どけ!!!俺はブロリーのお兄ちゃんだぞ!!! 作:こねこねこ
それから、どれくらいの時が経ったろうか。
言葉を発することはまだ出来ないが、脹相は隣の弟をずっと慰め励まし続けていた。
そして一方でその弟が泣く原因となっている、部屋中に響き渡る大声量で泣き喚き続ける赤子へと徐々に苛立ちを募らせる。
赤ん坊が泣くのはある程度は仕方のないことだろう。それは理解しているが・・・・・、
(しかし少しは声を落とせ!!弟が嫌がっているだろうが!!!)
騒音元の赤子のほうは、流石に赤の他人だと判っている。
術式を通じて脹相が感じ取れるのは、あくまで直接血の繋がった兄弟だけだ。
そして目の前の弟が泣きじゃくるその度に、感情の揺れが異変として伝わってくる。
・・・・・つまり、それほどに本気で嫌がっているのだ。この騒音を。
(可哀想に・・・・・)
自分と同じく、弟もまだ生まれたばかりの身で碌に身体を動かせはしないのだろう。
抵抗という抵抗もできず、ただただ泣くしかない。
そうしてじっと弟のことを観察していたのだが、ふいに脹相は気が付いた。
―――弟の尻の下から、何か細長いものがハミ出し蠢いている。
(・・・・・???)
そしてさらに気付いた。
"それ"は、よく見ると己の尻にもくっついていたことを。
まるで動物の尾のようなそれは、意識を向けると手足と同じく自分の思うままに動かせるようだ。
(・・・人間では・・・ないのか・・・・・?)
てっきり人に転生したのかと思っていたのだが、もしかすると妖の類なのだろうか。
しかし尻尾が生えている他には、特におかしい部分は見当たらない。
・・・・・尻尾の生えた、人間だ。
現状、そうとしか言い表しようがなかった。
そんなことを考えているうち。
突然に戸が開いて、誰かが室内へと入ってくる気配がする。
さほど興味も無かったのだが、脹相は何となしに視線を向け―――そして目を疑った。
いつしか間近にまで迫っていたその男が、手に持った刃を振り上げていたのだ。
(!!!??)
声を上げるよりも早く、何も身に着けていなかった赤子の柔肌に突き立てられた刃が沈む。
衝撃に一瞬息が詰まり、遅れて焼けるような熱と痛みが波のように襲った。
わけがわからない。
生まれてまだ間もない筈の赤子の身が、何故命の危機に晒されているのか。
「パラガスの子か・・・兄弟共々、あの世へ行け」
激痛と混乱に見舞われる中、しかし男が呟いた言葉を聞いた脹相はその意味を瞬時に察して声にならない声を上げた。
既に男の手は隣に寝かされていた弟のほうへ伸びていたのだ。
(やめろ!!!!!)
目を剥き、叫ぶも口から出るそれは言葉にならない。
思うようにならず、碌に動かせない小さな身体。激情が湧き上がる中、ふいにこんなことを想う。
・・・・・嗚呼、本当に良かった。
"先に刺された"のが、弟ではなく自分のほうで。
(―――――"百斂"!!!!!)
刺された傷口から溢れ出ていた血が、まるで意志を持ったかのように蠢き『とある一点』へと凝縮していく。
・・・と同時に、まだ幼い身体から血液が急激に失われていくことによって途端に意識が霞みかけた脹相はあまりの己の無力さを呪った。
"以前"のように潤沢には血を使えない。
加圧も甘い中、それでも限界まで絞り出してやっと出来たのは空中に浮かぶ球ひとつだけ。
「!?な、何だ・・・これは・・・!!」
それでも突然の不可解な現象を目にしたことで、襲撃者に動揺を与えることは出来たようだ。
この軟腕では穿血は撃てないだろう。
出来ることは限られているが、それでも。
(超、新星・・・!!)
小さな小さな血球となったそれを男の胴の間近まで飛ばし、まるで散弾のように炸裂させる。
「がはッ・・・!?」
弟へは被らないよう飛び散る血をさらに操り、再利用され小さな血の矢となったそれらがさらに男へと襲い掛かった。
超新星で散った血のうち男の身体へ付着したものはそのまま凝固させ、その身体の動きを鈍らせる。
使えるものは極限まで余すことなく使い、少しでも無駄にはしない。
「おのれ、妙な術を使いおって・・・!!やはり生かしてはおけん!!」
男が衝撃に怯んだのはほんの少しの間だけだった。
不可解な技を受けた困惑から復帰したらしい男は再び刃物を手に脹相へと差し迫る。
(・・・弟に、手は出させん・・・!!!)
重傷と失血で意識を失う寸前であっても、四肢すら思い通りに動かなくても、それでも脹相は殺気を籠めた眼で男を睨み決して引かない。諦めない。
何が何でも弟を守り通す。
無力な赤子の身であろうが、それがどうした。
弟の危機を前にした以上、全力でお兄ちゃんを遂行するまで!!
人生ハードモード過ぎる