6月の1週目。
「今日はいつもよりもサインを出すかもだから集中していこうね。いつも通り、声を掛け合って楽しく行こうね」
夏の本番前の最後の練習試合の守屋欅台高校。
1番に起用された息吹さんに対して、守屋欅台の先発の山田さんはコントロールが安定せずストレートの四球。藤田さん、山崎さんも四球を選び。無死満塁。
4番に起用された中村さんは一塁強襲の当たりを放つ。一塁手のグローブを弾く強烈な打球となり、タイムリー二塁打。
「希ちゃんの初打点だよ!」
「へぇ~意外。打ちまくってるイメージしかないのに」
力まずに振りぬいたことで強い打球。今までは固くなってたけど吹っ切れたかな。
主将も続きセンターの頭を超すタイムリー二塁打でさらに2点を追加し、初回は打者一巡の猛攻で6点を先制する。
先発の武田さんはあの球はあまり投げずにカットボールとツーシームを中心にした投球。初回は守備シフトの間を破られて1点を返されたが、打たせて取るピッチングで1点に抑える。
終盤には山崎さんと中村さんが連続でタイムリーを放ち、大量得点差での最終回の守備。
「ヨミちゃんから凪ちゃんへのリレーは公式戦でもあるからね」
「三者連続三振でいいよ!」
最終回のマウンドに上がったのは私。練習試合ではリードの場面で投げたことはなかったし、点差はあるけど多少の緊張感はある。
(今日が最後だし、気持ちよく終わりたい)
今までの練習試合では色々と試しながらやってきた。今日は試すのはナシで本番と同じ気持ちで投げる。
先頭打者に対しては全球ストレート。インコースとアウトコースに投げ分けながら、2-1と投手有利のカウントで5球目はインハイのストレートで空振り三振。
(先に投げてた子よりもエグイ……。1年生とは思えない)
1死を取ってからの後続は1-1からの3球目のツーシームを詰まらせてのサードゴロ。
(ポンポン投げてくる。コントロールがいいのがまためんどくさい……)
最後の打者はストライク先行で追い込んでから、最後は真ん中へのストレートで空振り三振。
『
最後の試合は打線が爆発。投手陣が危なげなくリードを守り抜き、大勝で締めくくった。
「皆、お疲れ様! 夏に向けていい試合が出来たね!」
「新変化球も増えたし、凪ちゃんの抑えも試せた。これからが楽しみだよ」
「後は白菊の本塁打が出れば、完璧だな」
「はぁ……」
大村さんのホームランはそのうち出ると思うよ。
「芳乃ちゃん、全国に行ける確率あがったっちゃないと? 今日、勝ったし」
「うーん。そうだね」
芳乃さんは鞄からタブレットを取り出してから上位のランクの学校を表示する。
「今年のシード校はこんな感じになってるよ。優勝するためには2勝はしないといけないからね」
Sランクは咲桜、美園、染幽舘。県外の私でも見たことのがある学校が並んでいる。
「Aランク以上はみたことがあるところばっかだな。勝つどころか試合をするイメージも思い浮かばないわ」
「無理ね。全国は」
「やってみないとわからめーもん!!」
「そうだね。今日みたいに準備ができればいい勝負ができると思うよ」
芳乃さんは学校のデータを集めてるだろうし、強豪が相手でも怖くはない。
「当たるの楽しみ!」
「大会までにやれることはやっていこうね!」
コンディションは夏までに持っていこれるように調整した。後は発揮するだけだ。
「っていうか、ヨミは何時まで泣いてるんだよ~」
「武田さん……重い」
「重いって酷いよ。凪ちゃん!」
武田さんは勝利の喜びで歓喜で私と山崎さんの肩を借りながら歩いている。
「だって、嬉しかったんだもん~!! 初勝利~」
息吹さんがもらい泣きしてる。
「新越谷に入ってよかった……このメンバーで夏も勝ちたいな」
「やるしかないな!」
「早速帰ったら練習しよう!」
最初はバラバラだったナインが同じ目標に向かって進んでいく。チームが少しずつ形になっていくように感じる。
「凪は初セーブでしょ? もっと喜びなよ」
「……よっしゃ」
「小さ」
このメンバーで何処まで行けるのか。私たちの初めての夏はもうすぐ始まる。