物静かな天才少女が描く野球道   作:小羽空

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全国

 

2年生の先輩たちが加入して、マネージャーの芳乃さんを除いて必要な部員は2人。

 

「……野球部、どう?」

 

「ごめん。別の部にしたから」

 

1年生のフロアで経験者に勧誘。

 

(経験者は野球部の評判を知ってるから避けてる)

 

入学したばかりの新入生にとっては上級生の風当たりが強い野球部に入りたくない。気持ちは理解できるし、無理に頼むことも出来ない。

 

「凪ちゃん、どうだった?」

 

別の場所で勧誘していた芳乃さんと合流。

 

「ダメだった」

 

「こっちも断る人が大半だったよ。明日からは初心者にも声をかけてみよう」

 

経験者は全滅となると初心者になるけど、息吹さんみたいな人が入ってくれるといいんだけど。

 

グラウンドに移動してから、人数が少数な環境であることから、各自で決めた練習メニューをこなしていた。

 

(息吹さんは主将にみっちり鍛えられてる)

 

息吹さんは主将がつきっきりでの指導。主将は鍛えれば自分を超えられるといっているけど、主将を超えるのって今以上に練習量増やさないとキツイはず。

 

「ストレート、行くよ」

 

「おっしゃ! こい!」

 

私は打撃投手で打席に入った川崎さんにコースと球種を伝えてからマットに向かって投じる。

 

ブン!!

 

コースとしては真ん中で打ちやすいように出力を抑えて投げ、川崎さんのバットは空を切る。

 

「あんたは大振りしすぎなのよ」

 

「本気で投げてこないとつまらないだろ」

 

打撃投手は打者に気持ちよく打たせるのが役割だからね。

 

「コースは好きな所でいいわよ」

 

「じゃあ、低め」

 

藤田さんに変わってから、右打者の体の近くから変化するツーシーム―をインローのギリギリに投じる。

 

カキン

 

藤田さんはギリギリのコースをカット。

 

「ヒット狙えよ。面白くねーな」

 

「こういう打撃も時には必要なのよ」

 

打者として何方が嫌かと聞かれたら圧倒的に藤田さん。

 

「みんな〜! 入部希望者だよ!」

 

「歓迎するよ!」

 

ランニングをしていた武田さんが戻ってくると2人の少女を連れてきた。

 

「主将、あまり威圧しないでくださいよ」

 

「わかってるよ」

 

藤田さんが主将に釘を刺す。

 

「主将の岡田です。学年は2年生でポジションとか適当に自己紹介お願いします」

 

主将の笑顔がぎこちない。

 

「大村白菊です……中学までは剣道部です。野球は初心者でポジションとかはまだ……」

 

「剣道かぁ。なんでまた野球部に?」

 

「いえ…個人競技以外もやってみたくて……」

 

「剣道! いいねえ! さすが鍛えてるね!」

 

剣道ならリストの強さは期待できる。でも、何で個人競技から集団競技に入るんだろう?

 

「次、そっちの子いい?」

 

「はぁ……」

 

大村さんの次は金髪の少女。

 

「中村希です。中学では一塁と外野してました。でもここに入部する気は……」

 

「中村さんってもしかして左打ち?」

 

「えっ……うん」

 

「おてて見ていい?」

 

芳乃さんは中村さんの言葉を遮って手に触れ始める。

 

「やった! 新越谷(うち)は左投げ左打ちは凪ちゃんしかいないんだよ。 新しい豆! 春休みもバット振ってたんだ」

 

私の他は右投げ右打ち。近年は左打ちの選手が増えてきたけど右で偏っているのはうちだけかも。

 

「着替え持ってる?」

 

「ハイッ!」

 

「部室はあそこね」

 

2人は体験入部することになり、部室で制服から体操服に着替えて戻ってくる。

 

「経験者の中村さんから打ってみましょうか!」

 

「頑張れ〜」

 

最初に打つのは経験者の中村さん。

 

「おねがいします……」

 

「じゃあ、お手並み拝見といくかぁ」

 

川崎さんはマシンにボールを投入すると速球のスピードで投じられたボール。

 

カーン!

 

中村さんはバットの芯で捉えると鋭いピッチャーライナー。

 

「凄いじゃない!中村さん!」

 

「別に……バッセンで慣れとーけん」

 

中村さんはさらっというけど、その後も同じ打球を連発する。

 

「何者なの…?」

 

「全部芯でとらえてる」

 

中村さんが見せる衝撃の打撃に周囲は驚きに包まれる。

 

「しかも全部ピッチャー返し……狙ってやってるんだ」

 

しかも同じ個所を確実に狙ってる。

 

「中村さん!! 中学はどこのチームだったの!?」

 

「箱崎松陽……福岡」

 

福岡って……野球大国じゃん。

 

「福岡……野球大国!」

 

近年の野球界で人材の宝庫といわれている博多。博多出身なら技術の高さも納得。

 

「道理でチェックリストにいないわけだよ。まさか野球留学生?」

 

「ち、ちが……」

 

「驚いたな。新越谷(うち)がまだ越境組を取っていたとは……」

 

県外民なら私と同じ理由じゃない?

 

「……私と同じ理由なのでは?」

 

「凪ちゃんも県外だったね」

 

「神奈川だっけ?」

 

「うん。親の転勤でこっちにきたから」

 

中村さんは仲間がいる!!と振り向く。

 

「ち、ちがうよ……。埼玉に来たのは親の仕事とかでたまたまで……本当に全国を目指せるとこで野球したかったっちゃけど……でも、新越谷の野球部のことをよく調べんで入ったけん……。だから、入部する気は……中学の皆と約束したのに……全国で会おうって」

 

「全国……」

 

いきなりハードルが高い所にきたなぁ。

 

「ガールズで全国経験ある珠姫はどう思う?」

 

「私に振らないでくださいよ…」

 

主将はこの中で唯一の経験者の山崎さんに話を振る。

 

「ここは参謀の芳乃ちゃんが」

 

芳乃さんならきっと最適な答えを導いてくれる。

 

「このチームのレベル……? 2人が入ってくれたとして……左右の柱がいるし、ベスト8まではいけるかもね」

 

「またまたぁ」

 

「それはなめすぎじゃないかしら?」

 

他の高校のことはあまり知らないけど、ベスト8は流石に厳しすぎない?

 

「なめてないよ?そっちこそ自分を過小評価するのも良くないよ」

 

「そ……そうね」

 

「もっとも、3か月みっちりと練習して、組み合わせとかの妙があったらの話だけどね」

 

芳乃さんはマジだ。この環境で出来ないと思ってない。

 

「じゃ……じゃあ1年後はどうなるかいな!?」

 

「そんなに先のことはわかんないよ」

 

「優勝できるっちゃうと?」

 

「他の学校の事情も変わるし……」

 

中村さんは芳乃さんは信用できると思ったみたいで質問攻め。

 

「大村さんは初心者だったよね。スイングとか大丈夫?」

 

「はい……一応。お願いします……」

 

次に打つのは大村さん。初心者の大村さんが打ちやすいスローボールに設定し投じられる。

 

カキィィィン!!

 

大村さんの豪快なフルスイングはボールを捉えると雲の間を切り裂くように放物線を描きながらフェンスに直撃。

 

「バットに当たりました!すごく良い感触…」

 

「嘘……」

 

「当たったってもんじゃないわよ!?」

 

うちは俊足巧打型の選手が大半だし、下位打線でホームランを狙える打者がいてくれたら、打線としては厚みが増す。

 

「次、お願いします」

 

「なんだ、さっきのはマグレか」

 

「そのようです……」

 

確実性は課題だけど、数字を気にしない下位なら問題なし。

 

「思い出したわ! 大村白菊さん! 去年の中学剣道の全国大会の優勝者!テレビで見たわ!」

 

「すげー」

 

「でも、そんなに強いのに続けなくていいの?」

 

私も思った。そんなに凄いなら続けたほうがいいのに。

 

「元々は野球が好きだったんですよ。子供の頃にいつか見た高校野球の試合ですごく感動して……あと野球漫画も好きです。でも厳しい家でしたから……親に野球がしたいと伝えましたら、剣道で1位になったらと言われまして、なので去年までは剣道に尽くしました」

 

有言実行。それを達成してしまうのも凄いんだけど。

 

「というわけで、高校からですけどよろしくお願いします」

 

武田さんはマットの方に移動する。

 

「白菊ちゃん、希ちゃん。私も投手なんだ」

 

2人に見せる様にマットに向かってあの球を投じる。

 

(あの球は見たことがない……。ヨミちゃんの他に凪ちゃんのストレートは外から見ていても手元でかなり伸びてた)

 

中村さんの期待値が上がっていってる。

 

「いいよ……でも入るからには……一緒に目指して欲しいっちゃ。全国を」

 

中村さんは大村さんの方を振り向く。

 

「それから!白菊ちゃんには負けんけんね!」

 

「えっ!?え〜〜」

 

あの打撃を見たら張り合いたくなるよね。

 

「人数も揃ったし」

 

「チームの目標も決まったな!」

 

「よ〜し! 全国目指そ〜!」

 

「おー!」

 

全国かぁ……。中学でも到達したことがないし、あの場所に何があるのかな。

 

「タマちゃんどうしたの?こっちおいでよ」

 

「う…うん」

 

山崎さんは思う所があるみたいで複雑な表情。

 

「目指せ全国たい!」

 

「ばかにしとーと?」

 

「よかよか」

 

「使い方間違っとーし!」

 

自分なりに答えを導き出す必要もあるし、考えてみよ。




掲示板の話をやりたいんだけど、私があまり掲示板に行かない人だから出来ない件について(-_-;)

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