いしたい。頼む!」と丁重に資料を託した

 

「……わかりました。それでは、少し待っていてください」

 

ウイは資料を受け取るやいなや、まるで宝物を扱うかのように愛おしげな足取りで自身の作業スペースへと駆け込んでいった

 

 

それから約10分後

 

本当に正確に10分が経過した頃、ウイは嘘のように綺麗に、新品同様と見紛うほど完璧に製本・修復された資料の束を抱えて戻ってきた。破れていた箇所は完璧に接合され、消えかけていた文字は鮮明に読み取れるようになっている

 

「お待たせしました……。これならもう大丈夫です」

「す、すげえ……マジで完璧に治ってるっす……!」

 

ヘルタが目を丸くして感嘆の声を漏らし、レイカも深く頷きながらウイとチトに心から礼を告げた

 

「助かった、ウイ。お前のおかげで助けられたよ。本当にありがとう」

「い、いえ……本が綺麗になるのは、私の当然の仕事ですから……」

 

ウイが少し照れくさそうに頬を掻いたところで、レイカとヘルタはその場で急ぎ、修復された資料のページをめくり、内容を確認し始めた

 

 

そこに書かれていたのは、ネクストライの歴史の根幹に関わる、衝撃的な「とある実験記録」だった

 

記録のページには、こう記されていた

 

 

かつてキヴォトスには、名もなき神との戦争が存在した

 

そしてその時代、現在のネクストライスクールが位置する一帯、あるいはその前身となる場所には――『パレスト学園』と呼ばれる学園が存在していた

 

当時のパレスト学園は、トリニティの前身であるパテル、フィリウス、サンクトゥス、さらにはアリウス、そしてゲヘナの前身となる組織などから様々な「神秘」や技術の供与を受けていた

 

彼らはかなり多様なオーパーツや技術開発を行っており、ヒバナたちが地下の旧防空壕で見つけた「神秘が詰まったタンク」も、まさにそのパレスト学園が開発・運用していたものの一つだったのだ

 

しかし、戦争が終了し、学園の発展が重要なフェーズに差し掛かった頃――

 

パレスト学園の高度な技術が他の学園や外部で悪用された際のリスク、あるいは政治的な摩擦から、パレスト学園は自発的な「廃校」を決定

 

そして、それまでに築き上げたすべての技術系統や施設を学園の地下深くへと完全に放棄した――

 

その記録を目の当たりにした瞬間、レイカの脳裏で、今までネクストライスクールで抱えていた数々の謎が一気に繋がり、鮮やかに解明された

 

(そういうことか……!)

 

レイカたちが拠点として使っているこの学園そのものが、かつての『パレスト学園』の残骸だったのだ。そして、あのネクストライの地下深くに張り巡らされていた謎の地下線路や施設も、パレスト学園が何らかの目的のために建造し、そのまま封印したものにほかならなかった

 

隣で一緒に記録を読み込んでいたヘルタも、あまりのスケールの大きさと真実に「マジかよ……うちらが使ってるこの土地、そんな昔の巨大な秘密が眠ってた場所だったなんて……」と、衝撃を隠しきれずに絶句していた

 

レイカは冷や汗を拭いながら、即座に頭の中で決断を下す

 

(この情報は下手に外部へ漏れれば、トリニティや他の大校をも巻き込む大騒動になる。……いや、それ以上にネクストライの根幹に関わる機密だ)

 

「ヘルタ、よく聞け。この情報は、学園内での『最重要機密』として厳重に秘匿する。外部はもちろん、不用意に生徒全体へ広げるな」

「り、了解っす……! さすがにこれはヤバい代物っすもんね」

「あぁ。……ハレカやヒバナたち主要メンバーには、帰ったら俺からこの事を正確に共有しておく」

 

すべてを飲み込んだレイカは、資料をしっかりと回収し、改めて目の前にいるウイと、案内役を務めてくれたチトに向き直った

 

「ウイ、本当に助かった。この資料のおかげで、うちの学園の最大の謎が解けたよ。チトも、場所の提供から何から何までありがとう」

「ふふ、お役に立てたようで何よりです。……何か、面白い秘密でも見つかりましたか?」

 

チトが意味深な笑みを浮かべるが、レイカは軽く手を振ってごまかす

 

「さあな。だが、礼はしっかりさせてもらうさ」

 

こうして、レイカとヘルタはウイとチトに深く礼を述べると、修復されたばかりのパレスト学園の秘密の記録を厳重に抱え、ネクストライスクールへと向けて帰路につくのだった。白亜の図書館の窓から差し込む光の向こうで、キヴォトスの隠された歴史の歯車が、また一つ静かに音を立てて動き出していた

 

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