デュエル・マスターズOverLordW(オーバーロードダブル) 作:シグレサメ
分かってる。ボクの本当の家族は、この世界のどこまで行っても居ない。
ボクが子供の頃に受けられなかった愛は、すごい不思議な形で、不思議な存在から貰った。
それがなかったら、今のボクはいない。ゆうややひすいに会っても、きっと考え直して、ゴルファンタジスタと再開することもできなかったと思う。
何があってもきっとボクは、これからもその傷は残り続ける。だって、その時ついた傷は、決して後から上書きすることはできないから。
でも、ゴルファンタジスタと過ごしている今の日々は、こうきさん達と一緒にいる今は。絶対に、幸せなものだって言えるから。
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邪眼帝 シールド5 マナ12
《〜邪眼帝〜(インフェルノ・クルーエル・ロマノフ・サーガ)》、《〜王家の御曹司〜(ジャック・アルカディアス)》(攻撃防御不能状態)
緑 シールド3 マナ7
《竜社長(プレジデント) ゴルファウンデーション》(進化元:《ソウルスカーレット アカネ》)、《ドラン・ゴルギーニJr.》(進化元:《貪欲妖精ハナグルマ》)、《ソウルスカーレット アカネ》
(結構盤面は減らせたけど、マナを渡しすぎてる。全然シールドも削れてないし、どこかしらで一斉攻撃をしかけないと)
(こいつを倒すために、《〜歴史ある王騎士〜(マクシミリアン・レジェンド)》のコピーも含めて5回も我の登場時効果を使っている。そこで1枚我が墓地に落ちているし、正直我の、山札切れすらも視野に入りかねないほど戦が伸びている。いや、伸ばされている。このタイミングで出た召喚以外を咎める《ドラン・ゴルギーニJr.》も厄介であるし、何よりタップのために攻撃すればゴルファウンデーションに阻まれる)
「守木緑、といったか」
「……なに?」
「我をここまで追い込んだこと、褒めてやろう」
「……ありがとう、でも、ゴルファンタジスタがいるから出来たことだよ」
「そうか。クリーチャーと人間が支え合い、そうなっているのか、面白い」
邪眼帝はそう言って笑った。何かを企んでいるような、純粋にこの闘いを楽しんでいるような。緑には、そのどちらに見えた。
「まずは立て直さねばなるまい。3コストで《〜悪意の武器商人〜(アクアン・マリス・サービス)》。山札上3枚から、《盗掘人形モールス》を手札に加える」
「長期戦用のクリーチャーか」
「モールスは墓地にカードが5枚以上という条件を満たし、0マナで召喚。邪眼帝を手札に加え、モールスの上にG-NEO進化させる」
「直ぐ立て直される…!」
「出た時に山札の上から2枚を墓地に置き、墓地から《〜不死の黄昏司祭〜》をバトルゾーンに、ドラン・Jrを手札に戻し、お前の手札を捨てさせる」
「ドランはG-NEO進化の力で進化元が身代わりに。そしてグレゴリアスは山札送りだ!」
「手札を捨てたことには変わりない。ゴルファウンデーションをタップする」
「こっちが本命かよ……!」
「そして5マナ、《缶隊長 サーディン》。墓地を全て山札に戻し、シャッフルする」
「山札切れ対策まで!?」
「これで形成逆転だ。進化元を持つ邪眼帝でシールドをWブレイク」
緑 シールド1
「Gストライク!《奇跡妖精 ヴェヌス》!」
「成程、ターンエンド。そしてターン終了時、タップした邪眼帝の効果でサーディンを手札に。出し直す効果は使わない」
「また山札が切れそうになったら使えるようにだ……!」
「その通り、リソース切れ、山札切れはどちらが早いか、これで察しがついただろう?」
「………」
邪眼帝の言葉は正しかった。彼はスチーム・ナイトの中でも段違いの実力者だった。デッキは洗練され、プレイは冴え渡り、そしてこのような長期戦になっても思考を鈍らせることはない。代役とはいえ、スチームナイトのリーダーと言う称号に相応しいものだった。
「……ねぇ邪眼帝、質問があるんだ」
「何の話だ。時間稼ぎにならない程度の質問しか受けないぞ」
「なんで、こんなに強くなろうと思ったの?」
「……スチーム・ナイトは、入隊する際に名前を渡される。アクアン、グレゴリアス、そして、ロマノフ。我はまだ、この名前に相応しくなったとは思えない」
「だから邪眼帝って呼ばせてんのか」
「その通りだ。我はロマノフ1世の名前をつけられただけの紛い物。どこまで行っても、それは変わらない。だからせめて、ロマノフという名前をつけて死ぬために戦っている。……喋りすぎたか、早くターンを始めろ」
(同じだ、ボクはドラン・ゴルギーニの後釜に、ドラン・ゴルギーニにならなきゃいけない)
ドランは邪眼帝の言葉に頭の中で賛成していた。そして邪眼帝がそう言って緑の方を向く。緑は涙を目の中いっぱいに溜めて、こう言った。
「偽物なわけないじゃん!そりゃ、やってることは悪いことだし、ボクは今から絶対邪眼帝を止めるけど!自分のことを否定したら、誰も君を助けられないよ!」
(え……?どういう……?)
「何を言っている?敵に塩を送っているのか?」
「だって、ボクは沢山の人に肯定してもらってここにいるんだよ!それなのに、ボクのことを嘲笑ってた邪眼帝さんが、1番苦しんでるじゃん!」
「……お涙頂戴にはかからぬぞ?我らは大いなる目的のため、人間の負の感情を集め続ける」
「でも、それでも!君はロマノフじゃなくて、邪眼帝なんだよ!!」
緑は、ずっと思っていたことを、言葉にできなかったことを叫んでいた。
「ボクのお父さんとお母さんにはもう会えないけど!でも、2人がいなかったらボクはいなかった!その時辛くても、もっと良くなると思って頑張った!間違っていることがあったとしても、それを正してくれる友達がいた。ボクは過去に何があってもボクで、変わらないんだ!!」
緑はカードを引く。そこには、前のような悩みはもうなかった。
「ボクは、七海さんと拓海さんを守るよ」
「ファー!!過去最高に追い風が吹いてるぜ!」
「ドロー!2コストで奇跡妖精ヴェヌス!更に5コストで《竜社長(プレジデント) ゴルファウンデーション》にG-NEO進化!3枚ドロー!」
「山札切れが怖くないのか!?」
「怖いよ、でも進むんだ!ゴルファウンデーションでシールドを攻撃!手札から《選舞音愛(せれぶおとめ) タテロール》を2枚、タテロールをタテロールの上に進化!更にその上に《ドラン・ゴルギーニJr.》をG-NEO進化!」
「3段重ねだと!?何の意味が…!」
タテロール2体の力を借り、ドランJr.がハザードランプから光を放つ。その光は邪眼帝2体に当たり、進化元ごとマナに吹っ飛ばされる。
「力が沸く…!自分1人だけじゃない力が、突き動かしてくれる!今は未熟でも、それでも、父さんを超えるためには、一歩ずつ前に進むだけだ!」
「ファー!3体を別々に踏み倒す所を、1枚に集めちまうのか、考えたな緑!」
「タテロールは進化元になった時と進化先になった時、手札、マナ、シールドのいずれかどこかに除去することができるカードなんだ。1枚目のタテロールは進化元に、2枚目は進化先かつ進化元になったから、3回マナ送りが発動して、邪眼帝2体をマナに置けたんだ」
「……我のデッキに、マナからクリーチャーを回収する手段は存在しない。なるほどな」
邪眼帝 シールド3
「シールドチェック。トリガーは無い」
「進化元のないドランJr.で攻撃!」
「《〜王家の御曹司〜(ジャック・アルカディアス)》でブロック、離れた時カードを1枚引く」
「ソウルスカーレット アカネで攻撃!」
邪眼帝 シールド2
「トリガーは無い」
「最後のシールドを進化元のあるドランで攻撃!」
邪眼帝 シールド0
「シールドトリガー、《忍蛇の聖沌 c0br4(コブラ)》」
「みしろのカード……!」
「市販に広く使われているカードだからな」
「あ、そっか、怪しまれないように売ってくれてるんだ」
「だが、やはりクリーチャーの魂が乗ったカードは強い。登場時効果で山札の上から2枚を墓地に置き、ジャック・アルカディアスを蘇生する」
「ドランJr.の効果で山札の下に!」
「登場時効果のパワーマイナス4000も意味がない。処理は終了だ」
「ターンエンド!」
邪眼帝はそう言った緑に、ターンを始める前にこう返す。
「守木緑。……この戦いは我の負けだ。その前に、お前に聞いておきたい」
「な、なに…?」
「いずれクリーチャーと別れることになったとして、お前はどうする」
「……分からないよ、ボクはまだ、未来がどんなものなのかもイメージできない。ゴルファンタジスタとこの先どうなってるのかも。でも、邪眼帝のロマノフのようににならなきゃならないっていうのは、違うと思ったよ」
「自分を形作るものは、基本選び取ることはできない。クリーチャーがいることが当たり前となったニンゲンがどうなるのか、それは恐らく研究対象になる」
(いや、違うな。この質問の意図は……)
邪眼帝がそう逡巡している間に、緑は答えを出していた。
「ゴルファンタジスタとボクが納得できる別れだったら、きっと大丈夫だと思う。もし理不尽な別れだったとしても、それまでの日々は、絶対に消えないから」
「……傷と同じように、楽しかったことも残るわけか」
「うん。だからそう簡単に、負の感情は集められないと思うよ」
「……あぁ、決着をつけるとしよう」
「うん、ゴルファウンデーションで、ダイレクトアタック!」
(我の、俺の人生は、ロマノフになる為に、いや……)
その次の瞬間、大量のクリーチャーが2階に雪崩れ込んできた。
「邪眼帝様!ゲートが閉じます!早く戻ってきてください!」
「テクノ・サムライの我らと同じように先進していた部隊が、退却路であるゲートを押さえたようです!刺し違えの形です!退却の決断を!」
「成程。分かった、退却と行こう」
「ニンゲンとクリーチャーよ!邪眼帝様を殺させはしない!」
「お前らが病院襲っといて、何勝手を言ってんだよ!?」
「ゴルファンタジスタ、深追いしないで」
「何を言って、緑……」
「ボクは、2人や、病院の人を守りたい」
「……そうだよな、すまねぇ」
邪眼帝はそう言って仲間のスチームナイトに担がれていった。緑はそれを見送りながら、ゴルファンタジスタと手を繋いでいた。
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夕哉達の目の前から、クリーチャーが干潮のように引いていく。突然のことであるが、統率は取れている。やはりスチーム・ナイトは、それなりの軍隊であるようだった。
「お、終わったの……?カイザー、戻っていいっぽいよ」
「ぽいな、マジで疲れたわ。Drache、さんきゅーな」
「御白がやってくれたのかな。ずっと戦ってくれてありがとね、ジャシン」
「フン、余計な世話だ」
夕哉達がそんな風に言っていると、御白と緑の2人が、無人となった1階から外へと出てきた。
「夕哉くん!飛水くん!火奈ちゃん!」
「終わったよー!ボク、守り切れた!」
5人は病院の外のベンチに座りながら、公輝達が、クリーチャー達が何か残した痕跡がないか調べ終わるのを待っていた。
「じゃあ、テクノ・サムライまで現れたのかよ!?」
「しかも御白1人で……。あ、いや、あの人がいたか」
「スチーム・ナイトの方はそうでしたが、テクノ・サムライ側もスムーズだったんですよね。何だったんでしょう」
「スチーム・ナイトの方はって?」
緑がそう聞くと、御白は申し訳なさそうにもじもじとした。結局この日まで、言うタイミングを見つけられなかったのだった。
「えっとですね、私、スチーム・ナイトの中のお一人にスパイとして働いてもらうよう交渉をしていて。それで、これ以上スチーム・ナイト側に死傷者を出さない為にという名目でやったところ、そちらが上手くいったんです。でも、緑くんの境遇を考えて、本当に喋れなかったんです!ごめんなさい!!」
御白はそう言って深々と頭を下げる。5秒くらいして返事が来ないと不安になっていると、緑がぽんぽんと御白の肩を叩いた。
「ボクもさ、テクノ・サムライの1人に色々聞いたんだ。多分、テクノ・サムライ側の退却がうまく行ったのも、それだと思う。でも拓海さん達を助けるのに夢中で、そのまま病院に戻ってずっと待ってたんだ。そしたらいつの間にかそれを言ったかになっちゃってて……」
「え、じゃあ御白も緑も似たような隠し事になっちゃってたってこと?」
「はい……」
「うん……」
「初めて見た、こんな感じになるの」
気まずい空気になるのを、飛水が止める。
「まぁ結局、お互いのためにと思ったことが拗れて訳わからん事になるよりはよかったんじゃねぇの?」
「まぁそうだね。誰かがそれで不利益を被ったわけじゃないし」
「でも、隠し事してたのには変わらなくて……」
「でもボクのことを気遣ってくれたんでしょ。もう大丈夫だよ。でも、ボクは単純に伝え忘れただけだし」
「でも、緑くんが必死だったのはこの場の誰もが知ってる事です!仕方なかったとは言いませんが、そこまで謝る事じゃないですよ!」
御白と緑が頭を下げ合うのを見て、火奈がそこに割って入る。
「もーそこまで。せっかく勝ったんだから、『おめでとー!』でいいじゃん!」
「でも……」「ですが……」
「夕哉、飛水、この後皆で回転寿司行くよ!お代は私たち3人で割り勘ね」
「なんで!?」
「急な上に俺の財布に負担かけんな!」
「異論は認めません、ほら行くよ!」
「今日は待ってくれないか?」
そう言って公輝が病院の中から現れる。話の腰を折られた火奈は、少し不機嫌だ。
「テクノ・サムライとスチーム・ナイトの中に、見たことのある成分が検出された」
「え?新しいのが見つかって、そこから痕跡探すーじゃないの?」
「そうなんだけどね。夕哉くんから現れて、ジャシンが踏み潰してくれたあの触手」
「あぁ、俺の不安を増大させてた……」
「あれに似た成分が、テクノ・サムライとスチーム・ナイトの装備の一部から検出された」
「………まさか」
「テクノ・サムライとスチーム・ナイトが対立していた方が、モルスに取って都合がいいと言う訳だな」
夕哉はジャシンの言葉に、そしてモルスの影に、絶句するしかなかった。
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「ドギラゴン、下ろしてくれ」
竜也は自然文明の切り立った崖の上にいた。そこからは見渡す全てを埋め尽くすような大自然と、そこを駆け回る小型のクリーチャー達、動くたびに大地を揺らす大型のクリーチャーなど、多種多様なクリーチャーが生態系を、平和に作り上げていた。
「さて、情報ならここだけど」
竜也はそう言って、その崖の先の丘に向かって歩き出した。昔クリーチャー世界に降ってきた何かがクレーターを形成しているらしい。このクリーチャー世界は人間達の思い出やイメージから生まれた世界であり、そこにいないクリーチャーは余程なことがなければ生まれない。そして何より、その世界の外は、基本人間界しか存在しない。つまり、クレーターを作るような隕石など、存在するはずがなかったのだ。
(なのに、ここにはクレーターがある。星が関係するクリーチャーはいるけれど、関係ありそうなところは漁ってもわからなかった)
クレーターが作った洞穴は、広いのに、息苦しかった。外は昼であるのに夜のような暗さのそこは、その空間だけ、嘘のように明るかった。
「これは、どういう……うお!?」
竜也とドギラゴンは、壁に叩きつけられた。立ちあがろうとすると、自分が洞穴の壁に立っている事に気づく。
「重力がぐちゃぐちゃになっているのか?あの中心にある緑の光、あれが本物なら……」
竜也はドギラゴンを向かわせ、その緑の光を取ろうとするが、文字通りぐちゃぐちゃとなっている重力に、ドギラゴンは振り回される。その度にドギラゴンは壁に叩きつけられ、場合によっては洞穴そのものの崩壊すらもよぎった。
「ドギラゴン、その場所で一旦止まるんだ。……ここからは、僕がやるしかないか」
竜也はその緑の光を目指して歩き、そして飛び始めた。まるで見えない壁がそこら中に張られた迷路であり、一度吹き飛ばされると元の場所に戻り、また元の地点に戻ってやり直す。
(重力の感覚がめちゃくちゃになりそうだ。でも、今はやっていくしかない)
そう言って、竜也はクリーチャー世界で3時間を過ごした。目の前に緑の光いや、勾玉であると断言できるほど近くまで来ている。
「手を伸ばせば、届く。でも」
先刻のドギラゴンの状態が目に浮かぶ。あの時、勾玉に近づくほど、重力はめちゃくちゃになっていた。竜也はさらに迂回し、絶対に勾玉を掴み取れるところまで来たのだった。
「……頼む」
竜也が勾玉を手に取ると、勾玉は力を失い、竜也は宙から放り出される。その瞬間ドギラゴンが身体を滑り込ませ、主人を怪我から守るのだった。
「ありがとうドギラゴン、ずっと待っててくれて」
竜也がそれを持ち帰っている最中、夕哉達がテクノ・サムライとスチーム・ナイトの挟撃から病院を救ったと言う公輝からのニュースが入ってきた。
「……さて、あと2つか。ここから頑張らないとな」
竜也はドギラゴンに乗りながらそう言って、自然文明の扉に向けて進んでいくのだった。
次回、「一つが終わって、始まって」