現代日本かと思ったら、デジモン世界でした   作:佐月檀

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 ベルスターモンがエ……かっこいいので初投稿です。


1話 ピコっとピコピコ現れおる

「……デジモン?」

 

 呟いて、首を傾げてみる。

 目の前ですやすやと眠っているのは、間違いなくデジモン。

 デジタルモンスター――通称デジモン。

 名のとおり、電子空間に存在するモンスター。

 この世界では、少なくともカードゲームとしてしか目にしたことがない。

 というか、前世でもデジモンは熱心な友人や知り合いから耳にしたぐらいで、俺自身は、あまりデジモンに触れていない。

 

 だが今は素直に、前世がわかることに感謝するしかない。

 そういう情報を知っていなければ、このコウモリがデジモンなどわかるはずもなかった。

 

 ……それにしても、ずいぶん眠っている。

 昨日から、もう丸一日は経っている。

 よほどダメージが大きかったのか、翼にはところどころに穴ができていた。まあ、今は回復しているようだが。

 しかし、ここまで酷いダメージとなると、なにか起きていたのは間違いないだろう。

 このデジモンを拾ってしまったからには、俺も巻き込まれるのはもう前提だろう。

 

「はー……。やっちまったなぁ」

 

 口でそう呟くが、内心では、胸を撫で下ろすような想いだった。

 助けたうえで、でも目の前で死なれたとかなったら、それはそれで嫌になるから。

 ここは素直に、助かってよかった、と口にすべきなのはわかる。

 まあ、俺はそんな言葉を使えないが。

 

 

 

 と、虚空に独り言を呟いていたら。

 眠っていたコウモリデジモンがもぞもぞと動きだした。

 ようやく、お目覚めのようだった。

 

「ごきげんようミスター……いや、ミセスか? まあいいや。いいお目覚めか?」

 

「う……うーん……」

 

 声をかけ、コウモリが目を覚ます。

 と、お目覚め早々、いきなり俺に対して距離を取ってくる。

 

「だ、誰!? というか何者!? そもそも生物なの!?」

 

 さらっと生物云々とかいう失礼をかまされたが、逆に微笑んでみせる。

 

「あー……一応、人間やってる。そう言えば、満足か?」

 

「ニンゲン……?」

 

「うん、人間。オレ、ニンゲン。オマエ、ナニモン?」

 

「なによ、その胡散臭い喋りは!」

 

 警戒心を強めてしまったようで、さらに飛び退かれた。

 

「……待ちなさいよ? あなた、ニンゲンなのよね?」

 

「オレ、ニンゲン。ニンゲン、マチガイナイ」

 

「だからその壊れかけのロボットみたいな喋り方やめなさいよ! 調子狂うじゃない!」

 

「ハハハハハッ」

 

「だからやめなさいってば!」

 

 目覚めて早々、ツッコミまくる目の前のデジモンには涙を禁じ得ない。

 まあ、元凶は俺なわけだが。

 

「……一応聞くわ。ここ、もしかして人間の住む世界よね?」

 

「はいかはいだったら、はいとしか言えんな」

 

「どっちもはいじゃないの……」

 

 頭を抱える目の前のデジモンには哀れみを禁じ得ない。

 まあ、元凶は俺だが。

 

「……さて、こっちからも質問いいか? お嬢さん」

 

「な、なによ」

 

 あえて雰囲気を切り替えて、問いかけてみる。

 目の前のデジモンがいちいち面白い反応をするからいけない。

 

「あんた、見た感じ、デジモンなようだが? ……合ってるか?」

 

「そ、そうよっ。あたしはピコデビモン。ウィルス種のデジモンよ」

 

「……ふうん」

 

 名前まで聞き出せる幸運に、内心でガッツポーズを繰り出す。

 だがウィルス種という単語は知らん。なにそれ、おいしいの状態だ。

 

「……まさかあなたもデジモン……?」

 

「んなわけあるか。人間だっつーの」

 

 踏み入りすぎて、危うく誤解まで生じさせかけた。

 というかまあ、普通に不審者だよな、これ。

 相手の情報を一部分だけとはいえ、一方的に知っているわけだし。

 

「そう……」

 

「ってかお前、もしかして女か?」

 

「ちょっと!? それは流石に失礼がすぎるわよ!?」

 

「ぐへへへへ。お嬢さん、俺に助けられたのが運の尽きだったねぇ……。

 ……すまん、今のは冗談だ。流石になにか攻撃したりはしないでくれ。俺はいいが壁が死ぬ」

 

 コウモリお嬢さん――ピコデビモンは訝しむように視線を注ぐ。

 

「はあ……。話してたら、なんだか疲れるわね、あなた……」

 

 また溜め息を吐きながら、ピコデビモンは首を左右に振る。

 

「でも、あなたがあたしに敵意がないのはわかったわ。

 あなた、名前は?」

 

「そう、だな。名前、か」

 

 一瞬、顎に手を置きかけるが、すぐさま止める。

 

灰原巧(はいばらたくみ)、ハイバラってんだ。ま、タクミでもいいけどな」

 

「ハイバラ、タクミ、ねぇ。

 ま、覚えたわ」

 

「んじゃ、こっちからもひとついいか?」

 

「いいわよ。基本的には答えるわ」

 

「……なにがあったんだ? ボロッボロで落ちてきたが」

 

 ピコデビモンも一瞬、考え込むような素振りをするが、すぐ口を開く。

 

「襲われた()()()のよ、他のデジモンに」

 

「……らしい?」

 

「うん、そうよ。いきなり真っ暗になったと思ったら、もうそこからは記憶がないもの。けどなんとなく、デジモンの仕業っていうのはわかるわ」

 

「で、こっちに飛ばされてきた、ってわけか」

 

「ええ。……ま、奇跡的にあなたのおかげで助かった、ってわけ」

 

「お、信頼はしてくれるのか」

 

「一時的よ! 一時的!」

 

「なーんだ……」

 

「とにかく! 助けてくれたことには感謝するわ! けど、それとこれとでは話が別よ!」

 

 そう告げて、ピコデビモンは飛び立つ。

 

「あたしは戻るの! あっちには一応家もあるわけだし!」

 

「……一応聞いておくが、どうやって?」

 

「ゲートを見つけるのよ! この世界とあっちを繋げている扉を!」

 

「簡単に見つかるか……?」

 

 もう嫌な予感しかしないので、もうひとつ探りを入れてみる。

 するとこのピコデビモン、目を逸らしやがった。図星かい。

 

 はあ、と溜め息を吐いて、俺は口を開く。

 

「そのゲートってやつ、探すんだろ? 俺も乗ってしまった船だし、手伝うぞ」

 

「え、い、いいのっ!?」

 

「それまではこの家使え。元はといえば、一方的に助けたのは俺だから」

 

「……助かる。ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

「……んで、アテはあるのか?」

 

「決まってるでしょ! そんなの!」

 

「お?」

 

「ないに決まってるわ!」

 

「ないのかよ!?」

 

「ないわ!」

 

「二回も言わんでよろしい。

 ……ってことは、一からってか。もう交番にでも……」

 

 聞くか、と言いかけたところで、インターホンが鳴る。

 

「……ちょっと待ってろ。行ってくる」

 

 ピコデビモンにそう伝え、後頭部を掻きながら。

 ドアノブに手をかけ、開けた先には。

 

 

 

 

 

「こんにちは。警察の者ですが、少し、お時間をいただいても?」

 

 

 

 なんでこんな場所にポリスメン来てんだ。

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