物静かな天才少女が描く野球道   作:小羽空

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チーム

チームの目標が全国に定まってからチームの士気は上がり、練習にも必然的に熱が入る。

 

「お疲れ。凪ちゃん」

 

芳乃さんが考案した練習メニューは質が高い。

 

「……そろそろボールが投げたい」

 

「1日のノルマをこなしたらね」

 

最近の練習メニューはランニング、外野での守備練習がメインで投球練習は少なめ。

 

(凪ちゃんのスタミナはそんなに多くない。普段の練習でも球数が増えてくると球威が落ちてくる)

 

武田さんは普通に投げてるし、私もマットを相手に投げたい。

 

「凪ちゃんは先発とリリーフ。どっちで投げたい?」

 

「どっちでもいい。投げられるなら」

 

投手をやる以上は背番号1には強い憧れがある。中学の頃は二桁ばかりでエースとは無縁の生活を送っていたから。

 

外野の守備練習では初心者の息吹さんと大村さんに混ざるようにセンターで守備練習。

 

「凪は上手いな。小柄の体格を身体能力で上手く補ってる」

 

「左腕なので両翼の方が負担もなく守れると思うんですけど、3人で外野を守るとしたらセンターに置きたくなりますよね」

 

主将のノックは2人にはシチュを変えながら、私に対してはマジのノック。

 

(足がキツイ……ランニングの後だから上手く動かない)

 

三人の間に飛んだ打球をスライディングでの捕球。

 

(早く投げたい)

 

今日も投球練習は少ない。早く投げたい。

 

「怒ってないか? 凪」

 

「投球練習少なめですからね」

 

「取ってから投げ返してるのは芳乃の指示?」

 

「凪ちゃんのためのメニューなので」

 

日が落ちてからはトス打撃の時間。私は山崎さんと武田さんの組に混ざってボールを打つ。

 

「……多くない?」

 

「ヨミちゃんに私の分も打ってもらってるから」

 

山崎さんは武田さんにトスを上げ、武田さんはネットに向かって打ち返す。

 

「凪ちゃんはどう思う?」

 

「全国の話?」

 

山崎さんはトスを上げながらチームの目標について聞いてきた。

 

「色々と考えたんだけど、あそこがどんな場所なのかはよくわからない」

 

チームの目標が全国になってから、甲子園がどんな場所であるのかは自分なりに考える時間が度々ある。

 

「あそこは特別な場所だし、簡単に行ける場所じゃない」

 

甲子園は野球をやっている人間からしたら憧れの場所。あの場所を目指して、キツイ練習に耐え、仲間との競争に打ち勝ち、試合でライバルに勝利する。

 

「……私が投げることでチームに貢献できるなら」

 

このメンバーで長く野球をやりたい。1回でも多く勝利の瞬間を味わいたい。

 

「……このチームが好きになってきたから。勝利の瞬間も苦い経験も糧にして、今よりも野球が上手くなりたい」

 

期間としては短くて、皆のこともまだよくわからないけど、様々な経験を共にすることでチームを好きになれる。それだけの理由が此処に詰まっていると思うから。

 

☆☆

 

練習が終了後に芳乃さんに誘われて、芳乃さんの家に荷物を置いてから、私、中村さん、息吹さんの順番で後ろから芳乃さんが自転車で追いかける形でのランニング。

 

「あれって詠深と珠姫じゃない?」

 

夜の公園でライトアップされている場所にて、息吹さんが話をしている2人を見つける。

 

「何で隠れるのよ……」

 

「なんとなく」

 

私たちは2人の会話が聞き取れる位置の茂みに身を潜める。

 

 「私…最初はね、ヨミちゃんとなら勝ち負けとか関係なく楽しくやれればいいかなって思ってたんだよね。もし、人数が集まらなかったら、キャッチボールするだけの部活でもいいと思ってた。頑張っても頑張っても上には上がいたりレギュラー外されたり、誰より頑張った人が1回戦で消えてしまったり……」

 

武田さんが自分のことかなって思ってるけど、野球はそういう人が大半だから。

 

「そういうのは中学でやめたはずだったから。でもね……、いざ、人数が揃って本格的に部活をするようになって、全国と言う言葉まで聞いちゃったら……なんでだろ……中途半端は嫌なんだ。いつの間にか本気になってる」

 

やるからには勝ちたい。中途半端じゃなくて、そこを目指すなら本気で挑戦したい。

 

「それはタマちゃんが知ってるからでしょ。チームの皆で勝った時の味を」

 

「そうだね……勝ってみたい。凪ちゃんもいってたけど、このチームを私も好きだから」

 

山崎さんってもっとクールな印象だと思ってた。聞いてて凄く胸が熱くなる。

 

「とにかく! これから練習時間増えてくだろうし、ヨミちゃんはついてこれるのって話だよ」

 

「まさか、心配してくれたの?」

 

山崎さんは顔を赤くしながら武田さんから顔を背けてから、話を続けるように咳払い。

 

ほんとは帰らずにずっと練習していたいくらいなんだよ。その上で勝てたらどんなに楽しいんだろうね」

 

武田さんは少しだけ屈むと山崎さんと同じ目線で。

 

「私を連れて行ってよ。きつい練習でもなんでもするから」

 

「うん。わかった」

 

山崎さんは武田さんの手を取りながら。

 

「一緒に行こう」

 

これからの2人の未来を見守るように月明かりが美しく照らす。

 

「素晴らしいよ〜! 混ざりたい〜」

 

「……ついていけるかしら」

 

芳乃さんが今にも飛び出していきそうなので止める。

 

「明日からやることいっぱいあるよ。クイックとか守備とか」

 

「イエッサー!」

 

「基礎トレと増やさないと、2倍くらいに」

 

「ええ!?」

 

武田さんの表情が固まる。

 

「なんでもするって言ったよね」

 

「基礎トレ1人だからあんま楽しくない……」

 

「凪ちゃんは好きそうだけどね」

 

私は基礎トレ大好きです。

 

「凪ちゃんも増やすってことだよね?」

 

「凪ちゃんはスタミナが課題だから増やすつもり。息吹ちゃんと一緒になるように調整するから。総合メニューは芳乃ちゃんと相談してから……」

 

芳乃さんが待ってましたと勢いよく駆けだしていく。

 

「呼んだ!?」

 

「みんな……なんでここに?」

 

「ランニングしてたんだよ。私たちの家すぐそこだし」

 

「へぇ」

 

武田さんは茂みから出てきた私たちを見ると、山崎さんの方を振り向きながら、山崎さんは赤くなっており。

 

「どこから聞いてた!?」

 

「さあ……今来たばかりよ」

 

「そんなことより練習の話しよう!」

 

「……うん。練習は大事」

 

二人きりだと思っていたことで2人は話を聞かれていたと赤くなりながら慌てており、芳乃さんと私は練習に意識が向いており、中村さんは笑っていた。

 

☆☆

 

翌日の練習メニュー、芳乃さんが全員に向けて新しいメニューを配布する。

 

「みんな集まって〜!新しい練習スケジュール配るよ〜!文句がある人は遠慮なく言ってね」

 

おお……結構ハードメニューだ。

 

「これはこれは…」

 

「なかなかハードね」

 

豊富なメニューでありながらも2年生が引くレベルなので。

 

「やった!守備練習が増えてる!」

 

「………練習内容はともかく…食事の献立まで決められてるんだけど」

 

「もし無理なら私が作ろうか?」

 

「そういう問題じゃなくて!」

 

日々の練習メニューに加えての食事のメニュー。

 

凪ちゃんの練習メニュー。

 

投手用 スタミナアップのためのランニング、投球制度アップ。

野手用 一塁手を含めた守備練習。

食事用 細身で小柄だから沢山食べようね

 

食べるのは大好きだから任せて。

 

新しいメニューでの1日の練習が終わると、主将は全員を集合させる。

 

「先生、お願いします」

 

「引き継ぎが遅れましてすみません。顧問の藤井です。皆さん自主的に練習されていて偉いです!」

 

藤井先生は家庭科の先生みたい。

 

「ふふ…もう授業で会った子もいますね。さて……」

 

藤井先生は眼鏡を指で直してから勝負の顔に変わる。

 

「どうやら全国を目指しているらしいですね。そこで、1週間後に試合を組みました」

 

「試合!? やった!」

 

「どこまでやれるか見せてくださいね」

 

優し気な先生から厳しい先生に変わった。




どっちの方がいいかなと思ったのでアンケ取ります

凪の夏大会の起用法

  • 背番号1での先発がメイン
  • 背番号11でリリーフがメイン
  • 勝負所での切り札的なジョーカー
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