とある学園の消音能力   作:崩れて集める

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日常回です。
うまくできているか不安です。


第三話

キーーーンコーーーンカーーーンコーーーン……。 

学園都市のどこにでもある、ありふれた昼ののチャイムが学校中に響き渡る。

だが、俺の通う高校の1年7組、その窓際の席――俺の真横のデスクだけは、まるで時が止まったかのように完全な静寂に包まれていた。

 

「……すぴー。……むにゃむにゃ、…………」

机に突っ伏して、よだれを垂らしながら爆睡している男。この街の不幸のド真ん中を生きる俺の親友であり最大の悪友――上条当麻である。

教壇では、小柄な担任の月詠小萌先生が

「はーい、午後の授業を始めますよ~」と教科書を開いている。授業はすでに始まっていた。

にもかかわらず、上条が一切目を覚ます気配がないのは理由があった。

お昼休みで飯を食った後で上条は

「少し寝る」

といい夢の世界へ旅立った。普通なら上条はチャイムの音が鳴ったなら上条は体を起こして現実の世界に戻っていた。

しかし、俺はあくまで善意であいつの睡眠が快適にさせるためにと思い耳元にそっと左手をかざし、自身の能力をリアルタイムで発動し続けているからだ。

先生の声も、チャイムの音も、あいつの耳に届く直前ですべて俺の消音能力(サウンドレス)によって特定の音に足してだけ完璧に相殺(ミュート)されている。

すべての音を消し去る空間ミュートなら、あのスキルアウトたちの時のように三半規管のバグで気絶させてしまう。

だからこそ、俺の天才的な脳の演算で、あいつを現実の世界へ引き戻す『特定の音声周波数だけ』をピンポイントで消してやっているのだ。

――まぁ、周囲の雑音はそのままに、特定の音の波形だけを見抜いて相殺するなんて芸、レベル1の俺にとっては『死ぬほど集中して』リアルタイムで頭をフルで使う意演算を行っているのではっきり言ってめちゃくちゃ疲れる。だが俺にとってそんなことは特に弊害ではない。

ダチへのイタズラのためならどんなに疲れようと能力を全力投入する。これぞ知性の正しい無駄遣い。

「あー! 上条ちゃん、いくら午後の授業が辛いからといって居眠りは許しません。廊下に立っていなさいです!」

トコトコと教壇から降りてきた小萌先生が、激怒しながら上条の頭を教科書でパチンと叩いた。その瞬間、俺はすっと能力を解除する。

「うわあああ!? な、なんだ、いつ俺の昼休みは授業に変わったんだーー!?」

飛び起きて周囲を見回し、大パニックに陥る上条。そんな哀れな親友の姿を横目で見ながら、俺はスマートに教科書を開き、真顔で親指を立てた。

 

「何を言うんだカミジョウ。俺は隣の席のダチが、雑音に邪魔されず、極上の睡眠を堪能できるようにちょっと細工してやっただけだ。親友のホスピタリティと呼んでくれていいぞ」

 

「鳴海お前ぇぇ! また隣から俺の耳元サイレントモードにしやがったなァ! おかげで小萌先生にお叱りを受けたぞ! これでまた赤点取ったら夏休みが丸ごと小萌先生の補習で埋まるんだよォ! 不幸だァァァー!」

頭を抱えて絶叫する上条。その様子を見ていた後ろの席の青髪ピアスが、ゲラゲラと笑いながら椅子を揺らした。

「いや〜周期さんは、相変わらずその能力の使い方のタチの悪さだけレベル5クラスやな!」

 

「周期の旦那、いたずらの為だけに頭を無駄遣いするなんて悪~い人だ」

土御門元春もサングラスの奥の目を細めて笑う。

この学園に来る前はこんな悪ふざけをすることや俺のくだらないボケを、こうして正面から受け止めて「ダチ」がいなかった。

この1年7組のバカな日常。俺はこの空間が、たまらなく愛おしくて仕方なかった。

 

 

「――よし、導き出した。完璧な最適解。これぞ科学の勝利だな」

放課後、俺たちはファミレスのドリンクバーの前にいた。 上条、青髪、土御門の3人が見守る中、俺はノートパソコンではなく自分のスマートフォンを鋭い目付きで睨みつけ、不敵な笑みを浮かべる。

「おい鳴海、お前ジュース注ぐだけなのに、なんでそんなに真剣な顔になってるんだ」

「カミジョウさん、よく聞いてくれた。俺はついに、流体力学と音響心理学に基づいた『ドリンクバーのハッキング理論』を作ることに成功した。コーラとメロンソーダを使い最強の比率で混ざり合わせる際に出る、あの『シュワシュワ音』を俺の消音能力でピンポイント最大出力ミュートする」

「なんだと」「ついに完成したのか」 

外の世界の常識に縛られて能力開発がレベル1止まりの俺だが、この天才的な頭脳の『使い道』だけは誰も追いつけないと自負している。俺はグラスにジュースを注ぎながら能力を発動した。 

――ツン、とグラスの周囲半径五十センチだけが、完全な静寂に落とされる。 注がれる液体から発せられる微細な音声ノイズが逆位相で相殺されることで、炭酸ガスの気化エネルギーが強引に奪われ、『一切炭酸が抜けずに100%の美味さを維持したまま融合した、究極のブレンド炭酸水』が完成した。

「 ほら、飲んでみろ。俺の能力とジュースに100%割り振った計算結果の神秘だ」 差し出された怪しい緑と黒の液体を、上条と青髪(毒見係)が恐る恐る口に含む。その瞬間、二人の目が限界まで丸くなった。

「「ぶっ……!? お、お前このジュース美味すぎるだろ!!」」

「えっ、マジで!? 炭酸が一切ヘタってなくて、それぞれの味が完璧に調和してでぃすねいの!?」

「だろ? 音響の引き算による、味覚のコントラストの強調だわ。レベル1の没個性なな力も、頭脳と組み合わせれば世界をハッピーにできる数式に変わるのさ」

ガハガハと笑いながら、究極のジュースを回し飲みしてバカ騒ぎをする悪友たち。

その横顔を見ながら、俺はふと、上条の制服の袖口から覗く新しい包帯や生傷に目を留めた。

「おい、上条お前昨日までそんな傷とかあったか?」

と俺が純粋な疑問を言及する。

「よくぞ聞いてくれました。昨日学生寮に帰る前に晩御飯のための材料がないから買いにいってきたんだが、その帰りにスキルアウトのいざこざに巻き込まれて」

と心底その時の経験が悪かったのかとても疲れたような顔をしていた。

「まぁまぁ。カミやんもこの街の治安の悪さや身に占めて分かってるからもう慣れたことだろ」

と土御門は上条を慰めていた。

「スキルアウトといえば、俺も昨日スキルアウトとちょっとしたイザコザがあってさー」

と昨日起きた出来事を三人に共有した。

 

 

楽しい時間というものはあっという間に過ぎていく。いつの間にか夜に差し掛かる時刻となっていた。

「なぁー明日も予定があるなら遊ばないか?」

と上条が聞いてきた。

「おれは空いてるぜ」と土御門が答え、「ボクも空いとるよー」と青ぴも答えた。

「すまん。俺は明日はちょっと予定があるな。」

と俺が答えた。

「なんだ。お前いつもヒマそうだけどなんかあんのか?」

と少し失礼なことを言ってきた上条(バカ)の言葉はスルーして

「明日はね、サボり仲間の佐天さんと、その友達のジャッジメントに所属している女の子と遊ぶ予定。スキルアウトの件でポテト奢ってくれるらしいからさ」

と明日のポテトの事で俺がうれしそうな顔をしていると

「おい周期……お前、昨日ジャッジメントに連行された癖に、なんで翌日には別のジャッジメントの可愛い女の子とデートの約束を取り付けてるわけ? 不幸な上条さんにそを少しは分けてくれないわけ?」

「デートじゃねえよ最高の『ダチ』との放課後のライフハックだわ」と

上条の嫉妬をクソボケらしく受け流していると、土御門がふと、サングラスの奥の目を少しだけ変えて口を開いた。

「そういやー、最近の学園都市はいつもよりスキルアウトやらなんやらが活発化してるからおまえら特にカミやんは気をつけたほうがいいぜ」

と言ってきた。

そうして歩いていくと青ぴは下宿しているパン屋で残りのメンバーも各々の学生寮の部屋に入った。

部屋にある机に今日の授業を振り返りをしていると土御門の言葉が頭に響く。

 

(学園都市の治安の問題は今に始まったものじゃないが、確かに最近はより問題が活発化している気がする。……後日調べてみるか)

とそんな事を思いつつ俺の今日の一日は平和に終わったいった。

 

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