デュエル・マスターズOverLordW(オーバーロードダブル) 作:シグレサメ
2階は、ゴルファンタジスタがシンベロムから教わった蔦のバリケードで止めてる。普通の患者さんは公輝さん達が避難させてる。ワルドバロムの事件もあったから、すぐに避難が進んだのはあるけど。でも。
「緑くん……。私、多分あの子を産めるまで、きっと余裕ないから、かっこいいお姉さんじゃいられないから………。拓海くんに、失望されちゃうから………!」
「しないよ。でも、他に助けを求めてる人たちの元に、行ってもいいかな」
「うん、私、元気な子、産んでくるから……」
そう言って七海さんは、2階の奥にある手術室に運ばれていった。何処からか漏れた七海さんの出産予定日を狙われた。転院させる時間すらもない。拓海さんは公輝さんの手伝いに走っていった。そして僕は、目の前にいるガスマスクをつけた銃を持つクリーチャーと、向き合っていた。
「私の名前は《〜邪眼帝〜(インフェルノ・クルーエル・ロマノフ・サーガ)》。邪眼帝(じゃがんてい)と呼んでくれ。問おう。お前の名前と、その目的だ」
「僕は守木緑。ゴルファンタジスタと一緒に、人間界とクリーチャー界を守るために、……今から生まれる命を、『家族を守るために』、ボクはここにいるよ」
「守木緑は、新生児の頃親に捨てられ、クリーチャー界を彷徨ったと聞いているが、それは本当なのか」
「!?」
「部下のスチーム・ナイトに調べさせた。生憎だが、真っ向からぶつかって勝とうとするほど、我は愚かな軍師ではない。この期間、お前を確実に倒す方法だけを、ずっと考えていたよ」
「……本当だよ。お父さんとお母さんに捨てられて、ボクはゴルファンタジスタに拾われた。そしてゴルファンタジスタ達に沢山のものをもらって、今ここにいるんだよ」
「あぁ、だが原点というものは誰にとっても、一番触れられたくない柔らかいところだ。その傷を完全に癒すことなどできない」
邪眼帝はそう言って本を開く。ボクはなんとなく嫌な予感がしたけど、それを止めることはしなかった。いや、できなかった。
「スチーム・ナイトの活動の始まりは、こちらの世界でいう約10年前。人の力、心の力の集まりによってクリーチャーが強くなることを発見した我が当主は、それを実験することを選んだ。まぁ、我は後任であり、このテストも必要がなくなったため、伝聞でしか伝えられないが」
「実験?何言ってんだお前」
ゴルファンタジスタが努めて大きな声で喋る。これ以上ボクに深く掘って欲しくないみたいだ。でもボクは、逃げられなかった。足に根が生えて腐ったみたいに、ボクの体は動かない。
「喜び、怒り、悲しみ、楽しみ。その他様々な感情をあることになりそうなモデルケースを集め、それをできる限り対照実験の形を取って行ったらしい。それによって我らは負の感情を集めるというゴールラインを定めることができた」
「話が見えてこないよ、何を言って……」
「怒りのモデルケースに、お前の両親は入っていた。元の名前は、藤永という苗字だった」
ボクの手から、サーっと力が抜けていく。そんなわけないと言葉が出る前に、邪眼帝が言葉を続ける。
「珍しく、私たちからは一つをのぞいて、何も働きかけをする必要がなかったモデルケースだったらしい。元々は愛し合っていたらしく、個体同士の愛を確かめ合う行為も頻繁にしていたらしいが、男の方が失業し、職と金と、そして心を失った」
「………」
「よくある話だが、その男と連鎖するように2人は狂っていった。お互いに怒りをぶつけ合い、傷つけ合い。そして早い話、子供を捨てた」
「そんなわけない!ボクのお父さんとお母さんは、なんか事情があって…!本当は、ボクのことを、愛してくれてて……!あんな風に、七海さんと拓海さんみたいに、優しくて……!」
ボクはここまで行って気づいた。ボクは、なかったものを、手に入らなかったものを、代わりに見立てていただけだったんだ。
「結論起きたことは赤子の遺棄だ。お前の元の名前は藤永翠霞(すいか)。そして彼らは、病院で名前をつけた直後に、名の通り霞のように消そうとした」
「やめてよ!!」
「その後彼らはクリーチャーなど関係なしに狂っていく。男は酒とギャンブルに溺れ、女は夜の街へと繰り出していった。お前の求めていた本当の父と母は、もう既に、それぞれ病気と事故で死んでいる」
「お前ぇぇぇぇぇ!!!」
ゴルファンタジスタがクラブを邪眼帝にぶつけようとするけど、近くにいたスチーム・ナイトに弾き返される。
「そんな人間がこれから幸せになる家族を守っていると聞いて、ピンと来たよ。ここをつけば、簡単に瓦解するはずだと。『お前は普通じゃない。』『お前が真の意味で普通になることなんて、あり得ない』とな」
ボクは膝から崩れ落ちる。そんなわけない、何処かでお父さんとお母さんはボクを待ってていてくれる。そんな淡い期待が、全部打ち崩された。
身体に力が、入らない。
「……まだわかってねぇことがある。その後の本当に都合のいいことだ。クリーチャー界にどうやって緑は来た」
「……唯一の干渉は、藤永翠霞をクリーチャー界に送り出したこと、らしい。干渉の理由は、遺体遺棄で司法に捕まり、モデルケースの状況が悪くなることを危惧したらしい」
しばらくの静寂の後、ゴルファンタジスタが口を開いた。
「……つまりお前達が、俺様と引き合わせてくれたってことか」
「……何?」
「緑はそこまで不幸そのものだったかもしれねぇが、その後俺様と出会い、育ち、真沢や飛水達と出会った。それには変わりねえって言ってんだよ」
「だからなんだというんだ、それがあったとして、藤永翠霞に起きた事象は変わらない」
「守木緑っていういい名前があるだろうがよ!!!」
ゴルファンタジスタの怒号が、廊下を揺らした。
「お前、いい加減にしろよ?俺様、過去一頭に来てるからな」
「ゴルファンタジスタ……?」
「それが変わんなかったとしても、もっと素敵な変わんねえ思い出で上塗りしていくだけだ!過去がどうだからって、緑そのものは!守木緑の人生が奪われるなんてことはありえねぇ!本当の親に愛をもらえなくても、真沢に利用されたとしても、俺様とその仲間達がいて、緑が大好きなことは変わらねえ!」
「………ゴルファンタジスタ」
「守木ってのはクリーチャーから世界を守るために狂った優しいマッドサイエンティストが、緑ってのは俺様が自然文明の植物のようにすくすく育てっていう想いを込めてつけたんだ!この名前は!この想いは!どれだけ辛いことがあったとしても消えはしねえんだよ!」
ゴルファンタジスタの声が、邪眼帝をしかめさせた。そして何より、ボクの足が、手が、少しずつ動くようになってきた。
「ありがとう、ゴルファンタジスタ。ボク、まだ行けるよ。ボク、まだ戦える」
「お前が自分で立ち上がったこと、めっちゃカッコいいと思うぜ」
「目論見が外れたか。……ここまで心の強いニンゲンであるとはな。修正し、戦に挑まなければならないか」
「ほら邪眼帝さんよ、緑は復活した、時間をかけて緑を折れさせようとしたが、今度はお前が時間に追われる側だ!」
「うん、夕哉や飛水達も来てくれてる」
「そう簡単に傷が治ることはないと言ったはずだ。作った有利はある、それを元に押し切るのみだ」
実際まだ心が復活したとは到底言えない。でも、ゴルファンタジスタが、近くで戦ってる皆が一緒なら、戦える。
「「デュエマ、スタート」」
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「はぁ、はぁ。スチーム・ナイト、多すぎませんか」
御白はそう言いつつも、1階のスチーム・ナイトを蹴散らし、大型や大人数のクリーチャーは決闘で捌く。御白とドランの強さにスチーム・ナイトの士気が下がり少しスペースが空き、御白はそこに身体を滑り込ませた。
「これ、本当に緑くんと挟み撃ちの形になってます?」
「なってないというか、数が多すぎてそう感じられませんね」
「外に出せないから外が1番人数が必要とはいえ、夕哉くんあたりに一緒に来てもらうべきだったかも……」
「御白さんは彼無しでも戦えますよ」
「……そういうことじゃないですから!」
御白がそう言って周りを見回すと、スチーム・ナイトは明らかに減っていたが、何かスチーム・ナイトではない何かが、院内に入ってきていた。そしてその出てくる場所を見ると、ワープゲートが出来上がっていたのだった。
「テクノ・サムライですか!?」
「成程、スチーム・ナイトを止めようと」
「あのワープゲートって……!」
「はい、私達が普段使っているのと同じ技術でしょう。でしたら、閉じ方も同じはず」
しかもそこを見ると、ビスマルクがテクノ・サムライと戦っているのが見えた。御白は一瞬の逡巡の後、カオスマントラをカードから出す。
「念の為、スチーム・ナイトを見張っていてください」
「分かりマシタ。この場所を守るタメニ」
御白がそう言ってドランに乗って走っていく。ビスマルクがそれを見つけると、少しずつ下がって御白と話せる立場をとる。そしてドランがライトを光らせると、ビスマルクに通じたようで、光文明の手話でこう帰ってくる。
『今どういう状況ですか?』
『テクノ・サムライに挟み撃ちにされて困っている。これ以上は想定していた以上の被害が出る』
『私達が両側のゲートを閉じれば、両方とも帰れなくなって、戦いは終わりますよね?』
『痛いところをつきますね。正直、今すぐにでも戦闘をやめたいですが、私の上司が頑張っているので下がれないんですよ』
『では、お手伝いしましょうか?』
『頼みます』
ドランは会話の内容を御白に伝えた後、そのまま扉に向かって突っ込んでいく。突然の乱入者に、テクノ・サムライのクリーチャー達はパニックに陥り、スチーム・ナイトの士気が復活するが、それをビスマルクが諌める。
「あのクリーチャーの所属がわからない以上、無闇に手出しすることを禁じます」
御白とドランはそのままテクノ・サムライのゲートへと向かっていった。
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邪眼帝 シールド5 マナ2
《奇跡妖精メルクリ》
緑 シールド5 マナ2
《ヴェネラック-F5(ファイアファイブ)》
先行の邪眼帝は光水闇の3色を、緑は光水自然の3色でそれぞれ戦いの火蓋が切られる。お互いに探り合うようにして、デュエマが始まるのだった。
「メルクリで軽減、2コストで《〜悪意の武器商人〜(アクアン・マリス・サービス)》を召喚。出た時に山札の上から3枚を捲り光と闇のカード、《〜邪眼帝〜》と、《〜不死の黄昏司祭〜(グレゴリアス・デス・アンド・デイズ)》を手札に。残りのメルクリは墓地に。ターンエンド」
「ボクのターン!ヴェネラックをタップして2軽減!ハイパーエナジーで《爆翠月 アカネ》を召喚!アカネはパワー5000のマッハファイター!メルクリを破壊するよ!ターンエンド!」
(成程、心はまだ再生途中だが、クリーチャーと協力して気を強く持っている。我の感想としては褒めたいところだが、生憎スチーム・ナイトにおいてこのようなニンゲンは始末せねばなるまい)
「我のターン、メルクリの2枚目を召喚し、その効果で1軽減、《〜歴史ある王騎士〜(マクシミリアン・レジェンド)》を召喚。出た時にカードを1枚引く。ターンエンドだ」
「ボクのターン!《終止の時計(ドゥームズ・デイ) ザ・ミュート》を3マナで召喚!2枚引いて1枚捨てて、ターンエンド!」
「成程、これならば、これほどの相手ならば、我が戦っても大丈夫だろう」
邪眼帝はそう言ってカードを引く。そして5マナを使い、マクシミリアンを進化元に自身を呼び出した。
「あえてこの1回だけこう呼ぼう。〜邪眼帝〜(インフェルノ・クルーエル・ロマノフ・サーガ)。我に与えられた名だが、少々長く、我では役者不足だ。だが本気を出した証としてもう一度宣言させてもらう」
「来るぞ、緑!」
「……うん!」
ガスマスクをつけ直し、邪眼帝は銃を2丁取り出す。そして1発を、まず墓地に放った。
「登場時能力。山札の上から2枚を墓地に送り、コスト5以下のクリーチャーを蘇生する。出すのはグレゴリアス。こいつは出た時相手1体を手札に戻し、相手の手札を捨てさせる。さようならだ、ヴェネラック」
「ぐぅっ!」
「更にグレゴリアスは、相手が手札を捨てた時に相手1体をタップすることができる。爆翠月アカネをタップ」
「ヴェネラックの効果発動!相手がクリーチャーをコストを支払わず出した時、それをシールドに送る!」
邪眼帝 シールド6
「成程、邪眼帝でアカネを攻撃。マクシミリアンの超魂Xで、攻撃時に自分の登場時能力を使うことができる」
「あれをもう一回…!?」
「もう一度墓地を増やし、2体目のグレゴリアスを場に。ミュートを手札に戻し、捨てさせる。タップ効果はアカネに当てる」
「ミュート!」
「邪眼帝でアカネに攻撃だ」
「アカネ!!」
「ターン終了時、我がタップしているならば、自分のクリーチャー1枚を手札に戻すことができる。そしてそれと同じ名前のクリーチャーを、手札から出し直すことができる」
邪眼帝はもう一丁の銃をアクアンに向けて放ち、そしてアクアンは銃の中に吸い込まれていく。そして天井に向けて打った弾は跳弾し、再び場に戻ってくる。
「アクアンが場に出た時の効果で山札の上から3枚を捲り、邪眼帝の2枚目、《〜王家の御曹司〜(ジャック・アルカディアス)》を手札に加え、マクシミリアンを墓地に送る」
「嘘、クリーチャーの出し直しまでできるの!?」
「こいつ、めちゃくちゃにつえぇ…!動きに無駄がないというか、全部の行動が俺様達を苦しめてくる……」
「我は今のスチーム・ナイトを任されている。その意味は、我が1番心に刻んでいると自負している」
「緑、どうする」
「大丈夫、まだ戦えるよ」
緑はそう言ってカードを引き抜く。
「6マナで召喚、《竜社長(プレジデント) ゴルファウンデーション》。出た時に3枚引いて、ターンエンド」
「ファー!?G-NEO進化で大逆転って流れだろ!?緑、それだけでターンを返すのは…!」
「進化元がいないから仕方ないよ。でもあの人のデッキ、コスト5以下に縛られてるから、パワーで勝つことはできないんだ。小型を並べたら、あっちの思う壺になる」
「我が7500、竜社長が8500。歯痒いものだな」
「うん、そして3ドローもして次のターン攻撃時に3枚も呼び出してくるクリーチャーがいたら、そっちはボクをほっとけない」
「成程、我のターン」
邪眼帝はカードを引く。そこには単なるスチーム・ナイトに留まらない、熱に満ちた目が灯り始めていた。
「6マナで邪眼帝の2枚目を、アクアンの上にG-NEO進化で召喚。山札の上から2枚を墓地に送り、5以下のクリーチャーを出す。……なるほど、マクシミリアンをバトルゾーンに」
「よし、これで攻撃しなきゃいけなくなる!」
「あぁ、そうだな。マクシミリアンが進化元の我で攻撃、その時超魂Xで登場時効果をコピーして、山札の上から2枚を墓地に。そして墓地からグレゴリアスを場に。ゴルファウンデーションは手札に戻ってもらう」
「手札をランダムに捨てる……」
緑の手札から捨てられたのは、《ヴェネラック-F5》。
「よし、ゴルファウンデーションは手札にある!」
「しかしこのターン中に決めれば何も問題はない」
「そうだよ。でも、負けない!シールドチェック!」
緑 シールド3
「……ゆうやのカードだ!シールドトリガー+!《ア:グンテ》!更に《ソウルスカーレット アカネ》!ア:グンテの効果で出た時にコスト5以下のエレメント、グレゴリアスをマナに!」
「成程!邪眼帝本人に耐性があるなら出し直しの対象になるクリーチャーを落とせば良いんだもんな!」
「更にシールドトリガー+効果発動!このターン中にシールドが2枚破られているから、更に追加で2体をマナゾーンに!送るクリーチャーは、メルクリとアクアン!」
「……成程」
「これで邪眼帝以外のクリーチャーを全部倒したぞ!」
「更にアカネの効果で、アンタップしている邪眼帝をマナゾーンに!」
「……G-NEO耐性で、進化元のアクアンをマナゾーンに。これ以上の深追いは禁物か」
邪眼帝は少し考えた後、ターン終了を宣言した。
「ターン終了時、邪眼帝の効果発動。もう1枚の邪眼帝を手札に戻す」
邪眼帝はそうやってもう1人の自分を撃ち抜き、跳弾させる。
「出し直せるクリーチャーのコストには上限がないのか!」
「流石に進化元はないがな。我の効果で山札から2枚を墓地に送り、ジャック・アルカディアスをバトルゾーンに。相手1体、ア:グンテのパワーをマイナス4000する」
「クリーチャーが残ってターンが帰ってきた!」
「だがこの防御で相手に4枚もマナを渡している、ここで返すぞ、緑!」
「うん!ボクのターン!」
緑はカードを引き、ゴルファウンデーションを元気よくアカネの上に乗せた。
「行くぞアカネ!一緒に戦ってくれ!」
「ゴルファウンデーションは、出た時に3枚ドローできる!更に邪眼帝を攻撃する時、手札から光、水、自然のカードをそれぞれバトルゾーンに!《ドラン・ゴルギーニJr.》、《貪欲妖精 ハナグルマ》!《ソウルスカーレット アカネ》!!ハナグルマはドランの進化元に!」
「行、行きます!戦って見せます!父さんのためにも!」
「よろしく!ドランJr.!」
「ハナグルマの効果でジャックアルカディアスをアタックもブロックもできなくして、ソウルスカーレット アカネで今攻撃している邪眼帝をマナ送り!」
「どの道どちらかを失うか。そのまま攻撃を通す」
ゴルファウンデーションと邪眼帝が取っ組み合い、力を押し付け合う。不利と察した邪眼帝はすぐに距離を取り離れようとするが、もうすでに遅かった。ゴルファウンデーションはそれを先読みしてゴルフボールを放っており、銃を叩き落とし、そのまま鎧を貫通した。
「ぐぅっ……!!」
「ターンエンド。そしてターン終了時、ドランJrの効果で場の進化クリーチャーは全てアンタップするよ」
「攻撃も許さないというわけか。更に踏み倒しをすれば、ドラン・ゴルギーニJr.に山札に送られてしまう」
邪眼帝は少し考えてから、宣言した。
「……我はスチーム・ナイトのクリーチャー。ここで引き下がるわけにはいかない。見せてやる、我には我の誇りがあると」
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拓海が院内に戻ると、病院は異様なまでに静まり返っていた。もうここにいる患者は自分の妻だけだ。そして廊下の奥から、緑の声が聞こえてくる。少し進もうとして、足が止まった。
「俺は、無力だ。羨ましいと思ってはいけないのはわかっているさ。でも、こんな時。七海も緑くんも困っている時、祈ることしかできないなんて、耐えられない」
縋るようにひざまづく。分かっている。自分がここで祈ったところで、何も変わらない。しかし祈りを止めることはなかった。止められなかった。今からこの世に生を受ける新しい命。それを一緒に支えてくれる愛すべき妻。そしてその命達を、自分たちを守るために懸命に戦ってくれている緑を考えると、祈らざるを得ないのだった。
そしてその瞬間、隠れていたスチーム・ナイトが、ゴルファンタジスタの蔦を突破した。彼らにとってあくまで、恐怖という感情を手に入れるためのコマでしかなかった。手術室に駆け込もうとするクリーチャーを止めようとするが、軽く吹っ飛ばされてしまう。
「ダメだ!!!」
そのクリーチャーが手術室の扉を開け放とうとした瞬間、階のガラスが割れ、骨でできた蛇腹の剣が、そのクリーチャーを貫き、締め上げるのだった。
「夕哉、この感情はなんだ。新しい力が湧いてくるぞ」
「……多分、家族を愛する心だと思う」
「愛する心。家族ならよくわかる。貴様はいつもそうだからな」
そう言ってそのクリーチャーは撃ち漏らしたクリーチャーが他にいないか索敵を始めた。そのクリーチャーを連れた少年は拓海に目線を合わせこう言った。
「辛いかもしれませんが、ここを離れましょう。ここにいたら、緑が守らなきゃいけない人が増えてしまいますから」
「……ダメなのか?無事を祈っては」
「……ここではダメです。でもその祈りは、気持ちは、絶対に無くなっちゃいけないものですから」
その少年はそう言って立ち上がった。
「ジャジーブラッドに運んでもらうよ。あとは外で待ってるシスとジャガイストに預ける。俺たちは手術室を守る」
「ジャジー無しで行けるのか?」
「ジャシンがいるなら大丈夫」
「……守れる力があるから、ないからなんてたらればですから。結局どうなっても、できることをするのに変わりはないと思います」
少年はそう言って、拓海をクリーチャーに乗せるのだった。
「夕哉と!」「緑の!」「「今日のカード紹介!!」」
「今日のカードは、《〜邪眼帝〜(インフェルノ・クルーエル・ロマノフ・サーガ)》!」
「6コストのG-NEOクリーチャーで、パワーは7500。水闇光の3つを併せ持つ強力なクリーチャーだよ」
「出た時に2枚墓地を肥やして5コスト以下を蘇生、更にターン終了時にタップしていれば、場のクリーチャーを1枚手札に戻して、同じ名前のクリーチャーを出し直すこともできるんだ」
「状況に応じて色んなクリーチャーを呼び出せるから、中々対処が難しいよ」
「G-NEOクリーチャーで他にブロッカーも沢山出るから、簡単には場から離れなくて厄介なんだけど……」
「ということで次回、『未来を生きるために・後』」
「ねぇゆうや、ボク、勝ちたいよ!絶対に!」
「うん、絶対勝てるよ!」