翌日
「へぇー、鳴海先輩って学年1位なんだ! 頭いいんですね!」
と俺は頭に花の輪の髪飾りをした子と喋っていた。
「周期、でいい。……たまたま試験のデータが頭に入りやすいだけだ」
放課後の並木道。鳴海周期は、友人である佐天涙子と、今日初めて紹介された彼女のクラスメイト、初春飾利の二人と並んで歩いていた。
「そういえば、周期さんの学校もシステムスキャンの結果はでましたか?」
と初春さんが俺に聞いてきた。
「う……。初春、その話はストップ。私みたいなレベル0には、ただの公開処刑みたいなものだからさ」
初春さんの何気ない一言に、佐天が自嘲気味に笑って肩をすくめる。
俺の観察眼は佐天の瞳の奥を通り過ぎた暗い影を見逃さなかった。最新の身体検査の結果が出たばかりで、レベル0のままで何も成長できていないと考え、彼女の劣等感はいつもより生々しかった。
そんな佐天を俺が慰めることができるかわからないが、
「レベルは必ずしも必要なものでもないかもよ。俺はこの街に来たら今までの上手くいかなかった人生が全部上手くいくと思っていたよ。でも最初からうまくいくことなんて俺には起きなかった。いくら頭が良くてもレベルは1で体力測定でシャトルランを50回も走れない体力雑魚」
と俺は自分のスタミナのなさを卑下しつつ佐天に向けて続きの言葉を言う。
「佐天さんは、そんな俺より自分が価値のない存在だと本当に思うかい?」
と不器用ながらちょっとカッコつけたようなことを言ったので少し恥ずかしくなった。
「ふふ、鳴海くん、相変わらず体力ないですもんね! ちょっと安心しちゃいました!」
俺の慰めが良かったのか、佐天の表情にパッと明るさが戻った――よかったよかった。
と暗い話を切り替え、奢ってもらったポテトを食べつつ楽会話をしていると初春が時計をみて何かに気が付く。
「あ、そうだ! これから私、友達と待ち合わせしてるんです。」
と誰かとの待ち合わせを思い出したようで、焦る彼女に俺が声を掛ける。
「待ち合わせってジャッジメントの人か?」
と初春に興味本位で聞くと
「一人はそうなんですが、もう一人はなんと常盤台中学の生徒で、学園都市に7人しかいないレベル5の第3位、御坂美琴さんと会えるんです!」
と興奮したような口調で言ってきた。……ちょっと待て
「あのレベル5の第3位『常盤台の
超能力への純粋な憧れを抱く俺にとって、その名前は強烈な好奇心を強く刺激された。
「同行させてくれ。最高峰の能力者がどんな演算規模を持っているのか、興味がある」
と俺が興奮している初春に
「えっ、先輩も?御坂さんに会いたいんですか?……うーんだったらちょっと待ってください。」
と俺の突然の申し出を受けた初春を携帯を取り出し、メールを送った。
◇
「……でも、本当に良かったんですか? 鳴海くん」
待ち合わせ場所のファミレスへ向かう道中、それまで携帯を弄っていた佐天さんが、ふと心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「何がだ?」「何がって、御坂美琴さんですよ。……あそこの生徒って、基本お嬢様だし。それに、学園都市のトップですよ?」
佐天さんは少し口を尖らせ、ポッケの手をぎゅっと握りしめる。その横顔には、どこか割り切れない陰りがあった。
「レベルが高い人たちって、大抵は自分たちの世界だけで固まってるじゃないですか。中には、私らみたいなレベルが低い人間を鼻で笑うような、傲慢な奴だっているし……。もしその御坂って人がそういう冷たい対応をする人だったら、先輩、傷つくだけ損ですよ?」
ブツブツと不満を垂らすような口調。だけどそれは、突撃しようとする俺が現実を知って幻滅しないようにという、彼女なりの不器用な気遣いと心配から出た言葉だった。その思いが痛いほど伝わってきたからこそ、俺はニッと笑って彼女の肩を軽く叩いた。
「ハハ、佐天さんは優しいな。俺の心配をしてくれて」
と笑いながら言うと
「っ、別に心配なんてしてませんよ!」
と少し照れてるのか早口でそう言ってきた。
「大丈夫。仮にそんな奴だったとしても、俺の心は『鋼のメンタル』だからな。鼻で笑われたくらいじゃ、傷一つつかないよ」
胸を張って大げさに言ってみせると、佐天さんは一瞬目を丸くし、それから呆れたようにぷっと吹き出した。
「な、なんですかそれ! 自信過剰だよ。そもそも……」
となにか都築を言おうとするのを俺が遮るように
「それにさ、もし本当に冷たくされたら、その時はお前が一緒に怒って慰めてくれよ」
「もー、しょうがないですねぇ。その時はマックのポテト、もう一回奢ってもらいますからね?」
さっきまでの不安そうな表情は消え、佐天さんは言いかけた言葉が止まり、俺を呆れたような顔に戻る。
「はーー。わかりましたよ、鳴海くんは本当にポジティブですね」
とそんな軽い軽口を叩き合っているうちに、俺たちは目的のファミレスの看板を見つけたので中に待ち合わせの人がいるか?と窓を見ていると椅子で女子同士が抱き合っている場面を目撃してなんとも言えない場面に遭遇したなと思うが、一人はどこかで見たことのある顔だった。
ファミレスの外に待ち合わせの人物が出てきた。
「初春さん先ほどは少し取り乱してしまって。申し訳ありませんの……って、あら?あなたは先日起きたスキルアウト事件の……」
ツインテールを逆立てた少女が声を上げた。
俺は見覚えのある少女の事をやっと思い出した。数日前、能力の無断使用で俺をジャッジメント支部に連行した調書を書いたのが彼女だ。
「……すまん。俺も今君の事を思い出したよジャッジメントちゃん」
と俺が少し冗談半分で名前を知らないので適当に付けたあだ名で呼ぶと
「ジャ、ジャッジメントちゃんとは何事ですの!? 私には白井黒子という立派な名前がありますのよッ!」
と100点の返しをしてくれた黒子を面白いと思ったので、
「そうか。ちゃんと記憶するよ、白井 黒子ちゃん」
と俺が笑顔でそう返した。
「ちゃん!? ちゃん付けで呼ばれる筋合いはありませんわよ! お姉様以外の人間が私をそんな風に呼ぶなんて万死に値しますの! 大体、なぜ初春さんがこんな危険分子と――」
と地団駄を踏んで憤慨する黒子の後ろから、もう一人、茶髪をショートカットにした少女がひょっこりと顔を出した。
「黒子、知り合い? ……って、あんたが黒子の言ってた、例のスキルアウト4人を単独で倒したレベル1の?」
と美琴が俺の事を物怖じせずじっと見つめてくるため、俺はすっと姿勢を正し、黒子への当てつけのために完璧に洗練された所作で、美琴に向かって紳士風にふわりと微笑んでみせた。
「常盤台の超電磁砲という有名人に認知されていたとは、光栄の至り。ありがとうございます」
「へっ……?」「改めまして。俺の名前は鳴海周期といいます。常盤台の第3位の脳裏に、俺というデータがほんの少しでも記憶されることを願っていますよ、御坂さん」
「な、ななな……っ!!」
案の定、美琴の真横で黒子の顔が完全に怒りで沸騰した。
「お姉様にそんな破廉恥な色目を使うなんて、やっぱり万死に値しますの! お姉様、今すぐこの男をどこかに飛ばすので。少しおまちーーーっ!!」
とまるで烈火の如く切れ散らかした黒子を
「ちょっと黒子、うるさいわよ! ……っていうか、あんた、レベル1の癖に随分と大層な挨拶をしてくれるじゃない」
美琴は黒子を小突いて黙らせつつ答えた。少しだけ顔を赤くして不敵に笑う。俺の図太さとスマートさに、美琴はますます興味をそそられたようだった。
「……光栄です」
と言いなんやかんやはあったが俺たちのフファーストコンタクトは終わった。
◇
その後何やかんやありゲーセンに行こうと移動しつつ、途中で見かけたクレープ屋さんで御坂がゲコ太が好きな事を判明したりなど、普通の学生のような時間は突然崩れることになった。
初春が街を見てなにか考えるような顔になった。
「どうしたの。初春さん」 「いえ、あそこの銀行なんですけどなんで昼間から防犯シャッタを下ろしているんでしょうか」
と言われ俺も銀行があるほうに目を向けると
ビキビキーーーードーーーン
と銀行から大きな音と爆発が起きた。
謎の爆発が起きた事でクレープを買うために並んでいた人や近くにいた人はパニックになっていた。
そんな状況で先に動いたのは黒子だった。
「初春、アンチスキルへの連絡とけが人の有無の確認急いでください」といい黒子はスカートのポッケトからジャッジメントの証である腕章を取り出した。
黒子に言われ初春も腕章を付け自身の仕事を始めた。
銀行の中から4人の男が出てきた。そんな男たちの前で黒子が行く手を阻む
「ジャッジメントですの。器物破損及び強盗の現行犯で拘束します。」
男たちは一瞬動きを止めるが笑い声を響かせる。
「なんだー、あのガキ」「ジャッジメントも人手不足か」と黒子に向けて明らかに舐めた発言をする。
「おら、お嬢ちゃん。とっととどっかに行かないとケガしちゃうぜ!!」
と大柄の男が黒子に襲い掛かろうとしてきたが
「そういう三下のセリフは死亡フラグですわよ」
と慣れた身のこなしで黒子はその男を倒れさせた。
そんな現場をみていると広場に入ろうとする女性を初春が止めていた。どうやら子供が一人バスに忘れものを取りに行くといって姿がみえないという。バスは事件が起きた銀行のすぐ隣、強盗犯に気づかれたらだめだ。距離、状況、犯人の意識の演算。俺の頭脳が弾き出した最適解は、一つだけ。
「――初春さん、俺がバスに行く」
と俺が進言した。それに対して御坂が反対な様子
「はぁ!? ちょっとあんた何言ってるのよ、相手は強盗よ!?」
驚いて目を見開く御坂さんに向かって、俺はポーカーフェイスのまま、自分の考えを述べる。
「俺の能力はだったら自分の足音や衣擦れの音を完全に消せば、死角から強盗に一切気づかれずにバスへ近づける。子供を隠密で救い出すなら、レベル5の派手な電撃よりも、俺のレベル1の隠密ムーブの方が適任だろ?」
と自分が行くべきメリットを提示した。
「だったら、レベル1のあんたを一人で行かせられるわけないでしょ! 私も行くわ!」
美琴さんが鋭い目で俺を睨みつける。彼女の正義感からすれば、一般の高校生を危険な場所に一人で行かせる選択肢などないのだろう。
「私も行きます! 先輩、格好つけてますけど一人じゃ絶対途中でバテちゃいますから!」
さらに後ろから、佐天さんまでが拳を握りしめて同行を申し出てきた。たぶん自分も何かしないといけないという目をしていた。
「……だったら慎重に行くぞこれ以上の議論は演算の無駄だ。」
表通りでは、黒子が強盗を背負い投げでアスファルトに叩きつけ、残りの犯人たちを引きつけて大立ち回りを演じている。俺はその戦闘の騒音に紛れるようにして、自身の足音をスッと世界から切り離した。
「できるだけ俺の近くにいろよ。二人の足音も一緒に消す」「すごい……本当に音がしない……!?」「いいわね。あんた中々やるじゃない……!」
御坂と佐天を俺の能力に巻き込み、三人で無音の怪物のようになってバスの影へと滑り込む。敵は黒子が対処している事と俺の能力のおかげで難なく近づくことができ、バスの中を捜索するが、男の子はいない。
(チッ……、バスの中じゃない? 別の場所に移動させられたか……!?)
外に出て周囲を探そうとした、その時だった。バスの死角となる路地裏の奥で、強盗犯の男二人が、泣き叫ぶ男の子の腕を強引に引っ張ろうとしているのが目に入った。
「ダメ―――ッ!!」 俺たちが声を上げるより早く、佐天が遮二無二飛び出していた。男の手を振りほどき、男の子を背中に隠して庇う。
「あァ!? なんだテメェ、邪魔すんじゃねえ!」
男と激しく争う佐天さん。だが、体格差は絶望的だった。 苛立った男の鋭い蹴りが、佐天の腹部に向けて容赦なく放たれる。ドカッ、と鈍い音が響き、佐天は子供を抱えたまま地面に激しく倒れ込んだ。
「ちっ、生意気なガキが……。とっととガキをつれて逃げるぞ」
もう一人の男が、佐天の腕から子供を強引に奪い取るため、彼女の頭上から非情な踏みつけの脚を振り下ろす。
だが――その凶悪な足が、佐天さんに届くことは決してなかった。
「――このクズ野郎が」
無音。気配すらなく男の死角に肉薄していた俺は、腰から引き抜いた自身の制服のベルトを、全力を乗せて鞭のようにしならせて振り抜いた。瞬時に計算した、最も遠心力とスナップが乗る完璧な軌道。
パンッ!!!と、路地裏に激しい烈風の音が鳴り響く。 ベルトの鋭利な金属バックルが、振り下ろされた男の軸足の膝裏へと正確無比に叩き込まれた。
「ぎゃあああああっ!?!? お、俺の足がぁぁっ!?」
骨が軋むような衝撃に男が絶叫し、無様に地面へと転がった。相手が一瞬でのされたのを見て、佐天さんと争っていたもう一人の男が顔を跳ね上げる。
「な、何だテメェはッ!?」
俺は瞬時に能力を発動させ、距離50センチメートルの超至近距離で男の耳元の空気をピンポイントで完全無音化。
聴覚情報を失った男の脳が深刻なエラーを起こし、三半規管が一瞬でブチ壊れた。世界が激しく傾いた錯覚に囚われ、おっとっと、と無様にふらつく男。その顎の先端へ、俺は全体重を乗せた容赦ないアッパーカットを叩き込んだ。
ドンッ、と肉厚な音が響き、二人目の男も白目を剥いてアスファルトに沈む。
「は、はぁ……っ! はぁ、はぁ、はぁ……っ!!」その場に激しくへたり込んだのは、俺の方だった。ベルトを使った全力の急所打撃、能力の連続使用による演算など気持ちが落ち着いた事で全身から冷や汗が吹き出ていた。
「クソ……、たったこれだけで、疲れすぎだろ……俺」
膝を震わせながら壁に背を預けていると、いつの間にか俺にベルトを当てられた男が車に乗り込み、凄まじいエンジン音を立てて逃走しようとするのが見えた。
「逃がさないわよ……ッ!!」
俺たちの後ろから飛び出してきた御坂が、ポケットからゲームセンターのコインを親指で弾く。空中で回転するコインに、凄まじい青白い電撃がチャージされていく。
俺の耳には、そのコインを中心に周囲の空気が激しく引き裂かれる
「バリバリバリッ!」という超高周波の振動音が聞こえていた。 ――ドゴォォォォンッ!!! 目も眩むような光の奔流。音速の3倍で放たれた超電磁砲は、逃走する車のボンネットを正確に撃ち抜き、その衝撃波だけで車を空中で一回転させて完全に大破・停止させた。圧倒的なその光景を、俺は冷や汗を流しながら見つめていた。
「……はは、さすがはレベル5は、強くて派手で……かっこいいよ」
俺が壁に背を預けたままそう呟くと、大破した車の前に立つ御坂さんは、心なしか少しだけ誇らしげに、フンと鼻を鳴らして前髪の電撃を収めた。表通りの騒がしさが落ち着いた頃、路地裏に息を切らせた初春さんと、四人の強盗犯を鮮やかに縛り上げた黒子ちゃんが駆け込んできた。
「捕まえた二人、完全に気絶していますわよ」
と黒子が俺に言う
「正当防衛だ。死ぬ気で、間合いに入っただけだ……。それに一人は実質御坂さんが倒したようなもんだし、あー、クソ、頭が痛い……」
驚愕して目を丸くする黒子の横を、俺はふらつく足取りで通り過ぎようとする。だが、地面に転がる強盗犯たちを見つめ、俺の脳裏に冷たい違和感がよぎった。
(おかしい。ただの強盗が、なんであんな統率の取れた動きを……。それに、さっき俺の射程に入る直前、こいつらの身体能力は不自然に高かった。まるで、キャパ以上の何かを強引に引き出されているような――)
謎の違和感――のちに『幻想御手《レベルアッパー》』と呼ばれる事件の引き金を肌で感じながらも、今の俺のスタミナは完全に底を突いていた。緊張の糸が切れた途端、激しい疲労感が全身に押し寄せてくる。そんな俺のところに佐天がやってくる
「鳴海くん、怪我ない!? ほんと無茶しないでよね……!」
隣を歩く佐天涙子が、本気の涙目で俺の制服の袖をきゅっと掴んだ。その手はまだ微かに震えている。初春さんもまた、顔を真っ青にしながら心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「俺より君のほうがケガをしているだろ。まったくいくら助ける為とはいえ無茶をして」
と俺は少し佐天に呆れつつ言葉を交わした。
「でも、本当に……ありがとうございました。私、あの時頭が真っ白になって。もし鳴海くんがいなかったらと思うと……」
言葉を詰まらせる佐天さんは続けて
「……あの時の鳴海くん、すっごく格好よかったぜ、なんてね」
いつもの悪戯っぽい口調を無理に作っているけれど、俺の袖を掴む佐天さんの手はまだ小さく震えていた。そんな彼女の姿を見て、俺は限界の頭のまま、思ったことをそのまま口にしていた。
「……そっか。ありがとな。でも、本当に無事で良かったよ。佐天さんはがレベル0の自分は劣等生だなんて思っているかもしれないけど、そんなことは関係ない。今日、俺が命がけで守る価値が、お前には絶対にあったからさ。……やっぱり君には、学園都市のレベルなんかじゃ測れない、特別な価値があるよ」
一拍置いて、隣の気配が完全に凍りついた。
「へっ……!? え、えええええ!?」佐天は顔をトマトのように真っ赤に染め上げ、信じられないものを見る目で俺を見つめている。初春に至っては、両手で口を覆って「わわわわ……!」と大慌てで二人を見比べていた。
「え、ちょっと鳴海くん!? な、何言ってるの急に! バカなの、天然なの!?」「え? いや、本心だけど……」限界を迎えた俺は身体はゆっくりと地面へ傾いていった。
そうして緊張が解けたと思ったら
ピピピピ…ピピピピ
と空気が読めない音が聞こえる。俺の携帯に着信が起きる。着信画面には『上条当麻』の文字。限界の力を振り絞って通話ボタンを押し、耳元に寄せる。画面の向こうからは、相変わらず締まりのない親友の声が聞こえてきた。
『よぉ鳴海! 悪い悪い、今土御門たちと解散した後なんだけど! で、どうだったんだよ女友達とのデートはちゃんと楽しめたか?』
「……当麻、お前なぁ……」『いやさ、本当は俺も直接聞こうとしたんだけど! こないだの学期末試験の点数がマジで天文学的なヤバさでさ! 先生の目がマジで般若みたいで生きた心地がしなかったっていうか、もうこれ夏休みは補習地獄コースでカミジョウさん大ピンチ! だからお前の知恵をぜひ借りたくて……』
スピーカー越しに聞こえる親友の絶叫。
ピッ。 周期は携帯から出る上条の声を完全にシャットアウトしたまま、通話終了ボタンを押した。
「……騒がしい奴め。せめて世界は、もう少し静かであるべきだ」
やれやれと首を振りながら、俺のスリリングな一日が終わった。