恋より   作:わか

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7話

そろそろ桜が散ろうとするこの時期。

出会いや別れ、再会を繰り返すこの時期。

 

僕の出会いは、これ以上ないだろう、という時期に。

 

一人の女の子と出会った。

 

その子は、おでこを出した特徴的な女の子で、柔らかい雰囲気で、なんだか気になって。

 

◆

 

放課後になった。

僕は洋榎たちに別れを告げ教室を出る。

いつもならそのまま家に直行で帰るのだが、最近空き時間が多いことに悩んでいた。

家では勉強がある。と言っても集中力はそんな持続するわけもなく。

 

なんだかんだで、空き時間が増えていく。

朝、教室へ着いた後のホームルームのチャイムが鳴るまでの時間。

誰とも話さない時の休み時間。

授業で余った時間を生徒にくれる優しい先生。

そして、家。

 

部活をしないだけでこんなに空き時間が増える。

前いた学校でもそれが悩みだった。

 

だから、僕は決意する。

 

「本を読もう」

 

部室棟の最上階である四階の一番隅に位置する図書室。

広さはそれなりにある。

 

もっとこじんまりとしたイメージだったが、ここなら何か気になる本が見つかるかもしれない。

 

僕は、何か役に立つんじゃないか、と思い歴史の棚を覗いてみる。

 

「眠くなりそうだ」

 

もっと軽く読めるのがいい。

おすすめと書かれた棚を見てみる。

 

何となく惹かれたタイトルを手にとってみる。

 

「「あ」」

 

僕ともう一人の声と手が合わさる。

小さな手をした人はすぐに手を引っ込める。

 

「ごめんなさい」

 

僕はようやく置かれた状況に気づき、隣を見る。

 

「あぁ、いえ、こちらこそすみません」

 

そこにいたのは、背の小さい、おでこが広い、少女、と言ってもここの制服を着ているのなら、少女というのは失礼か。

僕は、彼女が取ろうとした本を持つと、彼女に渡す。

 

「どうぞ」

 

「え?へ?いやいや、そんなお構いなく」

 

「読みたかったんでしょ?」

 

「あの、私は大丈夫です」

 

ひどく動揺している彼女に、なんだか申し訳なく思ってしまう。

僕は何かしてしまったのだろうか?

だから、この平行線を終わらせるべく、僕は彼女に提案する。

 

「じゃあ、一週間後。君が返したら、次は僕が読むよ」

 

「そんなん、もしかしたら、誰かがすぐ借りかもしれんし」

 

「そうだね。じゃあ、知らせてくれるかな?」

 

「えーと」

 

あぁ、名乗るのを忘れていた。

 

「僕の名前は一場駆って言います。二年一組です。良ければあなたの名前を教えてくれませんか?」

 

「はい!私は、上重漫言います。あ、一年三組です」

 

上重漫……。

 

「可愛い名前だね」

 

僕は、自分でも何を言っているのか、と思わず思ってしまったが、彼女を見るとそれに見合った、お似合いの名前だと思った

だから、似合ってますね。と言うのもなんかおかしい。

 

可愛い、というのが適切なんじゃないか?と思ったら、つい口が滑ってしまった。

 

「えーと、その」

 

上重さんも困った風な表情を浮かべ、ついには本で顔を隠してしまった。

自爆してしまった。後悔しつつ、話を先に進める。

 

「僕の提案、受け入れてくるかな?」

 

「はい、わかりました。絶対にお伝えします」

 

「うん。よろしく」

 

僕の笑顔に、彼女も笑顔になる。

しかし、上重さんは何かに気づき、時計を確認する。

 

「しまった、部活!!」

 

部活?

どうやら、彼女を引き止めていたらしい。

 

「ごめん。引き止めちゃったね。早く行って」

 

「はい。ありがとうございました」

 

上重さんは、頭を下げ、司書さんのいるカウンターに行く。

学生証を提示し、機会に通する。

すぐに処理を終わり、彼女は本を鞄に入れずに、そのまま走って行く。

 

「不思議な出会いだ」

 

この桜が散ろうとし、出会いと別れと再会の象徴の役目を終えようとしている、この時期に。

 

僕は、上重漫と出会った。

 

◆

 

そして、ゴールデンウィークに差し掛かろうとする日の前に、最後の桜を見ようと僕たちは集まった。

洋榎たちとは部活終わり後に会い、桜を見に行くはずだった。

 

だけど、何の運命なのか、夕方から降りだした雨により、この話は流た。

でも、約束したのだから、何か食べに行こうと言う洋榎に提案に僕たちは、晩御飯を食べに行くことに。

 

高校生が晩御飯を食べに行くというのに、親は何も言ってこなかったのか。

しかも、女子の中に、男子一人というこの図。

 

まぁ、僕の場合、この話をじいちゃんに言ったら、喜んで送り出してくれたが。

洋榎の先導で一軒の店に着いた。

 

「お好み焼きか」

 

「そう、ここ後輩の店やねん。もしかしたら、割引してくれたりして」

 

「さすがにないよ、おねえちゃん」

 

「先輩だからって理由で割引にしてもらったら、申し訳ないでしょ」

 

「だめだよー」

 

周りからの攻撃に「冗談や」と明らかに本気だったのに虚勢を張る洋榎を無視し、店の中に入る。

 

「いらっしゃいませー」

 

「何名様ですか?あれ?先輩?」

 

「よー漫。五名や」

 

「はい、では、こちらへ……?あれ?」

 

「ん?どうしたの、漫?」

 

恭子がそう尋ねる。

僕はというと、何の運命なのか。

 

「えーと、本読んでる?」

 

「はい、一場先輩」

 

「なんや、こいつら」

 

この春が終わり、この雨で散る桜の最後のいたずらか、僕は上重漫と再会した。

 





漫との出会いでした。
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